ショートショート69『あなたに捧ぐショートショ○ト』

突然のお手紙、失礼いたします。

お元気ですか？僕は元気です。
毎日、早起きもしてます。
卵好きなので朝食には、たま○焼きや、○玉焼き、スクラ○ブルエッグを食べたりします。

さて、僭越ながら、上記の穴埋めの言葉が読めましたら、手紙の続きを読み進めてほしいです。

ーーー読めましたか？
きっと読めましたよね。
人間の脳というのは、ある程度の文字列を面でとらえて、勝手に補正して埋めてくれるようにできているのだそうです。

まあ、もちろん、そもそもの単語や言葉たちを知らなかったら、流石にこの理論は通じえないのだけれど。

まあ、もろちん、そももその たんごや ことばちたを しならかったら さがすに このりんろは つうえじないのだれけど。

どうですか？
これも割と読めましたよね。
これは俗に、タイポグリセミアと言われてて、文章中のいくつかの単語の、“最初と最後の文字以外の順番が少し入れ替わっても”、なんとなく読めてしまう現象だそうです。 

……まわりくどくなってすまみせん、いや、すみません。

僕が、わざわざ手紙でこんなことを伝えているのには、理由がありまして。
あなたへの思いをちゃんと伝えておきたいな、と思った次第でありまして。
でも、それを面と向かって言う勇気も方法も持ち合わせていないので、こうしてペンをとったものの、照れ隠しでこんなことを述べてしまっているわけでありまして。
早く本題に、となっているのは重々承知でして。

だから…ええと。

今までの僕は、“人を好きになる”だとか、“恋する”だとかが、よくわからなくて、自分とは縁のない世界だと思っていました。

ですが、あなたに出会ってから文字通り、世界が一変しました。

これだけ言わせてください。

「あなたのことが、だい○きで、こ○してしまいました！

ぼくは あたなのことが すきできすで たらまなくて こしろてしまいました。こんなぼくを ゆるしてくさだい！」

ふぅ。
緊張しました。許してくれますか？
冒頭でも○○○と言っているので許してくれますよね。

ではこのへんで。

さうよなら。

【文章 完 文章】