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日本酒初心者にやさしくありたい。

友人と「常時日本酒が数十種類あります」というような、地酒を売りにしている居酒屋へ行くことがある。
ずらりと銘柄が並んだ日本酒リストを見ると、私はテンションが上がるが、日本酒をそれほど飲まない友人は、私に「任せるわ」と言う。長く付き合いのある友人であれば、だいたい好みは把握しているので、「じゃあ、これにする?」と間違いないものを選んであげる。

しかし、私と一緒なら選んでもらうことができるが、自分だけだったら「知っている銘柄」を探すのがやっとで、「そんなリストは面倒なだけだ」と言うのを聞いて、そうか、こういうお店は初心者にはやさしくないんだな、と思った。

「こんなのが飲みたいってお店の人に言ってみたら?」とアドバイスすると、「それがまた困る。どんなタイプがいいですか?って聞かれても、なんて言っていいかわからないもん」と言う。
なるほど。メニューの中に銘柄だけでなく、「フルーティ」「スッキリ辛口」などのタイプが書かれていれば、まだ目安になるらしいが、「純米吟醸」「中汲み」「雄町」「日本酒度+2」などと書かれていても、何のことだかさっぱりわからないという。

確かに私もワインのことは、ワインに詳しい友人に鍛えてもらうまで、「カベルネ・ソーヴィニヨン」や「ピノノワール」などが、ブドウの品種なのか、産地なのか、ブランド名なのか、それすらわからずにいたことを思い出した。
「山田錦っておいしいの?」と聞かれると、「え?」と思ってしまうが、私も昔、「シラーっておいしいの?」と聞いたことがあるから、ワイン好きの人はさぞかし困ったことだろう。

最近、地酒を扱う飲食店が増えたことはうれしいのだが、「普段、日本酒を飲まない人は、たくさんメニューにあっても自分からは飲まないよ」と友人に言われて、ちょっとショックを受けた。その理由が「勧められて飲んだら美味しいけど、よくわからないから」ということにも。

今、日本酒業界の深刻な課題は、「1飲む人の量を、3や4に増やす」ことよりも、まずは「0杯を1杯に」だと言われている。
もう何年も前から「日本酒で乾杯条例」や飲み比べイベント等、全国でいろんな活動が行われているけれど、地酒がこれだけ一般に普及してきたスピードに対して、初心者へのアクションはかなり遅れていると感じる。

「どんなタイプがいいですか?」という聞き方も、確かに答えるのは私でも難しいなと思う。たとえ、私がイメージしている味わいを明確に伝えられたとしても、その店の人の感じ方とは違うかもしれないからだ。
いわゆる「辛口」と言われるお酒でも、人によっては「これが辛口?」と思う人もいるのだ。

お店には「初心者へのわかりやすいメニュー」があるといいなと思うし、「自分で選んでみよう」と思ってもらえるような“仕掛け”も必要な気がする。それが何なのか、どういうものなのかわからないので、一時期私は勉強のために、ワインの品揃えが豊富なお店に通うようにしていた。
そうすると、初めて「日本酒初心者」の気持ちがわかってきたのだ。
あまりに専門的な店だと、場違いなのではないかと、入るのすらためらってしまう。いざ勇気を出して入り、メニューを見ても選ぶ基準がわからない。店員に尋ねたいが、「何を質問したらいいのか」すらわからない。
日本酒専門店では偉そうに人にまで選んであげているのに、ワインになるとさっぱりだ。そして、やはりワインをよく知る友人といる時は、彼女に選んでもらうことが多いことにも気がついた。

これは飲食店だけでなく、酒販店でも同様だ。家で飲むワインを選ぼうと思っても、なかなかその1本が見つけられない。結局、裏ラベルや店頭POPに書いてあること(それも、肉に合う!とか。人気No.1とか、その程度のもの)と、予算(値段)で決めてしまう。
そして、おいしかったと思っても、何一つ覚えていられない。次に店に行っても「あれ、なんだっけな」状態だ。
日本酒初心者の人も、きっとこんな気持ちなんだろうなと痛感した。

もっとハードルを下げて、もっとわかりやすく、親しみやすくしなければ、「0杯を1杯に」は難しいだろう。「日本酒好きな人が集まる店」ではなく、「日本酒に興味がない人も行きたい店」にしなければ、日本酒人口は増えない。
と言いながら、何のアイデアも浮かばないので(笑)、日本酒初心者の人の意見が聞けたらいいのだけど。

ただ、このnoteを始めて、ここでたまに日本酒のことを書いた時、とても反応が良かったことは嬉しかった。

↑この記事で「みむろ杉 Dio Abita」が好きだと書いたら、4~5人のnoterさんが買ってくださったのだ。ありがたかったし、「伝えること」で人を動かすことができるのだとも知った。
だから、ここで日本酒の素晴らしさを伝えることで、少しでも日本酒人口の裾野を広げる活動をしていきたいと思っている。
それは本当に小さな小さな活動だけど、一人でもいいから日本酒に興味を持ってくれて、家の冷蔵庫に1本でいいから日本酒が入るようになってくれたら、こんなにうれしいことはない。

※写真は新潟で購入したお酒たち


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