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只見線の旅 🚇 一汁一菜

3年連続で中止になっていた奥会津の6月の工人まつりが、規模を縮小して今月開催された。

知らせを受けたのが7月。出店申し込みの結果が出るのが8月末となると、到底準備が間に合わない。残念ながら今回は断念。

15年連続参加した、Zukuにとって大事なイベントだが、参加中は他の出店者のブースを覗くことは出来なかったので、いつかゆっくり回ってみたいと思っていた。

地元三島町の伝統工芸士さんのヒロロとアカソのバッグ 
柿渋染めで洋服、バッグを作られる福知山の布美人さん
良質な漆を入手するご苦労を語って下さった工人さん
amさんの革と帆布のバッグは素敵な色と風合い
三島町の時任養蜂園さんの栃の蜂蜜は絶品!

高齢化、人口減は町の大きな課題である。亡くなったり、都市の子供達と暮らすために町を離れる人も多い。お世話になったいつものお顔が見えないのは本当に寂しい。

昔から、暮らしの中にものづくりが根付き、2日間の工人まつりは町を挙げての取り組みで、1500人に満たない町が、2万人を超える人を迎える。3年も中止になれば、ずっと続いて来た地域の伝統、文化の継承が危うくなるのではと危惧していたが、やや縮小した規模でも、いつも以上の協力体制でやっておられたのに、ほっとした。

状況が落ち着いて、来年こそ、いつもの6月に開催できたらいいなと思う。

他人事でなく、私自身にも課題がある。仕事の流れが止まってしまったこと、そのために気力が湧いてこなかったこと。

会場の楢林を回っているうちに、またここに戻って来たい、毎年来てくれる人たちに、また会いたい、作ったものを見てほしい、と強く思った。

ここは格別の場所なのである。

 思いがけず再会したご夫婦と布美人さん

2011年夏の豪雨から、会津川口〜只見駅間が不通になっていた只見線が、地域の悲願が実り、今月、11年振りに全線運転再開した。(表紙画像は、会津若松市の漫画家一ノ瀬善正氏作).

帰りは、復旧した区間を通って、小出回りで帰りたい所だったが、週末にかかり、"乗り鉄少年"たちの動きが予測できなかったので、会津若松まで戻ることにした。予想通り、車内の座席がこんなに埋まるのを初めて見た。

無人駅が多く、I日の本数も少なく、赤字路線と言われているけれど、沿線の住民には大切なライフラインである。会津若松の高校に通う高校生達は、話し声は静かだし、観光客が多ければ座らずに席を空けておく、などとても感じが良い。

"乗り鉄"でも"撮り鉄"でもないけれど、20代の頃に山歩きで利用した会津鉄道と共に、大好きな路線である。"呑み鉄"の六角氏もお気に入りでしたね。

林の出口など、見通しの悪い所に差し掛かると鳴らす警笛の、懐かしいような何ともレトロな響きがいい。

只見川を見下ろす鉄橋を渡る度に、速度を落として景観を見せてくれる。遥か向こうのビューポイントから、たくさんの人がこちらにカメラを向けているのが見える🙌

何年も前、たまたま車で通りかかった時、あそこから見たのはSLだった。

只見線全線運転再開記念写真展より 星賢孝氏撮影

今はもうSLは走っていない。レールと車輪の幅が合わないのだとか。あの時、道路脇でじっと待っていた"撮り鉄"たちの静かな熱気と、汽笛と共に思いがけず現れた、何かの生き物のような、圧倒的迫力の黒い塊を思い出す。

少し前、只見線応援のパネルディスカッションが開かれた折、"降り鉄"という言葉を使ったゲストがおられた。(乗って)降りて、歩く、見る、食べる、遊ぶ、湯に浸かる…私はこれだね、と共感。稲刈りが終わった水田が延々と広がる、日本の原風景を走る2両🚃🚃に惹かれる"降り鉄"のひとりとして、ずっと応援したい。

本数極少 これに乗り遅れていたら今日のI日は無かった
片側ではI人席が向かい合うので通路がゆったり♪

高速バスで読もうと、積読の中から薄い文庫をと選んだのが、料理家・土井善晴氏の「一汁一菜でよいという提案」。

内容が大体予想できるという理由で、後回しになった本だったが、著者の、食や暮らし、生きることについての考え方一つ一つに共感できる、言葉の香り高い、目に美味しい、良書だった。

「繕わない味噌汁」  p. 71
「体裁を整えた味噌汁」  p.72

"一汁一菜"は、ご飯+味噌汁+菜(おかず)である。氏が提唱するのは、ご飯+味噌汁+香の物。味噌汁にいろいろな具材をバランス良く入れて具沢山にすれば、栄養の偏りはない。これを毎日の基本の食事の型にする。これだけで体が安心する食事になる。さほど時間はかからない。3食に1食、基本の型にするだけでも気持ちが楽になる。

基本の型のご飯をパンや麺類に変えたり、魚、肉等、菜のアレンジを入れていけばよい。

前半は実際に著者の食卓に並んだ味噌汁の画像が、沢山載っていて、帰ったら作ってみよう、と思わせる。使ったことのない具材や、組み合わせが楽しく、目から鱗。

何よりも、車中で読んで肩が凝らないのが良かった。

毎日逃げるわけにはいかない、三度三度の、時にしんどい食事作りの仕事を、気楽にしてくれる、やる気にさせる本である。

かつて観たフジコ・ヘミングのドキュメンタリーで、台所で立ったまま味噌汁を啜って、「私の朝ご飯はこれで終わり」と、またピアノに向かったのを思い出す。自分の体が必要とする食べ物を自分で作って食す。そして仕事に戻る。彼女も味噌汁だった。

読んでいて気づいたこと:

毎日作っているけれど、具材を決めつけていた。豆腐、油揚げ、茄子、なめこ、ワカメ、キャベツ、ほうれん草、牛蒡…など、味噌汁にはこれ、と自分で思っていたものばかり。本を読んで、この決めつけから解放されそう。

鮭を入れて粕汁、豚バラを炒めて豚汁、魚のアラで粗汁、鱈と白菜で鱈汁…どれも、ちゃちゃっと作れる味噌汁だ。無限のバリエーションを楽しめる。

もう一つは、具沢山の味噌汁は、土井氏によれば、単に汁ではなく、菜(おかず)だということ。いつも具沢山で、お腹が一杯になってしまうことが悩み😅だったのが、これで腑に落ちた。菜が一品多かったんだ。

印象に残る、著者の言葉:

暮らしにおいて大切なことは、自分自身の身の置き場、心地よい場所に帰ってくる生活のリズムを作ること…その柱となるのが食事です。

テレビで聴き慣れたソフトな声が聞こえてくる


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