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【ガンはメッセンジャー 5】私の中で確かにガンが光っていた。

ガン宣告を受けた後、PET検査を受けることになった。PET検査というのは、ガン細胞が他の細胞より何倍もブドウ糖を取り込む性質を利用したもので、「ごく微量の放射線を発するブドウ糖の検査薬」を体内に入れ、装置で撮影する。画像にはガン細胞だけが光って写るのだ。

メリットは、一度で全身のガン検査ができること。人間ドックなどでも自費で受けることができるが、10万円くらいするので、経験した人はほとんどいないと思う。ガンと診断されたら保険がきくので、転移を見つけるのに利用することが多いようだ。

病院の中のPET検査専用の場所へ行くと、カーテンで仕切られた個室のようなところへ案内される。中に入ると、ロッカーとリクライニングソファ。まるでリラクゼーションでも受けにきたみたいだ。そこで検査着に着替え、いったん部屋を出て問診と点滴を受ける。この点滴の中に例の光るブドウ糖が入っている。

点滴が終わったら、また個室に戻り、ソファでゆっくりする。体中にこの検査薬を行き渡らせるため、とにかく「じっとしておくように」としつこく言われる。本を読んだりスマホを見たりするのもダメ。何もせずに動かずに、ただひたすらじーっとしていなければならないのだ。

隣の部屋から人の気配がする。他の部屋でも同じようにじっとしている人たちがいるんだなぁと思う。みんな確実に「ガンと診断された人」だ。何か“同志”のような気分にもなる。一体どんな気持ちでここに座っているんだろう……。

1時間くらいして名前を呼ばれると撮影部屋に移動し、そこで撮影。装置はMRIとかCTみたいなものだ。全身を撮影するので少し時間は長い。20分くらいだったか。でも、それで終わり。なんということもなかった。

撮影中、「光るな!どこも光って写るな!」と念じていた。転移はもちろんだが、まだ自分がガンだということを受け入れられていなかった。どこかで間違いじゃないのかという気持ちでいたのだ。レディースクリニックでもらった薬の服用をやめたからなのか、なぜかあの腹痛もなくなっていたし、まったくの無症状。だから、何かの間違いであってほしいと願いながら、検査結果の日を待った。

結果を聞く日、今度は夫もついてきた。私も拒むことはなかった。診察室に入るとすぐに「この間のPET検査の画像です」と主治医に画像を見せられ、ギョッとした。本当に下腹部が光っていたからだ。不自然なほどはっきりと、そこだけが丸く光っている。もうこの事実を受け止めるしかなかった。

これが、私のガンなんだ……。

転移はなかったが、診断は子宮内膜にできる初期の子宮体ガン(おそらくステージは1a)だった。1aというのは、ガンが子宮体部のみにしか認められず、浸潤が子宮筋層の1/2未満のものを指す。簡単にいえば、深くも広くもない、小さなごく初期のガンだということ。

それにはホッとしたが、今後の治療法について主治医が説明するのを聞き、愕然とした。1aであっても「子宮全摘出+卵巣・卵管全摘出+骨盤のリンパ節切除」が「標準治療」だというのだ。

痛くて死にそう、何とかしてほしいという状況なら、まだ仕方ないと思えるかもしれないが、誤診なのではないかと疑ってしまうほど元気な私。だから、すぐに「あ、それが標準治療ですか。ではよろしく、切っちゃってください~」というわけにはいかなかった。

医学は進んでいる。摘出だ切除だとそんな野蛮な方法をとらなくても、薬や何かで小さくするとか抑えるとか、方法があるんじゃないの?そう思って主治医に聞いてみたが、手術以外の選択肢(ホルモン治療)があるのは、「妊娠を希望する39歳まで」の人だけとのこと。既に年齢オーバーかつ子供を生む可能性のない私には、選択の余地などないのだった。

それでもまだ手術の同意書を書かない私に、主治医はとても冷静に説明をしてくれたし、こうも言ってくれた。

「手術をするにしても、たぶん4月になると思います。まだ1ヶ月以上あるので、その間にこの病気について、しっかり勉強してみてください。セカンドオピニオンが必要であれば、それも全くかまいませんので」

言われた通り、私は子宮体ガンについて調べまくった。だけど、調べれば調べるほど、「手術するしかない」ということがわかっていくのだった。

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連載【ガンはメッセンジャー】について
2016年にガンになり、手術と抗がん剤治療3クールを経て根治した。……と思ったら、3年後の2019年に再発。もう「根治」の可能性はなく「延命治療」しかできないと言われ、それから抗がん剤治療を9クール受けた。そして今は何も治療をせずに1年以上経つ。よく「闘病記」や「治った」人の話は聞くけれど、私はまだガンが骨盤リンパ節や腹膜に散らばっている。ステージ4だ。定期検診は受けているが、治療は一切していない。仕事もするし、お酒も飲むし、キャンプもするし、痛みなどもない。この奇跡の話をこれから少しずつ書いていこうと思う。日本人の二人に一人が生涯でガンになると言われている時代。<治療法>ではなく、私のような新しい<ガンとの付き合い方>が、ご自身や周りの人の参考になれば、うれしいです。

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