【論文読了】DEI経営の実践
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2024年4月号の特集はDEI経営の実践でした。DEIは今時のテーマですね。
私は自分が落ちこぼれで仕事の選択肢がなくて困ったので、誰もがチャンスを得られて活躍できる社会になるといいなぁと思っています。それこそDEIでしょうし。
それでは振り返ってみましょう。
経営戦略としてのDE&I
インサイダーとアウトサイダー
インサイダーとアウトサイダーってそうだよなぁとすごく感じました。
インサイダーとはマジョリティ側の立場にいる人のことです。アウトサイダーは逆にマイノリティ側ですね。
例えば新卒終身雇用で男性ばかり、根性論と長時間労働でバリバリ働いてなんぼというステレオタイプな昭和の会社で考えてみましょう。
このような会社では、インサイダーが仕事に専念できる状況にある男性(独身または既婚だけど妻が専業主婦など)で、アウトサイダーが女性や家事・育児・介護をしている男性、障害者などです。
もうちょっと付け加えると日本人男性中心で、男性でも日本人意外だとアウトサイダーになってしまいます。
最近の日本企業は段々と正社員で活躍する女性も増えてきました。しかしまだまだ残業も多くて、家事・育児・介護などと両立したり、障害者や外国人が活躍したりするには、先進的な会社でないと難しそうに感じます。
インサイダーはマジョリティであるがゆえ、自分の常識や価値観が組織の常識や価値観と一致します。すると何も意識せずとも不公平を感じませんし、阿吽の呼吸でコミュニケーションが成り立ったりします。
よって自社は公平でコミュニケーションもしやすいと思ってしまうでしょう。
一方でアウトサイダーだとマイノリティという立場になるため、疎外感を感じたり、ロールモデルがいなかったりします。
これでは本当に公平とは言えません。多様性とは逆で同質性の組織です。
差を埋めるには気付くことから始める
まずは気付くことが大事ですね。それゆえインサイダーとアウトサイダーの認識の違いを明らかにする必要があります。そうしないと話が始まりません。
最近の子どもたちは違うかもしれませんが、我々は子どもの頃から社会のルールに従い、みんなと一緒であることを求められます。
私はそれに馴染めず、社会不適合となって会社を転々としてしまいました。しかしそれゆえマジョリティが唯一絶対の正解とか、社会で普通とされることが唯一絶対という考えをおかしいと感じることができています。
インサイダーとアウトサイダーの違いに気付く1つの方法として、私としては社外の人と話して、違う組織を知ることも有効かなと思います。社外の勉強会でも趣味のサークルでもいいと思います。
EDIを推進する企業は4つの「自由」を追求すべきである
DEIのために従業員に4つの自由を与えよという論文です。
自分でいられる自由
職場では公的人格でいようとするという話を聞いたことがあります。確かに仕事では体裁も必要ですし、不必要にプライベートの話をすべきではないとされています。
しかし家族やペットも受け入れてもらえたり、周りに合わせるために自分を押し殺したりしなくてよいとなれば、自分が受け入れられていると感じられます。
アイデンティティを発揮でき、居心地が良くなるでしょう。また受け入れられていると感じられると、エンゲージメントも高まります。
自分を高める自由
仕事において自分を高めることは重要であり、権利として認められていて欲しいものです。
しかし本稿によると、上司が部下にするフィードバックは支配的な集団には肯定的なのに疎外されてきた集団には否定的なようです。
これでは学べることに差がついてしまいます。性別や人種でこんな差別がされているものだそうですが、そういうことはしないようにしたいですね。
退く自由
疎外されてきた集団の人は過度に注目されてしまう可能性もあります。
例えば女性初の管理職あるいは役員とか、外国人初の管理職あるいは役員になったという話があれば、社内でも注目されるでしょう。日本企業では女性の管理職はここ10年くらいに少しずつ出てきているかと思います。
すると初めてということもあって過度に注目されることは容易に想像できます。会社もダイバーシティに力を入れているとアピールするでしょう。
目立つとプレッシャーも増えてやりづらくなります。異質性や柔軟な働き方が認められている状態が普通になれば、疎外されてきた集団の人々が目立つ立場になっても、働きやすさを実現できるそうです。
経過期間として必要なのかな?とか、後に続く人が出ないと厳しいかな?と思います。しかし普通になってしまえばなんともなくなるでしょうね。
失敗する自由
失敗しても再起のチャンスがあることが大事です。
支配的な集団の人々は失敗してもセカンドチャンスが与えられやすい一方で、疎外されてきた集団の人々は失敗すれば厳しく処罰されがちだそうです。
私が嫌だなと思うのが、疎外されてきた集団の人々に任せてみて失敗したら、「やっぱ○○な人たちには無理か」と言われることです。これこそバイアスですから。
しかし疎外されてきた集団の人々にセカンドチャンスが与えられることが少ないなら、こういうバイアスもありそうですね。
DEIの実現を阻むものは何か
従業員が自分は受け入れられている、話を聞いてもらえる、尊重されていると感じられるような管理職の対応が必要なのに、管理職がそのようなトレーニングを受けていないとのことです。
管理職研修として何をやっているのか知りませんが、こういう心理的安全性やエンゲージメントなどのトレーニングなんてどこかにあるのでしょうか?
少なくとも自分がされて嫌だったことをしないようにすればいいと私は考えています。
DEIはトップが掲げて会社を変革しようとすることも大事ですが、現場のリーダー層、すなわち管理職やプロジェクトマネージャーなども意識して実践する必要があると感じました。
フィードバックと多様性:従業員の本音を引き出し、組織に活かす
率直なフィードバック文化が組織のパフォーマンスを高める一方で、国によってフィードバックの仕方や受け止め方による違いがあるという論文です。
フィードバックの伝え方が問題になるのは、上手く行ったときのようなポジティブなフィードバックだけでなく、ミスなどネガティブなフィードバックもあるからです。
例えば以下のようなことが本稿では挙げられています。
アメリカ人は1個ネガティブなフィードバックを挙げたら、3個ポジティブなフィードバックを挙げる。
ヨーロッパの多くの国ではそのまま伝える。つまりこのミスはいけないことだとストレートに言ってしまうこともある。
タイ人は改善が必要な点などネガティブなフィードバックを攻撃的に感じる。
過去のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの論文では、ヨーロッパではミスの指摘は仕事内容への指摘であって人格には言及していないという認識が一般的らしいです。
しかし日本を含むアジア圏では、仕事でミスを指摘されると仕事内容と人格の両方を指摘されていると感じるのだそうです。
確かに日本では仕事で上司にミスを指摘されると、人としてだらしない人というイメージを持たれますね。
本稿ではタイ人がネガティブなフィードバックを攻撃的に受け止めてしまったという話がありますが、アジア人はそういう傾向があるのかもしれません。日本人はありそうです。
またアップグレーダーとダウングレーダーの話も注意が必要だなと感じました。日本は間接的な表現が好ましい文化でしょうね。
またフィードバックをする側の人は、男性よりも女性の方が攻撃的と受け取られやすいそうです。一般的な女性は男性よりも優しいとか丁寧というイメージからなのでしょうね。
また男性は男性が相手のときよりも女性が相手のときの方がアドバイスの量が増えるそうです。
これは社会的なジェンダーギャップと本能がありそうです。現状の社会では男性の方が立場が上のケースが多いのと、単にカッコいい所を見せて凄いと思われたい見栄があるでしょう。
こうしてみると、国の文化によって普通になっていることがあることに気を付けないといけないのでしょうね。
ジョンソン・エンド・ジョンソンはクレドーを羅針盤にDE&Iを推進する
ジョンソン・エンド・ジョンソンの人事統括責任者へのインタビューです。
これを読んで感じたことは、多様性を実現した先に働きやすい職場があるということです。
ジョンソン・エンド・ジョンソンはクレドーという社是のようなものを明確に定めており、浸透させています。
創業時の社員14人中8人が女性というのも1886年当時では先進的で、根っこの部分にDE&Iがあると言えそうですね。
クレドーを時代に応じて加えていくことで、時代に合わせた働き方や考え方を浸透させているのです。
またERG(従業員リソースグループ)という活動があり、これによってDE&Iが浸透しているそうです。おそらく従業員の自主活動ですので、ボランティアがイメージとして近いでしょうけど、サークル的なものかもしれませんね。
こうやって性別や性的指向、人種、障害の有無などに関係なくオープンなコミュニケーションが取れる職場だといいですね。差を感じなくコミュニケーションを取れる職場こそがフラットな職場です。
障害者が中心となって働く会社:ビティ・アンド・ボウズ・コーヒーの挑戦
最後に凄いお店の事例がきました。なんと障害を持って生まれた子供を失業者にさせたくないという想いから、障害者が中心になって働くお店を作ったというのです。
ビティ・アンド・ボウズ・コーヒーというお店です。その名の通りカフェです。
ビティ・アンド・ボウズ・コーヒーの店員の多くは障害者です。健常者もサポート役として採用していますが、必要なときだけ手助けすることになっているそうです。
顧客と店員の距離が近いお店となっており、カップに顧客一人一人に向けた手書きのメッセージを書いたりしています。
つまり普通のカフェではなく、とてもぬくもりと人情味のあるお店とすることで、障害者でも頑張って働けて、顧客も障害者が頑張っているところを見れるわけです。
このような人とのふれあいが中心のお店は、現代では減ってしまっています。居場所としても有効なのでしょう。
採用する障害者は、前向きな姿勢と新しいことを学ぶ意欲を基準に選んでいるそうです。学ぶ意欲は何をするにも大事ですので、私も大事にしたい基準です。
仕事は本人の適性で選び、やってみて向いていなければ別の仕事に変えるそうです。仕事なんてやってみなければ向き不向きが解らないので、それでいいと私も思います。
こういうお店だと、ふれあいに価値を置くことで商品の単価を上げられそうですね。
障害者雇用を中心としているゆえ、従業員1人当たりがこなせる仕事量は少ないかもしれません。それゆえ1店舗当たりの従業員数も多いかもしれません。
また障害者雇用だと給料が低くなってしまうという現実もあります。そうならないようそれなりの給料を払うためにも、客単価を上げる必要があるはずです。
こういう思い切った取り組みはいいですね。やるのは大変ですが、付加価値の出し方で活路を見出したいですね。
終わりに
ダイバーシティという言葉が登場してから10年は経つと思います。地道に進んでいる感じはしますが、今一だと感じます。
特に日本では未だに高い地位にいる人が女性蔑視の発言をしていますし、女性を1人役職に就けただけでダイバーシティだと企業が自信満々に叫んでいたりします。
外国人労働者の問題も尽きず、LGBTQ+の話題も最近になってようやく出てきました。
でもよくよく考えてみると、なぜ性別や国籍で差別するのでしょう?まぁ差別はそれだけじゃないのですが、人によって接し方を変えるのが常識とか空気を読むことだという考えが私は嫌いです。
私は誰とでもフラットに接したいですし、そういう社会になるといいなぁと思います。それにはまだまだDEIの浸透が足りませんね。
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