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マチネの終わりにを読んで

この人以上の相手には、もう出会わないだろう。

なんて、本気で思ったことはあっただろうか。
この物語は、そう惹かれあった2人が運命のイタズラかのように引き裂かれ、すれ違い、相手を思い、それぞれの人生を進める。

平野啓一郎著 マチネの終わりに

※ネタバレを含みます。
第三者的立場の人間が、2人の様子を教えてくれるような構成だが、それぞれの視点に立ち、悩み、考えるところを露わにしてくれる。2人が惹かれ合う過程も何よりだが、会えない時間をも相手を思い、会えなくなった後もふと相手を思い出し、自分の中で昇華させていく。仕事、年齢、居住地、病気、家族、こども。
人が生きていく上で恋愛、強いては結婚をするとなると避けては通れない要因だ。ここぞとばかりに現れては、主人公たちを、読者を悩ませる。どうしてそう考えるのだろう。と若い自分には分からない選択、行動も見受けられた。

自分が主人公たちの立場だったらと何度も考えながら読んでいた。特に悩ましいのは、真実を伝えられた後の蒔野の立場だ。生涯のパートナーと決めた三谷に告げられた時。しかも、お腹には新しい命が授かっていた時だ。自分が親になるという覚悟が芽生え始めていたそんな時の告白。果たして正常でいられるであろうか。なぜ墓場まで持って行ってくれないのか。一体誰が幸せになる発言なのか。結局は三谷の自己満足であろう。許されざる行為をした懺悔のつもりであろうが、その行為は認められてたまるものか。

この作品の好きなフレーズを紹介して締めくくろうと思う。

人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えている。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものなのだ。

牧野

この物語の登場人物が巡り合うことで、過去がどのように変わったのだろうか。そして自分も未来だけでなく、過去の部分が変わったのか。
個人的にとても好きな作品であったし、また歳を取ったら読もうと思える作品であった。
その時また、未来だけでなく、過去を変えてしまうのだと楽しみにしておく。

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