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学童の子どもたちは、初めて視覚障害者に会ったら、どんな反応をするのか

無邪気な差別が蔓延していること

2023年5月19日に、富山県舟橋村にある学童fork(https://readyfor.jp/projects/forktoyama)で子どもたちと視覚障害者の交流会をしてきました。

forkは、越中舟橋村駅前にあります

ブラインドライターズを経営していて感じるのは、障害のある方と接した経験がないかたほど、ナチュラルに差別的な発言をされることです。完全に「ひとごと」と思っているような感じです。「でも明日、自分や家族、知人が障害を得るかもしれないのになあ」と思います。

一方で、感情移入しすぎて障害のある人を「かわいそう」と涙する人がいます。
真っ暗闇を体験する「ダイアローグインザダーク」に行ったあと、参加者のひとりがこう言いました。
「体験が終わり、光が見えたときに『ああ、元の世界に戻れるんだ』という喜びを感じた。この感動を視覚障害者は味わうことができないんだと思うと、辛い」
と泣かれたのです。

せっかく感動されているので、水を差すのもなにかなと思いましたが、かなりモヤりました。
私は、他人から絶対に「かわいそう」などと言われたくありません。
それは安全な場所から他人を見下すことです。

差別的な考えをなくすには、どうしたらいいか

とはいえ和久井も、初めて障害のある方と関わったころにはいろいろ失言があったかもしれない。
インクルーシブな教育ってほんと大事です。そしてそれは早いうちがいい。

その思いに共感してくださった学童forkで交流会を開催しました。

forkは、無料でこどもを預けられる学童です。
古い建物をリノベしてカフェを併設しています。

子どもたちの様子を見ながらカフェでまったりも
学童から見たカフェ
ガッショーサンドセット1400円。キーマカレーと半熟卵のコンビがたまらんでした


代表の岡山史興さんは「子どもたちにたくさんの選択肢があることを知ってもらいたい」と言います。選択肢は人生の可能性を広げ、なんになってもいいという自己肯定感につながります。岡山さんの思いに和久井は強く共感しています。

初めて視覚障害者を見た子どもたちの反応

今回、交流会に参加してくれたのは守井清吾さん。盲学校から富山大学に進学し、教育学で博士号まで取っている人です。現在は、大手IT企業で研究をされています。

守井さんの自己紹介。このあとイヤな汗が出る出来事が。

最初は肝を冷やしました。
学童の子どもたちを集めて、守井さんが挨拶をすると、子どもたちからは、
「目が白くて気持ち悪い」
「エイリアンみたい」
という声が上がったのです。
周囲の大人たちは真っ青です。どう反応すればいいやら。

でも守井さんは、子どもたちのこういう反応は想定内だったようで、
「じゃあ目を閉じるようにしておくね」
などと軽くいなしてくれました。

そのうちに子どもたちは、
「なんで目が白いの?」
「なんで見えなくなったの?」
などと興味津々に。


守井さんに釘付けの子どもたち

守井さんはみんなに、点字やレーズライターといった視覚障害者のツールを見せてくれました。

子どもたちはすぐに白杖や点字に興味を持ち、守井さんと一緒に遊ぶように。
子どもを責めるでもなくやんわり受け入れる守井さんの大人な対応は、本当に素晴らしかった。

そのうちに、点字で自分の名前を書いてみる子も出てきて、ちょっと感動してしまった。


自分の名前をネットで検索しながら打っています

子どもたちの無邪気な暴言に、大人はどう対応すればいいか

無事に交流会が終わり、クタクタになった大人たち。
子どもってパワフルですよね……。

交流会後、岡山さんが守井さんに、
「子どもたちの暴言には、大人はどう対応したらいいか」
と聞きました。すると守井さんは、

「これはあくまで自分の意見ですが、大人は口を出すべきではないと思います。大人が『そんなことを言ってはいけません』と言うと、ますます障害者はアンタッチャブルな存在にしてしまう。言わない方がいいこと、やめるべきことは、自分で判断すべきです」
と言うのです。


スクリーンではなく点字で読める「点字キーボード」

和久井は最初、この交流会をどう開催するかとても悩みました。
当事者は大人のほうがいいのか。
同年代の子どもたち同士で交流した方がいいのか。
でも、子どもたちの無邪気な発言に、当事者の子どもが傷ついてしまうかもしれない。
それに、最初の印象はとても大事だといいます(『差別や偏見はなぜ起こる?』北村英哉 、唐沢穣 、ちとせプレス)。
子どもたちが偏見を持つかどうかは、この回にかかっているような気がしました。

視覚障害のかたと関わったことがなければ、最初は驚くかもしれません。
でも2回、3回と会っているうちに、「怖い」「気持ち悪い」という感情はなくなっていくはずです。
見たことがないから異質だと思うのであって、親しんでいるものなら違和感がないはずです。
『みにくいアヒルの子』のように、美しい白鳥だってマイノリティになれば「醜い」と言われるんです。ペリーが来航したときも、日本では「髪が赤い」「目が青い」などと大騒ぎだったようですが、今そんなことでグダグダ言う人はいません。要は慣れの問題です。

悲しい思いをする人が、ひとりでも減るように

交流会の前日、社会福祉法人秀愛会を見学させてもらいました。そこでは、保育園の子どもたちと重度障害の人たちの交流会があるそうです。大人たちは重度障害の方たちに初めて接するとショックを受ける方が多いそう(和久井も少々動揺しました)ですが、子どもたちは普通に受け入れているそうです。

最初は差別的な反応をしてしまう人もいるでしょう。
それを受け止めなければいけない人がいます。その役目を、今回は大人の守井さんが引き受けてくれました。


最後は馬になったり剣で倒されたりと、全力で子どもたちと遊んでいた守井さん

守井さんに、「あんな風に言われて傷つかないか」と聞きました。
「傷ついて泣いた経験があるから、大丈夫になった」
と言います。

差別的感情はしばしば再生産されるので、すぐになくすのは難しいかもしれません。でも、もはや私たちが「紅毛人は血を飲む」と思わないように、積極的に働きかけていけば、いつかはなくなるものだと思います。そうすれば、傷つく人もいなくなるはず。

障害を、前世の因果だとか、何かが憑いているとか、何かのペナルティのように言う人がいます。
それはなんの合理性もない考え方で、単なる差別です。

forkの子どもたちが、インクルーシブな交流をもとにして、多様性を受け入れるステキな大人になることを願ってやみません。

ブラインドライターズはこれからも、積極的にインクルーシブなイベントを開催していきます。

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