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森の校舎カタクリ

奥会津の町から、9月号の広報誌が送られてきた。

町には、町外の住民が町民証を持てる、"特別町民制度"があり、10年ほど前から登録している。毎月、広報誌と議会だより、年末にはお米、お餅等特産の品々を送ってくれる。

表紙をめくったページに、"故K氏が正六位受賞"とあった。K氏は数年来お宿にしていた「森の校舎カタクリ」を仕切っておられた方である。

町役場に電話して、"可能であればご親族にお悔やみを申したい"と伝えると、折り返し息子さんがお電話くださった。

2年前、6月のイベントで2泊した朝、駅まで送っていただいたのが、お目にかかった最後だった。  2年程闘病されて4月に亡くなられたとのこと。お元気に見えたあの後、体調を崩されたようだ。

フロント業務、故障箇所の修繕、食事の配膳、駅までの送り迎え…かつて町議会で地域を束ねておられた方は、ご高齢ながら素晴らしいフットワークで、100人もの宿泊者をさばいておられた。

お酒好きで、お話好きで、夕食のあとなど興に乗ると、昔の暮らし、若者宿での祭りの準備、はたまた夜這いの風習など、会津訛りの楽しい語りが夜更けまで続いた。

会津魂を感じさせる堂々たる風貌の、皆から頼りにされる愛すべき人物だった。                       合掌

                 *             *             *             *

息子さんがさらにお話くださったのは…

お宿の食事作りをしてこられた地域の女性グループが、ご高齢で解散することになり、旧校舎のお宿はこの6月で閉館が決まったとか。K氏の奥様も中心メンバーをなさっていた。

…町をあげてのイベントが2年続きで中止になった6月。観光客や帰省の自粛も重なり、経済活動も気力もしぼませてしまうこの災禍である。

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各地からの作り手や、まつりを楽しみに集う人達と出会った場所。心のこもった郷土食のもてなしで日々の疲れも飛んだ時間。

もうそこに無いのかと思うと、残念でならない。







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