“STARS”の演出意図について語りたい──「B'z LIVE-GYM Pleasure 2023 “STARS”」レポ×感想×考察

B'zデビュー35周年を記念し6月からはじまったツアー「B'z LIVE-GYM Pleasure 2023 “STARS”」がついに終幕しました。

ツアーに先駆けて3月に開催された「B'z Treasure Land 2023」では過去のPleasureから映像が2本上映されました。上映されたのは「B'z LIVE-GYM Pleasure '93 “JAP THE RIPPER”」「B'z LIVE-GYM Pleasure '97 “FIREBALL”」で、いずれもライブ全編の映像公開は史上初でした。
「STARS」の星のついた円が燃えているという「JAP THE RIPPER」と「FIREBALL」のライブモチーフを組み合わせた今年のツアーロゴもなかなかに意味深ということで想像を掻き立てられたのももはや懐かしい思い出です。

Pleasureツアーはヒット曲満載のツアーと紹介されるのが恒例ですが、シリーズ開始当初は普段は日の目を見ないマイナーな曲にスポットを当てようというレア曲を中心としたアナザーフェイス的なツアーでした。そのため周年とは関係なしに開催された年も多くあります。
今回のツアーはアニバーサリー的なヒット曲満載!でもありつつ、原点回帰したレア曲もまた盛りだくさんという濃厚なセットリストになっていました。当初のコンセプトに則っていた93年・97年のPleasureツアーを全編公開したのはそうした原点を周知する狙いもあったのでしょう。
加えて随所にわたり、マニアほど涙が止まらなくなる演出が散りばめられてたライブでもありました。松本さんが持ってるギター見ただけで涙出たこととかあります?

そしてそれ以上に最新曲STARSでの演出が、何よりもこのツアーを象徴するものでした。
今回はそこに向けて、スタジアムツアーでの全日替わり曲を網羅しつつ、ライブレポートや感想と合わせ、選曲や演出の意図なども読み解いていく考察などなどを書いていきたいと思います。
なお、書いている人はアリーナ公演には参加しておらず、スタジアムツアーの皮切りとなった味の素スタジアム2days、ツアー最大キャパとなった日産スタジアム2days、そしてツアーファイナルの大阪最終日の計5公演に参加しています。(幸運にもスタジアムでの日替わりは全曲生で観れました)

ミニアルバム「BAD COMMUNICATION」も目眩を起こすほど長いので、休み休みお読みいただければ幸甚に存じます。なんか数えたら2万字超えてるようでしてすみません…

それではどうぞ~

SE.Mars~B'z MEGAMIX(仮)

スタジアムツアーの最序盤では無かったものの、開演前にB'z35thのロゴがカウントダウンになる演出が追加。「B'z LIVE-GYM The Final Pleasure “IT'S SHOWTIME!!”」でも再現された、元は「B'z LIVE-GYM Pleasure '93 “JAP THE RIPPER”」のオープニング演出ですね。
カウントが0になると流れるMarsはインスト音源。何を隠そうこちらは最初のPleasureである「B'z LIVE-GYM Pleasure '91」のオープニングSEなのです。今回は全編にわたって過去のPleasureを踏襲した内容になっています。「B'z LIVE-GYM Pleasure 2018 “HINOTORI”」では演出再現が多数盛り込まれましたが、今回は選曲面を意識している印象が強かったように思います。「STARS」の意味合いにはこれまでに制作した楽曲たちも含まれると稲葉さんは話していました。

最初にMarsが流れると映像には「MARS」のジャケットの球体が現れますが、そこからB'zの歴代ヒット曲・人気曲のトラック部分をリミックスした音源と共に、歴代のCDや映像作品・ツアーロゴなどのアートワークが彩る世界をカメラが進んでいく映像が流れます。中には「B'z LIVE-GYM 2003 “BIG MACHINE”」でのアラクレのモトクロスバイク演出をモチーフにしたシーンも。
最後には「B'z LIVE-GYM Pleasure '97 “FIREBALL”」のオープニングの巨大な腕が扉を開く映像から、扉の先に「HINOTORI」のロゴが現れ、ロゴが燃え上がり火の鳥が顕現すると共にPleasure(曲)のメロディーが流れて終わります。

1.LOVE PHANTOM

実はありそうで今まで一度も無かったLOVE PHANTOMスタートがついに解禁。
イントロのストリングス部分をカットし、代わりにピアノが入ってからの部分が長回しに。前回のPleasure「HINOTORI」のタイトル曲がLOVE PHANTOMの続編だったこともあり、「HINOTORI」からの繋がりを感じます。
実はx5周年のツアーは新曲からはじまるのが恒例だったのですが、新曲スタートはアリーナツアーのみでした。(アリーナツアーの1曲目はDark Rainbow)
過去の恒例や決め打ちから脱却し、なおかつオーディエンスを喜ばせる驚きに満ちたオープニング曲としてこれ以上無い選曲だったと思います。
ちなみに清さんのボーカルにより、近年はオケからもカットされていた「そして私は潰される」が生歌として復活!
LOVE PHANTOMスタートになった理由は他にも考察していますが、それはまた別の曲の項目で。

2.FIREBALL

ミドルテンポのドラミングからパワーコードでのFIREBALLのギターリフ!そしてリフが鳴らされるとともに松本さんの手にはなんと「Pleasure '97 “FIREBALL”」のオープニングで手にしていたGIBSON LES PAUL “FIREBALL”が!リフの2回目くらいで大型スクリーンにこのギターが映るんですが、いきなりのサプライズに涙が。。「FIREBALL」は今年幕張でのイベント「B'z Treasure Land 2023」でライブ映像がフルサイズで初公開されたツアーで、それを受けてのサービスでしょう。

97年の初演FIREBALLはのっけからCDと違うパワーコードリフからはじまるアレンジで、今回はそれを曲のオープニングに組み込んでいました。
97年版のオープニングにあった稲葉さんのシャウトはなく、パワーコードでのリフを何度か弾いたあと、97年版の歌い出し前のフレーズを演奏。そこから音源ver.のイントロを弾くというスタイル。
ちなみに「B'z LIVE-GYM 2017-2018 “LIVE DINOSAUR”」ではオケで流していたと思われる松本さんのボーカル部分、今回は生歌でした!ラストサビ「どうでもいい信念も灰になれ」のバッキングもオリジナルに近いアレンジになっていて嬉しかったです。

ちなみにちなみにLOVE PHANTOM→FIREBALLという曲順、お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、「Pleasure '97 “FIREBALL”」のオープニング2曲の順序を逆にしたものです。35周年ツアーのセトリとして誰が予想できるんだ…
ちなみにちなみにちなみに、こういうゴリゴリのヘヴィな曲をPleasureツアーでやるのは非常に珍しいのです。やっても1,2曲くらいかも。後のメニューからもわかる通り、今回は慣例を破る試みが多々みられます。

そしてそもそも流れ星って火の玉ですよね。魂に火をつけて、空を燃やしながら飛んでいける「STARS」になれるぞというメッセージが込められているようにも感じました。

そういえば日産スタジアム初日には、マジックアワーの夕焼けが分厚い雲の縁を茜色に照らし、まるでFIREBALLが飛び去った軌跡のようでした。それを稲葉さんの背から撮った映像をスクリーンに映した撮影クルーの粋な仕事に舌を巻きました。その時の空はツアー公式Twitterにも掲載されています。

3.RUN

これこそ誰も予想できなかったんじゃないでしょうか?
毎度おなじみ「B'zのLIVE-GYMへようこそ!」からのRUNって。
ちなみにようこそ前の茶番は稲葉さんが「B'z」のイントネーションを間違えたり、「B'zの」を「B'zが」「B'zは」などと間違えて松本さんに訂正されるもの。「LIVE DINOSAUR」で喋るツアーロゴとの漫才をお2人で再現するというスタイルでした。
最終日には稲「B'zとは!」松「もうええわ!」というツッコミも笑

それはそれとして、元々は本編のラストやアンコールで演奏されることが多かった曲です。こんな前半に演奏されるのは史上初。
「よくまあここまで俺たち来たもんだなと」35年の歳月をかみ締めつつ、さぁこれからその歴史を観てもらうぞという開幕宣言。これが前半にあることがむしろB'zが新しい地平を目指す意思表示にも思えますし、メタ的にはセトリが読めないというワクワク感も生み出してくれました。これまでのPleasureを振り返ると、終盤のどこかにRUNが来るだろうしそれはいつかのPleasureと似た位置になるだろうなとか、正直思ってましたすみません。お見逸れしました。
ちなみに今回はCメロで松本さんのカッティングが聴けます。最近はカッティングを弾くことが減ったので結構レアです。

4.星降る夜に騒ごう / 夜にふられても

これらは日替わり曲です。アリーナツアーからの続投ですが、まさかスタジアムツアーにまで登板してくれるとは思いませんでした。
この2曲は共に「星」が歌詞に入る曲ですが、星降る夜に騒ごうは「Treasure Land 2023」で映像公開された「Pleasure '93 “JAP THE RIPPER”」のセットリストに入っていたり、「B'z SHOWCASE 2020 “5ERAS”」(Day-1)で27年振りに演奏されたことやその曲名からもセトリ入りは濃厚と読んでいました。今のスタジアムに集まる客層ではシンガロングやラストのコールはそこまで沸き上がらないと思われますが、知ってる人は楽しんだらいいっていうスタンスでレア曲やってくれるのはありがたいです。せっかく有観客&声出しOKになったわけですからね。

そして「星空に向かって左斜めにカーブ切れば」からはじまる夜にふられても、なんと演奏は「B'z LIVE-GYM #00 “OFF THE LOCK”」以来34年ぶり!これを書いてる人はまだ生まれてません。そんなことある?
ちなみに松本さんは当時ライブでやるのが楽しいと言っていたそうですが、B'zの初ツアー以来やっていなかったのでした。
何気に間奏後のサビパートは音源的にはシンガロングを想定している多重コーラスとリバーヴです。ここぞとばかりに(軽く)歌わせていただきました。稲葉さんも大多数が知らないのわかっててもお構い無しに煽っていたような笑

かつてF1でおなじみだったT-SQUARE「truth」を思わせるメロディアスかつハイウェイ感のあるアウトロのギターソロが大好きなのですが、まさかこれを生で聴ける日が来るとは思っていませんでした。嬉しかった…!
後半はYTとのツインリードで極上の音色を聴かせてくれておりました。最初期曲のわりにはめちゃくちゃに弾き倒していない、メロディーの美しさにフォーカスしたギタープレイをしている曲で、なるほど今の松本さんのスタイルにこそ通じているんだなぁと。35年目の今だからこそ立ち返れる原点といえるでしょう。
ツアーファイナルではこちらが選曲されました。

5.恋心(KOI-GOKORO)

振付をうろ覚えな感じで思い出しながら踊る稲葉さんと、完璧に合わせるオーディエンスという茶番()からスタート。最近物忘れ系のネタ演出多くないですか?
Pleasureの定番曲ですが、今回は「何かな?」でサポートメンバーがマネキンチャレンジ(英樹さんは歌舞伎っぽい変顔)をするという趣向。
稲「結局、何なんですかね」に対し松本さんはジェスチャーで「さぁ?」と返すのみですが、一部公演では「なんだろうね」と答える一幕もありました。
これも女性コーラスが映える曲ということで、清さん大活躍でした。オリジナルに近いものが再現できるというのはシンプルに良い。

ラストサビではアンプの裏からゼブラのパペットが踊ってる姿が映されたり(違う動物の回もあったとか)、舞台裏のスタッフが踊る様子も映されました。
メンバーやファン一人一人、そして裏方のみなさんの力によって“ライブ”という作品は出来上がっています。ファン一人一人が「STARS」でもあると稲葉さんは語っていますが、B'zを取り巻くすべての人たちこそが「STARS」であると、そんなメッセージを感じます。表も裏も一体になっての恋心(KOI-GOKORO)、圧巻でした。

6.イチブトゼンブ

若年層の認知度がぶっちぎっている曲。毎回少しづつアレンジを変えていますが、今回は1番をがっつりバラードver.、2番からオリジナルアレンジといったスタイルになっていました。冒頭には川村さんのピアノソロと稲葉さんのスキャットが入り(Highway Xのリヴのようにバラードを歌う声に調整する目的があったかと思います)、「愛し抜けるポイントが~」のメロディーを弾いて曲に入ります。
あまり大きくアレンジされることのない曲ですが、今回はかなり大胆にやってくれました。アコースティックver.が披露される日も来る?
今回のツアーにおいては「すべて何かのイチブってことに僕らは気付かない」というフレーズが、後の「STARS」の演出の枕詞になっていたように思います。「愛しい理由」を再確認したであろうそのシーンの演出については当該項目にて。

7.NATIVE DANCE

清さんのベースソロからスタートします。5弦ベースでのスラップを主軸としたソロは、終盤スラップでこの曲のイントロのフレーズを刻みます。この曲にはスラップのイメージが無かったので新鮮!
「Treasure Land 2023」で公開された2作品(「FIREBALL」「JAP THE RIPPER」)の両方でも披露されていたPleasureの定番曲。
わりと何気なく並べていますが、「ありのままの姿を見せる」というこの曲のテーマと、イチブトゼンブの「愛し抜けるポイントがひとつありゃいいのに」というテーマは繋がっているように感じられます。「STARS」である我々一人一人が個々に人生を歩む人間であるとフォーカスしてくれているようです。

8.今夜月の見える丘に / もう一度キスしたかった / GUITAR KIDS RHAPSODY

日替わり曲。定番バラードの中にしれっと混ざるGUITAR KIDS RHAPSODYはなんと31年ぶり。日替わりっていうか、ええおい……
ちなみに首都圏(味スタ・日産)では聴けませんでしたが、WOWOW放送が決定したツアーファイナルの大阪最終日に選曲されました。(歓喜)

今夜月の見える丘には2番が静かめなアレンジになるという新しいスタイル。ギターソロはシングルver.です。これもまた月の明かりに照らされて心の姿が顕になるといったテーマで、イチブトゼンブ→NATIVE DANCEとの並びではコンセプチュアルに感じられます。

もう一度キスしたかったは、珍しく松本さんがサビでクリーントーンを弾くというアレンジでした。今回は定番曲もアレンジが凝っています。そしてスクリーン裏の高層ビルを思わせるような鉄柱が都会を舞台にした曲のイメージと合っていました。歌詞カードでそんな光景が載っていたのにやらなかったペインキラーの話は無しだ。
今夜月~のように並びで演出意図を考察するなら、それでもすれ違ってしまうひとつのドラマといったところでしょうか。単純にPleasureの定番曲という枠でもあります。(日替わりになりがち)

GUITAR KIDS RHAPSODYは稲葉さんのアコギと松本さんのクリーントーンのセッションからはじまります。松本さんがAメロのメロディーを弾いたときは唸りました。それはもう土佐犬のごとく。
ライブ映えしそうなミディアムナンバーですが、先述の通り演奏は31年ぶり。アリーナツアーでのメニューに含まれていましたが、スタジアムツアー序盤では披露されませんでした。ところが単発となった札幌公演で急遽登板。唯一3日間の大阪に合わせて3パターン目の日替わりとして用意したのかもしれません。
もうあれですよね、「天国のジミヘン達」って2つの意味で「STARS」ですよね。スターになったスター…
ロックへの初期衝動が芽生えた学生時代、原点の原点を歌うこの曲がPleasureツアーでお目見えしたのはなんとも嬉しいことです。「捨てきれない情熱」を端々から感じるライブでした。
ちなみに歌詞の「10 years ago」を「long time ago」、「ストラト」を「レスポール」に変えていました。痒いところに手が届くというか、生きた言葉を歌い続けているんだなぁと改めて。

アウトロでは松本さん、稲葉さん、YTが横並びになりギターセッション。ロックスターに憧れたかつての少年たちが楽しそうに弾いている姿はとてつもなくエモーショナルでした。

9.Calling

生声コール&レスポンスとかいう稲葉さんの怪物的演出からスタート。イントロと共に「STARS」のモニュメントがせり上ってきます。これはモニュメントがCallingされたってことか…(んなわけ)
イントロのリフがアレンジされていたり、アウトロのオブリガードで音源のフェードアウト部分でしか演奏されていなかった(ライブだとwow wow~を繰り返さないので)フレーズを弾いてくれたり、マニアックな部分で唸らせてくれるアレンジでした。ヘヴィーでカッコよかった…
「君がいるなら戻ってこよう いつでもこの場所に」というフレーズはどこか今回のツアーにおいて象徴的でもありました。もちろん今回に関しては「君」=「STARS」=「ファン」と捉えられるでしょう。

10.太陽のKomachi Angel

👏👏・👏👏👏のクラップからはじまるラテンスタイルは健在。久々の声出し解禁ライブなのでやらねえ理由がないものと存じます。
「あなたは太陽のKomachi Angel 眩しすぎるYo!say」ですからね。「STARS」は眩しい。いや太陽なんですけど。
細かいんですが、ギターソロ前にベースリフパートを挟みましたね。これは英詞版「KOMACHI-ANGEL Red Hot Style」のアレンジを踏襲したもの。まさかそんなアレンジを2023年にやってくれるとは!
アウトロでは松本さんの情熱的なギターソロが追加。間奏ソロのフレーズを踏襲しながら低音の艶やかさがたまらない至極のギターソロでした。
曲終わりの照明が左右で青と赤に分かれているのがなんだかこの曲のシングルジャケットの配色を思わせたり。実際には次の曲の演出にかかわるものでした。

11.LADY NAVIGATION

そういえばこれ10年に1回の曲なんだなと最近気付きました。(9thはともかく)
91年の最初のPleasureツアーのオープニングを飾った曲で、Marsからはじまる今回のツアーにおいて欠かせないナンバーでもあるでしょう。
英樹さんのジャングルビートのドラミングから拳を突き上げて煽る松本さん。この感じはなんだ……「B'z LIVE-GYM Pleasure 2008 “GROLY DAYS”」のNATIVE DANCEっぽいな……いやさっきやっとるやんけ。
とか思ってたらアンプと向き合いながらLADY NAVIGATIONのギターリフをぶっとく鳴らす松本さん。フィードバックノイズがカッコよく鳴っていてため息が漏れます。
アレンジは2013年の「B'z LIVE-GYM Pleasure 2013 “Endless Summer”」のバージョンを踏襲。オリジナルに比べて夏っぽいグルーヴ感がありますね。再録されることがあればパーカッションも入りそう。

左モニターに青背景の稲葉さんイラスト、右モニターに赤背景で松本さんのイラストがせり上ってきます。せり上ってきたついでになんと映像を突き抜けて巨大バボットが顔の上半分だけスクリーン裏から顔を出します。これが2.5次元か…

12.BIG

この曲の前にアコースティックな雰囲気の曲たちのMVやライブ映像がダイジェストで流れます。味スタ初日のMCくらいでしか説明されませんでしたが、これは2人での映像を集めたものだそうです。
実は超貴重映像もありまして、「Survive」のギターソロ部分まで入ったPVは初公開の可能性があるんですよ……もっと短い映像はアルバムのダイジェストPVとかで観れるんですが。

そんな流れから「2人でできる曲を」とスタートしたこの曲。実際には途中からバンドも参加してきますが。
長丁場のライブということで、リラックスコーナーといった感じの選曲です。「Endless Summer」でいうところのあいかわらずなボクら枠。
ちなみにスタジアムツアー開始直後に放送された「関ジャム 完全燃show」B'z特集の延長戦にてピックアップされた曲でもありました。タイミングを図って放送されたものかもしれませんね。

ここではバーのセットが用意され、曲の前に松本さんのシグネチャーウイスキー「Waltz In Blue」や、歴代の様々なレアグッズ等が紹介されます。
稲葉さんと松本さんで乾杯をするのですが、松本さんがグラスに注がれたWaltz In Blueを手にすると、稲葉さんは「じゃあ僕のシグネチャーモデルを」とグラスを取り、松本さんに「水だろ?」と突っ込まれる一幕も。(味スタと日産のどこか2公演でこのくだり見ました)
カウンターには5ERASのボックスセット、コンプリートシングルボックスのトレーラーエディション、デビューアルバムのLP、ファンクラブ会報誌の第1号、店頭プロモーション用のカセットなど、公演ごとに様々なアイテムが登場しました。

曲がはじまると、バーの壁に飾られたアルバム「LOOSE」のジャケットがスクリーンに映ります。
おそらく史上初の試みだと思われるのですが、今回のBIGはなんと歌詞が日替わりでした!
2番のABメロが日替わり部分になるのですが、初日パターンではオリジナル、2日目パターンで書き下ろしの新歌詞を歌っていました。しかも毎回同じものではなく、会場ごとに書き換えられていったようです。

覚えている限りでは以下の通り……どなたか会場ごとにまとめられている方がいると思うので、気になる方は調べてみてください。

■味の素スタジアム
また余計な一言で アイツを怒らせた
いつもの悪い癖なんだ わかってるのにやめられない
正しいのはいつも自分だ ねえそうだよね?松ちゃん
とりあえず今日はコレで溺れて 明日会ったら謝ります

■日産スタジアム
また余計な一言で あの娘を泣かせました
いつもの悪い癖なんだ わかっていてもやめられない
(Bメロ以下は味スタと同じだったような)
(コレは稲葉さんが松本さんと乾杯した水を掲げながら)(お酒のつもりでしょう)

間の公演には参加していませんが、大阪では「たこ焼きが好きなあの娘は~」といったご当地歌詞になっていました。ブルース曲ならではという感じで面白い試みでしたね。
おそらく歌詞変更&日替わり歌詞とした意図は、単純な遊び心、還暦近い今の稲葉さん自身が歌うにはオリジナルだとしっくり来ない、とはいえ演奏が実に27年ぶりなので原典を大切+ファンサービスも含めてオリジナルも歌う機会を作った、といったところではないでしょうか。
ちなみに歌い出しは共通して「勢いだけでもう35年 乗り切りゃ疲れもちょっと溜まる」でした。
今回のツアーの色々や、近年のツアーで起こったトラブルの数々を思うとなかなか染み渡るフレーズでもあります。
それでもなお「もっとビッグにならなきゃいけない男だから俺は」と歌う謙虚さと向上心への貪欲さは本当にB'zらしいですよね。あんたらこそROCK STARSだよ。新たな試みも多い今回のツアーにフィットしたよく1曲でした。

アウトロでは稲葉さんのブルースハープソロを挟んで「絶対にビッグ」のコール&レスポンス。これは「B'z LIVE-GYM '96 “Spirit LOOSE”」の再現でした。当時は「B'zのファンは!?」\絶対にビッグ/といった掛け合いも。今回は日によってそのへんはあったり無かったり。大阪最終日は「大阪の街は!?」といった掛け合いがありました。
ちなみにこのブルースハープのフレーズからは稲葉さんソロの「O.NO.RE」のイントロを思い出した方も多いのではないでしょうか?有識者の話では、上記の「Spirit LOOSE」ツアーで吹いていたソロを「O.NO.RE」に引用したのが元々だそうです。覚えてる方もすごいしそれを再現してくるB'zもまたすごいなぁと……いやほんとそんなところまで?

ブルースハープソロに入るタイミングで松本さんはエレキに持ち替えます。味の素スタジアムあたりまでは曲締めのフレーズをエレキで原曲通りに弾いていましたが、それ以降はバンドとジャムって普通にジャーンで終わりという感じに変更されていました。

13.spirit loose II

メンバー紹介曲です。BIGのアウトロが終わるとただちにYTが弾き始めるフレーズに聴き覚えがありすぎるんですよね。アルバム「LOOSE」のエンディングにボーナストラック(隠しトラック)として収録されているインストゥルメンタルナンバーです。
隠しトラックではあるものの「B'z The Best “Treasure”」のHOMEなどと違いトラックが分離されていることもあり、JASRACへの届出の関係で便宜的に曲名が付けられており、CDをパソコン等に取り込むとデータベースからこの曲名が取得されます。残念ながらサブスクリプションやダウンロード販売サービスでは配信されていない曲なので、アルバムの全像を漏れなく聴くにはCDを聴く必要があるわけです。時代の流れと共にマニアック度が増した曲と言えるでしょう。

「LOOSE」繋がりでBIGからこのナンバーというのはなかなか粋だなぁと思いました。シンプルなブルースセッションといった感じですが、この曲をベースにした各メンバーのソロパートでメンバー紹介がおこなわれます。
演奏を終えると、稲葉さんが「そしてOn Guitar!」とお待ちかねの煽りを。
「そしてOn Guitar,Mr.Tak Matsumoto!」

メンバー紹介を受けて丁寧なMCで35年分の感謝を述べる松本さん。いつの間にかその手にはゼブラ柄のギターが!FIREBALLに続き、もうこれだけで何かを察して涙が零れた方も少なくないのではないでしょうか。自分もそうでした。
稲葉さんに「今日のお客さんはどうですか?」と問われる松本さん。会場ごとに違うことを言っていましたが、大阪最終日は「ウルトラスウィート」。
そして改めて稲葉さんが「On Guitar,Mr.Tak Matsumoto!」と紹介すると、松本さんがステージのセンターに躍り出てギターを構えます。

14.JAP THE RIPPER

極太のギターリフを1だけ叩きつけるように鳴らし、スタジアムを煽る松本さん。このギターリフを聴ける日が来ようとは…!
93年の渚園「Pleasure '93 “JAP THE RIPPER”」で初披露され、2001年の「B'z LIVE-GYM 2001 “ELEVEN”」までは準定番曲的な位置付けで頻繁に披露されていましたが、それ以来披露されず、実に22年ぶりのレギュラーメニュー登板となります。

味の素スタジアム初日は「LIVE DINOSAUR」のSKYROCKETのようにステージの左右へ悠々と移動しながら何度かギターリフを弾いていました。2日目以降はセンターに留まったまま何度か弾いてから始めるスタイル、日産スタジアムあたりから2回目にアーミングを入れるなど、公演を重ねるごとに激しさが増していった曲でもあります。

何度かギターリフを弾いて煽り、そのまま演奏へ。イントロ部分のソロはオリジナルより長めにメロディーを弾いていたり、過去のライブアレンジであったようなイントロ前半と後半の間のタメのようなものが無くり原曲に近い構成になるなど、今回は今回用のアレンジとなっています。

93年の再現で稲葉さんが客席にボールを蹴り込む演出もありました。ツアーの途中からボールの個数が増えた模様…笑
ギターソロ前には「アメトーーク!」B'z芸人回でも紹介された稲葉さんを払い除ける松本さんという演出の再現が!

そしてギターソロ後のキーボードソロでは轟音でギターリフを叩き込む松本さんの音がめちゃくちゃ大きくて、川村さんのソロが喰われるほど!笑
それがまた若かりし頃のギラついた熱量が戻ってきているようで、別楽器のソロパートだろうが俺のバンドだ!と言わんばかりのアグレッシブさがビリビリと伝わってきました。この曲での松本さん、若返ってませんでした?笑
アウトロの「JAP THE RIPPER!」ではスクリーンで抜かれていないものの松本さんがフレーズに合わせて敬礼的なポーズをしていました。肉眼でしか見れなかった激アツの1コマ!

これもFIREBALL同様に「Treasure Land 2023」での映像公開を記念したファンサービス的な選曲でしょうが、一方で「強引なオノレをさらしてヤりゃあいい」と剥き出しの個を晒せと歌うこの曲のメッセージは、先のイチブトゼンブやNATIVE DANCEとも通ずるものがあるのではないでしょうか。
これらは我々が大多数に紛れるモブではなく、一人一人が尊重される存在であるというテーマで通じていて、後のSTARSに繋がっていくものであると感じます。曲名の由来についても「ミーハーな日本人だから(あえて蔑称の)JAP」を用いているそうです。

15.YES YES YES

「5ERAS」で初披露され、よりシンガロングに特化したアレンジに生まれ変わり「Highway X」に収録されたナンバーです。当時からみんなで歌うことを想定して作っていたもののそれが出来ない状況が続き、ついに今回のツアーで歌えるようになったということで選曲されました。
折に触れて稲葉さんって観客が歌うの好きなんだなって思ってましたが、もうこの曲に関しては本当にやりたかったんだなぁってウズウズしてたのがひしひしと伝わってきてましたね。

抑えきれない稲葉さんは曲がはじまるなりアリーナ席へと降り、歌いながら客席を回ります。味の素スタジアムではアリーナ前方席の周辺のみでしたが、日産スタジアムではブロックごとの柵が無いからかアリーナ外周をまるまる一周回るという演出へ変更。「B'z LIVE-GYM 2006 “MONSTER'S GARAGE”」でのRUNのようなイメージです。
すごい勢いで走りながら歌い、サビラストの「YES YES YES!」のタイミングでアリーナ席をバックにスタンド席を「いきましょう!」と煽りながら全員で歌う稲葉さん、本当に楽しそうでした。
会場に集まったSTARS一人一人になるべく近付きながら、一人一人がみんなであるとその身を持って示すように一緒に歌っていた、稲葉さんのやりたかったことが詰まっていたような時間。サビラストのみならず「ソウダソウダソウダ!」のコーラスなど、沸き立つ観客が思い思いに大声で歌う空間。自分自身も一緒に歌いながら、ああこれがやりたかったんだなぁ良かったなぁ良かったねぇ楽しい~と思っていました。親心(OYA-GOKORO)が炸裂してしまった方も少なくないでしょう。

だいたい1番サビで下手側中央より後方寄り、2番サビで中央スタンド(つまり1番ステージから遠いエリア)を、ラストサビで上手側スタンド後方を煽るような形。
味スタと日産は中央スタンドで観ていたのですが、ステージから1番遠いところまでわざわざ自分の脚で走ってきて一緒に歌いに来てくれた稲葉さんに誰もが喜び興奮し、この日一番の熱声が沸き起こったのは言うまでもありません。サブステージが無い演出プランでしたが、これは本当に嬉しかったなぁ…

ちなみに大阪2日目のライブ中に稲葉さんは足を負傷してしまったそうで、ツアーファイナルとなる大阪3日目の開演前にはスクリーンに稲葉さんからのコメントが流れます。

稲葉です。本日の公演に先立ち、お伝えしたいことがあります。
昨日の本番中にちょっと足をケガしてしまい、いつものように動けませんが、至って元気で、やる気マンマンなのでご心配なく!!
千秋楽を思いっきり楽しんでください!!

同じコメントが何度か流れましたが、ライブ中はそんな素振りも見せず動き回る稲葉さん。しかしこの曲の演出を知っていたみなさんは「ここはさすがに外周回るのはやめるのでは?」と思ったことでしょう。しかしそこがプロの仕事でした。

なんと稲葉さん、スタッフが用意した特製台車に搭乗!
凄まじいスピードで台車を押すスタッフのみなさん。「こんな予定じゃなかったろ」と台車を指しながら歌う稲葉さん笑

外周を走っていた頃は距離や尺の問題で上手側スタンド前方寄りが、ただ稲葉さんが駆け抜けていくだけで若干不憫に思っていたのですが(すみません…)、運搬スタッフさんたちがプロすぎるあまり、下手・中央・上手ともちょうど中間の絶妙なポジションでサビラストの「YES YES YES!」を煽ることに成功していました。B'zのスタッフは絶対にビッグだ……これが地上の星ってやつか。
すごいスピードで運ばれていく稲葉さんを見て少し「B'z LIVE-GYM 2005 “CIRCLE OF ROCK”」を思い出したりもしました。

最近ファンクっぽい曲でお馴染みのタンバリン投げ、今回はスクリーン映像のアニメーションにまでなり、1度星になってから戻ってきました。

16.愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない

YES YES YESが終わり暗転したステージ、スクリーンには星空が映ります。会場にはターコイズブルーの波状のレーザーが。アリーナ席からだと頭上をオーロラが照らしているように見えたのでしょうか、スタンド中央の2F席で観ていた味スタと日産ではアリーナ席が美しい水面になっているかのように見え、ある意味では後方席の特権と言える視界でした。
往年のファンからすればこのレーザーには既視感があることでしょう。「あ、この照明ってことはこのあと軽くSEが流れてLOVE PHANTOMだな」と。いつものPleasureらしくなってきましたねえ。……いや待て、それ1曲目にやっとるやんけ。あれ?

そして流れ出すイントロは愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない!
イントロと共にスクリーンの夜空扉となって開かれ、過去の様々なライブシーンを散りばめた歴史を感じさせる映像が。
しかも原曲とは異なり弦以外に管楽器等も追加された「House Of Strings」(松本さんのソロアルバム)のバージョンにかなり近いものです。当初はHOS版からの引用と思っていましたが、よくよく聴くとそちらに入っていない音も入っており、今回のツアー用に新録したものの可能性が高いと見ています。そこからイントロのフレーズをギターで演奏するという豪勢なオープニングから曲がスタート。

もうこれ1曲目でもいけるんじゃね?今年フェス出てたらこれが1曲目だったでしょ?と言わんばかりの第2のオープニングでした。
…実はこの曲、もしかしたら本当に1曲目を予定していたのでは?と思っています。先述の通りLOVE PHANTOMを思わせる照明だったこともあり、本来はこの曲が1曲目、この位置にLOVE PHANTOMを想定していたのではないかなと。
しかしそれではこれまでのライブでよくやっていた構成と変わらない、驚きが無いということで入れ替えられ、今回の曲順に落ち着いたのではないでしょうか。
スタジアムから追加されたLOVE PHANTOMとは異なりアリーナツアーから演奏されていた曲ではありますが、その時点でスタジアムツアーのステージプランならびに演奏曲も決まっていたと思われます。

真偽はともかく、何度観ても感動する演出でした。めちゃくちゃアツい!
声出しができる嬉しさをCメロのシンガロングで噛み締め、アウトロではギターバトルを堪能。終盤戦の火蓋を切る最高の切り込み隊長でした。

17.ultra soul (Include:BAD COMMUNICATION)

稲葉さんの煽りからライブはさらに熱を高めていきます。大阪最終日は(この会場では恒例になっているという)音漏れ勢についても言及し、会場外へも呼びかけるとなんと外からも大歓声が!
映像作品「a BEAUTIFUL REEL. B'z LIVE-GYM 2002 GREEN 〜GO★FIGHT★WIN〜」に収録された、アメリカツアー「B'z LIVE-GYM 2002 “Rock n' California Roll”」の凱旋公演となった日比谷野外音楽堂のドキュメンタリーに収められたワンシーンを彷彿とさせる一幕で、外からの熱も受け取った場内はさらにヒートアップします。

2サビが終わるとなんとBAD COMMUNICATIONがはじまります。実はこのBAD COMMUNICATIONは半音上げのレギュラーチューニングで演奏されていて(原曲は半音下げチューニング)、NHK「クローズアップ現代」出演時に話していた「演出上、楽器を持ち替えることができないから半音上げで演奏している」曲とはつまりこれのことでした。
「HINOTORI」でLOVE PHANTOMの間奏にHINOTORIを演奏した要領ですが、毎回演奏されるultra soulに新しい風を入れる上で、元々が長い曲でショートver.で演奏されることも少なくないBAD COMMUNICATIONは実に相性が良いと言えます。
「MONSTER'S GARAGE」ではBAD COMMUNICATION→ultra soulと繋げて演奏されたので、それを思い出した方もいるのではないでしょうか。この時のBAD COMMUNICATIONもultra soulに合わせてレギュラーチューニングでの演奏でした。

ちなみに「don't you think so?」の部分は、ツアーを通して「don't you think so? baby」と「LOOSE」収録のBAD COMMUNICATION(OOO-18)のバージョンで歌っていました。さらに言うとOOO-18のほうはレギュラーチューニングだったりします。
BIGからメンバー紹介の一連からの踏襲であり、「Treasure Land 2023」で公開された「Pleasure '97 “FIREBALL”」でのバージョンも意識したものと考えられそうです。(97年ver.は1番だけエレキでOOO-18のアレンジを演奏するというものでした)

BAD COMMUNICATIONを1コーラス歌うとultra soulへ戻りギターソロへ。聴き慣れた曲にも常に新しい試みを取り入れてくれるのが嬉しいですね。

※曲名表記は昔の会報に書かれていた「B'z LIVE-GYM '94 “The 9th Blues” <part 2>」のセットリスト記載の「Sweet Lil' Devil(Include:GIMME YOUR LOVE)」に準じています。

18.IT'S SHOWTIME!!

前曲から繋げる形でそのまま演奏。日替わりメニューになることの多い曲ですが、今回は固定メニュー。
イントロで花火が上がる演出は2003年の「B'z LIVE-GYM The Final Pleasure “IT'S SHOWTIME!!”」の再現でしょうか。
実は今回、この「The Final Pleasure」までのPleasureタイトル曲のうち、超定番のjuiceとTIMEを除いたすべての曲が演奏されています。(「B'z LIVE-GYM Pleasure '95 “BUZZ!”」のみタイトル曲が無かったため、ツアー用に書き下ろされたLOVE PHANTOMが該当と見て良いでしょう)

アレンジの基本はシングルver.でしたが全面的に仕上がりがキレッキレで、空間をより広域に感じさせる映像演出も相まってめちゃくちゃカッコ良かったです。
曲締めのフレーズはスタジアム序盤までは原曲通りでしたが、日産2日目?あたりから単音での演奏に変更となりました。次曲への繋ぎ部分への導入をより印象的なものにするための変更かと思います。こんな細かいところまで日毎にブラッシュアップしてくれてるので、何度観ても楽しいわけですね。

19.君の中で踊りたい 2023

誰もが耳を疑った新録ver.の2ndシングルが、本編終盤のハイライトに抜擢されるまでに至りました。なんとイントロで銀テープまで発射!
演奏自体は「B'z LIVE-GYM 2008 “ACTION”」以来15年ぶりと再演歴が無かったわけではないのですが、それでも当時はホールツアーのレギュラーメニューからアリーナでセトリ落ちしてしまうという限られた人しか聴けなかった曲。アレンジも原曲をシンプル化した形でした。

それが新録により凄まじいカッコ良さにアップデートされ、本編終盤を盛り上げるナンバーにまで昇華されるとは一体誰が想像できたでしょうか!
「STARS」の意味合いには「これまで製作してきた楽曲たち」が含まれますが、ブレイク前にリリースされた最初期のシングルナンバーを拾い上げて宝石のごとく丁寧に磨き上げ、これまで以上に煌めく星へと生まれ変わらせてくれました。こんなにアツい演出、そうそうないのでは?

カッコ良くて踊れるハードロック・ギターリフが特徴的な曲です。当時志向したデジタル×ロック路線を超えて、ハードロックバンドとしての存在を確かなものとした現在のB'zなりにアレンジされたことで、コンセプトを持って製作された楽曲に内在していた作り手の本質が剥き出しになった、いわば“真の姿”といえるアレンジになったと言えるでしょう。
この曲がスタジアムクラスのライブでハイライトを飾るという信じがたい現実に涙が止まりません🥲

20.兵、走る

MCを挟んで最後の曲はB'zの2010年代を代表するヒットナンバー。リリース年のツアー「B'z LIVE-GYM 2019 “Whole Lotta NEW LOVE”」を最後に声出しで演奏できていなかった曲ですが、ついに本来の形で、みんなで拳を突き上げ歌うことができました。大団円!
80年代、90年代、00年代、10年代と4つの時代にそれぞれ「B'zといえばこれ!」というヒット曲を生み出しているモンスターバンドB'z、その中でも超新星といえるキラーチューンですね。新しい時代を常に駆け続けるB'zの35thアニバーサリーツアーである「STARS」の本編を締めるに相応しい選曲であったことは言うまでもないでしょう。

En1.STARS

今回のツアーのテーマを考えるにあたり、一番に浮かんだのがライブでのファン一人一人の姿であり、それがまるで星のように眩しかったと述懐する稲葉さん。
味の素スタジアムのMCでは、コロナ禍では声が出せず沢山の手拍子で応援してくれた、その手拍子をもう一度聴かせて欲しい、そこから次の曲を始めたいといったことを言っていた記憶があります。

1番が終わると、ステージ上でキーボードの川村さんがスマホライトを点けている姿を稲葉さんが発見。
「みなさんの輝きも見せてください!」と稲葉さんが言うと、観客一同スマートフォンを取り出しライトを点灯。
すると客席一面を埋め尽くすライトがまるで満天の星空のように!あの光景は、どんな場所で観ていた人からも感動的に映っていたでしょう。
誰も何も知らなかった味の素スタジアム初日での驚きと感動はそれはもう素晴らしいものでした。

ただ、翌日以降は勝手を知ってしまった一部の観客がフライングでアンコール中からライトを点灯、それを見て「あ、そういう感じなのかな?」と追随してしまう人が多数現れるという事態に。(あえて言いますが、メンバーから言われる前にやるのは“野暮”です)
それを受けてか大阪最終日にはアンコール中のスクリーンに「演出協力のお願い」といった形で、メンバーから声かけがあるまでは点灯しないようメッセージが流れました。
大規模イベントの難しさを感じる部分でもありましたが、最終的には曲がはじまる時点では誰もライトを点けておらず、大成功だったと言って良いでしょう。

ちょいと苦言が出てしまいましたが、話を戻します。
この曲の演出意図について書きたくてこの記事を書いているようなものなのです。

「B'zでスマホライト」というと、思い浮かぶイベントが2つあります。
ひとつは日本人アーティストとして初のヘッドライナーを務めた「SUMMER SONIC 2019」、そして2022年開催の「B'z LIVE-GYM 2022 “Highway X”」横浜公演初日の一幕です。

「SUMMER SONIC 2019」では、裸足の女神が(間奏まで)アコースティックver.でしっとりと演奏されました。この際、オーディエンスが自発的にスマホライトを点灯させはじめたのです。
B'zはライブのほとんどがワンマンライブで、フェスや対バンに出演することは非常に稀です。したがって、基本的にライブ中の携帯使用はNGが染み付いているB'zファンが自発的にやったことではないと言えます。
海外アーティストが多数出演するフェスで、そんな中でB'zを観に来てくれた、“フェスだからこそ出逢えた観客”の方々がフェスのノリで自発的に起こしてくれた演出だったわけです。そしてB'zファンもそれに追随し、満員のZOZOマリンスタジアムは美しい光景に包まれます。
現地で観ていましたが、見渡せば息を呑むような感動的な光景が広がっており、普段とは違うフィールドだからこそ観ることができた景色だったなぁと噛み締めていました。並行しておこなわれていた「Whole Lotta NEW LOVE」ツアーには参戦していたものの、フェスならではの空気感でしか観られないB'zがあることをロッキンで味わっていたために味をしめてサマソニに参戦したわけですが、思いがけぬ財宝に出逢った!と嬉しくなったのを覚えています。これにはB'zのメンバーも相当に感動した様子でした。

この出来事を受けてのアイデアでしょうか。あるいは声援を送れない中で、「HINOTORI」での一件を思い出し応援したい気持ちが強く出たこともあるのでしょう。当日参戦はしていなかったのですが「Highway X」横浜初日は、ライブスタート時から稲葉さんの声が絶不調で、終盤まで演奏したあとしばらくライブが中断となってしまったそうです。(後にコロナ陽性の疑いがあるということで、残す2公演は延期となりました)
その中断を待つ間、観客が自発的にスマホライトを点灯して応援していたとのこと。ステージに戻りその光景を見た稲葉さんは「こんなの見たことがない!」と感動し感謝を述べたそうです。

それが今回、このSTARSでの演出に繋がったのでは、いやそもそも「STARS」のテーマに繋がる一因になったのではないかとすら思えます。
「みなさん一人一人がB'zを照らすSTARSなんです!」と稲葉さんは語りました。

これまでのいくつかの曲で、個としての一人一人を尊重するメッセージを持った曲が選ばれているといったような話をしました。そんな一人一人がライトを手にし、翳し、それらが集まって誰もが目を奪われる光景が作り出されているのです。
もう一度確認します。現地でライブを観てこれを読んでいるそこのあなた。そのライトを点けていたのは誰でしょうか?そう、あなたです。他の誰でもないあなたなのです。

B'zは「みなさん一人一人がSTARSです」という言葉を、実際に一人一人を輝かせて感動的な景色を生み出し、実演してみせたわけです。
言葉だけでは伝わりきらないことがあるから、自らの手でライトを点灯させ、それによって出来た景色を見せることで、それぞれがSTARS=星のような輝きを持っているということを自覚させるという狙いがあったのではないでしょうか。

「The Final Pleasure」ではスタッフからのサプライズでサイリウムが配布されましたが、今回は観客各自のスマホを用いて演出がおこなわれました。
近年では遠隔操作できるライトを全観客に配布して装着させ、任意のタイミングで点灯させるといった演出もありますが、それでは今回の演出意図は果たされないのです。
会場に集まったファン一人一人が、自分の持っているスマートフォンを自分で取り出して操作してライトを点ける、そういった誰かに与えられたものではない、一人一人の所持物と行動によってこの景色が作られることこそがもっとも大事なことだったと思うのです。

会場の一番後ろまで届く爆音を鳴らし、時に生声をそこまで届け、客席を自ら回って共に歌い、誰一人として置いていかずしっかりと音楽とメッセージと熱狂を届けてひとつのライブを完成させる。どれだけキャリアを重ねて大きくなってもそういうことができるのは本当に凄いことで……いやむしろ、だからこそできることなのもしれません。

ツアーファイナルで稲葉さんは「我々も輝いて見えるでしょ?これ全部、みなさんの輝きの照り返しですから」と話していました。謙遜のように聞こえますが、紛れもない本心なのでしょう。一人一人の輝きによってB'zは支えられていると、それをしっかりと体感で理解してほしいという意味の演出でもあったと思っています。
まぁそれはそれとしてもあなたたちがいなけりゃ我々もちょっとばかし輝いたりしないわけですが!笑
良い意味でお互い様ということでしょう。いつも今までも勇気や希望や共感や力をくれて本当にありがとうございますという気持ちです。

En2.Pleasure 2023 ~人生の快楽~

年々歌詞を変えていくPleasureのテーマ曲でライブはフィナーレを迎えます。

何年ぶりだろ アイツとまた会えた
そして懐かしい笑顔を見せた
何が起きても自分次第
人はいつからだって新しくなれる

このあとの歌詞で、近年は「自分はどうなんだろう」「自分はこれしかない」自問自答や言い聞かせる表現への変更がありましたが、今回は原曲通り「自分は間違ってない」になりました。
間違っていないと思っていたことにアイツの姿を通して疑問を抱き、揺れて思い直すように言い聞かせ、その先で本当に間違いじゃないと信じられる答えに辿り着いたという流れに思えます。アイツの変化に一喜一憂していたら、それを通して自分自身が変化し成長していく物語になっていたということなのでしょう。そしてそれに気付かせてくれたのは他ならぬアイツであったと。
アイツの輝く笑顔が自分にとって星のように輝いて見え、自分もまた新しくなれると思えた。誰もが様々なドラマを抱えながら生きていますが、それぞれがそれぞれに誰かを照らし照らされ輝くSTARSなのだと、そういった解釈をすることもできます。

ふと思い出したのは「LIVE-GYM 2008 “ACTION”」の光芒とそのMC。苦しくとも辛くとも諦めず進もうとするその姿が、きっとそれを見ている誰かの勇気になると。

松本さんはB'zはこれからも作品を作り続けるとMCで話していました。多くのインタビューでも、作品を作ってライブをするというスタイルは変わらないと常に話しています。
B'zが作品を作り、ライブをし、ファンはそれを聴いて、観て大きなエネルギーで反応し、それを受け取ってB'zはまた新しい作品を作ってライブをするということを繰り返し、互いに照らし合う存在であり続ける。そうやって未だ知り得ぬ未来へと走ってゆく。(目指すその“先”のこともまたSTARSであると稲葉さんは語っています)

35周年を迎えるにあたり、これまで日の目を見ることがほとんどなかった多数の楽曲たちにスポットが当たり、そしてそれ以上にB'zとファンの関係がどういうものであるかを照らし浮かび上がらせる、アニバーサリーに相応しいツアーになったのではないかと思います。

かつてないほど多くのトラブルに見舞われたツアーでもありましたが、ツアーファイナルが無事に終演して安心しています。
自分は2005年の「CIRCLE OF ROCK」からライブがある年は可能な限り(ほぼ)毎年参戦していますが、今回の「STARS」は選曲や演出も含め過去最高に楽しかったツアーでした。

松本さんは既に還暦、稲葉さんはツアーファイナルを目前に59歳になりました。人間歳には勝てませんから、昔に比べてできないことは増えていくはずです。それは実際観ていてもわかる部分があります。体調的な問題も増えていく一方でしょう。
しかしそれでも、そんな中でもこちらの想像を遥かに超えたものを今なお魅せ続けてくれているというゆるぎない事実がそこにはあります。いやもうほんとに、怪物とはこのことですよ…

きっとこの先もずっと、いずれなんらかの理由でB'zの活動が終焉を向かえる日が来ても、自分にとって2人は永遠に唯一無二のROCK STARSです。

最高のツアーに立ち会えた喜び、今なお興奮と感動をくれることへの感謝でいっぱいです。
B'zのお2人、サポートメンバーのみなさん、目の届くところから決して顔を見ることの無い裏の奥のほうまであらゆる場所でツアーを支えていたすべてのスタッフのみなさんに惜しみない感謝と賞賛を。本当にお疲れ様でした。

今は余韻に浸りながら、なんとかして苗字を「星」に変えられないか考えているところです。(?)

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