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第20回ガラスびんアワード イベントレポート

2024年3月に開催された、「第20回 ガラスびんアワード 2024」のイベントレポートをお届けいたします。今年は授賞式と、5年ぶりとなる合同懇親会が行われました。

最優秀賞を受賞した、株式会社一創の皆さんと、審査員のおふたり

野口信吾会長より開会の挨拶

日本ガラスびん協会会長を仰せつかっております、野口(東洋ガラス株式会社 代表取締役社長)と申します。本日は大変お忙しい中、ご出席をいただきました受賞関係会社の皆様、プレス関係の皆様、そして最終審査を務めていただきましたリリー・フランキー様、富永美樹様にはこの場をお借りしまして、心より厚く御礼申し上げます。ここに第20回ガラスびんアワードの授賞式を開催できましたことは、ひとえに日頃よりお世話になっております皆様のご協力と、ご支援の賜物と日本ガラスびん協会を代表いたしまして、心より感謝申し上げます。

第20回ガラスびんアワードWebより

昨年の授賞式は、新型コロナウイルス感染症対策が緩和されたことにより、約120名規模で開催させていただきました。今年は、その前年を上回る130名のご出席をいただいております。また、今年のガラスびんアワードのエントリー数は、175エントリーで228本。エントリーの応募方法は通年で可能とし、インターネットを利用するお客様からのダイレクトエントリーも可能としたことで、昨年とほぼ同数のエントリー数となりました。

第20回ガラスびんアワードWebより

今年のガラスびんアワードの特徴は「逆転の発想」です。今まで使われてこなかった色調のガラスびんや原材料を活用したり、ガラスびんの形状から着想を得て商品を開発したり、固定観念を覆し、既存のガラスびんから見方を変えてハイセンスに仕上げたりする商品が注目されました。ガラスびんの表現力は底知れず、形状も色調も質感も多種多様。まさにガラスびんは、長い歴史を持ちながらも、まだまだ未来に向けて大きな可能性を持つ容器であることを強く感じています。

このようなエントリー商品の中から、さる1月30日に一般審査会を行いました。また、翌日にはリリー・フランキー審査委員長、富永美樹審査委員により 最終審査が行われ、6点の賞と日本ガラスびん協会特別賞2点が決定いたしました。一般審査員の方々にも本日ご出席をいただいております。

そして、授賞式終了後は、5年ぶりに合同懇親会の開催もございます。これからも会員各位とともに、業界のさらなる発展を目指して努力を重ねてまいる所存です。皆様には引き続き、格別のご支援を賜りますようお願い申し上げ、私の開会の挨拶とさせていただきます。本日は誠におめでとうございます。

第20回ガラスびんアワードWebより

受賞企業のスピーチ

最優秀賞:TSUCHI-YA 純米大吟醸│美硝

私たちはランドセルを手がける土屋鞄製造所から派生した会社で、浅草合羽橋でガラス専門店を営んでおります。社長が、先代の父親が創るランドセルを見て、その丁寧さをリスペクトし、様々なお客様に伝えるために尽力して事業を成功させてきました。

美硝のボトルデザインの原型は、山村製壜所さんが製造し、きた産業さんが販売するウォーターボトルです。ボトル全面のフロスト加工をガラス作家さんに施してもらって商品化したところ、非常にお客様からの好評を得ました。青から緑に変わるプロセスでどうしても生まれてしまう「中間色」は、商品がなかなかできずにいたそうです。ただこれからの世の中、そういった無駄も活用できないかという山村製壜所さんの執念が実った形に、私たちは出会うことができました。

株式会社一創
佐野 洋光様

優秀賞:THREE バランシングネクター ローション
THREE バランシングネクター モイスチャライザー

ACROはTHREEという百貨店を中心に展開する、15周年を迎えたブランドです。

化粧品のボトルには清潔感が求められますので、カレット利用率は30%ほどの透明度のあるガラスを使っておりました。
今回受賞したネクターは、第一硝子様の高い技術力で80%以上のカレットを使っています。水平垂直の線で構成された、要素を極力取り払ったデザインですので、ボトルの色や表情はすごく重要な要素です。ただカレット80%以上になると、ガラスは緑みや青みを帯びてまいります。そこで、初めて挑戦する透明の塗装によって、厚みのあるびん底に違う色が見えるなど、新たな価値や奥行きが生まれました。

関係する皆様のお力で、このような美しいボトルが生まれたと感じております。

株式会社ACRO
上諸 あづさ様

優秀賞:タナカのふりかけプレミアムギフトセット

このプレミアムふりかけギフトセットは、白いガラスびん。砡(ぎょく)ガラスを使い、カラフルなラベルに日本ならではのふりかけ素材のイラストを描き、ラベルをはがすと世界文化遺産の宮島や厳島神社などの美しい風景が現れ、びんの中にはふりかけが入っているという、いくつもの意外性がある本当に楽しく親しみやすい商品です。

この商品は、亡き先代社長がG7広島サミットに合わせ、広島から世界へ平和の心を伝えたいという強い思いを持って作りました。このびんがくり返し使われて、末永く世界中の人々に愛されることを願っております。

田中食品株式会社
田中 岳子様

優秀賞:富士山ぷりん

富士山の麓にあります、山梨県富士河口湖町のプリン専門店です。富士山プリンを作るにあたってびんを探したところ、磯矢硝子工業様の山の形をしたびんに出会い、下に水色のラムネ味を、上にパンナコッタをのせて雪をかぶった2色の富士山を表現しています。

ガラスびんを使うことで高級感や上品さ、美しさを表現できましたし、びんの形状を製品に反映できた良い商品だと思っています。富士山をモチーフにしていることから、海外から訪れるインバウンドのお客様からも人気です。富士山のように日本を代表するような愛される商品に育てていきたいと思っております。

有限会社 ひまわり亭
梶原 直人様

リリー・フランキー賞:CHILL GREEN spicy&citrus

濱田酒造は、鹿児島県のいちき串木野市で明治元年に創業し、本格焼酎を中心にリキュール、スピリッツ等を製造するメーカー・蔵元です。

受賞しました商品は、焼酎に馴染みのないエントリー層や、若年層をターゲットに開発した新感覚のボタニカル系麦焼酎で、デザインテーマはカジュアル&リラックス。ナチュラルでオーガニックなイメージとともに、ワインボトルのような部屋に飾りたくなるデザインに仕上げました。

「本格焼酎を真の國酒へ、さらには世界に冠たる酒へ」を事業目標に掲げ、国内外の皆様に焼酎の新たな価値を届けたい私どもにとって、ありがたいご評価をいただきましたことは大変弾みになったと思っております。

濵田酒造株式会社
濵田 光太郎様

富永美樹賞:ホエイのきもち

ホエイのきもちは、地元の金融機関で「チーズ工房さんがチーズを作る際に大量に余るホエイをどうにか活かせないか?」と相談されたことから始まりました。うちも元は酪農家だったので、つながりのある吉田牧場さんに話をし「乳からできた商品を余すことなく使ってほしい」と参画いただき、知見のある日本薬科大学の学生さんにも、味を決める際に協力してもらってできた商品です。

某大手乳業メーカーが以前にホエイの商品を出した際は、賞味期限の短い紙パックに入っていました。そういった部分でも、ガスバリア性の高いガラスびんでできたことを本当に幸いに思います。サンコープリペーションさん、ありがとうございました。

有限会社 戸田乳業
戸田 喜裕様

日本ガラスびん協会特別賞:パインアメサワーの素

今回受賞したのは、パインアメとコラボさせていただいたコンクタイプの酎ハイです。

ほぼ阪神タイガースの岡田監督のおかげで、僕はここに立っていると思っていますが、この商品はもっと前の2020年3月19日に発売いたしました。僕たちの研究者が、パインアメの味に必死で近づけて実った商品がようやく5年目を迎えますが、さらに5年10年20年と続くような商品を作っていきたいと思っております。

そして酒蔵として醸造発酵を頑張って、梅酒やジンなどいろんな商品を出しておりますけども、常にクオリティの高い商品を作り上げて、またこのような受賞の機会をいただけるように精進していきたいです。

中野BC株式会社
中野 幸治様

日本ガラスびん協会特別賞:しそ焼酎「鍛高譚」

私は合同酒精で鍛高譚のブランドを5年間担当してきましたが、今日は「鍛高譚でパンパカパン」という気持ちです笑。鍛高譚は先ほどご紹介いただきましたように、北海道白糠町の「一村一品運動」の中で生まれた商品です。昨年12月に30周年を迎えまして、皆様のおかげでここまで来ることができました。

ロングセラーとなっている主力商品の720mlびんは、鍛高譚のしその香りをしっかり守ってくれる大切な容器となっています。ガラスびん業界を盛り上げたいという気持ちで、私たちも精進してまいります。

合同酒精株式会社
岩﨑 康代様

審査委員からの祝辞

審査委員 富永美樹

今年は、見たことのない色のガラスびんが、ひと際輝いていました。ひと目で「今年はこれが最優秀賞だな」と私の心の中は決まっておりまして、こんなに美しい色のびんがあるのかと。グリーンと青の間、言われてみれば間の色っぽいなぁ、こんな色を隠し持っていたんかい!と驚きました。富士山プリンは、私が週の半分を暮らしている富士河口湖町の人気商品。私も1票入れましたが、実はリリーさんが推していました。

やっぱり、何かものを作る時に無駄なものや使えないものが出てしまうということは、仕方のないことだと思うんです。けれども、それをうまく活かせないっていうジレンマや心苦しい気持ちは、作っている人の中には常にあるのでしょう。

だからホエイのきもちなんて可愛らしい名前が付いたんだろうと思います。しかも、品質を保持するためにちゃんとガラスびんに入れてくれた。ラベルもみんな本当に見た目が素敵で、可愛くて、素晴らしい。そこにガラスびんのキラキラとした美しさが加わると、女子は心踊りますね。ガラスびんは取っておいて、自分の近くに置いておきたい。そう思わせてくれるものを、みなさんの企業努力で作っていただいて、私たちをワクワクさせてくれるものを生み出してくれたら、それがきっと日本の元気につながるんじゃないかなと思っています。

第20回ガラスびんアワードWebより


審査委員長 リリー・フランキー

20回のうち、僕は16回ほど審査をやらせていただいているんですかね。最初の頃は、ガラス会社の社長さんはみんな僕よりも年上でしたが、知らないうちに僕が一番年上になりました。そして、ガラス商品やガラスを取り扱うことを20年近く経験させていただきますと、異様にガラスに詳しくなるということもあります。ガラスの必要性や重要性を伝え、プラスチックの問題をどうにかしていくためにも、ガラスの再評価を進めていかなければなりません。ガラスびんのデザインも、毎年見させていただくと世相を反映しているというか、今年はシンプルで質実な素晴らしいデザインが集まりました。これから何か未来に向かっていこうとする日本の姿や、あり方がよく見えるような感じがします。

富士山型のプリンは僕も推させていただきましたが、食べにくさを気にしないぐらいの気概も大切ですよね。「おしゃれは我慢」ってピーコさんも言ってましたから。底のほうは食べられなくてもいいじゃん、ぐらいの気持ちでびんを作るというね。

こうやって年に一度ですが、皆さんと集まって色々なびんのお話を伺ったり、意見交換をさせていただいたりするのが楽しみになっております。ガラスびんのデザインは、手で持ったり口につけたりするものだからこそ、作り手のお人柄が出るので、見させていただくのが本当に楽しいです。ガラスびんの発展のために、30回、40回と続いていくことが良いことだと思っておりますので、みなさんとガラスびんの美しさや必要性を考えながら、また来年お会いできたら良いなと思います。

20周年記念トークセッション

MC:今年は20回目の節目ということで、特別にお話を聞かせていただきましょう。ガラスびんのトレンドの移り変わりについて、野口会長から教えていただけますでしょうか。

野口:最近のエントリーは、アルコールびんが増えてきている感じがしていましたが、今回選んでいただいたふりかけや富士山プリンのびん、化粧品のボトルなど、まだまだ良いものがいっぱいありますね。

リリー:ふりかけのように、中身が見えるのが当たり前だと思っていても、見えなくていいとするなど、固定概念にとらわれずにガラスの美しさを追求していけば、それがまた商品の魅力になるという考え方を提案されているものが多いですね。最優秀賞の純米大吟醸は、このびんの存在でもうすべてが説明できますし、リリー・フランキー賞のワインびんに入った焼酎は、バックバーを統一したい飲み屋の雰囲気を、おしゃれにグレードアップしてくれる感じがします。

第20回ガラスびんアワードWebより

富永:私はとにかくびんが残ってほしい。最近のニュースで一番ショックだったのが、森永乳業の牛乳びんがなくなってしまうこと。私、山梨で温泉によく行くんですけれども、サウナに入った後に、脱衣所でコーヒー牛乳を飲むのがものすごい楽しみなのに、紙パックになったらもう飲まないですよ。唇に当たるびんの冷んやりした感触や、ぽってりとした形状のおかげでより美味しく感じるんです。どうして残してくれないんでしょう。私の人生の楽しみが、確実に1個減ったんですよ。びんは、みんなの思い出の一端を担っている存在でもあるんです。

第20回ガラスびんアワードWebより

リリー:紙パックや缶ではなく、なぜびんに入っているものをみんな美味しいって言うかというと、単純にびんだと冷えるんですよ。それに、CDよりもアナログレコードが売れていたり、中高生が新曲よりも古い歌謡曲を聴いていたり。何年かに1回は、若い人たちのアナログ回帰というか、古いものをちゃんと尊重しなきゃいけないという風になっていますよね。逆に「びんを止めよう」と判断する経営の仕方ほど、もう古いやり方になりつつあるという。

野口:ガラスびんは、未来への多種多様な可能性をまだまだ秘めている、貴重な素材でもありますから。

富永:なくなって初めてその大切さがわかるってことは、あるんじゃないかと思うんですよね。

第20回ガラスびんアワードWebより

リリー:あるうちにありがたさがわからないというね。人間の浅はかなところです。残したければ買わなきゃいけないし、支えなきゃいけない。でも確実に時代や趣向は、プラスチックではなく、びんに入れていく方向へ感覚的に戻っているので、そうなった時にやっぱりデザインが一番いい橋渡しになります。ここにお集まりの皆さんに頑張っていただければ、もっと増えていくのではないでしょうか。
野口:我々がその大きな役割を担い、ガラスびんの発展に向けてより力を注いでいかなければと感じます。
MC:あらためて、皆様にガラスびんの大切さが伝わったのではないかと思います。御三方、ありがとうございました!

第20回ガラスびんアワードWebより

合同懇親会

ガラスびんアワード授賞式に続いて、5年ぶりに合同懇親会が開催されました。日本ガラスびん協会副会長である磯矢硝子工業株式会社 小笠原 務 代表取締役社長による乾杯の発声とともに、合同懇親会が開宴しました。

ご歓談の中で、協会からは全国銭湯とのコラボレーション企画「夏休み!!ガラスびん×地サイダー&地ラムネ in 銭湯」や、ガラスびんの魅力と価値を漫画で表現する「びぃどろ・コンチェルト」、東京家政大学との産学連携の共同プロジェクト「be draw project〜びんで描く、びんで繋げる〜」、持続可能な生産現場で作られるガラスびん入り食品ブランドを集めた「エシカルダイニングセレクション」などの広報活動を紹介させていただきました。

コロナ禍を経て、温かな祝賀ムードと活気が戻ってきた、和やかな合同懇親会となりました。

出井副会長(ガラスびんフォーラム)より中締めのご挨拶

ガラスびんフォーラム副会長を仰せつかっております、出井(興亜硝子株式会社 代表取締役社長)でございます。世界的に見ると、ガラスびんの需要はサステナビリティ意識の高まりにより、増加し続けています。しかし、残念ながら日本では逆のトレンドが見られます。市場環境の厳しさや様々な要因により、ガラスびんの需要が減少している実態を直視しなければなりません。

この点について、私たちがどのように対処していくかが重要な課題であり、ともに取り組む必要があると考えております。ただ、本日のアワードの受賞作品を拝見し、その創造性と革新性に触れると、ガラスの可能性に改めて勇気づけられます。受賞者の皆様の商品は、ガラスの持つ美しさと機能性を最大限に引き出し、私たちに新たなる展望を与えてくれました。

これらの商品はガラスが持つ無限の可能性を示すものであり、私たちの業界の未来に対する希望を感じさせてくれます。今後も、ガラスびん産業の発展と持続可能性に向けて、皆様と共に歩んでいけることを心から願っています。以上、チャットGPTに書いてもらった内容を読ませていただきました…笑。

改めてこういったスピーチの原稿は、もう我々には必要ないなと。ガラスびん業界は良いガラスびんを作る。そして皆様の創造性に貢献をする。こういったことに集中しなきゃいけないと、そういったことを改めて思った次第でございます。本日はありがとうございました。

第20回ガラスびんアワードWebより

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