認知症の介護のために知っておきたい大切なこと パーソンセンタードケア入門 【読書感想文】 ここから日本の現状に合わせて
★★★★☆
Amazonでレビューしたものです
1.パーソンセンタードケアとは
認知症の人の認知症の部分ではなくて、人の部分に着目してケアを行おうという考えで、1980年代末の英国で提唱され、各地に広まっていったものです。
今まで私が読んで紹介した日本の認知症の本でも紹介されていました。
認知症の人、その人について知り、その人の言動について考えて対応をしたり、その人に合った対応を考えて行なっていったりというものです。
この本はパーソンセンタードケアを提唱した方が書かれたもので、その重要な点について、詳しく解説されており、事例も載せられています。
2.現実は厳しい
認知症の方は病状の進行とともに、いろいろなことがわからなくなり、色々なことができなくなっていきます。しかし、プライドや感情、感覚は比較的残っている場合が多く、周囲の対応に傷ついたり怒ったりという反応をします。たとえ言葉が理解できなかったとしても。
いわゆる周辺症状(BPSD)が、環境や対応によって出現したり消失したりするという点も、心が存在していることと、周囲によって変わることの表れでしょう。
確かにこのパーソンセンタードケアは効果があります。
ただ、なかなかこの通りにいかないよな、とも思います。
この本は、外国の方が、認知症の家族を持って自宅で介護する人と、介護職に向けて書かれたものです。
なので、家族が母親をニックネームで呼んでいたり、職員が利用者をハグしたりキスしたり、宗教的な対応について描かれていたりと、日本の実情に合わない点がある面があります。文章も翻訳です。
さらに、外国については知りませんが、現状の日本の介護の現場では、ここまでの対応は難しい、無理なことが多いと思います。圧倒的に人手とお金が足りないからです。徘徊する人について行って一緒に歩いたりする余裕はありません。人材的にも時間的にも金銭的にもです。
ここまでできたら理想です。しかし現実的にはこの中のエッセンスを拾って、可能なところを実践していくということになるでしょう。
それでも以前よりは、認知症についての知識が一般に広まってきたと感じています。
認知症の人でも、施設などでタオルを畳んでもらったりすると、そういったお仕事が好きな人は結構います。
失敗することがあっても大目に見てくれて、その人にできる役目、できる仕事を許してくれる寛容な社会になるといいなと思っています。
3.3回家族を見送る
私が印象に残ったのは、第14章でした。この章は家族介護者のために書かれたものでした。
家族の一員として、2回または3回お別れを経験しないといけない、とこの章では書かれていました。
1回目は、その人が自分の知っているかつての人と変わってしまった時。
2回目は施設に入る時。
3回目は実際に亡くなる時。
私の祖母も認知症で施設に入り最期は病院で亡くなりました。
私のこともわからなくなりました。
認知症の方を亡くした多くの家族たちが、そのことをももっと共有できるようになるといいな、と思います。
2チャンネルとかでそいうスレがあるといいのになあ。
4.目次
本書を読むにあたって
はじめに
第1章 「認知症」にとらわれずに「その人」を理解することから始めよう
第2章 ひとくくりにしないで! 一人ひとりがかけがえのない存在です
第3章 認知症のあんなとき、こんなとき……介護者はどうすればいいの?
第4章 大切なのは仲間がいてくれること、そしてふれあいがあること
第5章 人生にもっとスパイスを!
第6章 居心地のいい場所をつくるためのヒント
第7章 「徘徊」や失禁、攻撃……認知症の「困った!」にどう対応すればいいの?
第8章 薬とはどうつき合えばいいの?
第9章 その人に合ったケアを計画しよう!
第10章 施設に入るときに気をつけてほしいこと
第11章 わたしたちが望める最善のこと〜「12の希望のしるしるし」〜
第12章 権利についてもっと知ろう
第13章 よいケアをしていくために、介護者は自分のことにも目を向けよう
第14章 さいごのお別れをしたあとは……
第15章 これからの介護者のために……よいケアって何だろう?
資料 認知症をもっと深く理解するための参考書籍
パーソンセンタードケアの関連書籍
認知症の介護についての情報を得られるサイト
訳者あとがき
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