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人柱を救う - 人柱統合の儀

- 人柱としての男性性


あえて、かなり省略をし、ぼやかして書きます。
(途中から、降りてきてる)


昔々のある時から、ある存在が、封じられておりました。
その理由、分からず。
その目的、分からず。
いつからかも、いつまでかも分からず。

ただ、そうであった。

そして、その「存在」は、男(男性性)であった。

その「存在」は、恨んでいた。
あれよあれよという間に、
入れ替わり、すり替わり、
混乱の中、氣づけば鎖に繋がれた身。

人柱となって、ここに在る。


「なぜ」

その存在は、誰にともなく、問うた。

「なぜ、私が。」
「ここにいるべき者は、私ではなかったはず。」
「騙されたのか、図られたのか、裏切られたのか。」

そして、その存在は知っている。
「その時」がついにやってきた時。

それが、終わりの始まりの合図。
そこでも、やらねばならぬ、お役目がある。
醜いお役目、手を汚さねばならぬ、呪われたお役目。

そのことを思うだけで、
身は引き裂かれ、心は砕け、
怒りの咆哮が響き渡る。

そしてまた、その存在は、誰にともなく、問い続けるのだ。

「なぜ、私が。」
「ここにいるべき者は、私ではなかったはず。」
「なぜ、私がここに繋がれているのか。」、と。


 - はじまり


そこに、女がやってくる。
愛しい愛しい、最愛の君。

2人は悠久の時に遮られ、触れることも叶わぬ身。
それでも恋焦がれる、長い年月。

男は思う。
「すまない」と。

自分がここに封じ込められたために、
定めが捻じ曲げられ、その渦の中に絡め取られ、
手違いでこのお役目となってしまった、この身の不幸。

そのために、愛しい君と寄り添うこともできず。

花を挿すはずだった。
その愛しいカズラに。
花嫁とは、そなたのこと。

ああ、だが。
その願いはもはや叶うべくもない。

ここに囚われた身となったとき、
優しい君は、役目に囚われた私を想い、
等しく「時」というものに繋ぎ止められることを
自ら選んでしまった。

このお役目となってしまったことが、
私の、君に対する最もたる罪。
どうか、赦してたもれ。

ああ、憎い。
ああ、恨めしい。

そうして、行き場のない怒りは、もどかしさは、
いつも同じ問いへと、その男を誘う。

「なぜ、私が。」
「ここにいるべき者は、私ではなかったはず。」
「なぜ、私がここに繋がれているのか。」


 - 解ける


終わりが始まる時。
その時のはじまりの序章の時が、近づいてきた。

道拓きの神神様、
陰と陽と、和合しまして相まみえます。

揃い立ち、袖振り足踏み鳴らし、
舞と音とで響あわせ、開く扉のその先に。

ああ、愛しいあなた、我が春光の君。
はるか彼方の遠くから、ずっと見つめておりました。

触れることは、かなわぬ定め。

しかし、触れることができぬからこそ、
私は昼夜、風となり、星々の御光となり、雨の雫となり、
この大地に降り注ぎ続けました。

その奥底でたったひとりで眠る、
愛しいあなたに届けと願いたもうて。


我が君、あなたは
私を愛したことが罪だとおっしゃる。
あなたの愛が、私の羽をもいでしもうたと思っておるのか。

いやいや、とんでもないことでございます。

私がこうして風となり、星々から降り注ぐ御光となり、
天から降り注がれる雨の一雫となったのは
一重にあなた様への思慕の念。

始まりも終わりもなき、この想いがあったから。

悠久の時に蝕まれ、確かに私はカタチを失ってしまったかもしれませぬ。
でも、カタチがなんだというのでしょうか。
カタチを脱いだ私は、今はこの天地すべての中に。

そして、あなたを抱きしめることができるのです。
カタチで触れ合うことは、もはや叶わぬ身であったとしても。


我が君、あなたは
あなた様のものではないお役目
その深く暗い穴に、
裏切られ、図られ、陥れられて
ひとりで落ちてしもうたと嘆いておられる。

落ちてしもうた自分のことを責め、
それが私たちを引き裂いたと思うておる。

しかし、我が君。
私は、そうとは思うておりませぬ。

天の大神さまは、間違いは犯しませぬゆえ。

混乱の中で、入れ替わり、すり替わり、
生まれついたお役目ではないお役目を
引き継いでしもうたことこそ、本来のお役目。

歪(ゆが)み、歪(ひず)み、醜く見えるこの定めのすべてが
あなた様に天の大神さまがお与えくださった定めであったと、
私はそう、思うております。

あるべきカタチ。
正しいカタチ。

天の大神さまの意図は、私めには分かりませぬが。

だから、あなた様は私に、なんの罪も犯してはおりませぬ。
引き裂かれることが定めであったのならば、
その定めの中で、ただ愛するのみ。

愛しい我が君。
私は恨んでなんぞ、おりませぬ。

時が満ち満ちまして、
あなた様がどんなお役目背負いましょうとも、
その業がどれほど深かろうとも、
私は、どこまでもついてゆきましょう。
その業ですら、ともに背負ってゆけば良い。


 - まぐわい


そうして男と女は、まぐわった。

女はすべてを知っていた。
女はすべてを受け入れていた。

その優しさに、男の中のナニカが溶ける。

まぐわい、溶け合い、男は鎖に繋がれたまま
起こるべくして起こる、陰陽和合、男女和合。

これこそ命の始まり。
永久の始まり。
この地のチカラ。

弥栄に、弥栄に。

鎖はそこにあるれども、
はや弥栄に、やれ弥栄に。


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