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勝手に『親目線』になってくる大人達。【就活】【一人親】

私が父子家庭だと言うのを話すと、人々は皆こう言う。

「大変だったね」「お父さんは偉いね」
「お父さんに感謝しなさい」

その家庭事情を話すだけで、私は「可哀想な人」に一変する。そして、私の父に共感し出す。

明るいキャラでやっている私にとって、この「不幸」な家庭事情はギャップなんだと気付かされた。そして、私はあまり「これ」を人に言わなくなった。だって、私は特別なんかじゃない、「普通」の人だから。


ここでも書いたが、私にとって人生で親を最も意識しなくてはならなかったのが『就活』である。

私は就活の軸になる考えが、ひとり親で育った経験から生まれたものだったので、就活でそれを言わざるを得なかった。

それを言うと、周りの大人達は皆こう言った。


「地元に帰らないの?」と。


こう言われた私は、「親不孝」をしているひどい子供だと人から思われているのだ、と自覚した。

東京の大手企業ばかり受けていた私は、途中から地元の企業も受けるようになった。そして、地元本社の企業に内定を承諾した。

「一人親だからしょうがない」と自分を説得した。


しかし、就活を終え冬頃から、段々と違和感が生じ始めた。

私がなりたい自分は「親孝行」をしている自分なのだろうか?

老いていく親を目の前に、家を継ぎ、介護をし。

そんな自分が想像できなかった。

そして、「俺はいつ死ぬかわからない」と私に圧をかけてくる親自身に耐えられなくなった。

最後の一押しはこれだった。

「お前が東京の一流企業で働くなんて無理に決まってる」

私は実家を飛び出した。お正月、人もいない電車の中で一人泣いた。私はこの親に縛られて死にたくない。その決意のまま、地元の企業の内定を辞退することになった。


『女の子は親の近くで働け』
『一人っ子は親の面倒を見なくてはいけない』『一人親で人一倍苦労をかけさせたのだから、親孝行しなきゃいけない』

そんなのはこの令和の時代において、とても古風な考えだとはわかっている。

しかし、就活で面接をする側の人間は「古風」な人間なのだ。

この矛盾に縛られて、私はずっと苦しかった。

確かに私は子供を持ったことはない。人生経験も浅い。そんな人間に上から目線で物を言う理屈はわかる。

だが、子供目線側には誰が立ってくれるのだろう。


最近、『毒親』という単語を知った。

自己肯定感がない。人の顔色を伺いすぎる。これらが痛い程当てはまる自分がいた。


私は実家に帰るのが嫌だった。高校生の時までの暗い自分を思い出すからだ。

私の卒アルの時の写真は、今の私と同一人物とは思えない。黒縁メガネで暗い自分。

そして父の顔を見るのが嫌だった。この親から生まれた自分は親以上の人間にはなれないのだ、と見せつけられている気がした。

父は過干渉だった。成長期の私に下ネタも平気で言った。携帯のメールを勝手に見られた。友達との喧嘩を勝手にいじめだと勘違いし、学校に電話したこともあった。

実際、料理もスーパーのお惣菜やレトルト食品が多かった。仕事もよくサボっていたし、父が家にいることが返って嫌だった。よく家出未遂をし、飼っていた犬だけが私の理解者だった。


勿論、父子家庭でも料理が上手で、仕事を一生懸命頑張っている親もいるだろう。器用でなくても努力し、娘の意思を尊重し、子供から尊敬されている親もいるだろう。

だから、私は「父子家庭だから」苦労したのではなく、「この父と暮らしたから苦労した」ことは沢山あったと思っている。


就活を終え、周りの友人達を見ると「実家の近くから通える企業」に行った子がとても多かった。特に女子。

公務員や一般職。一生転勤しなくてもいい。一生家庭を大切にできる。未来には「安泰」という文字だけが広がっている。

私はその考えを理解できなかった。

しかし、周りの人間はそんな彼女達を褒めた。「親孝行だねぇ」と。


最近、私がOB訪問したOBが親目線でうるさく言ってくる。

「親と和解しなさい」「親が負担した学費や仕送りに感謝しなさい」

それはごもっともで、それをできない私は悪い子だと思う。

しかし、私はいい子になりたくてもなれないのだ、ということをわかってほしい。

周りの地元に就職する「いい子達」がとても羨ましいし、親と仲の「いい子達」に心底憧れている。


私の苦しみを唯一共有しているのが、中学の頃からの付き合いの親友一人だ。私の父とも面識がある。

彼女が言ってくれた。「あんな家には私でも帰りたくないよ。帰らなくていいよ」

その一言に救われた。


親の目線は親になったことのない私にはわからない。

しかし、大人達にも親が毒親である子供の目線がわからないんじゃないのか。


「一人親だから」と何故一括りにするのだろうか。

勿論、一人親で素晴らしい人もいる。

しかし、人はそれぞれで、努力している人もいれば努力していない人もいるのは同じだ。

こう言ってくる人達は一人親の経験があるのだろうか。また、一人親を持った子供になった経験があるのだろうか。

だから、歳をとったからって上から目線で物を言わないで欲しい。

テレビで流されているような感動のドキュメンタリーがどこでも同じだと思ったら大間違いなのだ。

面接官側の人間、親世代の大人達にこれをわかって欲しい。

「私の人生をわかっているような口を聞かないで」

これを私は心底伝えたい。






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