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③隔離生活(2022年2月)~ホテル

さて、6日間の隔離生活のはじまりである。

まずは宿泊施設に関しては、すでに書いたように、「隔離ガチャ」でいえば「当たり」だといえる。
キングサイズのベッドに十分なスペース。2つの大きなトランクをひらきっぱなしでおいておいても邪魔にならず、さらに子どもの大量のレゴを床にひろげっぱなしにしてもOKだ。
ソファー&小さな丸テーブルに、書斎机のようなものまである。丸テーブルは食事の際に、書斎机はこうして私がPCを使って作業をするのに使うことにした。ここでパパとスカイプもする。

ただ、すぐに気になったこととして:
1.空調の音が地味に気になる
おそらく、通常のホテルの使い方-自由に出たり入ったりする、観光やらに出かけて日中はホテルにあまりいない-だと、あまり気にならないと思うが、または気になったとしてもホテルとはそういうものという感覚で我慢ができるかもしれないが、一日中部屋にいる場合、完全に無視することができないのが、空調の音だ。
OFFにすればいいではないかと思うかもしれない。ところが-これは次の2.の内容につながるが-、窓が完全に開かず、外気をいれることができないため、せめて空調を付けておかないと、空気が澱む気がするのだ。
さらに、こういう機械的で継続的な音が及ぼす人間の体への影響もちょっと気になる。子どもはまったくこの音を気にしていないようだが、人間の無意識のところになんらかの作用を及ぼすのではないだろうか、という気がしてしまう。

2.窓が完全に開かない(=外気に触れることができない)
バルコニーがあるにも関わらず、そのガラスの扉が開かなくなっている。その理由は理解できる。誤って転落したら、絶対に助からない階だ。もちろん、バルコニーに出ることは禁止だろう。
ただ、隔離生活をしている私たちは、そうじゃなくても外に一歩もでることはできない。唯一、部屋の扉をあけることができるのは、扉の前に置かれた食事をピックアップするときだけだ。その際に入ってくる空気は、正確には外の新鮮な空気ではない。

つまり、6日間、いっさい新鮮な空気に触れることができない、動く空気を感じることができない、のだ。これは、異常だ。極端ではなく、拷問に近いのではないかと思うし、厳密にいえば、人権に関する何かの法に抵触しているのではないか、という気もする。
ガラスの扉に近づくと、その隙間からわずかに冷たい外の風を感じることができる。私は1日目から、そのわずかな風を貪った。高級ホテルである、ということは、私にとってはすでに無意味だった。
※隔離用に使用されているホテル全体にお願いです。ご協力には感謝しますが、1㎝でいいから窓を開けられるようにしてください。

さて、次に食事だ。
これは隔離施設によってかなり内容が違うし、当たりかハズレは、人それぞれ感じ方が違うはず。誰もが満足のいく食事などありえないから、好みのものが出てこなかったとしても、これは仕方ないと思う。その代わり、ウーバーなどのデリバリーやアマゾンでの注文が可能だし、差し入れもOKとなっている。それらをうまく利用してなんとか生き延びるべし、だ。

私たちのホテルは、和食弁当が1日3回支給される。
普段、日本食材が手軽には入手できず、日本食レストランでは味噌汁や枝まめの小鉢にさえ500円くらいかかってしまうところからやってきた私にとって、日本で作られた日本食のお弁当は、ごちそうだ。これが毎日いただけるなんて、なんて贅沢、と思っていた。

初日の夕食のお弁当では、薄切りの豚肉を使った炒め物や魚のフライに舌鼓をうったし、添えてある漬物も白米と一緒においしくいただいた。
しかし、翌日の朝ご飯にも、同じボリュームの、少なくとも私は日本でも朝ご飯としては食べないおかずが数種類はいった「豪華な」和食弁当が届いた。
なるほど、どうやらここでは本当に3食、朝昼夜の区別なく、似たような「豪華」和食弁当が配られるようだ。
普段、食べ物に対してあまり要求が高くなく、なんでもおいしくいただける私である。さらに大好きな和食のお弁当、、、なのに、3食目にはすでに「うっぷ、、、」と思ってしまった。一つ一つのおかずはおいしいし、ちゃんとその種類も味付けも異なるものが毎回出されているにも関わらず、その味の違いが早くも感じられなくなっていた。

さらに、子どもが食べられるものが少なかった。うちの子は基本的になんでも食べる子だ。実際にちゃんと食べるかどうかは別として、一度は口にいれてくれる。そのうえでおいしいとわかれば、見かけに関係なく食べてくれる。野菜もOKだし、白米も好きだ。
ただ、日本食のおかずという意味では、これまで肉じゃが、餃子、カレーなど、いわゆる子どもが好きそうなものしか食べてこなかったし、なにより冷たいお弁当というのを知らない。揚げ物は食べてくれるかなと思ったが、やはり冷たいのが嫌らしく、食べてはくれない。
デザートや一口のフルーツがあれば、子どもにとっても食事が楽しみになるはずだが-Twitterの体験談ではデザートが充実していたというものがあったから、私もちょっと楽しみにしていたが-、ここの和食弁当にはデザートやフルーツはついてこないらしい。3日間で1回だけ、桃缶のかけらが2つついてきただけだ。
さらに、飲み物は毎食、緑茶だ。これも、子どもにはおいしくは飲めないものだ。せめて麦茶ならよかったのだが、、、。

「隔離メシ」に関する様々な体験談をみて、洋食のお弁当があったり、朝にはパンとヨーグルト、ジュースなどというパターンがあるのを知っていたから、ちょっと目算を謝った、という気がした。
子ども用に小分けのパックのジュースを買ってトランクに入れようと思っていたが、まあ、ジュースはでるだろう、と思い、持ってきていなかった。さらに、こんなに毎回白米がいただけるのならふりかけも家に残っていたのを持ってくればよかった、、、と思った。

しかし、こんな時のためのウーバーやアマゾンである。早速、アマゾンでジュースとふりかけ、アンパンカレーを注文した。
さらに、ポットで弁当を温める、というTwitterで見た技も使ってみた。
また、ホテルのコールセンターの人に聞いて、菓子パンとカップヌードルがいただけるということもわかった。残念ながら菓子パンはうちの子の好きなタイプのものではなかったが、カップヌードルはおいしくいただけた。これでなんとかなりそうだ。

さて、部屋と食事に関して個人的に気が付いたことを書いてきた。誤解しないでいただきたいのは、決して私は不満をぶつけたり、批判をしたいわけではない。ただ、実感として思ったことをそのままに書いただけだ。

そのうえで単純に不思議に思うのだ。ここのホテルの食事を決めた人は、本当に3日間なり6日間、このお弁当を毎日3食、おいしく食べ続けることができると思ったのだろうか。ちょっと考えれば、朝昼夜と、栄養面でも少しメリハリのある食事のほうがいい、ということに気が付きそうなものである。
また、今は外国人の入国が禁止されているとはいえ、外国人の入国もゼロではない。実際、空港でいろんな手続きをしているなかで、外国人(完全に見かけ判断だが、、、)が少なからずいた。見かけが外国人だからといって、日本食が食べられない、と決めつけるのは浅はかだが、少なくともここの和食弁当は、日本の調味料の味を小さいころから知っているような人でないとおいしいとは感じられない類のものではないかと思う。
そうじゃなくても隔離という生活のなかで食事は大きな楽しみの一つだ。もう少しどうにか考えられなかったのかなと思わずにいられない。

また、新鮮な空気がすえないということが、非人間的な扱いである、ということも、おそらくは経験しないとわからないのだろう。
けれど、私はここで、真綿で首を絞められているような、そんな気持ちでずっと過ごしている。陰湿ないじめ、ないしは軽い拷問だなと思いながら。6日間ではなんとか病まないと思うが、それ以上になったら病む人も出てくるのではないだろうか。

こういうことを書くと必ず、税金でただで宿泊と食事が提供されているのに贅沢をいうな、という声があがる。

おっしゃっていることもわかる。
ただ、この隔離措置は日本政府が決めたことであり、私たちはそれに従っているだけだ。少なくとも私はこれを望んではいない。どちらかといえば、私は日本政府の(支持率狙いの?)措置の犠牲者だと思っている。
でも、だからといって、過剰なサービスを要求するつもりもない。狭いホテルにいれられたところで、仕方ないと受け入れたことだろう。
ただ、無料なのだから感謝をしなければならない、という理屈には申し訳ないが納得がいかない。なぜなら、すでに書いたが、私が望んだことではないからだ。

さて、ここにきて3日がすぎた。あと3日、私の心境に変化は生じるのだろうか。

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