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スケジュール予備の計画・使い方

プロジェクトのスケジュールを検討する際、アクティビティを積み上げて完了までの道筋を立てますが、予備期間(バッファ)をあらかじめ見込んでおくことが重要です。なぜなら、プロジェクトはほとんどの場合、計画通り進まないからです。
PMPのベースであるPMBOKでは、”プロジェクト”を「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する、有期性のある業務」と定義しています。「独自」なものを実現するため、必ず定常業務には無いアクティビティが含まれます。つまり、スケジュールがずれるリスクがあり、多くの場合、何らかの計画変更を行いながら進んでいくというのがプロジェクトというものです。

予備に関するPMBOKの考え方

PMBOK第6版では、「予備設定分析」のなかで2種類のスケジュール予備について記載しています。
コンティンジェンシー予備
特定されたリスクに合わせて設定する予備です。(既知の未知に対する予備)
マネジメント予備(未知の未知)
全く想定していない理由でスケジュールが遅れることに対する予備です。プロジェクトのスケジュール表にも記載されず、プロジェクトメンバーに公開されません。

予備期間はどれくらい取ればよいか

予備期間を設定する際に気にしているポイントを以下に列挙しました。
(類似の内容もありますが、表現が変わると理解も変わると思いますのであえて記載)

リスク量に合わせて設定

PMBOKにも記載があるようにプロジェクトの変動リスクがあれば、その量に合わせて設定が必要です。期間の設定はどれくらい振れ幅があるかによります。振れ幅の予測がつかないのであれば、大きめに見積もっておいたほうが無難です。
リスクの大きさは、どれだけ精緻に検討して積み上げたスケジュールなのか、どれだけ知見・経験のある人が積み上げたのかによって変わります。

予め設定されているプロジェクトの完了目標を意識

プロジェクトの要件検討時に完了目標が設定されることが多いので、その期限内に収まるように予備期間を検討しますが、予備期間が取れないようであれば、予備期間を取れるようにオーナーとの調整を行います。もしくは各アクティビティの短縮を検討し、予備期間を捻出します。

設定した完了日がずれることのインパクト

設定したプロジェクトの完了期限が変動することで多くの人に悪影響を及ぼすのであれば、予備期間をしっかり確保する必要があります。逆に言えば、影響が少ないのであれば、予備期間を長く設定しなくても大丈夫です。オーナーとのすり合わせをしておくと良いと思います。

オーナーから見た納得感

プロジェクトマネージャーからすると、予備期間を長く設定したいところですが、オーナーは多くの場合、短い期間でプロジェクトが完了することを望んでいます。そのため予備期間には敏感です。どこまでならオーナーが納得できるかというのは意識しておいたほうが良いでしょう。

スケジュール予備期間(バッファ)の見せ方

アクティビティ毎に予備期間を設定するか、最後に設定するか。

アクティビティ毎に必要な予備期間を算出し、その合計を最後に見込む場合、予備期間を長く取りすぎのように見えるのがデメリットです。最短の完了予定が見えやすいというメリットもあります。

逆にアクティビティ毎に予備期間を設定すると、予備期間の根拠が見えやすいですが、最短の完了予定が見えないです。でも最短なんて見えなくていいと思います。多くの場合、最短で進むことなんてないので。

見せる予備と見せない予備

多くの場合、プロジェクトオーナー・発注者は短期間でプロジェクトを終わらせたいものです。そのため、予備期間はできるだけ短く設定するように要求してきます。これを考慮し、見せる予備と見せない予備を使い分けるのが良いと思います。
例えば、アクティビティ毎に設定した予備は、予備ではなく通常の作業期間として見せてしまうのも手です。

完了期限があり予備期間が取れない場合の対策

プロジェクトの初期計画段階から完了目標・完了期限が設定されていて、予備期間を見込くことが難しい状況はよくあると思います。このようなときには以下の検討を行います。

予備期間が持てるようにアクティビティの短縮、平行実施の検討

最初から予備期間を作るのを諦めるのではなく、まずはなんとか予備期間を設けられるように調整します。例えば以下のような方法です。
・作業の圧縮
・平行作業
・スコープの縮小
・予算追加
・人員追加
方法はありますが、無理やり詰め込んで予備期間を作ってもあまり意味がないので、どちらかといえばスコープ縮小、人員追加などを主に考えたいところです。

遅延リスクがあることを関係者と合意

どうしても予備期間を設けられない場合は、遅延リスクがあることを発注者・オーナーに説明し了承してもらいます。
合わせて遅延が発生した場合の対策を合意しておくことが望ましいです。
対策としては期限の延長、スコープ縮小、予算(人員)の追加などが考えられます。予算(人員)は、プロジェクトの後半で実施しても効果がでないので、プロジェクトの中盤くらいにチェックポイントを設けて判断する必要があります。

スケジュール予備期間(バッファ)の使い方

予備期間を設定して安心してはいけません。プロジェクト期間中はずっとこの予備期間の使いどころについて考えていく必要があります。

例えば、プロジェクトの初期段階で予備期間を使い果たしてしまうと、残りのプロジェクトを予備期間無しで進めることになります。そうなると予備期間が設定されていないのと一緒です。大事なのはいかに予備期間を使わずにプロジェクトを進めていくかです。

そのため、想定外の事態が発生してスケジュール遅延が発生したときは、作業の圧縮、平行作業、スコープの縮小、予算追加、人員追加といったリカバリー策を検討します。そのうえで予備期間を使うかどうかの判断となります。



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