フレットの話(ギター/ベース)

修理屋として、私はまだまだ修行が足りませんが、少しでも文字に残してみなさんと共有したい、というライフワークもあって、今回はエレキギター、エレキベース(を中心とした)フレットの話をしたいと思います。


材質

実はフレットって奥が深くて、材質だけでも結構な種類があって、フレットを変えるだけでも微妙に音の感じが違ってきます。

ブラス

ブラスっていうのは、所謂真鍮とか黄銅とか言われるアレです。
他のフレット用の金属よりは柔らかいので、高音が削られて丸い音っぽくなります。
柔らかいということは、削られやすいということでもありますので、耐久性が他より少し劣りますし、錆びやすいという欠点があります。

ニッケルシルバー

これも実は大まかに言うと2種類あります。リペアショップによっては、紛らわしいので総てを扱わず、どれかを使うっていう店もあります。
Ni12%ニッケルシルバー
亜鉛配合率が比較的高い、柔らかめのニッケルシルバーです。日本製ギターやヴィンテージ系では良く使われるようです。
これも後述のものよりは錆びたり摩耗したりしやすく、ブラスほどではないにしろ丸い音になります。

Ni18%ニッケルシルバー
今一番一般的で、多く使われているもので、少し硬めのもの。別名ジャーマンシルバーともいわれるそうです。ある意味摩耗性や安定性と音のバランスが取れたタイプとも言えます。

ステンレス

これも大まかに2種類あって、これもリペアショップによってはどっちかだけ(だいたいが後者)、って店も多いです。
WARM
Ni18%ニッケルシルバーより少し柔らかいステンレス。
一般的には「ステンレス=硬い」というイメージですが、これはそうでもないそうです。

SPEEDY
一般的に「ステンレス」というとこれのイメージが強いです。
Ni18%よりも硬い金属。硬い分摩耗に強く、音もかなりエッジの効いた音になるそうです。

ちなみに、WARMとSPEEDYについてはFreedom社の製品定義ですし、ニッケルシルバーも各社で配合が違うものもある可能性があります、そうなるともう少し違うものもあるかもしれません。
一般的には、硬さはステンレス>ニッケルシルバー>ブラスで、値段もそれに準じると思っていいと思います。

太さと高さ

意外にリペアショップであまり言わない(こだわる店は結構こだわってますが)のがこの「太さ」と「高さ」。
だいたいが押さえやすい一般的な高さに仕上げてしまうので、我々がリペアショップに頼む場合はそこまで意識しないってのもあるとは思いますが、知っておくといいと思います。
高いほうが実は演奏性は上がり、硬い音になります。
※まあ高すぎてもそれはそれで問題なんですが・・・・
初心者の方はご存知ないでしょうし(私も知らなかった)教則本にも書かれてないことですが、指板に指が触れると音が変わってしまうことがあり、それで演奏性が下がることがあります(つまりフレットの弦を抑えるとき指板につくまでぐっと押さえなくて良い)。
太いほうが運指の際に指が引っかかりにくく、硬い音になりますが、逆に弦がビビりやすくなります。細い場合はその逆。
多少差はありこそすれ、フレットが極端に太い細いってギターはないとおもいますが、知識として知っておくといいと思います。

取付工法

一般的にはまっすぐにつけるのが普通ですが、実はフジゲン製に限って言うと「C.F.S.:サークルフレッティングシステム、別名アーチドフレット」になってます。
パッと見わかりませんが、わずかに水平方向に湾曲させてつけてあり、ギターを立てるとわずかにU字型になってます(でもよく目を凝らしてみたり、定規を当ててみないとわからないレベルですけど・・・)。
これはフジゲン独特のもので、総ての弦がフレットと完全に直交する、かつブリッジからの弦の距離がほぼ同じになるようになってます。
こうすることで、スペック上のスケール値と実際のスケール値を同じにし、チューニングがやりやすく、音のヌケ、立ち上がりを改善し、サスティーンも豊かにするという利点があります。無論材質は一般的なものとまったく同じです。
私がフジゲン製をおすすめする理由の1つがこのC.F.S.なんです。

また、フレットを切ってそのまま入れるのではなく、指板に埋め込む部分をわずかに切って入れてるものも多くあります。

工賃

実は別のnoteにも書きましたが、フレット周りの工賃って結構高いです。
削ったりして調整するだけでも万は行きます。打ち替えなんてすると数万飛びます。それにさらに高いステンレスフレットなんて使おうもんなら・・・
っていう感じですね😅
中古の委託販売併設(だいたいリペアだけでやってる店ってそんなになくて、中古やアウトレット、サプライ品を併売してる店が多いです)をやってるところだと、安物ギターを持ち込むと、悪いこと言わないから買い替えたら?って言われるところもあるほど。もっとも、そのギターを下取ってくれるならまだしも、それがPlaytechの「超安物」だったりするとほぼ捨て値とか買い取れないとか言われたりしますけどね😨
とはいえ、1本のギターやベースと長く付き合ってると、フレット周りの作業は避けて通れない話にもなってきますので、それも理解しておく必要があると思います。

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