見出し画像

第4回:サイズもポテンシャルもでかい!北海道

コチェフ アレクサンダー

 日本の47都道府県の中で北海道は有数の大きいポテンシャルを秘めていると思います。けっして私が北海道に住んでいるからではありません。この連載の最終回では、北海道の未来に目を向けて、そのポテンシャルについて考えていきたいと思います。

北海道でっかいどう

 北海道に15の都府県がすっぽり収まっている広告は見たことありますか。北海道広告業協会の広告だそうですが、インパクトありますね。日本の面積の22%を占め、ヨーロッパで言えばオランダのほぼ倍、オーストリアとはほぼ同じですから、中堅サイズの国ほどのサイズでと言って差支えないでしょう。そのサイズ自体は地域の大きいポテンシャルの一つだと思います。

 観光産業、農業、製造業など、様々な分野が無限大の伸び代を持つのは、北海道のサイズゆえです。新しいリゾートを開発する、新しい工場を建てるなどの土地が比較的安価で確保でき、日本全国、そして全世界を相手に事業が営めます。本州から移住しても住むところがたっぷりあります。

ものづくりの基地

 直近では、ラピダスという半導体メーカーが世界的な半導体不足の解消を目指して、北海道の千歳市に前代未聞のサイズの製造拠点の建設 に着手しました。
 総投資額が5兆円にも及び、半導体不足というグローバルな課題の解決に向けて大きな一歩となることは確実視されています。加えて、日本が半導体製造の世界的なリーダーになれるターニングポイントとしても注目され、半導体を利用する各種の産業に良い影響となることは間違いありません。そういった取り組みを可能にしたのは北海道という地域です。世界が驚く規模の製造拠点が作れる大規模な敷地、冷却に役立つ雪を含む豊富な水資源、また、何千人単位の従業員をゆったりと住んでもらえる居住地の開発、そのすべては北海道ならではの可能性を活用したものでしょう。

インバウンド観光

 外国からやってくる観光客を増やす方針は、近年では日本の各政権の一貫したポリシーであり、コロナ禍が明けた今、実際にそういったインバウンド観光客が勢いよく増えてきました。日本の他の地域では、「オーバーツーリズム」と言われるほど地元の人にとって住みづらくなるレベルで増えていますが、北海道は、まだまだキャパシティーがあります!前回 取り上げたスノーリゾートのニセコは様々な民間投資家から数千億円規模の投資を受け、大きいリゾートになってきました。「つぎのニセコ」の候補地が北海道に数多くあり、全世界から現状の数倍の人数の観光客を受け入れても「オーバーツーリズム」とならないのです。
 もちろん、冬に雪を楽しむ観光だけではなく、夏の大自然体験や北海道の「食」を主にした観光も大きく伸びるだろうと推測しています。
 元々中国を筆頭にアジアからの団体ツアー客が多い北海道ですが、近年では、より出発地や旅の仕方が多様化し、長期滞在でゆっくり北海道を回って各地の景色や食べ物を味わうトレンドも顕著になってきました。例えば、キャンピングカーのレンタル事業を営む「ウレシカ 」を取材して知りましたが、ヨーロッパや北米からやってくる夫婦やカップルなど、2~4週間という滞在期間の観光客もけっして珍しくないのだそうです。

 朝起きてキャンピングカーから出たら、目の前が襟裳岬(えりもみさき)なんていうシチュエーションは気持ちよいでしょうね。

人のこころはお腹から制する

 北海道は、食料自給率は216%(北海道農政部『北海道農業・農村の姿』2022年版、カロリーベース)、農業産出額は日本全体の14.1%を占め、いずれも1位です。それだけ生産してもなお、良質な農地がいっぱい空いていて、北海道庁や農業団体などが主催する就農フェアが定期的に開催されるなど、就農や営農に関する支援も盛んです。北海道の余市町など、本州から就農やワイン造りを目的に移住する人が近年増えてきているのもそのためかなと思います。日本全体の農業に関して危機感が持たれている今日では、収益性が比較的確保しやすい大規模農業が営める北海道は解決の糸口を握っている地域ではないでしょうか。
 農水産物のブランド構築も熱心に行われています。例えば、根室歯舞漁協では、脂の良く乗った、鼻先の黄色い活きの良いさんまを「一本立ち 歯舞さんま」として十数年前から売り出しています。国内の小豆生産は95%近くが道産ですが、なかでも十勝産小豆は最強ブランド品種をいくつも有し、各地の有名和菓子店がこぞって「十勝産小豆」使用を謳っています。
 B級グルメから三ツ星まで、食の展示場としての役割は今後の北海道の成長を大きく下支えすると確信しています。

 この連載は、2023年10月に新刊 がベレ出版から発売されたことをきっかけにご依頼いただいたものです。普段は英語や言語学習の話しかしない私ですが、自分が26年住んでいる北海道の紹介をテーマにしようと決めて、ベレ出版からご快諾いただいたことに感謝します。また、読んでくださった皆様にも厚く御礼申し上げます。

記事を書いた人:コチェフ アレクサンダー Alexander Kotchev
株式会社オレンジバード執行役員COO。北海道大学法学部卒業後、広告会社勤務のかたわらフリーランス翻訳者として活動。2009年より現職。主に高校生以上を対象に、留学準備、TOEFL・IELTSをはじめとした検定対策、自立した英語話者の育成を専門とする英語研修を提供している。
著書は、『完全攻略! TOEFL iBTテスト リーディング リスニング』、『完全攻略! TOEFL iBTテスト スピーキング ライティング』、『完全攻略! IELTS英単語3500』(すべてアルク刊)。他に、IIBC刊の『公式TOEIC Listening & Reading プラクティス リーディング編』並びに『公式TOEIC Listening& Reading プラクティスリスニング編』をはじめとして、15冊以上の教材の編集に携わる。
興味ある分野は、第二言語習得全般、語彙、TOEFLやIELTSなどの検定やテスト設計。
オンライン英語講座、翻訳・校正のオレンジバード (orangebird.jp)


この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?