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絵本『赤いけいとで つながって』――思いやりってなんだろう

せっかく作った朝ごはんを、寝坊して時間がないと言い放ち、食べずに出て行く娘。Tシャツがヨレヨレだったから新しいのを買ったのに、前のが気に入っていたと言う夫。なんだか、しょっちゅうムッとしている編集担当のTです。

今回、友情と思いやりをテーマにした『赤いけいとで つながって』を翻訳出版いたしました。

ストーリー

あなぐまのアニーとやまあらしのチックルは、とっても仲よし。ある日、それぞれが森で赤い毛糸をひろいました。ふたりは、おたがいに相手の喜ぶものを編もうとしますが、実はその毛糸は1本で、編みあがりそうになると、相手のほうに糸が引っ張られ、ほどけてしまうのでした。毛糸をめぐってもつれてしまったふたりの仲は……。

思いやりとは……

相手のことを思いやって、毛糸を編み始めたふたり。
ところが、いつのまにか思いやった自分の気持ちが大切になってしまって、相手の気持ちは二の次に。こんなことって、大人同士でもあるあるですよね。

アニーとチックルは、怒りにまかせて毛糸を切ってしまいます。なんともドキッとするシーンですね。
でも、毛糸が2本になったことで、おたがいに適度な距離ができて、相手のことを冷静に考えられるようになったようです。

いろんなケンカや、いがみ合いのなかには、おたがいの優しい気持ちを意地で引っ張り合っているだけのケースもあるのではないでしょうか。ちょっと距離をおいて冷静に考えれば、相手がどう思っているのか、なぜそう思うのか、相手の状況を思いはかることができるかもしれません。自分が相手の立場だったらと置き換えて考えるのではなく、すこーしだけ距離をおいて相手の気持ちを想像し、接すること、それが思いやりなのかなと思いました。

作者のメッセージ

最後に、作者のリサ・モーザーさんが作品にこめた思いをお伝えします。
「私の願いは、子どもたちがこの本を読んで、おたがいを許し、おたがいを受け入れる方法を学ぶことです。友だち同士でも、意見がちがったり、怒りを感じたりすることもあるけれど、だからといって友情が終わるわけではありません。いつまでもかわらない友情を学んでくれることを願っています」

本文には「森」や「玉」など、簡単な漢字がほんのちょっぴり使われていますが、すべてふりがながついています。5歳くらいから小学校低学年のお子さまにおすすめです。ぜひ、親子で読んでみてください。

『赤いけいとで つながって』

リサ・モーザー=文
子どもの本の作家。”Stories from Bug Garden””Squirrel’s World”などの作品がある。アイオワ大学を卒業後、オハイオ州ワージントンで教師として働く。現在は夫と娘とともにウィスコンシン州に移り住み、執筆にいそしんでいる。

オルガ・デミドヴァ=絵
モスクワで伝統工芸とアニメーションを学ぶ。アニメーションの仕事に従事したのち、子どもの本のイラストレーションに携わる。邦訳作品に絵を担当した『チャイコフスキーのくるみわりにんぎょう』(フィオナ・ワット/文 大日本絵画)がある。

よしいかずみ=訳
青山学院大学文学部英米文学科卒業。やまねこ翻訳クラブ会員。絵本の翻訳に『おばけやしきなんてこわくない』(国土社)『空からふってきたおくりもの』『わたしのかんむり』(化学同人)、『クララ』『介助犬レスキューとジェシカ』『夜をあるく』(BL出版)など多数。


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