推し絵師さんに有償依頼しよう!ボイロ動画に使う立ち絵の制作資料の作り方
趣味で動画を投稿していても、やっぱりオリジナリティのある立ち絵って憧れますよね。
ソフトウェアトークの界隈は無料で利用できるクオリティの高い立ち絵もたくさん公開されていますが、世は合成音声キャラ戦国時代。気に入ったキャラクターの絵柄がなかなかない。
そういうときに、以前より絵師さんへの依頼を考える機会が増えたのかなと思っています。
かくいう私は今でも立ち絵依頼を続けています。
ここ最近ではいつもお世話になっている絵師さんにVOICEROID(A.I.VOICE)のキャラクターである「紲星 あかり」の立ち絵を描いて頂きました。
こちらは動画で使った一場面ですが、かわいい系とコミカルな表情に加えていろんなポーズも取れるため動かしていてとても楽しいです。
ということで、立ち絵やイラストを依頼する際にはいつも必ず制作資料をまとめるようにしているのですが、ひょんなキッカケでその資料を内々に見せると、たいてい驚かれるんですよね。
そういうこともあり、立ち絵の依頼を考える方の参考にもなるかもしれないな、と今回は私なりの依頼資料のまとめ方について書いていこうと思います。案外こういう資料の作り方ってまとまってませんしね。
とりあえず最初に大事なことをいっておくと、絶対ガイドラインは確認しろ、です。
過去記事はこちら。
ガイドラインの確認について
有償の依頼がキャラクターの利用規約に抵触しないか。当たり前ですが一番大事です。
VOICEROIDなどの二次創作にあたるキャラクターの有償依頼は利用規約に抵触しないか公式サイトから最新の情報を必ず確認してください。
例えばA.I.VOICE2で商品展開されていても、結月ゆかりと紲星あかり、琴葉茜・葵はそれぞれ版権元が異なります。
結月ゆかり・紲星あかりのキャラクター使用ガイドライン(VOCALOMAKETS/株式会社バンピーファクトリー)
琴葉茜・葵のキャラクター使用ガイドライン(株式会社エーアイ)
結月ゆかり・紲星あかりに関しては、ガイドライン内でQ&Aが書かれており、問題ないことが確認できます。(2024/03/09現在)
これらの版権元の確認を行わず「誰かが有償依頼をしていた」から、という意思判断は危険です。
その人が規約を遵守しているかは判別がつきませんし、利用規約がその当時から書き換わっている可能性があります。
依頼を受ける絵師様は依頼してくれる方を信用せざるを得ませんし、依頼側はそのことの重要さをきちんと認識する必要があります。
(奇しくも紲星あかり関係で悲しい騒動が最近ありましたしね……)
補足:絵師さんへの依頼の出し方
これに関してはnote内でわかりやすくまとめている方が何名かいらっしゃるのでそちらに倣っていただいた方が良さそうです。
使用範囲、商用利用の有無、納品形式、納期、予算などを資料をお渡しする前か同時に予めお伝えしておくとスムーズです。
akAgi様
セブグラ雑記様
資料を作る前のイメージ作り
前回の記事でも流れは書きましたが、依頼資料を作る前の流れとしてはこんなかんじです。
依頼するキャラクターの利用規約やガイドラインの確認・URLメモ
ぼんやりキャライメージを固めたりイメージに近い立ち絵を探す (一番長い)
絵師さんにお仕事の予定を確認する (2.と並行する)
立ち絵を触りながら表情やポーズ差分予定をメモ
資料をばーっと作る (4.と並行。一番短い)
じつは今回のお題目である依頼資料制作にかける時間は比較的短めです。
それよりは依頼するキャラクターのイメージや動画にしたときの画面イメージを頭で想像する時間が長いです。イメージがあいまいだとあとから「差分が足りなかった」「もっと描いてもらえばよかった」みたいになりますからね。完成イメージを頭に叩き込んでおきます。
依頼させていただいた私が想像する紲星あかりはこんなイメージでした。
人懐っこく寂しがり屋
他人との距離感が近めで憎まれにくいタイプ
表情や感情が良く変わり身振り手振りで感情表現をする
犬で例えるならゴールデンレトリバーです。
もふもふしてて人懐っこくてかわいいですよね。だいたいあってると思います。
なお立ち絵を頂いてから、このあと1ヶ月くらい性格や内面設定を考えて動画化が遅れました。判断が遅い。
制作資料を作る目的
そもそも資料を作る目的ですが、自分のイメージをしっかりと伝えて絵師さんが作業に専念できる時間を増やす、というのが大きいです。
あいまいなイメージで進めてしまうと、ラフを何度も描き直しさせてしまったり、何度も確認が必要になったりといった事態を招いてしまいます。
そういう実際のお仕事に関わる以外のことで時間を使わせてしまうことは忍びないですし、なるべく最初に情報を詰め込むようにしましょう。
また、資料に規約や衣装の設定が記載されていれば改めて調べに行く手間も減ります。できることは極力入れておくつもりで。
資料作成に使うツール
なんでもいいと思います。 私は画像を載せたいのと、金額の計算が必要になるのと、使い慣れていることもあってExcelを使っていました。
あとで取り上げますが、差分数の計算などを間違って算出してしまうと依頼料の計算に影響が出てしまうため、そのあたりは計算ができるツールを併用して検算したいですね。
今だと無料で使えるGoogleドキュメントあたりが画像も入れられるので資料作りには使いやすいですかね。が、最終的に資料としてお渡しできれば形式はなんでも良いでしょう。
お渡しするときにはJPGやPNGといった画像に変換したり、PDFにしたり、公開設定にしてURLを共有したり、特定のツールでなければ閲覧できない状況を避けましょう。
でもいまだにExcelを使ってしまうのは呪いのように身体に染みついてるせいです。
有償依頼って高いんでしょ?
この疑念もよく見かけるので先にお答えしておきます。あくまで私のケースですが。
これは本当に依頼する内容に依ります。こだわりを詰めまくると絵師さんの労力が増えますから高くなるのは必然です。
もちろん有償なのでそれなりにお金は必要ですが、たまに見かける1つの立ち絵に10万円かかるとかは相当高い部類です。それなら3人分くらい依頼するよ
試しに計算してみましょう。
一枚の素体が15000円、表情1差分+1000円、ポーズ1差分+2500円と仮定し、5表情差分、4ポーズ差分で算出してみます。
15,000+1,000×5+2,500×4=30,000
となります。10万円あれば3人分依頼できますね。先ほどよりは現実的な額に見えるのではないでしょうか。
ちなみに先ほどの差分内容でもし衣装差分を一つ増やした場合、+1衣装差分追加で素体2差分とカウントすると
(15,000×2)+1,000×5+(2,500×4×2)=55,000
となり、5万5千円です。まぁまぁの額になりますね。
表情は衣装が替わっても流用できますが、ポーズは衣装差分ごとに描き直しが発生します。服のシワとかも変化しますからね。
予算は最初に絵師さんに相談しておきましょう。お金は無尽蔵ではありませんからね。
私のケースでは衣装差分はなし、表情とポーズはよく使うものを吟味して、といった形で現実的な範囲に収まるように調整してます。衝動との戦い。
依頼するキャラクターの特徴や設定
ここからは実際に作成した資料の画像を載せながら補足をしていきます。
以下は資料の全体像です。
依頼の概要
キャラクターの説明
利用目的や用途
権利確認・キャラクターガイドラインの引用
納品形式
画像の形式やファイルサイズ
動画編集ソフトで扱いやすくするためのレイヤー構成の指定
参考資料・公式設定
依頼キャラクターの情報
年齢、目、髪型、アクセサリーや希望の雰囲気など
表情・ポーズ差分の指定表
差分数をもとに計算した料金表
依頼の概要
依頼するキャラクターの概要、頂いた立ち絵の用途を明記します。たぶん何度か同じことをいうと思いますが、私が作る依頼資料は「キャラクターを知らない人が分かる」ことを目標にして作るようにしています。
「知らない人向けに作る」というのは前回から変わってませんね。資料を作る際には「どういった目的で」「どんな人が」読むかを最初に仮定して作るとまとめやすくなります。
キャラ設定
キャラクターによっては衣装がいくつかあるため、どの衣装を描いて頂くかは明確にします。
今回の紲星あかりを例にすると画像の衣装に加え、A.I.VOICE版の衣装もありますね。
私は使い分けに悩んでしまいそうなので衣装差分はなしで1パターンのみをピックアップします。
悩みに悩んで今回は初期衣装に決めました。厚着のダボッとしているのが好きなんですよね。
依頼中にA.I.VOICE2版の衣装も増えてましたが、さすがにここでは触れてません。
用途
どういった用途に使用するか、といった説明です。
ゲーム実況動画での立ち絵としての使用をメインに、またはこのブログのサムネイルなどにも使用させていただいていますが、何度目かの依頼なため割愛しています。
ここでは普段の動画の一場面を貼るといいでしょうね。どれくらい画面に映るか、ポーズ差分の身振りの判断基準にもなりそうなので。
キャラクターの利用規約・権利確認
『はじめに』でも先述しましたが、利用規約の確認は必ず最新の物を当たるようにしてください。「キャラクター名 ガイドライン」などで検索すれば出てくると思います。
VOICEROIDなどの公式設定があるキャラクターの有償依頼は判断基準があいまいなところがあります。
紲星あかりであればQ&Aの想定ケースに入っていたため確認はスムーズでした。念のため確認しやすいよう、引用文とリンクを添えておきます。
該当ケースが見当たらない場合
念のため、公式にお問い合わせを送ります。
過去ARIA ON THE PLANETSのIA、OИEの立ち絵を依頼した際は絵師さんと版元の1stPLACE様に確認し「個人間での創作活動に関して発生する金銭授受については」問題ないとの返答を頂きましたので依頼に進みました。
当時依頼させて頂いたIAの立ち絵はこんな感じです。髪のふんわり感にとても細かい注文を付けた覚えがあります
つけてました。
納品内容の詳細
最終的な納品形式をここにまとめます。
顔のパーツ分けを行うため、表情1パターンは目・眉・口1個ずつで1パターンとしてカウント頂くようにしています。(割り切れない場合は別算出)
最終的にはYMM4上で動作するように、PSDToolを使用した動く立ち絵形式を想定して詳細を書いています。
※動く立ち絵の方式や加工の仕方は以下から。
なお、今回の紲星あかりのイメージとして「ころころと表情が変わり両腕も使って感情表現する」というイメージがありました。
しかし両腕を使った差分を増やすとすさまじいパターン数になってしまうことは目に見えていますね。
このまま依頼すると大変ですし(お財布も大変なことになる)、差分数の多い立ち絵で見かける形式である右腕と左腕で分けて描いて頂き、それを個々のパーツとして組み合わせて使用する方式でお願いすることにしました。
また、私が使用する動画編集ツールであるゆっくりムービーメーカー4(YMM4)の動く立ち絵で再現させるには、右腕は「後」パーツ、左腕+体は「体」パーツとして表示させればこの両腕の組み合わせを再現できます。
この動く立ち絵に置き換えることを想定しているので、完成形の形式はPSD、想定レイヤー構成も記載しておきます。完成時のサイズは想像しづらいですが、顔のアップなどを行う際に解像度が低いと粗くなってしまうため大きめに描いていただくほうが良いです。
私の場合は2000×3000:96dpiで制作いただいています。
衣装の参考資料
画像とリンクを載せておけば絵師さんが確認する手間が省けるので載せてます。規約の時と同じですね。あとは文字で補足。この体型で15歳ってどうなってるんだろうなって思いながら
キャラクターシート
前の記事でもあったテンプレート内容です。
ちょっと困ったのが銀髪の色指定です。
銀髪は無彩色なので描こうとすると白色か灰色になります。
一番明るくなるハイライトは白色に近くなりますから、白色に近い銀髪に近づけるほど影のコントラストがつきにくくなって髪の中で明暗が分かりづらくなります。
銀髪系の色見本はこちらを参考にしました。
ここを見ていて明暗が出た方が髪の印象は大きくなりそうだなー、と考えて灰色寄りのホワイトシルバー寄りにしてもらうことにしました。
また、三つ編み部分は絵的な見映えを優先してすこし横に広げてもらう方針で。毎回髪部分に細かい注文付けている気がします。
左右非対称となる髪留め部分は別に描いていただいて、反転したときにも対応できるように。
公式設定のイラストではVOCALOID時の設定になるためヘッドセットマイクを付けていますが、これは省いていただます。
向き、ポーズでは直立よりもすこし女の子らしい立ち姿をイメージし、ピンと反った立ち姿を想像していたので書きました。
以前描いて頂いたキャラクターの身長を引用して身長のイメージができるように書いています。
希望の雰囲気ではキャラクターの性格などの内面的な設定を書いておきます。喜怒哀楽が豊かで身振り手振りを使って感情表現をする人懐っこい後輩のようなイメージ。
絵には直接関係しませんが、内面の要素も書くことでイメージできる情報量が増えるのでより表情などに反映させやすくなると思います。
表情・ポーズ差分
表情差分とポーズ差分をまとめた表です。動画編集ソフト上で参考イメージを作成しています。
参考イメージは同キャラクターにこだわる必要はなく、イメージができればどんなキャラクターでも良いです。
表情差分
今回は合計43パーツ(被りなし)になるため、これを3で割って14表情+1パーツという形で差分代を計算しています。
1表情は3パーツとしてカウントという内容でいつも進めさせて頂いているのですが、1つの表情でも違うパーツが流用できるため、「表情パターン数×3」で差分数を割り出せるわけではありません。
スプレッドシートなら重複したもの省いて出力するUNIQUE関数が使えるのでこんなかんじで確認できます。
=counta(unique(セル範囲))
私が使っているExcelのバージョンではUNIQUE関数が使えないのでスプレッドシート側で検算していました。二度手間ですけど、ここを間違うと料金に間違いが出てしまうため目視でも何度も見直して確認します。資料を見てたら今になって怖くなって間違いがないか確認していたのは秘密です上の資料画像と数が違うのはあとから目パチ差分を追加してたのを忘れてたからです計算はあってました
ポーズ差分
先述したように左右の腕を描き分けていただく想定ですので、両腕、右腕の差分を記載しました。
単独で使っても見映えしそうな差分をピックアップして8パターン、両手×4 画面の内側にある右手×4パターンです。
これは運良くイメージできる立ち絵が見つかったのでこちらの立ち絵を動かして指定しています。見つからない場合はそのキャラクターの立ち絵以外でも構いませんし、イラストや写真などでも構いません。イメージ画像は極力添付できるといいですね。イメージしやすくなるので。
資料内で使用した立ち絵や素材のリンク
参考資料としてお借りした立ち絵のリンク、他の方の立ち絵を参考にする場合を想定してニコニコ静画の検索リンクを置いています。
まとめ
なんかやたらと長くなりました。ので短めに。
立ち絵はクオリティの高いものが無料でたくさん公開されており、動画投稿者にとってとてもありがたい環境が整っています。
それでも私みたいに「自分だけの立ち絵が欲しい!」という熱を持つ方もいらっしゃると思います。今回の記事はそういう方に向けつつ、この記事を通じて「ちょっと依頼してみようかな」と興味を持ってもらう方が増えるキッカケになればいいな、と思って作成しました。
再三となりますが、今回の制作資料はあくまで絵師さんとの取り決めや料金設定があった上での内容になりますので参考程度に。依頼に合わせて内容は調整してくださいね。
今回サンプルとして使用していた紲星あかりの立ち絵の依頼資料については確認用として以下にリンクを置いておきます。
なお依頼料などの取引の内容に関わる部分は削除しています。あらかじめご了承ください。
▼依頼資料の格納先
https://drive.google.com/drive/folders/1x6YC1_bPRxPNfFaJ_-jv_mFCilMax2rd?usp=sharing
今回の記事は、いつも依頼させていただいている時雨jun様に制作資料の公開許可を頂けたので実現しました。ありがとうございます!
時雨jun様は繊細で透明感のあるとても綺麗なイラストをお描きになっていますので、ぜひチェックしてみてください!
それでは、ここまでご覧いただきありがとうございました!
みんなも推しの絵師さんに立ち絵を依頼してみましょう! 立ち絵依頼はいいぞ。
【資料に使用した立ち絵のお借り先】
お出かけあかりちゃん立ち絵(ぴぴ様)
https://seiga.nicovideo.jp/seiga/im11112199
【素材】紲星あかり立ち絵Ver1.0(サポタ様)
https://seiga.nicovideo.jp/seiga/im10833009
紲星あかり 立ち絵 ver1.4(桧野 拓海様)
https://seiga.nicovideo.jp/seiga/im10927814
この記事を書いた人
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