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おばあちゃんの為に


ばぁちゃんはいつも早起き。

起きると身の回りを片付けて、糠床をひっくり返して、朝食を食べて、茶碗を洗い、テレビを見て、「よっこらせ」と立ち上がり、外行きの服に着替えて、手押し車につかまりながら出かけて行く。

大好きなお友達といつもの喫茶店で待ち合わせをして、お茶をしたあと、公園を散歩して、お団子を食べて…。ニコニコしながら二人で歩いてる姿が近所でも有名だったおばあちゃん。

2020年の2月

どうやら危ない感染症が流行っているとテレビが騒ぎ始めた。

「高齢者が危ない」
「40万人以上亡くなる可能性がある」
「人との接触を減らそう」
「頑張っている医療従事者に感謝を」

外には出れなくなり、気を遣ってか、それとも怖がってなのか、誰も自分を訪ねて来なくなった。

『おばあちゃん、今は危ないから表に出ないでね』
『もう少しの辛抱だから』
『みんなで協力して、早く終わらそうね』

もう少しだけ辛抱しよう、きっと来年には終わるから。

そうやって言われるままに我慢をしていたら、去年の暮れにお友達がこの世を去った。
ばぁちゃんがそれを知ったのは、お友達が亡くなってから1ヶ月も後のこと。

「そろそろ大丈夫」と娘婿に言われたから散歩に出かけてみた、暫く歩いていなかったから膝が痛い。
喫茶店は閉じたまま、公園は閉鎖され、お団子屋さんは潰れていた。

一緒に歩いていたお友達はもう居ない。

おばあちゃんはひどく落胆して、寝たきりになった。

騒ぎまくった"あなた"に問う

このおばあちゃんから"何を奪ったのか?"を真剣に考えてほしい

「あなたの安全を思って」と、寝たきりになったおばあちゃんに言えばいい。

きっとおばあちゃんは、か細い声で「ありがとう…」と言ってくれるだろう。

どんな理由であれ人は死ぬ
だからこそ今確実にある生を大切にしてほしい

⁡生きる意味を奪うという事が、いかに冷酷な事なのかを胸に刻んでほしい。


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