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大成功!おもてなしキャンプ

※この記事は今のように寒くなる少し前、10月の出来事を書きました。


私には3つ年上の姉がいる。
性格も生き方も真逆と言っていいほど似ていない。
仲は悪くはないが、特別良くもない。
会える距離に住んでいるが、会うのは年に1、2回。
たまに姉妹でしょっちゅう出かけたり電話をしたり、という人の話を聞くと「仲がいいんだなぁ」と思うが、私たちは嫌い合っているわけでもケンカをしているわけでもない。

確かに子どもの頃や若い頃は「いがみ合っている」ような時期もあったし、目に見えるケンカもしたが、今はそういうこともなくなった。でもこれは、仲がよくなったというよりは、「お互いに歳をとって丸くなった」ということなのだろう(ケンカするほどの気力がない)。
今はたまにLINEで近況報告もするし、この夏には十数年ぶりに2人でお出かけもした。(そして、奇跡的にケンカをせずに帰ってきた!)
この間、その姉が「キャンプに行ってみたい」と言い出した。私がキャンプの話ばかりするので興味を持ったらしい。さらに、おいしそうなキャンプ飯の写真を見せたことで姉の欲望に火がついた。「食べてみたい」と言う。

姉ファミリーはシンガポールに3年住んでいたことがあり、そのマンションの下にはプールやバーベキュー場もついていた。遊びに行った時、私は「いいなぁ。いつでもバーベキューできるやん!」と興奮したが、姉は「あぁ、でも私は使わへんし。バーベキュー嫌いやから」と言っていたことを思い出した。
「でも、バーベキューとか、外でご飯食べるの大嫌いって言ってなかった?」
私が聞くと、
「うん。前にやった時おいしくなかったから。でもそれは素人がやったからやと思うねんなー。キャンプのプロ(←私のことらしい)にやってもらったら、おいしいと思うし、それを経験してみたいねん」
と言う。

姉は食に対する情熱がすごい。私もまあまあ食道楽を気取って生きてきたほうだが、その比ではない。「おいしいものが好き」という次元を超えていて、「食べたことがないものはすべて食べつくしたい」という欲望に近いものがあるのだ。食に対する好奇心が強いというのか、筋金入りの食いしん坊というやつだ。子どもの頃から、たとえばいろんなクッキーの入った詰め合わせの箱をもらったとすると、「好きなもの」を食べるのではなく「全種類制覇すること」にこだわった。自分と違うものを注文した人がいると「一口ちょうだい」と言うタイプの人だ。なんなら一口もらうために、一緒にいる相手に自分と違うものを注文させることもある。

ちなみに甘いものが大好きで、自分の舌を満足させるために腕を磨き、今やスイーツ作りはプロ並みの腕前だ。
どれくらいの腕前か、姉が自分の記録のために細々とやっているインスタの写真をちょっと抜粋して紹介させてもらおう。完全に趣味の領域を出ているのがわかってもらえると思う。

姉のインスタより
3日に一度は作っている
見た目だけじゃなく、マジでうまい
毎日おやつを食べるから、
コレステロール値爆上がりらしい(笑)

さて、そんな姉の「キャンプに行きたい」という申し出に一瞬戸惑ったが、私が入院していた時には毎回お見舞いに来てくれるなどお世話になったことも思い出し、せっかくキャンプ(飯?)に興味を持ってくれたのだから、これはぜひ経験をしてもらおうと思った。夫に相談すると、夫も賛成してくれた。
ただ、不安があった。キャンプ飯は頑張れば満足してもらえるだろうが、本当に姉がテントで寝ることなどできるのだろうか。私と違って、人生においてワイルドな貧乏旅行などしたことがない人だ。「外でご飯食べるのもイヤ」と言っていた人が、外で寝泊まりするって……できる?

そこで念のため「本当にテントで眠れる?コテージのあるキャンプ場を予約して、姉ちゃんたちは寝るときはコテージにする?」と聞いた。冷暖房も完備のベッドのあるコテージならなんとか泊まれるだろう。
しかし、姉は予想に反して「う~ん、頑張ってみるわ。テントで寝る」と言うのだ。「一回テントで寝てみたい」と完全に好奇心が勝っている。
そこまで言うならと、ちょうど新しいテントを買ったところだったので、新しいほうに寝てもらうことにした。
テントだけでなく、シュラフも暖かいきれいなほうを貸して、自分は穴のあいた古いシュラフで寝ればいい。
とにかく満足してほしかった。せっかくキャンプに興味を持ってくれたのだ。どうせなら「キャンプって楽しい!」「また来たい!」と思って帰ってもらいたいではないか。

これは「おもてなしキャンプ」だ。
招待するのは、姉とお義兄さん。(ちなみにお義兄さんは私の夫と同じように、「主成分は優しさ」というような人だ。いつも静かにそこにいる)

「絶対成功させるぞ!」
「おー!」
というわけで、夫と二人ではりきって準備を始めた。
それが10月半ばの出来事。

まずは普段なら選ばないような高規格キャンプ場を探した。それも姉が住んでいる滋賀県がいいだろうと思い、滋賀県内に限定。
結果、予約したのは「家族旅行村 ビラデスト今津」というキャンプ場。

その中でも1サイト内に車2台、テント2張りできるという広いオートサイトを見つけ、そこにした。電源はもちろん、なんとシンクのある水道洋式水洗トイレまでサイトについている!(トイレはお隣と共有。つまり2サイトで1つのトイレを使用)敷地内にそんなに広くはないがお風呂まである。もうこれ以上、キャンプ初心者に適したキャンプ場はないだろう。これで無理ならその人はキャンプなどしないほうがいい。

次に食材の準備だ。超わがままグルメ&食道楽&食べることへの執着心が強い姉を満足させるものを作らなければならない。
夫とあれこれ相談した結果、次のようなメニューに決まった。
・きのこのペンネグラタン
・カマンベールチーズのアヒージョ(手作りフォカッチャ付き)
・カツオの藁たたき
・神戸牛と佐賀牛の食べ比べ
・名古屋コーチンの炭火焼き(もも・せせり)
・貝殻付きホタテのバター醤油焼き
・太いアスパラ丸ごと焼き
・鳴門金時の焼き芋
・朝食はホットサンド2種(キーマカレー&チーズ、ハムチーズ)

これ、キャンプ飯ですか?(笑)
思わずそう聞きたくなるような充実した内容だが、これでもまだ満足してもらえるか心配だった。あとは段取りと焼き加減だ。当日がんばるしかない。

そして、当日。
なんと、天気予報は「夕方から雨」と告げている。それもかなりの大雨が翌朝まで続くとのこと。
初めてのキャンプで「雨の設営・撤収」ほどつらいものはなく、これを経験するとほとんどの人が間違いなくキャンプを嫌いになってしまうと思うので、延期にするかどうか悩んだ。
姉とギリギリまでやりとりした結果、とりあえず夕方まではなんとか天気は持ちそうなので、姉夫婦はデイキャンプにして夕方帰り、テントに泊まるのは私たちだけ、ということで落ち着いた。

13時にキャンプ場で待ち合わせ、指定のサイトへ行ってみると、思っていた以上に広い。テント2張りどころか、5張りくらいできそうだった。
私たちは泊まるので、とりあえずテントの設営を姉夫婦に体験してもらった。ベルテントなので設営は簡単だから、初心者でもすぐ立てられる。

新しいテント、Ogawaのグロッケ!
タープもセットにしたので、カッコよく張れる!
きのこ型の建物が
各サイトにある水道とトイレ

テントの中にコットとシュラフも設置し、「寝たらこんな感じだよ」とシュラフ体験もしてもらった。
「うん、あったかい。これなら寝れそう」と姉もニコニコしている。
それから、ファイヤースターターを使って火起こし。これは少し手こずっていたが、最終的には火もつき、満足気だった。
夫は手早く炭をおこし、私はフォカッチャのたねをこねる。姉にはペンネグラタンの具材を切るなど手伝ってもらった。

よく作るので味は間違いない
みんな大好きペンネグラタン
フォカッチャ
カマンベールチーズのアヒージョ
神戸牛
ホタテ
カツオの藁たたき
無農薬の藁で燻す
出来上がりはこんな感じ

残念ながら、フォカッチャは発酵に失敗して硬くなってしまったが、「これはこれでビスコッティみたいでおいしいよ」と姉は気をつかってパクパク食べてくれた。

写真にはないが、他にもいろいろ焼いたのだが、とにかく姉夫婦はよく食べる!
うちと違って二人ともお酒をまったく飲まないうえ、姉は「おかずは白ごはんがないと食べられない」という人なので、最初からメスティンで白ごはんも炊いてあげていたら、案の定、よく食べていた。

神戸牛と佐賀牛の食べ比べも喜んでくれたが、意外に感動していたのが名古屋コーチンの焼き鳥だった。
お酒を飲まないから「焼き鳥屋」というところへ行くことがないので、「鶏を炭火で焼く旨さ」をこれまで知らなかったのだ。最初は「鶏もあるから焼く?」と聞いても「鶏か~」と、あまり惹かれていないようだったが(それでも断ることはない!)、一口食べて目の色が変わった。
「何これ?鶏ってこんなおいしいの?」
そう言ってどんどん口に運んでいた。感動してくれてうれしかった。

また、カツオの藁たたきも、キャンプ場ならではの料理なので、夫が藁で燻すのを見ながら動画をまわし、きゃあきゃあ言って喜んでいた。
思わず目を合わせ、うなずく私と夫。(よしっ!)

そうして楽しい時間は過ぎ、とにかくずーっと食べ続けていたが、早めの焚き火をして、お茶を飲みながらまったりしていたところでポツポツ雨が降り出した。慌てて片付け、姉たちは満足げに「ありがとう~!楽しかった~!」と繰り返して帰っていった。

テントの中に入り、夫と二人きりになるとホッとした。やり切った感というか、達成感というか、肩の荷が下りたというか……。
思っていたより雨が降るのが遅かったので、とりあえず焚き火まですべて完了できたこともよかったし、何より二人が満足そうだったことが嬉しかった。私たちも大満足だ。

「おもてなしキャンプ、大・成・功~!」
「いえーーーい!」

ハイタッチする私たち。

その後、一晩中雨は降り続いたが、翌朝はきれいに晴れた。
本当は作ってあげるはずだったホットサンドを焼いて食べた。

キャンプの朝ごはんの定番

姉からうれしそうなLINEが届いていた。
とにかくすべてがおいしく、初めての経験もたくさんあって、彼女の食欲と好奇心はかなり満たされたようだった。
次は天気のよい日にテント泊も経験してもらおう。暑いのと寒いのはダメだから、次の春がいいだろう。
夫と二人のキャンプもいいが、こんなふうに大勢でワイワイやるキャンプもまた楽しいものだな。

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