絵本『赤いけいとで つながって』――思いやりってなんだろう
せっかく作った朝ごはんを、寝坊して時間がないと言い放ち、食べずに出て行く娘。Tシャツがヨレヨレだったから新しいのを買ったのに、前のが気に入っていたと言う夫。なんだか、しょっちゅうムッとしている編集担当のTです。
今回、友情と思いやりをテーマにした『赤いけいとで つながって』を翻訳出版いたしました。
ストーリー
あなぐまのアニーとやまあらしのチックルは、とっても仲よし。ある日、それぞれが森で赤い毛糸をひろいました。ふたりは、おたがいに相手の喜ぶものを編もうとしますが、実はその毛糸は1本で、編みあがりそうになると、相手のほうに糸が引っ張られ、ほどけてしまうのでした。毛糸をめぐってもつれてしまったふたりの仲は……。
思いやりとは……
相手のことを思いやって、毛糸を編み始めたふたり。
ところが、いつのまにか思いやった自分の気持ちが大切になってしまって、相手の気持ちは二の次に。こんなことって、大人同士でもあるあるですよね。
アニーとチックルは、怒りにまかせて毛糸を切ってしまいます。なんともドキッとするシーンですね。
でも、毛糸が2本になったことで、おたがいに適度な距離ができて、相手のことを冷静に考えられるようになったようです。
いろんなケンカや、いがみ合いのなかには、おたがいの優しい気持ちを意地で引っ張り合っているだけのケースもあるのではないでしょうか。ちょっと距離をおいて冷静に考えれば、相手がどう思っているのか、なぜそう思うのか、相手の状況を思いはかることができるかもしれません。自分が相手の立場だったらと置き換えて考えるのではなく、すこーしだけ距離をおいて相手の気持ちを想像し、接すること、それが思いやりなのかなと思いました。
作者のメッセージ
最後に、作者のリサ・モーザーさんが作品にこめた思いをお伝えします。
「私の願いは、子どもたちがこの本を読んで、おたがいを許し、おたがいを受け入れる方法を学ぶことです。友だち同士でも、意見がちがったり、怒りを感じたりすることもあるけれど、だからといって友情が終わるわけではありません。いつまでもかわらない友情を学んでくれることを願っています」
本文には「森」や「玉」など、簡単な漢字がほんのちょっぴり使われていますが、すべてふりがながついています。5歳くらいから小学校低学年のお子さまにおすすめです。ぜひ、親子で読んでみてください。
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