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わたしのお婆ちゃん 認知症の祖母との暮らし 【読書感想文】  在宅介護の現実

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Amazonでレビューしたものです

東京で漫画家をしているニコ。家族は宮城に住む母と婆。実家は震災の時に流されてしまったけれど、婆の希望で、母が頑張って同じ場所に家を建て直した。そんな実家に久しぶりに帰省した際、ニコは婆の奇行を目にする・・・。幼い頃から、外で働く母に変わって、いつもニコの世話を焼き可愛がってくれた婆。しっかり者の婆が、なぜ・・・?大好きな婆が知らない人みたいになっていく・・・。ニコはまだ、認知症を知らなくて――。


1.ある認知症のおばあちゃんとその家族の物語

以前感想を書かせていただきました、マンガ認知症

その中に登場する、ニコ一家のお話です。
時系列的にはこちらの方が先になりますね。


東京で暮らしていた漫画家の著者が、宮城県で被災後に再建した実家に帰ったら、祖母の言動がおかしく、認知症を発症していたことが判明。実家に帰り、母を助けて祖母の介護をした経験が綴られています。
実際にあった話を漫画にした、ノンフィクションのような内容です。

かわいいイラストで和らげた表現になっていますが、過酷です。

なんと始まりのセリフが

「もうね お母さんと一緒に死のうかと思って」

ですから。。。

そして、介護の現場、現実を非常によく表されていると思います。


2.しんどかった介護の日々


前にも書きましたが、私の父方の祖母も認知症で何年も介護した末に亡くなりました。

その頃実家は、いつも空気が悪くどなり罵りあいとなって、全くくつろげない家になってしまいました。
離れていてもいつ何が起こるのかわからないという何となく気を張り詰めた感じで、常に疲れていましたし、日常は祖母を中心に回るようになっていきました。
伯母との関係も悪化してしまいました。
私の思い出がいっぱいの実家がこんなことになってしまい、とても悲しかったですし、今でも思い出すとしんみりします。

母と弟と時々私でもあっという間に限界になったので、2人ではそれは無理だと思いますし、ニコさんもお母さんもすごいよく頑張ったと思います。

3.日本にも認知症の村を


そしてこれも前にも書いたんですけど、
なぜ国はオレンジプランは住み慣れた地域を推進するのか理解できないです。

今時生まれてからずっと同じところで暮らしてなくなる方がどのくらいいるのでしょうか?就職だ転勤だ結婚だで、何度か引っ越しをする方が一般的だと思います。
それに自分で家を建ててそこで最後までというのも、ここまで寿命が長くなると難しいと思うんですよね、現実的ではないと言いますか。

上にも書きましたが、働いている社会人の家族に認知症がいると、正直生活が回りません。認知症の人のために自分の人生を捧げることになってしまいます。仕事を辞めたり減らしたり、仕事をしていても疲れや悩みで集中できなかったり能力を発揮できなかったりして社会的に損失にもなるでしょう。
なので、高齢者や認知症者は、早めに施設に入った方がいいと思いますし、色々なタイプの施設を充実させて、段階によってスムーズに移動できるようにしていってほしいです。

家族に介護をさせるというのは現実的ではないです。
健康な人間が、病気の人のために自分の人生を犠牲にするのは、間違っていると思います。しかも、こう言ってはなんですが、結構な高齢者のために若い人が。。

そして、家族だからこそ、いい介護ができません。

別人のように変わり怒り罵る祖母。
食事と尿と便に振り回される毎日。
少し目を離すと転んで怪我をする。

赤の他人の”ニコさん”なら、職場で働いている間だけ会う人なら、しょうがないなあ、とにこやかに対応できても、家族には適切な対応ができないのです。生まれた時から一緒にいた、血のつながった大事で大好きな”私のおばあちゃん”だからこそです。
考えてこうしよう、こうしなければと思っても、変わってしまった家族を前に溢れる気持ちが抑えられないのです。

婆ルが施設に入ったあと、複雑な心境をニコさんが描かれていました。でも施設に入らなければ漫画の仕事は難しかったでしょう。我が家もそうでした。限界でした。

金があって自前で介護者を雇える金持ちの政治家と、介護も家事もしたことない仕事ばかりの官僚が決めるから、現実的でない方策になるのでしょうか。
医者だって介護休暇とか取らないし、家事も育児も介護も奥さん任せだしなあ。


「ミステリと言う勿れ」の2巻に出てきた話ですが、

”オランダに認知症の人のためのある施設があって
そこって施設は一つの村みたいになってるんですって”


漫画で読んだだけなのですが、実際あるかどうかは知りませんが、日本にもこういった認知症の村があるといいなと思います。

認知症の人々が、散歩したり畑を耕したりバスに乗ったり買い物したりして過ごせる地域。
もちろん、職員は通ってきたり泊まりがいたり、その村をぐるりと塀で囲むとか、AirTag付きの腕時計をみんなつけて不自然な移動の時は連絡が来るとか、あちこちにカメラをつけるとか、対策は必要だとおもいますけど。

結局在宅で暮らしてもいつかは限界がくると思いますし、来ないとおかしいです。
一人暮らしの認知症の人とか、24時間同じオムツで1日1回交換とかで、そこまでして家に暮らす意義も必要もわからないんですよね。
返って人権を侵害している気がします。


ぜひ著者には、認知症医療について、引き続きもっと描いて欲しいと思っています。最近のレカネマブとか。


著者:ニコ・ニコルソン (著)
ASIN ‏ : ‎ B07DK6WYTF
出版社 ‏ : ‎ 講談社 (2018/6/7)
発売日 ‏ : ‎ 2018/6/7
言語 ‏ : ‎ 日本語
ファイルサイズ ‏ : ‎ 88459 KB

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