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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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映画 RRR

ラーマが放った矢は帝国を崩壊させ、ビームが放った銃弾は巨悪を滅ぼす。

火と水の物語、“3つのR”は革命の火種となる。

ラーマとビームの出会い、シータとの出会い、ジェニーとの出会い…すべては避けられない運命。

2022年10月21日に公開されてからいまだに上映館が存在する異例の大ヒット!

RRRはまだまだいく!

インド映画ってこんなに面白いのか!

日本で爆発的ヒットを飛ばし、そう日本人に認知づけた作品といえば異国の地?(笑)から数々のおもしろ映画を発掘し続ける“ツイン”配給の“バーフバリ”だろう(自分もインド映画の入り口はここ!)

そのバーフバリの生みの親で“創造神”と呼ばれる“S.S.ラージャマウリ監督”の新たなシリーズ作品がこのRRRだ(既に続編が動き出してるとか!)

衣装を担当したのは監督のパートナーでデザイナー、スタイリストの“ラーマ・ラージャマウリ”、彼女はこれまでバーフバリなど監督の作品を華やかに彩り支えてきた公私ともに監督にとって欠かせぬ大切な人。

物語のなかで“火”を司る“ラーマ”を演じるのは同監督の“マガディーラ 勇者転生”で主演を務めた“ラーム・チャラン”

“合言葉は、ディーラ!(勇者)”

観たのがだいぶ前なので記憶が曖昧だが、観賞後“マガマガディーラマガディーラ”的な声がしばらく頭から離れない中毒性が高い作品だったように思う(タイトル通り現代をメインに描かれる転生もの)

物語のなかで“水”を司るビームを演じるのは“NTR Jr.”、個人的に彼の作品を観るのはRRRがはじめて(だと思う汗)

役作りに定評がある俳優さんとして本国インドやインド映画好きには有名な方だそう!

約97億円をかけて製作された本作は世界中で大ヒット、倍以上の興行収入を達成した。

物語の舞台は1920年代、第一次世界大戦直後のインド。

帝国主義の末期ともいえるその時代、植民地として他国に支配されていた国々で独立運動が盛んだった時代。

“Rise(蜂起)、Roar(咆哮)、Revolt(反乱)”

インドを力で支配してきた大英帝国に対してインドでも多くの人々が声を上げた。

同じ場所で、ラーマは帝国を見上げ、ビームは愛する者が囚われた檻を見つめる。

目指す場所は違えど、二人に共通するのは不屈、執念と呼べるほどの熱い想い。

“絶対にあきらめない、必ず成し遂げてみせる”

初観のときのラーマに関していえば、大義というか野心という印象を序盤に受ける。

その熱い瞳の先にあるもの、それは自分が上に行き、力を持ち、この国を変える…。

成り上がって、奴らを見返してやる。

多くのインド映画がそうであるように、日本人好みの時代劇的な勧善懲悪もの。

規格外すぎるアクションは“そんな訳あるかーい”とツッコミたくなるが、観てるうちにインドの人なら本当に可能なのかも?と思えてくる不思議(笑)

ラーマとビーム、二人の怒りは神の怒り、大自然の怒り。

アクアマンのような姿(笑)になったラーマと心優しき森の戦士ビーム。

二人は文明の力と古来の武器、魂で巨悪に鉄槌を下す!

古の戦神に敵う者なしなのだ。


〓STO“R”Y(物語全編)

〓The STO“R”Y(物語のはじまり)

アーディラーバード地方の森、とある部族の村。

身重の母“ロキ(アーマリーン・アンジュム)”と弟が見つめるなか、少女は西洋の婦人の手に美しい模様を刻む。

母への想い、母なる大地への想いを口ずさみながら…。

そこに獰猛な犬(狩猟犬)に先導され一人の男が大勢の供を連れてやってくる。

無益な殺生、とでもいうべき大量の獲物、葉巻をくわえ馬上から現地の人々を見下ろす男。

男の名は“スコット(レイ・スティーヴンソン)”、“キャサリン(アリソン・ドゥーディ)”の夫でインドでの植民地支配を一手に任されている大英帝国のインド総督。

“暖炉の上に飾ってもいい?”

キャサリンのこの一言で少女は数枚のコインと引き換えに村から連れ去られてしまう。

ロキは娘“マッリ(トゥインクル・シャルマ)”を連れ戻そうと身重の体で懸命に走りジープの前へ。

懇願するロキを撃ち殺そうとする士官にスコットは“その銃弾の価値を?”と説く。

英国の工場で英国の金属を用い作られ、7つの海を渡ってここまでやってきた。

“その銃弾が貴様の銃口を通過するまでの経費は1ポンド、英貨1ポンドだ。
それを無駄に撃ち放つのか?褐色人ごときに”

士官は私を身代わりにという身重なロキを落ちていた木片で殴り倒す。

〓The FI“R”E(火)

インドの国旗を手にデリー郊外に集まる群衆。

“ラーラー・ラージパト・ライに自由を!”

活動家の逮捕に対する抗議活動、解放しなければ彼らは焼き討ちも辞さない覚悟だ。

帝国側が籠もるのはイギリス国旗を掲げ、有刺鉄線を張り巡らせた小さな城。

堅牢なフェンスで囲み、大英帝国に仕える屈強な警察官が守るその地もあまりの数の群衆を前に陥落寸前。

人々が押し寄せるたびに軋むフェンス、この波が続けば壁は崩壊し、群衆がなだれ込んでくるだろう。

まさに制御不能な事態、応援が到着するのは7時間後。

“燃やせ!”

大英帝国にとって活動家の逮捕は小さな火の粉だったかも知れないが、その火種は大きく燃え上り、その巨大な炎がすぐそこまで迫っている。

群衆が放つ熱気と衝撃…民衆の怒りに署長はじめ警察官たちみなが恐れおののくなか、目をそらすことなく、警棒を後ろ手に微動だにしない一人の男。

現地採用組のその男の瞳、心の奥底には遥か昔から炎が燃えさかっている。

その無双は群衆のなかの一人の男が投げた石が引き金。

男(群衆の一人)が投げた石がスコット卿の写真に直撃、逮捕しろという署長の命で男(警官)は一人、炎のなかに飛び込む!

それはまさに阿鼻叫喚、男は千とも万とも思える敵を一人で押し、押し戻され、倒れ、駆け回り、殴られ、首を絞められ、群衆に揉みくちゃにされながらも敵をなぎ倒し、犯人を署長の前に連行する。

片足を引きずりながら持ち場に戻った男は顔を洗い、何事もなかったかのようにまた、群衆をまっすぐに見つめる。

その闘志に敵も味方も驚嘆、戦意を失った群衆は散り散りに…署長はいう。

“恐ろしいのはあの男だ”

男のなかに燃えさかる炎、その炎は誰にも消すことはできない。

デリー、英国軍兵舎。

警察官昇級式、候補者75名、そのうち昇級したのは3名。

あれほどの活躍をしたにも関わらずそのなかに男の名前はない。

昇級したのはみなイギリス人。

男が見上げる場所、そこにはどれだけ活躍、貢献したとしても現地組がたどり着くことは難しい。

“わかっている、わかっているが…”

男は叫び、破裂するほどにサンドバッグに怒りをぶつける。

男の名は“ラーマ・A・ラージュ(ラーム・チャラン)”

この“無双”が彼の最初の見せ場だ。

〓The WATE“R”(水)

部屋に飾られたスコットの肖像。

スコットの腹心で執事の“エドワード(エドワード・ソネンブリック)のもとにニザーム藩王国の顧問が忠告にやってくる。

エドワード、マッリの対価としてコインを投げた男だ。

“ナワーブ(太守)”からの忠告、それは“ゴーンド族”の娘マッリを部族に返せというもの。

ゴーンド族は素朴な部族で抑圧にも声を上げない。

が、ゴーンド族は仲間、家族をとても大切にする。

群れには“羊飼い”がいて、羊飼いは命懸けで群れを守る。

羊飼いは朝も夜もなく雨風に耐え、渓谷を駆け必ず子羊を捜し出すだろう。

“虎が食おうとすれば…その歯を砕き頬を裂く”

彼らは絶対にあきらめない、羊飼いはデリーに向かった。

“弓と矢で偉大なる大英帝国を転落させるとでも?”

部族民になにができると慢心するエドワードだが、不安は隠せない。

デリー郊外の森。

獣の血を頭から浴びる一人の屈強な男…森に響き渡る仲間の合図。

現れたのは狼、男は狼の目をじっと見据え、踵を返す!

狼に背を向け、森のなかをひたすら走る男、男は気づく…大きな獣の足跡、別の存在の気配に…!

突如、男に飛びかかった虎は男を追いかけてきた狼を張り倒す!

狼は虎に恐れをなし退散、追跡者は狼から虎へ。

“狼じゃねえ!”

狼を狙っていた男たちは予想外の大物に慌て驚く。

時に反撃しながら森をひた走る男だが、追跡者は獲物をあきらめない。

仲間が仕掛けた罠が男をギリギリのところで救うが、罠にかかった虎と男は一触即発!

虎を捕らえた網は虎の動きを封じるが、そのロープを固定するために打ち込んだ杭が虎のあまりのパワーに負け地面から抜けてしまう。

虎は男を食らうべく襲いかかるが、男はロープを両手で握り締め阻止する!

力と力の勝負、男がロープを自分の体の中心に引っ張れば網にかかった虎は離れるが、虎の力に負けてロープを離せば男は引き裂かれてしまうだろう。

虎の爪をかわし、すぐそばで唸る虎を睨み、唸り返す男。

男の力が虎に勝った!…と思った瞬間、強靭なロープが虎の力に耐えきれずちぎれてしまう!

自由になった虎が男に襲いかかろうとしたとき、仲間の“ジャング(チャトラパティ・シェーカル)”から受け取った“緑の壺”を虎の顔に投げつけ、男は九死に一生を得る。

“許せ兄弟”

壺の中身は薬草を調合したもの、虎は深い眠りに落ちる。

“羊飼いたち”がデリーに来てから半年、いまだマッリは行方知れず。

手は尽くしてきた…。

“マッリは生きてるのか?”

男はただマッリの無事を願い、マッリを救えると信じ、“ムスリム(イスラム教徒)”として街へ戻る。

男の名は“アクタル(NTR Jr.)”、整備工としてデリーの街に溶け込み、マッリを探している。

“おい、貴様。またエンストだ、どこを直した?”

バイクが壊れた、というのはイギリス人男性の完全な勘違いだったが、その勘違いをパートナーに笑われた男は“二重請求、詐欺、イカサマ野郎!”と公衆の面前で獣のようにアクタルを痛めつける。

“なぜ怒りを抑え、抵抗しない?”

アクタルたちの協力者である工場の親方はいうが、

“こんなに親切にしてくれる家族に迷惑はかけられない。素性が知れたら目的も果たせない”

アクタルたちは怒り、悔しさを押し殺し、理不尽な暴力に耐える。

“羊飼い”という得体の知れない者たちへの不安、恐怖を排除すべく、キャサリンとエドワードは幹部はじめ警察関係者を一堂に集める。

“総督を狙う刺客がいる”

“虫けらを退治しましょう、豚なら丸焼きに”

どんな奴らか?

“資料がない、情報がない、容姿の特徴や前科前歴も不明”

これでは捜索は不可能だ、署長や息巻いていた幹部、警察官たちみなざわつく。

“この不可能を成し遂げた者を特別捜査官に昇進させることを約束する”

キャサリンのこの言葉に

“生死は問いますか?”

警察官たちの一番後ろにいた男が声を上げる。

“適任者はあの男しかいない、成し遂げられるのはあの男だけです”

署長のアドバイスにキャサリンは

“首を取れば報奨金を与えます、生け捕りなら…特別捜査官に”

ラーマは相棒の“ヴェンカテスワルル(サムドラカニ)”と共に捜査をはじめる。

“部族の娘はスコット邸にいる、姿を現したときに生け捕りにする。
敵の敵は味方、敵が集まる場所に行けばいい”

活動家の顔をして反英分子の活動拠点や集会に潜り込む…。

アクタルたちはマッリが囚われていると思われるスコット邸の内部の様子を探るべく、屋敷に入る方法を探る。

ジャングが使用人として屋敷に入ろうと試みるが、屋敷に入るには“ID”が必要だった。

IDを忘れた、そういうジャングを容赦なく棒で叩く門番。

“やめなさい!家畜じゃないのよ”

ジャングを助けたのは若く美しいイギリス人女性。

あの心優しき人と親しくなれば、あの巨大な扉の向こう側に…アクタルたちは希望を見つける。

殉死者記念館、そこは活動家はじめ、インド独立を願う者たちが集まる場所。

“学校で子供に革命歌を教える”と説く指導者に対しラーマは

“そんなやり方は手ぬるい、急所を突け、スコットを殺せ”

と煽る。

その過激な言葉に人々は驚き振り返るが、できるわけないと失笑に包まれて終わる。

強大な大英帝国を倒す、そんなことは到底無理だと人々は心の奥底では思っているのだ。

ラーマの肩に背後から伸びる手…それはスコットへの不満を抑えきれない羊飼いの一人“ラッチュ(ラーフル・ラーマクリシュナ)”の手。

“兄貴のもとへ案内する”

ラーマはラッチュが羊飼いの一人だと確信するが、“同僚の小さなミス(敬礼)”でラッチュに逃げられてしまう。

祭りで人がごった返す川沿い、ラッチュを見失ったラーマは橋の上で地団駄を踏む。

橋の下ではアクタルが腕自慢の子供に駄賃を渡し、子供は魚を捕まえるため小舟に乗り川へ。

“仲間だと思って話しかけたら警察だった”

逃げてきたラッチュにアクタルは

“しばらく身を隠せ、時が来たら呼ぶ”

とラッチュを街の喧騒に隠す。

川を見つめるラーマとビーム、同じものを見つめる二人だが、数奇な運命は二人を別の道に誘い、惑わせる。

ラッチュを逃してしまったラーマの悔しさ、怒り、それを現すかのように橋は震え、大きく揺れる。

橋の下を走るSL、タンクから漏れる黒い油。

信号による急ブレーキで車輪から出た火花が油に引火、大爆発を引き起こす!

突然の出来事に驚き、見上げる子供のすぐそばにタンクは落下、川は火の海に。

子供を助けるのは無理だとあきらめる周囲に対し“見捨てるな”、救おうとするアクタル。

橋の上で“同じ想い”を抱くラーマは見上げるアクタルに手を上げ、アクタルは手を振り返す。

ラーマとアクタル、“兄貴”と“弟”が出会った瞬間、数奇な運命が交わった瞬間。

ラーマは手の動きで子供を救うための作戦をアクタルに伝える!

次々と川に落下するタンク、子供に迫る炎、時間がない。

ラーマはロープを手に馬にまたがり、アクタルはバイクにまたがって走り出す!

ロープをしっかりと体にくくりつけるアクタル…なんと、二人は橋の上を駆け、左右別方向に向かって勢いよく川に飛び込む!

ラーマは“インドの旗”を握りしめ、アクタルはしっかりと“子供の手”を握る。

まさに危機一髪、タンクが子供を直撃する寸前での救出劇!

子供はアクタルの手からラーマの手へ、アクタルを燃えさかる炎から守ったのは水を含ませたインドの国旗。

二人は手を伸ばし、しっかりとその手を握りしめる!(これがメインビジュアルのシーンだ!)

二人揃っての最初の見せ場、“火”と“水”が出会い、交わった瞬間、すべての“R”が揃った。

“1920年インド、蜂起と咆哮と反乱と、生まれた絆、流転する数奇な物語、友の手は固く結ばれた。
この手は命を救うのか、それとも奪うのか…”

ここまでは長い長い物語の序章、3つの“R”が揃い、二人の男の運命が交わった今、ここから物語ははじまる。

〓RRR(伝説)

二人の絆を結んだロープ、子供を救った二人は“英雄”になる。

ラーマは羊飼いを探し、アクタルはマッリを探す。

それと同時に二人は兄弟、友としてかけがえのない日々を過ごす。

ラーマに家族を紹介するアクタル。

みんなで食事をしているなか、左手で食べるアクタルを行儀が悪いと叱る母。

それを見つめるラーマは“なにか”を思い出して微笑む。

互いの家を行き来する二人、ラーマの家は本だらけ。

彼は肉体を鍛えるだけでなく、勉強も欠かさない。

紳士として西洋人に恥じない教養、言葉、身だしなみを努力で身につけた。

二人は山を歩き、街をバイクで走り、母なるインドの大地を心から楽しむ。

同じ道を歩む二人、求めるものは違う。

この友情はいつか裏切りによって壊れる、それは避けられない運命。

二人が歩むのはいばらの道。

二人はひたすら今を駆ける、幸せな今を…。

“半分に割れたペンダント”、ラーマには“想い人”がいる、その名はシータ。

彼女は今どこでどうしているのか…。

二人が見つめるものは同じ、行き詰まる二人。

ラーマが聞き込みのために持っているもの、それは逃したラッチュの似顔絵。

“なぜ俺に見せない”

兄貴が探している男を知ってるかもしれない、そういうアクタルに似顔絵を見せようとするラーマだが、似顔絵はラーマの手から離れてしまう。

“まだその時ではない”

スコット邸から出てきた一台の車、運転しているのは優しき彼女。

“見とれるほどのいい女か?
話したければ頭で考えたってダメだ、行動に移せ”

彼女を見つめるアクタルにラーマは兄貴として、男としてアドバイス、手助けする。

その方法はまさにイタズラ、道に釘をばら撒き、彼女の車をパンクさせ、親切を装い近づくという悪知恵を働かせたもの!(笑)

助けを求める彼女に純粋で正直者なアクタルは5分で直せるというが、彼女が現地の言葉を知らないとふんだラーマは機転を利かせ修理には5時間かかると嘘を吹き込む。

“首を横に振れ、うなずけ”

バスか路面電車に乗るという彼女を上手く誘導し、

“よければ彼が送ります”

カメラ、バッグ、麦わら帽子を手に彼女はアクタルが運転するバイクで市場へ…嬉しそうに二人を見送るラーマ。

こういった“俗物的”な感性もまた、彼が紳士として身につけたことのひとつなのかも?(笑)しれない。

川沿いで賑わうマーケット、その活気を彼女は興味津々にカメラに収めていく。

紳士に市場を“エスコート”するアクタルに彼女は好印象だ。

アクタルは彼女との仲を深めようと話しかけるが、言葉の壁が邪魔をする。

“マダムはやめて、ジェニーでいいわ”

彼女の名前は“ジェニファー(オリヴィア・モリス)”、アクタルにとって憎むべき相手であるスコットの姪っ子。

今の暮らし、今の自分…彼女はどこか、納得いってないようだ。

身振り素振りでのコミュニケーション、買い物をするジェニーに“小さすぎます”というアクタル。

ジェニーは笑いながらいう。

“これは私が着るものじゃない、屋敷に小さい女の子がいてね”

その子の名は…マッリ。

アクタルはマッリへの想いを込めてバングルを作り、“その子に”とジェニーに託す。

帰り際、ジェニーは“パーティー(社交クラブ)”の招待状をアクタルへ…。

薄暗い部屋で膝を抱え、窓を見つめるマッリ。

“帰りたい”

その瞳に映るのは故郷の姿。

マッリはジェニーのどの土産にも興味を示さないが、アクタルが作ったバングルを手にした瞬間、泣き出してしまう。

ラーマの部屋に戻ったアクタル。

“ガールフレンド、最愛の人、愛する恋人、君の命。反応は?”

ジェニーとのデートの結果を聞くラーマ、困るアクタル。

“名前は?”

恐ろしく長い、“マダムハ・ヤメテ・ジェニーヨ”

アクタルの勘違いを笑うラーマ。

ジェニーから渡されたパーティーの招待状、日付は2月14日、今日!

“一緒に来てくれよ”

不安がるアクタルを紳士に仕立て上げるラーマ、二人はいざ、パーティー会場へ!

パーティーを楽しむ紳士淑女たち、早く踊りたいというジェニーを最高のダンサーを自称する“ジェイク(エドゥアルド・ブハク)”が誘うが、ジェニーは会場にやってきたアクタルのもとへ。

ジェニーはアクタルを待っていたのだ。

はじめてのことだらけで落ち着かないアクタルをジェニーに任せ、ラーマは会場に目を光らせる。

アクタルとの再会を喜ぶジェニーは聞こえてくるリズムに自然と足が動くアクタルをダンスへ誘う。

今度はジェニーがアクタルを“エスコート”、楽しそうな二人。

その姿に嫉妬した“自称最高のダンサー・ジェイク(ぼんぼん)”は慣れない“社交ダンス”に四苦八苦するアクタルの足を引っかけ、アクタルは転倒、女性客に失礼を働いてしまう。

“のろま、褐色の虫けらども”

アクタルをからかうジェイクの言葉を聞いて笑うのは白人の男性ばかり、女性たちはこの“蛮行”に冷ややかな目を向ける。

同胞はなにもいえない自分の無力さに嘆き、心痛めるばかり…。

“タンゴ、スイング、フラメンコ…君に踊れるかな?”

これのどこが紳士か…そんな空気を吹き飛ばすかのごとく、大地の鼓動を鳴らす者あり!

転がった“シルバートレイ(銀盆)”を蹴り飛ばし、スティックを握り大地の音を鳴らす男。

弱気を助け、強きを挫く、本物の紳士。

二人のもとに歩いてくるヒーローの姿に女性たちは釘づけ!

兄貴(ラーマ)はアクタルの手をとり、有名すぎるこのセリフ。

“サルサでもフラメンコでもない。
ブラザー、ナートゥをご存知か?”

世界が絶賛した“劇中唯一のマサラ”が今、はじまる(ラーマの兄貴格好良すぎでしょ笑)

宙高く投げられたスティックを受け取った黒人ドラマーが心豊かに鳴らす大地の鼓動の上で熱い熱い熱いショーがはじまる!

“まあ聴け、この曲を、この歌を。
ナートゥ、それは英雄の歌。
ナートゥ、それは故郷のダンス。
ナートゥ、刺激強めのインドの歌。
ナートゥ、切れ味鋭い野生のダンス。
土煙を上げて猛進する雄牛。
母神に捧げる渾身の踊り”

激しすぎるダンス、時におどけた表情で楽しそうに踊る二人に

“バカバカしい、二人とも退場!”

ジェイクはじめ男たちは反発、やめさせようとするが、ノリノリで熱狂する女性たちは続きが見たいと反発!

“GO、続けて”

女性たちから許可を得た二人はもう止まらない!

さらに激しいダンスを披露、会場はさらに熱く、熱気に包まれていく!

“心の震える太鼓の早打ち。
耳をつんざく甲高い啼き声。
指がリズムを取り出す歌。
足が踊り出し土煙が舞う歌。
汗が噴き出すシヴァ神の踊り。
さあ聴け、この曲を。
ナートゥ、それは英雄の歌。
ナートゥ、それは故郷のダンス。
ナートゥ、石をも砕く俺たちの歌。
ナートゥ、湿度と熱気に満ちたダンス。
血が騒ぎ出すダンス。
大地を揺るがす、激しい跳躍。
ナートゥ、ナートゥ。
生命力が歓喜で踊り出す。 
土煙が舞うまで跳ねろ。
ナートゥ、ナートゥ”

二人から発せられる熱に飲み込まれ、女性たちも踊り出す!

ドレスが汚れるのも気にせず、砂埃のなかで舞い、跳ねる。

その様子を苦々しく見ていた男たちもついに参戦、突如はじまったダンスバトルはさらに熱を帯び、熱く熱く白熱していく!

“負けるわけにはいかない”

次々と倒れるダンサーたち、最後に残ったのは3人。

“踊り続けろ!”

ジェイクが倒れ、残ったのは二人、兄弟対決。

会場の熱気は最高潮、女性たちの声援も熱い!

ラーマを応援する女性たち、ジェニーだけは…その声、心に気づいたラーマは“わざと”足を痛めたふりをして弟に勝ちを譲る。

激しすぎるダンスバトル、まさに

“圧倒”

この言葉しか浮かばない。

“まあ聴け、この曲を、この歌を”

この興奮は観た者、聴いた者にしかわからないだろう。

会場にいたすべての人たちが熱狂し、土や汗にまみれ、我を忘れるほどに楽しむ。

真の芸術は人種を隔てたりはしない。

全身全霊でダンスを披露、疲れきった弟を兄が背負い帰る穏やかな道中、通りがかったジェニーからアクタルは屋敷へ招待される。

二人を見送るラーマは気づく…ジェニーの車後部の飾りの色、逃げた男の爪に同じ色の塗料が…あの男は塗装工に違いないと。

ついにラーマは羊飼いの一人、ラッチュを捕らえる。

巨大な屋敷、衛兵が守る巨大な二重の扉。

扉は表門を閉めないと奥が開かない仕組みになっている。

アクタルはついに屋敷のなかへ…巨大な石像、無数の衛兵、はじめて見る光景にアクタルは驚く。

明後日、帰国中のスコットが屋敷に戻り、ナイト爵を授かった記念の宴が開かれる。

屋敷の入り口にはどこかで見た男…“ロバート”、工場でアクタルに難癖をつけ、理不尽に痛めつけた生粋の差別主義者。

屋敷の警備を任されているロバートはジェニーが友人として招いたアクタルを使用人扱いする。

“いいんです”

無礼を謝るジェニー、笑って返すアクタル。

ジェニーの部屋には彼女が描いた美しい絵が沢山飾られている。

落ち着かないアクタル、一刻も早くマッリを救い出したい。

“輝く瞳、その瞳…その瞳の奥で…いつもなにか探してるみたい”

言葉の壁が邪魔をして二人は通じ合えない。

“腹が減りました”

一人になったアクタルは懐かしい歌声に導かれ、マッリと再会する。

“兄さん!”

マッリは鉄格子の先の薄暗い部屋にいた。

そこはまだ幼い女の子の部屋ではなく檻。

マッリは物珍しい道具としてキャサリンに都合よく使われ、使い終わったら檻に戻される生活を強いられていた。

“俺はここにいる”

“置いてかないで、母さんに会いたい”

と泣くマッリにアクタルは優しく子守歌を歌い、屋敷を去る。

窓から見えるアクタルの後ろ姿…必ず連れて帰る、アクタルはマッリに無言の誓いを結ぶ。

“自由になれる日はきっとやってくる”

人の悲しみ、涙の痛みをわからぬ者たち。

“請い願うことなどない”

アクタルは怒り、決意を固める。

“兄貴は?どこにいる?”

囚われたラッチュはラーマから拷問を受けていた。

質問に答えないラッチュに拷問の手を強めるラーマ、その手首からちぎれ落ちる誓いのペンダント。

ラーマは地に落ちたペンダントを手に葛藤する。

遠く離れた地で割れたペンダントを見つめる美しい女性。

二人は共に、誓いのペンダントを握りしめる。

あれから4年…村、故郷、仲間に誓った言葉、シータとの約束。

拷問を続けるなか、ラッチュが“首から下げているもの”に気づくラーマ。

そのラーマの一瞬の隙を突いてラッチュは決死の反撃に出る!

“マルオアマガサ、咬まれたら英国人だって解毒できない”

ラッチュが投げた毒蛇によって毒におかされたラーマは優しく微笑み、ラッチュを解放する。

最初から殺す気などなかった、だが、目的のために道に外れた。

これはその報いか…1時間で死にいたる猛毒に苛まれながらラーマは街へ。

祝宴襲撃の手はずを整えるアクタルたち。

“今夜しかない、チャンスは一度きり、失敗は許されない”

耳のいいジャングは“兵舎の門の開閉音”を聞き分ける、“ペッダイヤ(マカランド・デシュパンデ)”はトラックの準備を入念に。

それぞれの役目を果たすべく夜の街に散ろうとした3人はラーマの助けを求める声に気づき、その命を救うべく奔走する。

アクタルたちにとって大切な“契り紐”、それを外せば厄災に見舞われるという。

“今だけは兄貴に”

アクタルは迷うことなく外し、ラーマの首にかける。

それはラッチュが身につけていたものと同じもの…朦朧とする意識のなかで驚くラーマ。

自分はムスリムではない、“ゴーンド族”の“ビーム”だ。

行かなくては、生きて戻れたら会おう。

“兄貴との日々は俺の宝だ”

アクタルは自分の本当の名と覚悟を告げ、戦いへ。

“明日には回復する”

驚異的な肉体とビームたちの献身のおかげであっという間に復活したラーマは咆哮を上げ、感情を爆発させる!

“俺はどうすればいい…ビームは、弟は自分にとっても宝だ”

血にまみれた父の手、幼き日の忌まわしき記憶。

血にまみれた己の拳…あの日、ライフルで実弾とともに放った覚悟。

“必ず成し遂げてみせる”

パーティー会場では花火が打ち上げられ、紳士淑女たちが盛大で華やかな宴を楽しんでいる。

警察幹部たちもスコットに祝いを述べるべく勢揃い。

木の上で様子をうかがっていたジャング、その合図でペッダイヤが運転するトラックが門をぶち破り会場に突っ込む!

トラックから現れたのはビームと猛獣たち(これが猛獣アタックだ!)、森を支配する者たち。

虎などの猛獣はこの時のために集められていたのだ(ビームが担いできた肉の塊をラッチュが放り込むシーン、あれは地下にいる猛獣への餌やりだった)

パーティー会場は阿鼻叫喚に、猛獣はビームにもみさかいなく襲いかかる!

ビームの正体、ビームがなにを探していたのかを知ったジェニーを車のなかへ避難させたビームは炎に包まれた会場でマッリを探す。

鍵を握るのは因縁の警備隊長ロバート!

監督の“十八番(おはこ)”というかインドではやっぱり“鎖”が最強なのか…ビームはロバートを殴り飛ばしたあと、“鎖”を使ってズタボロにする(笑)

鍵を手に走るビームを呼び止める声…その声の主はなんと、4頭の白馬に引かせた炎に包まれた馬車を操る兄貴!

ラーマのなかに燃えさかる炎を抑えることは不可能、馬を切り離し、馬車から飛び降りた兄貴は軽快に走る(笑)

炎に包まれた馬車は会場をさらに熱く焦がす。

制服姿のラーマに驚くビーム。

“英国政府への反逆罪で逮捕する”

マッリを救うための鍵を奪われたビーム。

お互いの本当の姿を知った二人はついに決裂、ラーマは“火”を、ビームは“水”を手に壮絶なバトルを繰り広げる!

虎をもなぎ倒す二人の壮絶なバトル。

驚異的な身体能力でマッリのもとにたどり着いたビームだが、ラーマは執拗に追いかけてくる。

一線を越えることができないラーマ、心優しきラーマのなかに常にある葛藤。

それが彼の唯一の弱さであり、強さだ。

だが、守るべき者、愛する者、なんとしてもマッリを救い出したいビームは違う。

あと一歩、そんなビームの自由を奪ったのは契り紐。

兄として慕うラーマの回復を願い、彼の首にかけた契り紐…。

“厄災か、運命の歯車、流転する数奇な物語。
この手は命を救うのか、それとも奪うのか”

植民地時代の英国の横暴を具現化したかのような悪の権化・スコットのライフル。

マッリの命を突きつけられたビームはついに降伏する。

叫ぶビーム、ラーマの炎はその瞳から滴り、約束のペンダントを濡らす。

固く結ばれた二人の絆、炎と水。

〓INTE“RRR”VAL(引き続きお楽しみください)

ビームが働いていた整備工場にも捜査の手が。

親切な親父さんたちは逃げたあと、事情を知ってか知らずか、誰も口を割らない。

“A,ラーマ、ラージュ”

幹部、英国人のみに許される赤い制服。

ラーマはビームたちによる“スコット邸襲撃事件”での活躍で“特別捜査官”に任命される。

ついに、ラーマは帝国主義の世界で絶対である“人種の壁”を越えたのだ。

扉の向こう側、ラーマがどうしてもたどり着きたかった、たどり着かなければいけなかった場所。

そこに必ずたどり着くと故郷に誓った。

そこにあるのは最新式のライフル、大砲など大量の武器弾薬。

ラーマの百発百中の“スナイパー”としての腕、それはラーマが少年時代に父から授かったもの。

ラーマは村の同志たちと共に“民兵”として厳しく、実践的な訓練を父から受けていた。

師匠と呼ばれ村人から慕われるラーマの父“ヴェンカタ(アジャイ・デーヴガン)”は英国人の横暴に憤り、民兵を育て反撃の機会をうかがっていたのだ。

村にあるライフルは一丁、弾の数も限られている。

ヴェンカタは闘士たちに問う。

“銃弾の価値を?”

一発の銃弾は市場で15ルピー、いつか白人が語るのを聞いた…。

水害による税の滞納、現地を調査しにきた士官を“村の長老が襲った”として英国政府から長老に死罪が下された。

長老にライフルを向ける兵士に葉巻をふかしながら“銃弾の価値”を語る大柄な男…スコット。

銃弾の価値、スコットの口癖。

スコットは葉巻を投げ捨て、微笑みながら“英国通貨6シリング、農民ごときに浪費するな”と兵士に言い放つ。

長老はハンマーで無惨に撲殺され、政府で働いていたヴェンカタはバッジを投げ捨て、無断でライフルと銃弾を持ち出し職を辞した。

インドの同胞、その命の価値。

銃弾の真価、それは白人どもの血にまみれたとき…その真価を発揮する。

それはすなわち解放。

“まずは己の腕を磨け、必ず全員に銃を渡す”

“早く食べれる”と左手で食べる弟を可愛がるラーマ。

ラーマとシータは幼い頃から家族ぐるみの付き合い、厳しい師匠で怒れる伝説の闘士ヴェンカタも家では優しい一人の父親だ。

家族団らんの場に訪れたのはヴェンカテスワルル。

“ラーマのおじさん”、ラーマの相棒は実の叔父だった。

ヴェンカタは村にいたいというヴェンカテスワルルに警察官になれという。

“英国人の懐に飛び込めと…”

小銃一丁とわずかな銃弾では革命は起こせない。

“武器は集まる、必ずここへ、たどり着く”

ある日の訓練中、ラーマの肩の異変に気づくヴェンカタ。

シータにせがまれたラーマはライフルを無断で撃っていた。

ラーマの軽率な行動にヴェンカタは怒り、ラーマをぶとうとする。

だが、シータに導かれたヴェンカタはラーマの才能に気づき、ラーマを抱きしめ涙する。

“お前が立派な武器だ”

ラーマは驚くべき場所、距離から的の中心を撃ち抜いていた。

喜びの声が溢れるなか起こる英兵による村の襲撃。

民兵を育て、解放の狼煙を上げようとしていることに気づかれた。

“降伏しなければ皆殺しだ”

“今は戦うときではない、村人を守るときだ”

ヴェンカタは村人を逃すため、一丁のライフルを手に一人で敵を迎え撃つ。

森のなかにある“マッヴ女神”の寺、安全なその場所に村人を逃せ…ヴェンカタは妻でラーマの母である“サロージニ(シュリヤ・サラン)”に村人の命を託す。

“俺の戦いは、お前の戦いだ”

母は“覚悟”を、父は“志”を胸に戦う。

敵前へ走り銃を放つヴェンカタ。

敵が倒れるたびに銃弾は減り、その手は血にまみれる。

無数の敵を相手に一人で無双を続けるヴェンカタ、次々と仲間が倒れる姿を見た英兵たちは

“敵は一人ではない、援軍あり”

と動揺、戦慄する。

驚異的なスナイパーであるヴェンカタだが、銃弾がなければ戦えない。

“しょせんは時間稼ぎ、ここまでか…”

危険な戦場に銃弾が入った木箱を引きずり駆けつけるラーマ。

“まだ、戦える”

この子こそ希望、祖国の希望。

“まだ、戦える!”

ヴェンカタはラーマと共に戦い続けるが、衆寡敵せず腕を敵のスナイパーに撃ち抜かれてしまう。

“銃弾の真価を示せ。
装填、狙え、撃て、今だ、撃て!”

ヴェンカタはラーマに銃を渡し、ラーマがスナイパーとなり敵を迎え撃つ。

ラーマが放つ銃弾は次々と敵を撃ち抜くが、敵の銃弾で母と弟が犠牲に。

愛する妻と息子が倒れたあとも、ヴェンカタは非情に、家族の、愛する者たちの死を見つめながら

“装填”

まだ子供のラーマに泣くな、戦えという。

ついに指揮官は作戦の変更を決断、英兵たちは後退、態勢を立て直すことに。

“約束しろ、武器を…届けろ、握らせろ”

あのとき父に、その手に、志に、誓ったのだ。

戦神の下でシータに手紙を書くラーマは想いをめぐらせる。

武器庫から各地に武器が移送される、その“保安監督官”に選ばれる日は近い。

“武器は手の届く所に”

手紙にはラーマの後悔、葛藤も。

“友を犠牲にした選択、それは正しかったのだろうか?
それで得る自由とは?
誰のための闘いか…味方すべき人を敵に回し、親友をも裏切った。
目標を前に、道を踏み外したのか?
お前に会いたい”

ビームは反英分子として民衆の前でラーマに鞭打たれることが決まる。

集まった群衆、ジェニーの姿も。

“罪を認めてひざまずくまで鞭で打て”

見せしめ、民衆に刑の執行を公開し、恐怖を植えつける。

“血を流すさまが見たいわ”

声も上げず、ひざまずかないビームに対しキャサリンは“特製の鞭を使え”とラーマにその“悪意”を放り投げる。

ウィッチ、ヴィラン、恐ろしいほどの“邪悪さ”、キャサリンのこの“邪悪さ”はビームの皮膚を鋭利に引き裂く。

恥より高潔な死を望むビームの姿に、ラーマ、民衆の瞳は血と涙で濡れる。

“神が憑依したのか?”

微笑み、歌いはじめるビーム…。

“ビーマの末裔よ。
お前を生んだ大地、お前に命を与えた森の木々。
母なる故郷がゴーンド族のお前に告げる。
よく聞け、コムラム・ビーム。
息子、大地、女神の子。
不滅の炎となってくすぶり続けろ。
灼熱の太陽となって燃え続けろ…”

神の声、歌声を聴いた群衆の怒りは最高潮に達する!

インドでの長きにわたる大英帝国の圧政、くすぶっていた炎が燃え上がる瞬間をその澄んだ瞳で目のあたりにしたラーマ。

“人々のなかにくすぶっている炎こそ武器だ”

次の武器の移送は2日後、保安監督官はラーマ。

ついに約束を果たすことができる…だが、ラーマは迷っている。

“ビームの絞首刑もまた、2日後に…”

牢に繋がれたビームの前でラーマは刑の執行場所を刑務所から“ヤムナー川”へ移すことをスコットに提案する。

刑務所で吊るせばビームは民衆の英雄になる、マッリの前でビームを吊るせば恐怖で顔を歪ませることができる…それこそが帝国のやり方だと笑うスコット。

だが、それはビームを逃すため、マッリをビームに返してやるため。

ラーマはこの日のため、父やシータ、故郷の仲間との約束を果たすために多くのものを犠牲にしてきた。

祖国解放のため、誰しも払うべき犠牲はあると考え、ビームを白人に渡した。

それは間違っていた。

何年かかろうと、友を、家族を犠牲にはしない。

“ビームを犠牲にはしない”

奴の歌は民衆を動かした、その先にあるのは銃のない革命だ。

父との約束も果たせる。

“そう決めた、もうなんの迷いも感じない”

そういってラーマは共に闘ってきたヴェンカテスワルルに微笑む。

夜、武器と、ビームは運ばれていく。

朝、ヤムナー川に向かう前、スコットはラーマの忠誠に感謝し握手をする。

ラーマの手を握ったそのときからその忠誠に疑念を抱いていたスコット。

マッリを乗せて先導するラーマは急加速、“トラップ”の存在に気づいたスコットは驚くべき跳躍を見せ、ラーマが運転するバギーをライフルで狙撃、転倒させる!(スコットのとんでもジャンプからの狙撃、急に気持ちチープになる転倒シーンに笑ってしまう笑)

ラーマとマッリは投げ出され、転がった先にあった木の鋭い枝がラーマの背中に突き刺さってしまう。

ヴェンカテスワルルが届けたカミソリで自由になったビーム、裏切り者として追われるラーマと逃げるマッリ。

解き放たれたビームの溜めに溜まった怒りは傷や疲労を完全リセット、イギリス兵相手に無双する!

傷を負ったラーマもまた、絶えだえになりながら英兵からマッリを守る。

二人はマッリのために戦う。

“あと少しで兄のもとへ…”

ビームを狙う銃口に気づいたラーマは兵士にピストルを向けるが、マッリに向けていると勘違いしたビームはラーマに牙を剥く。

“裏切り、裏切り、裏切り…ラーマはもう、兄貴でも親友でもない”

再会した二人は自由の身に。

ラーマは瀕死の身で“その自由”を守ろうとする。

これが“ラーマ覚醒前”最後の戦い…森に帰っていく二人を見届けるまで、ラーマはその命を賭して戦ったのだった。

4年前、故郷を旅立つ日、身につけていた丸いペンダントを半分に割ってシータ(アーリヤー・バット)に渡した。

いつか必ずひとつに…。

“勇気が私を駆り立てる。
お前の勇気が、私に勝利をもたらす。
私の戦いはお前の…”

故郷の土をその額に、この時から闘士になった。

“すべての同胞に武器を届ける、その時まで戻らない”

ラーマはゴーダーヴァリ河に誓う。

“母なるインドをたたえよ!”

帆を上げ、その拳を上げたのだ。

この事件から数ヶ月、ビームとマッリは行方知れず。

ビームたちをなんとしても捕まえたいスコットは苛立ちを隠せない。

“処刑場から唯一の逃げ道はアグラ、町は封鎖した。地域ごとに包囲網をしらみつぶしに捜索すればネズミでも虫けらでも見つかる”

怪しいのはハトラス、指名手配犯として賞金もかけた。

ラーマはどうなったのか?

囚われの身となり、スコットの指示で食事は週一回、ぎりぎりの状態で生かされている。

“囚人より惨めです、飢えで鎖を口に…”

してなどいない。

帝国を睨みながら反撃のその時のために牢のなかで体を鍛えている。

髪や髭は伸びたが、その中身は以前となにも変わっていない。

どんな状況に置かれても帝国の崩壊を絶対にあきらめない、その執念とでもいうべき意志の強さは日本の戦国武将・石田三成のようだ。

“結果に執着するな、私を結果を求めない、突き進むのみ”

やること、目的に向かって行動することに意義がある。

“装填、狙え、撃て”

ビームに続いてラーマも思い通りにならないスコットは激昂、ラーマを地下の暗く狭い独房に放り込む。

だが、ラーマはそれでも変わらず前へ突き進む。

宿、逃亡者となったビームたち一行は逃げ道を探している。

ここへ来てもう2日、真夜中に出発しようというビームだが、行くあてはない。

偵察と食料の調達から戻ってきたジャングは

“状況は厳しい”

警察に包囲されている、食料も手に入らなかったという。

そして、ビームたちが潜伏している宿についに警察の手が…万事休す。

追いつめられたビームたちを救ったのは同じ宿に偶然いたシータ。

賢く、心優しいシータに助けられたビームたち。

“人助けしろ、それが許嫁の口癖だ。
私は南の方から来た、許嫁、その人はデリーに…”

驚くビーム、シータから聞かされる真実と過去。

ラーマは誇り高き“解放闘争”のために闘っていたこと…。

あの日、村が襲撃された日。

ラーマは戻ってきた襲撃部隊を一掃した。

最後の一発の銃弾、ヴェンカタはその命で真価を見せた。

“なにがあっても突き進め、なにがあろうと目的を見失うな”

あの日、ラーマはその手で、銃弾で、実の父を撃った。

“装填、狙え、撃て!”

爆弾をその身に巻きつけた父を…ヴェンカタは同胞をあざ笑う無数の敵を道連れに玉砕した。

この瞬間、幼いラーマの心の火が一気に燃え上がる。

涙が、瞳の奥に燃えさかる炎をさらに熱くする。

父の大きな背中、悲願。

ラーマの澄んだ瞳はその背中をしっかりと見つめる。

その瞳は、今も変わらない。

ラーマは葛藤の末、裏切るのではなく、親友を救う、共に闘う道を選んだ。

刑の執行は2日後。

マッリを救ったビーム、祖国を救おうとしていたラーマ。

“森で生まれた自分は無知だった”

心優しきビームの瞳にもラーマと同じ炎が噴き出す!

“ラーマを、友を必ず連れてくる”

ジェニーの協力を得て牢の場所を把握したビームは兵舎に侵入、ラーマを救うべく突き進む!

“心優しき一人の兄”から再び“戦士”になったビーム。

シータが目覚めさせてくれた。

割れたペンダントは光りを放つ月のようにひとつに、二人の絆はまた、固く結ばれた。

ビームは独房の扉を根もとから破壊、ラーマを肩に乗せ敵をなぎ倒す!

二人は互いに手となり足となり無双する!

二丁のライフルを驚異的なバランスで放つラーマ、その姿はビームという強力なエンジンを積んだ戦車のよう。

二人はひたすら突き進み、監視塔をよじ登り、最後は“前面から背面へ逆さに一回転!”して塔の上へ(笑)

そこから二人は跳び、兵舎の壁を飛び越えて森のなかへ…牢をぶち破ってからここまで、ビームはラーマを背負ったままなのだった(これが足長手長…じゃなくて世界最強の肩車、カッコイイ肩車だ!笑)

エドワードからの報せでラーマの脱獄を知ったスコットは特殊部隊を投入。

“確実に殺せ”

流石に恐ろしくなったのか、二人を一気に叩こうとする。

ラーマの傷の手当をしたビームは戦神のもとにラーマを寝かせ、水を飲む。

ビームを狙うエドワードたち…を襲う無数の矢!

“エドワード”

森に響くラーマの声…現れたのは神と化したラーマ。

長い髪、額には赤い印。

旗に身を包み、手にしているのは銃ではなく弓。

神が降りてきた。

“ラーマ、戦の英雄。
ラーマはラグ家の末裔。
戦の英雄、王威を放つ者。
その矢は炎をも切り裂く”

エドワード率いる特殊部隊、バイクに乗った増援部隊を相手に二人は大乱闘を繰り広げる!

“ビーマは強靭な戦士、脅威の跳躍で敵を叩く”

手榴弾を矢で撃ち抜き敵を粉砕するラーマ。

“装填、狙え、射よ”

あの日の父の姿、声、ラーマは父と共に戦う。

“ビーマはハスティナプラの都で象牙を砕き、シヴァの破壊の舞を踊る”

ビームは突っ込んできたバイクを片足で止め、そのタイヤを掴んでぶん投げる!(笑)

ラーマの腕を撃つエドワード…ビームの鋭い槍は振り返ったエドワードを貫き絶命させる。

“ビーム!キツネ狩りは終わった、仕留めるべきは獅子!”

ラーマは馬にまたがり、ビームはバイクを駆る。

二人はあの日のように“巨悪”めがけて走り出す!

スコットは二人めがけて大砲を放つが、二人はもろともせず走り続ける。

いつかのように心通じ合わせる二人、空を駆けるバイクに向けて放たれる矢…スコットめがけて突っ込んだ炎に包まれたバイクは火薬に引火、大爆発を引き起こす!

崩れ落ちる宮殿、崩壊する大英帝国。

“装填、狙え、撃て!”

血を望んだ二人(スコット夫妻)には天罰が下る。

大爆発のなかビームが命がけで守った大量の武器と共に二人は仲間のもとへ。

“武器を届ける”

二人は成し遂げたのだ。

“君のおかげで目的を果たすことが出来た、礼を”

というラーマにビームが望んだのは読み書き。

“力”、ではなく“言葉や知識”、ビームらしい。

ラーマとビーム、二人の英雄の帰還。

シータとジェニー、二人のヒロインの幸せそうな姿。

共に旗を掲げるラーマとビーム、物語は大団円を迎える。

“水と森と大地を”

〓あとがき・感想(みたいなもの)

インドの歌番組みたいなエンドロールではラーマ役のラーム・チャラン、ビーム役のNTR Jr.、シータ役のアーリヤー・バットがインドの英雄たちを背にノリノリで踊りまくり、中盤でヴェンカタ役の大物俳優アジャイ・デーヴガンが登場、そしてジェニー役のオリヴィア・モリスが加わりラストにはインド映画界の至宝・ラージャマウリ監督までが表情豊かに“ムラムラムラダンス(勝手に命名、そう聴こえる笑)”を披露する!(笑)

これを観るとインドの俳優はやっぱり踊れないと…と思ってしまうわけだが、近年のインド映画は踊らない作品が数多く登場している。

“マサラ(お祭り)”と呼ばれるインド映画お決まりの突然キャストが踊りだす演出。

インド映画ファンにとって大きな楽しみのひとつなのだが、世界を見据えた作品の場合“踊らない”、もしくは少なくするといった選択肢がベストと考えられているように思う。

本作RRRでもマサラは“第95回アカデミー賞”で“歌曲賞”を受賞した“Naatu・Naatu(ナートゥ・ナートゥ)”だけ(あとはエンディングのムラムラダンス)

“彼らの熱いドスティ”、“ナートゥをご存知か?”など興奮と感動を超えてもはやネタにさえなりつつあるナートゥ。

この反響、結果は“やっぱりマサラは良い、世界的にもアリ!”という“答え”だと思うんですよね。

マサラがない作品も良いけど、インド映画の長所としてやっぱり0にはなって欲しくないなー。

涼しげな瞳(目もと)、髪型…とか。

ラーマを観てるとなんだか…大好きな日本の俳優“北村一輝さん”に見えてくるのは自分だけでしょうか?(笑)

北村一輝さんがインドでスカウトされたっていう有名なエピソードがわかりすぎる(笑)

見た目や優しい感じとかでビームは“勝矢さん”に見えてくる(笑)

いつものようにRRRもほとんど前情報を入れずに観たんですけど…マッリは普通にビームの娘と思ってたら妹かい!っていう(笑)

“友情か?使命か?”

作品のラスト、ラーマは古に原点回帰し、先進的な紳士としての姿を捨て、銃を捨て、弓と矢を手にする。

ビームは古の武器ではなく、バイク、爆薬、銃といった化学の進歩が生んだ叡智を使う。

スコットたちを倒したのは古と現代のハイブリッドの力だ。

実際の大英帝国を倒したのも、ラーマや父ヴェンカタが追い求めた“西洋の最新式の武器”ではなく、人々のなかに“くすぶる炎(怒りなどの感情)”、母なるインドの大地にもとからあった力と言えるかもしれない。

タイトルにある3つのR、それは“Rise(蜂起)、Roar(咆哮)、Revolt(反乱)”、劇中では“The STORY(物語のはじまり)、The FIRE(火)、The WATER(水)”、この3つのRが揃ったとき、ラーマとビーム二人の運命の歯車が動き出す。

最初は監督とW主演二人の名前の“R”、3つの頭文字を合わせての“RRR”でそこからブラッシュアップされていって現在の意味になったとか。

RRRに登場するキャラクターは“インドの古代神話”や“インド独立に貢献した英雄たち”からインスパイアを受けて生み出されたといわれている。

インド独立の歴史は複雑だ。

そもそも広大なインドそのものが非常に複雑な国で、北部、南部など住んでる地域(部族)によって肌の色から言葉、主とする宗教など全然違う。

小さな国に分かれていた頃は王、領主が各地域に存在、昔から多様性が激しく、もともとバラバラな国だった。

そこに船でやってきたイギリス人が1858年に“インド帝国”という名で植民地支配をはじめる。

1920年、第一次世界大戦終結直後。

インドからの戦地への兵の動員、戦費負担による財政の困窮などインドの人々のイギリスに対する不満が高まっていた頃。

イギリスはインドの人々に対して強硬な政策、手段を使い、力で抑えつけようとする。

のちに“マハトマ・ガンディー(ガンジー)”が登場、第二次世界大戦勃発後に日本軍がインドに進出するなどイギリスのインド支配は崩れていき、第二次世界大戦終結から2年後の1947年に独立を果たす。

だが、その独立もすんなりとはいかず、インドとパキスタンへの分裂という新たな争いが起こる。

この分裂、争いの背後にあるのは宗教だ。

“インド(ヒンドゥー教)”、“パキスタン(ムスリム、イスラム教)”、両教徒の対立を煽ったのはイギリス。

圧政をしく大英帝国がインドの人々の不満を自分たちからそらすため、インド人同士を互いに敵とするために信仰を悪用したのがはじまり。

このような争いは不毛だと説いたインド独立の父・ガンディーはヒンドゥー教徒に暗殺されてしまう。

宗教は人が考え、作るもの。

人を救いもするが、一歩間違えば人を不幸にする、人から大切なものを奪うものだと個人的には思ってしまう。

神様など超越した不可思議な存在はいるかも?しれないが、自分が宗教というものを信仰として見れないのはそういう理由だ。

学問として、神話など創作物、物語としては面白いと思うが、真面目に信じることは自分はできない(他人の信仰を否定したり馬鹿にしたりはしません、信仰は個人の自由なので)

人が作ったものである以上、それを悪用する人間もいる。

“宗教は諸刃の剣”、と個人的には思う。

現在のインドという国はどんな国か?

個人的にインド映画が大好きなこともあり、インドに対して非常に好意的に思っているのだが、現実は日本や他の国と同じようにやっぱり良い部分、悪い部分があるように思う。

また宗教の悪い影響の話になるが、インドはカースト(身分制度)を根にしたヒンドゥー教の悪習からの“男尊女卑”がひどい国だ。

このインドという国が抱える社会問題はインドのスーパースター“アーミル・カーン”が映画“シークレット・スーパースター”を製作するなど、インドで影響力のある著名人たちも声を上げ前には進んではいるが、まだまだ解決にはいたっていない。

また自分が観た映画のなかで好きな映画TOP5に入る“きっと、うまくいく(主演アーミル・カーン)”でも“強姦”というワードが風刺、皮肉として多用されているように、レイプ事件が非常に多い国(世界上位)としても知られている。

なので正直、個人的にインドは女性にはあまり行って欲しくない国だったりする。

もちろん一括りにするわけではなく、ラーマのような紳士、ビームのような優しくて強い男性も沢山いるとは思うのだが…。

そして“きっと、うまくいく”で描かれているようにインドは学歴社会で格差社会、貧富の差が激しい国だ。

首都“ニューデリー”の中心部には成功者たちが働き、暮らす高層ビルが立ち並ぶが、郊外にはスラムが広がっている。

裕福な家に生まれた者は勝ち組、また生まれた家がそうでなくてもいい大学を卒業すれば富める者になれる。

生まれた家が裕福でなく、高学歴の取得に失敗すれば待っているのは貧困、それゆえの自殺大国。

エンターテイメントの力でより世界がインドに注目している今、良い部分はさらに飛躍させ、悪い習慣は淘汰し、すべてのインドの人々が安心して暮らせる国になって欲しい、そう願ってやまない。

インドは日本がインドのことを“天竺”と呼んでいた遥か昔から友好関係にある国。

強い海軍を持ち、経済的にも協力関係にあるインドの発展は日本人にとって重要なこと。

…だいぶ話がそれました(汗)

スコット役として悪を見事に演じきったレイ・スティーヴンソンが去年58歳で亡くなりました。

マーベル映画“マイティ・ソー”の“ヴォルスタッグ”役としても知られる名優の死…天国でも豪快であれ。

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