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寝台と鳥と庭

鉄道は二番目に好きな移動手段だ。
車窓の景色が次々変わるのが楽しい一方、駅での人の出入りにどうも気が散ってしまう。
車両ドアの近くにいると、もろに外気を浴びてしまうのも難点だ。
そんな飛行機派なのだが、どうしても乗りたい鉄道がある。
寝台列車だ。

シベリア鉄道に乗りに行く計画がかつて頓挫してからも、寝台列車への憧れが心の片隅にずっとあった。
ひょんなことからサンライズ出雲の存在を知り、俄然やる気になった。

早速きっぷを取ろうと試みるも、ネット予約できる時間が限られていて出鼻をくじかれる。
思い立ったが吉日(午前2時)ではないらしい。
気を取り直して営業時間内に再トライするも、東京発で検索すると不可思議なサジェストがでる。

なんで静岡乗換?

日付を変えてもこの便ばかり表示されるので、まあええかと静岡松江間の往復で予約をとった(これで後に少し苦しむことになる)。
せっかくなら始発駅から乗りたかったけど。
ほんならなんで終点駅の出雲市駅で降りひんのかって?
松江行きたいやん。
東京駅発で予約がとれないのは、サンライズ瀬戸・出雲が現在定期運行している唯一の寝台列車ということで、人気の高さ故だろうか。
それにしても静岡から空きが生じるのは謎だ。

予約したきっぷを最寄りのJR駅まで発券しに行くも、静岡駅はJR東海の管轄らしく発券のためにはJR東海の券売機がある駅に行かねばならないとのこと。
JR内でも棲み分けがあるらしい。
無事にきっぷを発券できたはいいものの、ケチって静岡駅までバスで行ったら渋滞に巻き込まれてやきもきしたり、00:20発なので日付が変わるまで改札を通れず1時間強持て余したり、と重ねてマイナートラブルに見舞われる。
図ったな静岡(静岡は悪くない)。
しかし厚手の上着を着ていてよかった。
駅構内とはいえ、12月の23時台は寒い。

そして念願の時。

4番線にスルスルと。
すれ違い難易度高めの廊下。
往路はソロ個室。
売切に備えて家でシャワーを浴びてきたが、乗車直後はまだシャワー券を売っていた。

ほんまに寝台列車や!!
個室のスペースは、かつて泊まったファーストキャビンという宿泊施設のサイズ感が近い。
伝わるんか、これ。
平均身長ジャストくらいだが、寝る分には特に窮屈だと感じなかった。
大きい荷物があると置き場に困るかもしれない。

ブラインドを上げて寝転がると、次々と駅を通過するのが見える。
新鮮すぎる景色だ。
ワクワクして眺めていたのだが、名古屋あたりを過ぎて寝落ちてしまったようだ。
車窓の朝日で目を覚まし、ゆっくり支度をして、景色を見ながら持ってきた本を読む。
最上の贅沢である。
ただ、冬で暖房が効いているからだとは思うのだが、かなり乾燥したのでリップクリームなり化粧水なりがあるとより快適だと思う。
ありがとう、全ての保湿アイテム。

名残惜しさを感じるが、定刻に松江到着。
日本の鉄道は改めてパンクチュアルである。
サンライズ出雲に乗ったことでメインデッシュを食べたが如き満足感があるが、観光は別腹だ。

Japanese Gobrin Yokai
残念ながら定休日の店が多かった。
妖界の安息日は火曜なのだろうか。
借景が見事な庭園日本一。
"ばたでん"こと一畑電鉄。
松江に来たにはわけがあって。
彼らに会いたくて松江フォーゲルパークへ。
国内でハシビロさんに会えるのは現在7施設。
行ってないのはあと3施設となった。
毎日2回のお散歩タイム。
かわいいの暴力とはこのことである。
往路を終えてお休み中のペンギンさんたち。
癒やしをありがとうございます。
出雲にも行くんかい。

別腹もいっぱいになったところで、再びサンライズ出雲に乗って帰宅。
個人的にはソロ個室より断然シングル個室を推したい。
上の窓がかなり大きいのに加え、なにより二段ベッドを独り占めできるのである。
上階ならブラインド開けてても見えへんやろ、と全開にしていたら大阪駅でホームの人とガッツリ目が合ってしまった。
都会の夜は遅い。

復路はシングル個室。
おっかなびっくり登ったが意外と安定している。


交通費だけで往復4万円超てどないなんと思っていたのだが、移動と宿泊コミでこの非日常を味わえるならお得ではなかろうか。
寝台列車は減少傾向にあるが、再び移動の選択肢となることを祈ってやまない。

年内最後の遠出となったが、来たる次の年はより安心して移動できることを願って。



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