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『無限論の教室』(講談社現代新書)

暑い日が続いています。スイカが食べたい。皆様いかがお過ごしでしょうか。こんな季節の昼間はどこかにおでかけに行くでなく、どこかの室内で本を読み進めるのに限るんだと思う。

さて、ブルーバックス「ロジックの世界」を読んだ際に「ラッセルのパラドックス」というパラドックスを知った。理解することが出来なかったけれど、面白そうだったので、ネットで解説本を探していたところ、野矢茂樹著「無限論の教室」が推薦されていたので購入した。

この本は大学講師のタジマ先生が2人の生徒相手にアキレスの亀から始まる「無限」についての議論の歴史を講義するという形で進められていく。無限にまつわる議論をわかりやすく解説してくれるが、タジマ先生が「愚劣」とか暴言をはくので、その部分がちょっととっつきづらかったりする。

多分、タジマ先生は野矢先生の先生である大森荘蔵先生がモデルなんだと思う。googleで大森荘蔵と画像を検索すると挿絵と似ている人の画像が出てきた。作中の中でタジマ先生が恩師のオーモリ先生について述べているところがある。メタ的というか自己言及的というか、ちょっとした遊びに感じた。

「無限」についての議論の中で「ラッセルのパラドックス」を含め「アキレスの亀」「対角線論法」「排中律」「ゲーテルの不完全性定理」などについても説明が入る。これらはすべて「ロジックの世界」でも記されているが、こちらの説明の方がわかりやすい気がする。(とはいっても、これらの用語を説明しろといわれてもできませんけれど。)

「対角線論法」については、ブルーバックス「直感を裏切る数学」にも説明がある。これはブルーバックス「直感を裏切る数学」の方が十進法で説明しているため若干わかりやすかった。「無限論の教室」が二進法で説明するのも意味があるのだけれど。

正直、「無限」や上述の「ラッセルのパラドックス」やらの用語についてまったく理解できなくても日常生活になんにも支障がないと思うし、日常生活をおくる為に有益な知識は他にもいっぱいあると思う。本を読んだことで論理的思考とは何か少しは理解できるかもしれないけれど。

ただし、本書のテーマとしても語られているが、ルートなんとかやπのような小数点以下「無限」に数が続く無理数は数としてある定まった値を持っているか。あるいは、そんな値は存在しないのか。答えもない問いを考えてみだすと止まらなくなってしまう人もいるだろう。そういう人には有限で貴重な時間を必要以上に奪われてしまう危険性はあるが、本書は非常に刺激的でかつ面白いと思う。

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