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出張理美容師に必要なスキルとは?

自らサロンに通うことが難しい高齢者の方々に向けて、出張理美容サービスは大きな役割を果たしています。しかし、良いサービスを提供するには単に美容技術を持っているだけではいけません。
この記事ではわたしたちの実体験をもとに出張理美容師に必要なスキルをお伝えします。

スキル1:安全管理

介護における基礎知識

前提として、出張理美容師が目指すべき施術のゴールは「怪我無く安全に完了すること」です。
一見当たり前のことですが、そのゴールを達成することは決して簡単ではありません。
一般的なサロンでは考えられないような事故が発生してしまうのが出張理美容の業務であり、そのような事故を未然に防ぐためには介護の基礎知識が必要です。
しかし基礎知識といっても範囲は広く、実務を伴う経験を積まなければ全てを理解することは難しいでしょう。
従って、ここでは出張理美容師に必要な介護の基礎知識に焦点を当て説明します。

必要な知識の例を挙げると、

  • ベッド、車いすの操作及び適切なポジショニング・シーティング

  • 片麻痺または転倒の見守り方法

  • 病状の理解

など、施術中に考えられる事故を想定した項目が挙げられます。

ご利用者様によっては医療機器を装着したまま施術する場合もあり、その際注意すべき事故には以下のようなものが考えられます。

  • 移乗やポジショニング中に管や医療機器の電源ケーブルが引っかかって抜けてしまう

  • 気管切開患者の気管カニューレへ髪が付着、もしくは穴に髪が入ってしまう

通常であれば上記のような事故が絶対に起こらないよう機器は適切に管理されていますが、医療機器の名称や役割の理解、そして設置場所の把握は出張理美容師として大切なスキルの1つです。

病院・施設スタッフへの報告及び申し送り

施術中の安全管理及び緊急時の対応を想定しておくことはもちろんのこと、病院・施設スタッフへの報告や申し送りも大切です。

一般的なサロンでは問題にならないような些細な傷を付けた場合あっても、ご利用者様の健康状態によっては感染症を引き起こす可能性があるので報告を怠らないようにしましょう。
加えて、施術中に感じた言動の違和感も適宜報告しておくことで、問題の早期発見に繋がる場合があります。

わたしたちの現場でも実際に、施術中急にご利用者様の会話が途切れたことに違和感を感じすぐにナースへ報告した結果、ご利用者様が一命を取り留めたことがありました。

そこで観察の重要性を再認識し、以来細かな違和感でも報告するようにしています。

スキル2:コミュニケーション能力

会話の重要性

出張理美容の現場では、技術力だけでなく、会話を楽しむことも大切なサービスの一つです。

わたしたちが訪問させて頂いている施設の施設長から伺った印象的なエピソードがあります。
普段わたしたちが訪問させて頂いているその施設に他の出張理美容業者の方が営業に来られ、体験のような形で一度、認知症の方のカットをご利用されたときのことです。
その業者の方は施術中盤は積極的にご利用者様に話しかけられていたそうですがなかなかお返事がなかったようで、中盤以降は黙ったまま施術されていたそうです。
対してわたしたちは日頃同じ状況でご利用者様からお返事が無かったとしても、会話を続け(一方的ではありますが)コミュニケーションをとっていました。

そのわたしたちの姿が施設長にとって印象的だったそうで、後日このエピソードをお話し頂き、そして感謝の言葉を頂きました。

会話には脳を活性化させる効果があり、ひいてはQOLの向上、自立支援にも繋がります。
視覚障害がある方には、手を添えて声掛けをしながら誘導することで、安心してサービスを受けていただけるよう配慮しましょう。

また、言語障害がある方には、筆談などの方法で対応し、コミュニケーションの障壁を乗り越える工夫が求められます。

ご家族や施設のスタッフとも円滑なコミュニケーションが必要

出張理美容師は、ご利用者様だけでなく、ご家族や施設のスタッフとも密接にコミュニケーションを取る必要があります。

安全管理面において各所との密なコミュニケーションの重要性は前述の通りですが、それ以外にもサービス内容のすり合わせにおいても重要です。

実際の現場でよくあるケースは、ご利用者様と施設スタッフもしくはご家族との間で希望されるヘアスタイルに齟齬があることです。
例えば、ご利用者様のヘアスタイルに施設スタッフは短いスポーツ刈りを希望されていたが、ご本人は長めのスタイルを希望している、といったケースに遭遇したとします。

ご利用者様の希望に沿ったヘアスタイルを提供したいところですが、ケアや衛生面の観点から施設スタッフの希望も汲み取る必要もあり、判断が難しい局面です。

ここで大切なことは、日頃から双方とコミュニケーションをとっておくことでわたしたちが仲介役となり、よりご満足頂けるサービスの提供に繋がるということです。
日頃からコミュニケーションをとっておけば相談してもらいやすく、提案もしやすくなるでしょう。

ご利用者様のことを理解するよう努めましょう

以上がわたしたちが考える出張理美容師に必要なスキルです。

もちろん、上記以外にも学ぶべきことはたくさんありますし、現場ごとにまったく違う環境で施術を行わなければならないこともあります。

ただ、どんな現場であっても大切なことは「目の前のご利用者様のことを理解しようと努めること」です。

ご利用者様を理解しようとする気持ちが、喜んで頂けるキッカケになります。

「どんな話題が好きか、趣味はなんだろう?」など、ご利用者様のことがわからなくても、生活の場を見渡せばコミュニケーションのヒントが必ず見つかるでしょう。