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夏休み、子どもたちと「商い」をやってみた。

1、プロジェクトのはじまり

10年前にわさび専業農家に嫁ぎ、4世代7人、ひとつ屋根の下で暮らし、現在は、家業である「わさび栽培」を知ってもらいたいと「滝尻わさび園」の広報をやっております浅田恵子です。小学1年生と4年生の母でもあります。
今回、夏休みの期間中に子どもたちと「商い」をやろうと思ったきっかけは、私が参加している、木下斉さんが所長の研究所LDL(Locally Driven Labs)で、2年前から「子あきないプロジェクト」に取り組んでいた西田稔彦さんがパートナーとして「子商いプロジェクト」を立ち上げていたのに賛同し、今夏、伊豆でも立ち上げてみようと思ったからです。
木下斉所長も、夏休みに親子で経済経験を蓄積する絶好の機会ということもnoteに書かれております。

https://note.com/shoutengai/n/n615313619a48

そもそも子供の頃から日本では義務教育でも営業体験や方法や実際のお金に振れながら会計など基本的なことを学ぶことはありません。普通に学校に通い、普通に就職するのでは、ほとんど営業を自ら行い、生活する力は養われません。結果としてどんなに有名な大企業に勤めようと、「お金に弱い」人が生み出されていくのです。むしろ大組織ほどに組織分業も大きく、全体像が見えず、1から10まで自分で営業を組み立て生活基盤を作るという統合型の仕事のスキルは身につかず、組織にしがみつかざるをえない人もいます。

「夏休みは親子ともに経済経験を蓄積する絶好の機会!」から出典

現状として、昨今、日本の就業者の約9割が会社員・公務員で占められるので、自分で完結する「あきない」を経験できていない大人も少なくない。
大人が経験してなければ、子どもたちにも「自ら商いをする」という ことを伝えることができないと思い、「まずやってみる」ことを目標に動きはじめました。
                                                                                                                                           

  2、企画書を作成と協力者を依頼

まず動き出そうと、自分のSNS (Facebook)でゆる〜く「子商いプロジェクト」についてお知らせと、
・協力者 ・運営スタッフ
・子商いができるスペース   
・地元で栽培している生産物
を募集しました。

その投稿を見て声をかけてくださった方がいて、修善寺温泉場・修禅寺にほど近い場所にあるレンタルスペース「most8092」さんをお借りできることになりました。                                                                                                      

   「most8092」さんは、もともと八百屋さんだった場所。20年以上シャッターが閉まっていた場所を誰でも商いがチャレンジできる場所として「レンタル&ラウンジスペース」としてリノベーション。
そのリノベーションを手掛けた、勝野美葉子さんと今回の「子商いプロジェクト」を一緒に進めていただけることになりました。
デザイナーであり、修善寺温泉場でギフトショップ&デザインスタジオ「燕舎」を経営している勝野さん。若くて、なんとも頼もしい助っ人が協力してくださることになりました!
勝野さん自身も、大学生などと関わりを持つなかで、大人になるまでに小売りを通じた経済経験の重要性を実感されていて、一緒にプロジェクトを進めていけることにワクワクしました。                                                           

そして、企画書も作成。
【子どもと親子で学ぶ、お金と社会を学ぶコンテンツづくり
 〜回数を重ねながら経済について実体験から学ぶプログラム】
とテーマを決めました。

初回は、「まず仕入れて→売る」を親子で体験し、
・営業を学び、売り方での工夫を考えること。
・「お金とはなにか?」社会におけるお金の役割とその流れを知ることで、
 大人の社会で使われているお金に対する価値観を学ぶ。
ことを目標としました。
第1回目の実施は夏休み(8月上旬)としました。

3、販売するものを検討

初回に販売するものを検討しはじめたのが7月。実施まで1ヶ月を切るなか、あがったのは

○伊豆市産の茶葉を使った冷茶スタンド
○伊豆市内でつくられた野菜
でした。

じつは、伊豆市内では、昔から自分たちの田んぼや畑の周りにお茶の木を植えて、自分たちが普段飲む分もお茶を栽培していたことを義母から聞いたことがありました。そうして摘んだ茶葉を製茶にする製茶工場が市内に点在していたそうです。
しかしながら、近年になり、製茶葉が手軽の買えるようになり、お茶の木を手入れし栽培する家も減り、今では伊豆市内で製茶工場として稼働しているのは7軒ほどだそうです。

そして、もうひとつ、冷茶スタンドを選んだ理由は、こどもたちの「お茶離れ」でした。
緑茶には、「カフェイン」が含まれることからこどもの成長の影響があるため幼い時には飲ませない方がいいということが言われています。我が家でも生まれてからずっと子どもたちの飲み物は「麦茶」でした。こどもたちも「お茶はにがい(渋い)」と言って嫌う子もいます。日本の食文化として「緑茶」はかかせないもの。子どもたちにも緑茶に興味を持って欲しい。そんな想いもあり、冷茶スタンドに決めました。


4、参加者募集

第1回目子商いプロジェクトのチラシ

勝野美葉子さんにチラシをつくってもらい、7月22日〜28日の1週間、主にSNS(Facebook)を通じて、参加者を募集しました。
参加費は、1組8,000円。この内訳は、運営費が6,000円/出資金を2,000円としました。
「出資金 2,000円」と書いてもなかなか理解されにくいと思い、チラシには1組8,000円のみの記載にしました。
※あとで振り返るときちんと「出資金2,000円」と書いた方がわかりやすかったと思いました。

7月に入り急激なコロナ感染者の増加もあり、イベント参加の告知をする雰囲気ではありませんでした。参加希望者は0組。
でも、どうしても夏休みにチャレンジしたく、友人家族に声をかけ、2家族で実施することに決めました。
販売する予定だった「冷茶」は露店商許可が必要だということで、試飲に変更。我が家の生わさびと加工品の販売に変更しました。
日程は、
8月5日(金)  作戦会議とお茶屋さんに見学
8月6日(土) 当日販売する場所でポップ・プライスカードづくり
8月7日(日) 販売
の3日間。

5、準備から当日

8月5日(金)【1日目】
この日は、子どもたちだけで集まり作戦会議。参加メンバーは小学4年生が2名と小学2年が1名、小学1年が1名の4名。
1日目、まず「わさび味噌」がいったい、原価がいくらで作られているのかを計算し、それを元に、売り値を決めました。

大きなブラックボードに1日の流れと原価についてみんなで計算し書いていきました。

小学4年生にもなると掛け算も足し算もおてのもの。さくさくと進みます。しかしながら、小学2年生と小学1年生には、ちょっと難しすぎました。
色々な色のクレヨンで手を動かしながら、「どんな人にわさびを買ってもらいたいか」「どうしたらわさびが売れるのか」アイデアをあげてもらいました。
こどもたちの集中力は30分〜1時間が限度。途中におやつタイムをつくりながら、後半は、わさびの出荷準備をしている夫に質問にいったり、夕方には、修善寺・立野にある製茶工場と茶葉の販売をしている「荘康園」さんに取材に行きました。現場の様子、商品がどのようにできているのか、商品の魅力や活かし方を聞きました。

わさびについて取材するこどもたち
修善寺・立野にある「荘康園」さんでお茶について話をうかがう。
実際、茶葉をそのまま食べてみる「美味しい」「甘い」と子どもたち。
冷茶の淹れ方もレクチャーを受け、実際試飲をさせていただく
「美味しい」と何度もおかわりするこどもたち。
荘康園さんのお店の横には一面、お茶畑が広がります。

8月6日(土)【2日目】
昨日の作戦会議で「わさびを買ってもらった人にくじ引きをひいてもらおう」という作戦が子どもたちの中で盛り上がり、「わさびくじ」を作ることになりました。空くじなしの1等〜3等の値引き券が当たる、お得感を感じてもらう作戦なんだそう。
いや待て、その値引きした金額は売上から引くことになることを説明し、仕入れ値から売り上げの見込み額を計算し、いくらまでその値引きの金額に当てられるかを計算するところから2日目がスタート。2日目からは親も参加し、一緒にいくらかかるのか計算。
お客様の立場になって、どのくらいの値引き額だったら嬉しいか、どんなくじ券、どんな箱だったらワクワクするか。デザイナーさんのアドバイスをもらい、皆で相談し、生山葵を買ってくれた人だけくじが引けることになりました。子どもたちが考えた「わさびくじ」。子どもたちからアイディアがどんどん出てきました。

どうしたら開いた時に見やすいかいくつか案をあげてみる。
そしてできた「わさびくじ」

販売スペースとなる屋台の組み立て。
この屋台は伊豆の山から切り出された間伐材を使い、釘を使わないで組み立てます。

そして、どのようにすれば商品の良さが伝わるのか、見せ方・売り方を学び、ポップやプライスカードを作りました。アイデアスケッチと下書き、デザイナーの勝野さんからアドバイスをもらい修正を繰り返す。こどもたちの眼差しは真剣そのもの。

ポップづくり
完成したポップを店頭に掲示。
商品一覧のポップも作成。より見やすい書き方をデザイナーさんから教わります。
一番左がはじめて書いたもの。左から2番目はデザイナーさんからアドバイスをもらい書いたもの。それを原本にそれぞれ色をつけたものが右から3枚。
プライスカードも、どのような情報を入れたらいいのかを考え、文字の大きさも色々検討しました。プロの技を伝授。

8月7日(日)【3日目・販売当日】
出店当日は快晴で、コロナ禍でありましたが、人通りも多い1日となりました。オープンは10:00から。オープン前、近所のお店屋さんにご挨拶へ。
10:00にオープンすると、すぐ向かいのお店屋さんの方々が買いに来てくれました。人前で喋るのも、接客もはじめての子どもたち。はじめは緊張した面持ちでお客様に接していましたが、時間が経つにつれて徐々に慣れていきました。

商品が売れるとすかさず商品を補充します。

声かけの内容もはじめは「いらっしゃいませ!」だけだったのが、アドバイスを受けて「伊豆でつくったわさびを売っています」に変えたり。営業時間の終わりに近づくと「あと○分までの限定販売です!」と声を掛けるこどもたち。役割を分担して、近所のお店屋さんまで移動販売にも行きました。
営業時間は10:00〜13:00までの3時間。準備から片付けも含めて5時間の労働を終え、そのあと食べたソフトクリームは格別だったと思います。

4人揃って「わさびいかがですか〜」
このチラシは勝野さんが作成してくださいました。こどもたちが売る姿をみて、親子が立ち寄ってくれる姿が何度かありました。

6、反省と今後について

参加してみての感想


営業時間が終わり、参加したこどもたちに感想を聞きました。

子どもたちから

大人から

今回は試験的な開催として「まずやってみる」が目標でしたが、やってみることで見えてきた課題も多くありました。やってみることでそれぞれの個性が会話見ることもできました。
この3日間で、何回もインプットからアウトプットを繰り返し、他者の意見も取り入れながら1つのことを取り組めた経験は、子どもたちにとっても、学びの多い時間だったと思います。
次回の開催に向けて、プログラムの内容を整理し、子どもたちがよりわかりやすく、主体性に考えられる内容にしていきたいと思います。


そして、一番の課題は、「持続していくこと」だと思います。
回数を重ねて徐々に良くしていきたい、より多くの子どもたちに機会を与えたい。それには、運営していく人員と協力者の存在がとても大きいと思いました。また、運営資金についても参加費から賄うだけではなく、スポンサー企業や協賛金の募集も呼びかけていきたいと思いました。
ただ、今回、デザイナーの勝野さんの多大なる協力のおかげで無事に終えられたと思います。
日々家業のわさびを販売する上で、「デザイン」の力の大きさを感じています。今回、子ども向けの「商い」をするうえでも、デザインの力を一番大事にしたいと思って勝野さんと何度も話し合いをしました。
次回は、売上目標の中から捻出できる金額で、備品を調達する、きちんと利益を出すことを考えていきたいと思います。
私自身、恥ずかしながら、日頃の営業の仕方を客観的に捉えることができたのが1番の収穫だったかもしれません。

「伊豆日日新聞」8/15発行に載せていただきました。

次回もまた計画します!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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