認知症世界の歩き方 実践編 【読書感想文】 理解から推理し、実践へ
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Amazonでレビューしたものです
1.「認知症世界の歩き方」の続編です
以前こちらでご紹介した本「認知症世界の歩き方」
認知症の症状について、わかりやすい例え言葉と見やすいイラストで、ユーモラスに紹介説明した本で、とても読みやすくわかりやすいものでした。
世間的にも好評だったようで、NHKでアニメ化もされています!びっくりです!
この実践編は、「認知症世界の歩き方」で扱われた認知症の症状のおさらいと、さらに一歩進めて、実際に認知症者のトラブルへの対応について書かれています。
2.実践していくために
まず前の「認知症世界の歩き方」でも扱われていた、ミステリーバス、トキシラズ宮殿、服ノ袖トンネル、パレイドリアの森、カイケイの壁、など、認知症疾患の症状について、わかりやすい表現で、説明されています。
さらに今回は、それらの症状を理解した上で、目の前の認知症の人の中で、どういった認知機能障害が起こって現在の状態になっているのかを推理するという段階が入ります。
そして、その推理に基づいて対応し、トラブルを解決していこう、という流れになっています。
例えば、徘徊(この本では徘徊と言う呼び方に疑問を呈していますが、ここでは触れません)。
定年しているのにパジャマにジャケットを羽織って毎朝早くに出かけてしまい、道に迷って連れて帰ってもらうというストーリーが紹介されました。
この人の関係する認知症世界の場所として以下の2つが提示されます。
アルキタイヒルズ:いつの間にかタイムスリップして思い出と共に歩みを進めたくなる不思議な街。
二次元銀座商店街:何度訪れても必ず迷い、目的地に辿り着く前に必ず寄り道をしてしまう、摩訶不思議な商店街。
関係していそうな認知機能障害として、記憶障害や空間認知の障害があると考え、この人は記憶障害から今も職場に行こうと考えて出勤しようとしていたのではないか?などと推測します。
そして、その推測から、支援者としての対応のアイデアを出し合います。具体的には、近所の方に本人の症状を伝えておく、GPS機器を持ち歩く、などです。
このように、認知症の知識を得て、相手を見て聴いて、推理して、対応し解決すると言う流れを繰り返して、実際の認知症者のトラブルの時に考えるヒントにしていこうという本になっています。
後半ではデザインについて提示されています。
こちらの本の著者がもともとデザイン関係の方のようで、認知症の方が見分けやすい判断しやすい日常のデザインについて提案がなされています。
家の中では、食器の扉をはずしたり透明にして中を見やすくする、スーパーではチラシなどの情報を多く貼りすぎずにシンプルな案内にする、などが提案され、こういった対応によって認知症の人が混乱しにくくと主張されています。
3.目次
PART1 対話編
認知症の方が生きる世界を知り、言葉を交わし、関係を深める
記憶・時間のトラブル
ミステリーバス
電車から降りられない?!謎
トキシラズ宮殿
何度も何度も食べたくなる?!謎
スマホアラーム
創作劇場タイタニック
消えた?!財布の謎
忘れモノ防止タグ
アルキタイヒルズ
空間のトラブル
二次元銀座商店街
歩きたくなる?!集めたくなる?!謎
ホワイトアウト渓谷
消える?!トイレの謎
排泄予測デバイス
服ノ袖トンネル
五感のトラブル
七変化温泉
しわしわ?でこぼこ?
お風呂が大嫌いになる?!謎
パレイドリアの森
サラダの中に○○が…!
音声認識アシスタント
顔無し族の村
顔が行方不明になる?!謎
ビデオ通話アプリ
サッカク砂漠
黒い物体が…
注意・手続きのトラブル
カクテルバーDANBO
聞けない?!発せない?!繰り返す?!謎
アレソーレ飯店
ご飯を炊かなくなる?!謎
あなたは、このチケット入手できる…?
カイケイの壁
スーパーが鬼門になる?!謎
安心キャッシュレスサービス
認知症世界を共に生きる 対話8箇条
PART2 デザイン編
生活環境を美しく整え、改善する
scene1 リビング
scene2トイレ・お風呂
scene3寝室
scene4 鉄道駅
scene5 スーパーマーケット
認知症世界にアプローチする デザイン4原則 20ポイント
認知症世界の歩き方カレッジ
4.感想
認知症の症状については、症状に基づきある程度共通項がありますが、その人ごとに現れ方は違っています。
例えば夕暮れ時の徘徊1つにしても、その人の性格やものの見方、家族関係など、人生そのものが関わってくる場合もあります。
こういった認知症の人に接する場合、病気についてその症状についてまず理解することが重要です。
さらにそれらの症状のうちどれが、どのようにこの目の前の人に起こっているのか考えていく、それに対して対応していく順番になります。
その観察、推理、対応を繰り返すことによって、認知症者のトラブル、周辺症状BPSD問題行動の軽減解決に結びついていきます。
こちらの本はその流れをわかりやすく説明して紹介されており、とても良い内容と思います。
一方、この社会は認知症の人だけが住んでいるわけではありません。
社会の全て、家族の生活の全てを認知症の人のために合わせるのは、難しく現実的ではないでしょう。今度は認知症でない人にとって不便で不快な生活になっては本末転倒だと思います。
こちらで提案されている内容を試してみて、また結果を検証して、場合によっては変更して、といったトライアンドエラーを試みて、お互いの間の落とし所を探すのが肝心でしょうか。
そのためには、やはり対話はもちろん重要だと思いますね。
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