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環境への配慮か見せかけか? 気候科学者が「Earthborne Rangers」の製造をレビューする(Green, or greenwashing? A climate scientist reviews EBR’s production)

本記事は、「Green, or greenwashing? A climate scientist reviews EBR’s production」の翻訳である。

KickstarterやGamefoundで成功した「Earthborne Rangers」の製造を題材にしたボードゲームと環境問題に関する記事である。

日本では環境問題について熱心であることが無価値であったり、ネガティブなことして取り扱われることすらある。それとは反対に、海外では環境問題について熱心に取り組んでいることがポジティブなものとして取り扱われ、売上の増加につながることが多い。

ボードゲーム業界においても、シュリンクの廃止や紙シールの採用などの環境問題対策が施されたボードゲームが流通されるようになった。他方、日本ではこういった話題については無関心であるように思われる。

本記事を翻訳したことに啓蒙的な意図はないが、こういったボードゲーム業界の流れを知ることには意味があると思われる。また、先日開催されたゲームマーケット2024春のカタログに掲載されていた広告の中には、印刷に関する広告があったところである。そのカタログを所有している人は、当該広告を確認してみるといいかもしれない。

なお、注釈は脚注の文末に全て記載されていたが、読みにくいので適宜付することとした。

元記事は以下のリンク先を参照されたい。ヘッダー画像はBGGから引用させていただいた(クレジット: Cory DeVore)。

紙のステッカーに、FSC認証がされた紙に、なんてこった! 「Earthborne Rangers」が広い顧客に知られて、Gamefoundのキャンペーンで100万ドルに迫ると同時に、その持続可能な製造について感心の声を上げている。No Pun Includedは、ゲーム業界の"今年の流行り"として、「Earthborne Rangers」と他のゲームにおける持続可能な製造を取り上げていた。けど、それは単なる……流行りなのだろうか? 環境的な罪悪という醜い真実をひた隠しにして、あなたの購入を心温かい気分にさせつつ曖昧なものとするごまかしなのだろうか? さもなければ、「Earthborne Rangers」は、真に現状を改善させる、賞賛に値するプロジェクトなのだろうか? さあ、議論してみよう。

手短な前置き

ボードゲームレビューの限界となり得る段階や、限界となってしまう段階を乗り越える時だ! ゲームメカニクス、リプレイ性といった特徴に関する分析を探しているのであれば、この驚嘆すべきコミュニティ(※BGGのこと)の他の人たちが君を支援してくれるだろう(注1)。少し踏みならされた道から離れたところをほっつき歩いてみるといいね。

(注1)例えば、Stidjin Plays SoloTobyのレビューを確認するといい。

理念

誰かが持続可能性の主張をダブルチェックするのはめちゃくちゃ重要なことだと思う。ボードゲーム業界では一体誰がそれをしてくれると言うんだい? 見渡したけど、監視役をたくさん見かけたわけじゃない(注2)。そこで、私の出番というわけだ。私は気候科学者である。猛暑と人間の健康に対する影響を専門としている。私は材料科学者ではないし、脱炭素化の専門家でもない(注3)。けど、私はボードゲームのことが大好きで、私の興味が交錯することについて考えることが多い。そうすると、こんな感じだ。私たち全員がこのことについて考え始めて、他の誰かがそれをすることでお金をもらえるようにならない限りは、"このことについてたくさん考えてしまう"働きすぎの24歳のガキンチョの事実の究明と報道から先に進まなくなってしまう。

私が自分の「Earthborne Rangers」のキャンペーンをまだ終えてないし、全く手をつけてないということも言っておくべきだろう(注4)。けれども、私は、その製造の初めから終わりまで「Earthborne Rangers」を入念に見守っていたんだ。もう1年以上、Earthborne Gamesポッドキャストの全部のエピソードを聞いてきた上、他のポッドキャストにデベロップ担当者が出演したものも聞いてきた。多分、おおよそ100時間のコンテンツになるだろう。加えて、毎日、彼らのDiscordサーバにも出入りしている。そうすると、このキャンペーンの盛り上がり(the arc)については話すことができないが、みんなに合理的な情報に基づいた意見を提供するために、ポッドキャスト、Gamefoundのアップデート、Discordを横断して得た製造情報をまとめあげたいと思うよ。

Earthborne Gamesのポッドキャストを100時間以上聞いていることで配慮すべき利益相反関係が生ずる。私は、デベロップチームが自分の子どものことを話していたり、先週プレイしたビデオゲームのとりとめのない話をしていたりするのを聞いている。そうすることで、デベロップチームが友達になるわけではない。けれど、私の霊長類としての潜在意識にとっては、そんなことは知る由もない。それゆえ、私にはバイアスがかかってないなんてふりをすることはできないが、できる限り、客観的であろうと努力するつもりだ。

(注2)誰か心当たりがいるのであれば、教えてほしい。私はBGG上にいる時間を制限しようとしているんだ(もちろん、私の学術博士のためにね)。だから、私が何かを見落としたかもしれない。

(注3)こうした理由で、タイトルに学歴を載せたくなかったんだよね。けど、私の「Daybreak」のレビューが好評を博した後は、私は"ブランド認知"を築こうとしていると思う。

(注4)正確にいうと、1日ミッションを何回かとキャンペーンの2日目のみをTTS(※Tabletop Simulater)上でプレイしたことがある。4人の大学院生を集めることがほぼほぼ無理な作業だということが判明したよ。そして、残念ながら、私はホリデーシーズンを悲嘆に暮れることとなったよ。

現状

「Earthborne Rangers」とこの業界の他のゲームとを比較する前に、この業界の他のゲームの感覚というものを最初に理解しなければならない。私たちが愛するボードゲームが犯しがちな、よくある"環境保護に関する罪"について話そう。

  • プラスチック。私たちが車に積んでいるガソリンや電力のために燃やす石炭のみを、卑劣な"化石燃料"とするのは簡単だ。みんなが気づいてないかもしれないのは、プラスチックが化石燃料由来ということだ。その上、プラスチックは何百年、何千年と環境に残り続ける。マイクロプラスチックが人体にどんな影響をもたらすかについて考えないようにしよう(注5)。

  • カードの加工と芯。お気に入りのカードの豪華なパチっとした音(snap, ※弾力)とシャッフルは、木から直接由来するものではない。カードの構造的な完全さをもたらすカードの"芯"は、プラスチックであることが多い。全てのカードには多様な加工がされており、こういった加工のほとんどがプラスチックを含んでいる。この趣味におけるカードのほとんどはリサイクルできない可能性が高く、みんなの孫がみんなのコレクションを捨て去った後も環境に残り続けるだろう。

  • 包装。プラスチックのことをくどくどと話すのはもう終わりにするって保証しよう! けど、シュリンク包装は、ほとんどの箱が度を超えた大きさであることと同様に、指摘しておく価値がある。不必要にでかい箱は輸送効率を下げ、より多くの素材を使用する。

  • 紙の調達。森林破壊は環境保護主義者のひんしゅくを買っている。その木はどのような方法で切り倒されたのか? その後、植林がされたのか? 伐採に従事した人たちの賃金は公平に支払われたのか? その木は工場に届くまでにどのくらいの距離を移動したのか? 一般論を述べると、FSC認証がされていない紙の場合には、それがどれほど適正なものかを説明するのは困難である。

  • 輸送。大多数のゲームは中国で印刷され、みんなに届くまでに長い行程がかかっているのだろう。その間は、二酸化炭素を排出している。

  • エネルギー。ゲームを販売することによって、みんなのお気に入りの出版社は、明かりがつけられたまま仕事を続けることになる。その明かり(仕事)の源はなんだろうか。太陽光か、化石燃料か? この点、自宅で仕事をするゲーム開発者(developers)は、実在の事務所をもつ出版社よりも資源消費量(footprint)が少ないだろう。けれども、私が推測するのは、エネルギー消費の観点において、ゲームを製造する工場に寄与するところが大きい。

このことの大部分に関する入門的な読み物を提供しているGreen Games Guideに大きな感謝を述べたい。

これは決して網羅的な(exhaustive)リストではないけれど、それでも疲弊ししまう(exhausting)よね。こんなことを考えていて、自分のボードゲームコレクションに対して少し悲しい気持ちを覚えてしまったとしても、それはあなただけじゃない。一般的に、モノを売りたい人たちは、みんなが"脱成長(degrowth)"みたいな言葉をググり始めることを嫌う。そんなことを考えているよりも、できるだけ早く効率的に、最新で最高なKickstarter製品の箱開けという空前の高みに戻ってきてくれるにはどうしたらよいんだろうか?

グリーンウォッシュってのは、製品が実際に環境にやさしいものではないにもかかわらず、製品を環境にやさしいように思わせる行為であり、前にほのめかしたとおり、人を欺く誤魔化しってことだ。グリーンウォッシュの手口の例を見てほしい。

  • 証拠の欠如。ある企業が何かすごいことをやっているように聞こえるかもしれない! それって出来すぎた話じゃないの? 欧州連合のとある研究によると、製品やサービスに関する環境保護に係る表示(green claims)の53%が"曖昧で、誤解を招く、事実に基づかない"もので、40%が完全に裏付けとなる根拠がないものだと判明した!(注6) なんてこった!

  • "グリーン"な素材。"バイオプラスチック"って言葉の響きって良いよね。しかし、結局のところ、バイオプラスチックはそれでもプラスチックなんだ。それに、バイオプラスチックは紙素材の代替品よりも影響が大きい可能性が高い。環境保護っぽい素材が大きな違いを生み出しているかどうかを慎重に検討しなければならない。

  • 寄付。"収益の大部分は<環境保護系非営利団体>に寄付されます!" そうね、これは世の中のためになることだ。ある企業が寄付している非営利団体が世の中で素晴らしい活動をしていると寛大に思うことができる。けれども、こういう寄付は、製品それ自体の生産方法と全く関係がない可能性が高い。その寄付は、みんなに製品を届けるサプライチェーンと対等ではないし、反対方向の力である。私のお気に入りの最近の例としては、キム・カーダシアン新しいブラジャーのコマーシャルがある。もっと関係のある例としては、販売したゲーム1つにつき1本の木を植えるという「Canopy」がある(批判するつもりはないよ(No shade)。(注7)参照)。

  • グリーンなイメージ。マーケティングに樹木を登場させても、その製品が環境保護に力を入れてる(friendly)ことにはならないだろ! 例えば、この「ロラックスおじさんの秘密の種」をテーマにしたガソリンを燃焼する車のCMがある。想像以上に一般的で効果的なわけだ。

  • 困難なリサイクル。みんなが実際に製品をリサイクルするために特別な処理場に行かなければならないのであれば、その三角形のアイコンはほとんど意味をなさない。

  • カーボンオフセット。私が誰かを殺した後に、そのことについて尋ねられて、"いいや、問題ないよ。ほかの連続殺人鬼にお金を払って殺人しないようにしてもらったから、うまくいってるよね"って言ってるのを想像してほしい(注8)。これがカーボンオフセットの論理だ(注9)。私はこの論理が好きではない。私がみんなに求めることは、自身のサプライチェーンを脱炭素化するということだ。他の誰かが自分の排出量と同じ量の豚の屁を捕獲することではない。

  • "実質ゼロ"という誓約。"誓約"というのはまだ実現してないことを約束するもので、現状の改善を示唆するものではない。大部分の誓約には、実際に"実質ゼロ"に到達するための具体的な計画がほとんどない。おそらく、自らに課した誓約の"締切"が近づくにつれて、企業は、約束を守るために自身の事業を純粋に脱炭素化するよりも、カーボンオフセットに頼ることになるだろう。

ここで示した考えである"グリーンウォッシュの罪"の背景となったUL Solutionsのみんなには感謝する(注10)。

さて、読者の皆さんは、1マイル離れていても卑劣な広告テクニックに気づくことができる精通したお客様なわけだ! こうした文脈を念頭に置いて、次の話題に移ってバレー(the Valley, ※「Earthborne Rangers」はバレーという地を探索するゲームである。)を探索することとしよう。

(注5)だけどな、プラスチック製のミニチュアってイカしてるよな!

(注6)この報告書を参照。現在のところ、これが2023年の研究なのか、別の研究のデータを用いた2023年に作成された文章なのかははっきりしない。

(注7)それでも私は「Canopy」を支持するよ! 彼らはゲームの脱プラスチック化に努めていることが明らかだ。あまり製造のことを調査してないけれど、8時間ジェットブルー航空に留め置かれている間、ほぼ一日中このゲームをプレイしたことが1回あるんだ。そして、このゲームが、ほとんどリソースがないっぽい地方の個人デザイナーが自己資金で作成されたものであることに気付いた。この話題については後ほど深く考えていこう。

(注8)Climate Ad Projectの公共広告(a PSA)から引用した喩えだ。

(注9)カーボンオフセットや既存の様々な種類について言うことはまだたくさんある。一部のものは他のものより優れており、それは議論のある話題であるが、個人的にはほとんどが根本的な欠陥があると思う。他の人は異論があるかもしれない。もっと情報が欲しければ、Watershedが公開しているこのガイドを確認してほしいが、これが最重要というわけではない。

(注10)心からグリーンウォッシュの営みに困惑するのに人生の1時間を費やしたいのであれば、2011年のドキュメンタリー「Greenwashers」を大いに勧めるよ。

Earthborneのやり方

じゃ、どのくらい「Earthborne Rangers」がこうした平常どおりの状況に匹敵するのかを見ていこう。私が気を引き締めて「Earthborne Rangers」の製造の真相を探る時だ! グリーンな上部の下にはどんな卑劣な秘密があるのだろうか。辛辣な独立系ジャーナリズムによって何が明らかとなるのだろうか。

これは何だ? 誰かが先を越しただって! それに、なんだ、それは? Earthborne Games自身がやっただと?! そのとおり、ポッドキャストのリスナーはEarthborne GamesのCEOであるAndrew Navaroは、かつてGreen Games Guideで概説されているベストプラクティスと「Earthborne Rangers」の初刷を徹底的に比較したことがあると知ってるよね。うーん。

だけれど、それでもこのレビューをする価値があると思う。多分、ポッドキャストのエピソードは"辛辣で"かつ/又は"ジャーナリズム"ではあろうが、“独立系"ではない。まだ、踏み込んでない部分が大量にあるし、私の意見はNavaroの意見とはピッタリと一致しないだろう。真相を明らかにする唯一の方法だ。

素材から始めよう。「Earthborne Rangers」の場合には、ほとんどがカードという形態でを見ることとなる。カード内にがないことは言及しておこう。けれども、カードコーティングや箱が開かないようにする紙シールを含めて箱内にはほかにもいくつかのものがある。コアセットでないものをみると、ピューター製のミニチュア木製のエネルギートークン木製のレンジャートークンゴム製プレイマットがある。

次に、製造流通を検討しよう。このゲームはどこで製造されたのか? 素材が工場に届くまでどれくらいの距離を移動しなければならなかったのだろうか? 工場から支援者までの距離はどれくらいだっただろうか? 流通の影響はどのようなものだったか?

最後に透明性について触れた上で、そもそもこの情報をどのように手に入れたかを話そう。

「Earthborne Rangers」で使用されている紙がFSC認証を受けたミックス紙(FSC-certified, mixed-grade)であることがわかっている。これはどういう意味なのだろうか。ふぅー。詳細にFSC認証を説明することはこのレビューの範囲を超えてしまっている。けれども、FSC認証が倫理的な調達を保証することに関しては、おそらく最善の方策となるだろうと言うにとどめておこう。FSC認証によって、私はとても幸せになれる(a happy camper)。

さて、"ミックス紙"とは何なのだろうか? 「Earthborne Rangers」は100%完全な再生紙を使用していなくて、むしろ、リサイクル紙と未使用の新しい紙のブレンドを使用している。FSCのウェブサイトでこの認証について、以下のとおりの説明をしている。

この製品は、FSC認証林から生まれた木材のほか、リサイクル材やFSC規格に合った管理木材を混合して作られています。管理木材はFSC認証林に由来するものではありませんが、許容できない供給源から供給される原料に関するリスクを軽減します。

この"ミックス紙"は、100%FSC認証林を使用して調達された製品と、100%リサイクル材を用いて製造された製品という他の2つのFSC認証と比較したものとなっている。

ポッドキャストのGreen Games Guideのエピソードにおいて、Navaroは、私たちが思っているほど、リサイクルが環境に優しいものではないのではないかという疑問を投げかけて、"ミックス紙“を選んだことについて弁明をする。彼は、大量の水がリサイクルに投入されていること、数十年前に禁止された化学物質が規制されることなくリサイクル紙に残存し得ること、そのほかの数点について言及している。みんなにはこの話を聞いてみて自分自身の意見を形成してみてほしい。私的には、完全に納得したわけではない。私が見た大部分の情報によれば、リサイクル紙は、未使用の新しい紙よりも遥かに環境への影響が少ないということだった。けど、リサイクル分野の専門家を気取るつもりはないよ。

Navaroがミックス紙に手を伸ばしたのは異なる理由があるのだろう。リサイクル紙を使用すると、カードの品質や手触りは低下するのだろうか。自分自身のコレクションを見たが、比較することができるような完全リサイクル紙のカードというのはないと思う。100%リサイクル紙で私が思いつくことができるものはナプキンとかになる。これだと、100%リサイクル紙の品質というのには期待できそうにない。この点について経験がある人がいれば、考えを聞いてみたい。

判定:FSC認証は素晴らしい。ミックス紙もいいとは思うよ。100%リサイクル紙のほうを確認したいが、これについてとやかくは言わない。私の理解では、これは全て良いことであり、よくあることではないかもしれないが、画期的なことでもない。

カード内にはないものについて話そう。芯だ。Andrew Navaroの言葉を引用しよう。

カードが"薄すぎる"と文句を言う人もいるが、彼らが実際に感じていることとは、芯が入ってないことだ。厳密な話をすると、カードの厚さは一般的なトレーディングカードゲームと同等である。

私が理解するところによると、カードの芯はプラスチックに似た粘着性のものであり、カードの形の安定性を高めている。プラスチックが含有されることにより、カードの芯は「Earthborne Rangers」のプラスチックを排除するという大志と正反対のものとなる。彼らがカードの芯をなくしたことには尊敬する。今でも、カードは素晴らしいと思う。今までで最高というわけではないが、それでもなお素晴らしいことには間違いない。

一部の人は反対する。それに、芯がないことでスリーブを付けることにつながり、プラスチック排除という特徴が無に帰すると主張する人さえいる。「Earthborne Rangers」の全ての支援者が1つ又は複数のキャンペーンをやり遂げると思うのであれば、その主張をもっと重要視しただろうさ。悲しい現実だけど、「Earthborne Rangers」の多くは、他の多くのボードゲームと同じく、愛でられることなく置かれたままとなり、棚の上でプレイされないでいるだろう。したがって、カードの芯の欠如が持続可能性が乏しい結果につながるということには与しない。

判定:ボードゲームというホビーにおける大多数のカードには芯があることは理解している。カードの芯を控えると選択したEarthborne Gamesは、私にとって斬新だし、わくわくさせてくれる。これがプラスチックを排除するという実践だ。よくやった。

カードコーティング

カードにはコーティングが必要だ。それは避けられない。コーティングがないとすると、カードはプリント・アンド・プレイのプロトタイプのように感じられてしまうだろう。「Earthborne Rangers」では、よくある安価でプラスチック含有のUV保護のコーティングを控えて、水性コーティングを採用している。

……そうね、水性コーティングとわかったが、それには他に何が含まれてるのだろうか。ほかに何が私たちの手元にあるのだろうか。私はNavaroに尋ねてみた。驚いたことに、彼も知らなかったのだ!

どうやら、コーティングなどの製法は知的財産として保護されたものらしい(proprietary)。企業がその情報を一般に公表することを義務付けられてない限り、果たして教えてくれることなんてあるだろうか。何か不正なことが行われているわけでも、企業秘密を保護しようとするわけでもないかもしれない。手間がかかることなのだ。誰も興味がないのであれば、こんなことを伝える努力をすることなんてあり得るのだろうか。

Navaroは、コーティングの組成物について尋ねるメールを代理して送ってくれた。それによって何かしらの新しい情報が入ったら、報告をするよ(注11)。この点については、Andrewですら手元にあるものが何かを知らないなんてかなり困惑するよ。

とにかく、カードは光沢のある豪華なものではないが、それでも手触りの満足感をもたらしてくれる。そして、「Earthborne Rangers」が外でプレイされるのを思い描くことができるが、多くの人たちがUV保護を見逃すとは思わない。

判定:カードのコーティングについて全てを知らないかもしれないが、コーティングがあるにもかかわらず、このゲームが100%リサイクル可能で堆肥化が可能であるということは断言してきた。私の考えでは、それは成功だ。

(注11)異なる状況下であったら、その情報を手に入れるまでこの投稿をするのを待っていただろうさ。しかし、Gamefoundのキャンペーンが終わる前にこの投稿をするのが最優先だ。

シール

ゲームを流通させるにはシールが必要となる。シュリンク包装なしでできるものだろうか。「Earthborne Rangers」はプラスチックなしで行ったのだろうか。

うーん。まあ、少なくとも試みようとしていた。このゲームのシールは紙である。けど、シールの粘着剤はどうだろうか。粘着剤がどういう素材で作られているのかあまりわかってない。けど、自然なもので作られてはいなさそうなのは確かだ。大雑把に調べたところ、多くの粘着剤の中にはプラスチックが含有しているように思われる。

再度、Navaroに粘着剤の素材について尋ねた。そして、またもや彼はよくわからないということだった。彼は、工場に対して、メールでこのことも問い合わせた。何か情報更新があれば、報告するつもりだ。

私は、この点に関しては少しだけ葛藤を感じているんだ。粘着剤の中にプラスチックがあるということをあまり気にすらしてない。粘着性の残留物があったとしても、このゲームがリサイクル不可能になるとか堆肥化が不可能になるとかといった状態になるとは思えない。多分、シールそれ自体はリサイクルすることができない。付箋紙やポストカードよりも小さいものは、リサイクルするのに十分な大きさではないと聞いたことがある。そのことについても嫌な気持ちにはならない。

私が葛藤を感じている理由は、多分、厳密に言ってしまうと、これによって「Earthborne Rangers」の"プラスチックなし"という主張が嘘になってしまうからだ。うぅ、非常にアホらしいと感じる。粘着剤は、ゲームの重さに占める割合は本当にごくわずかだ。このことを議論するのは、プラスチック製のキーキャップを付けたキーボードを使用して仕事をしている人がいるから「Earthborne Rangers」はプラスチックなしでとはいえないと主張するのと同じ方向性(the same energy)のものだ。

判定:シールはプラスチックだろうか。多分そうだ。私は、これに関してグリーンウォッシュだと大きく騒ぎ立てるのだろうか。いいや。それは避けることができないものだ。おそらく、紙の包装でゲームを包むことはできるだろうが、そしたら、紙の包装にどうやってシールを貼ればいいのだろうか。この点については、彼らができる最善の技術を用いていると思う。「Earthborne Rangers」はプラスチックをおやつとして食べてもいい。

再生利用されたピューター

なぜ、もっと多くの人がこれを行わないのだろうか。私は、ピューター製のミニチュアが大好きだ。持続可能性的な考慮はさておき、単純にマジでイカしてるんだ。

さて、そうは言いつつ、本題に戻ろう。再生利用されたピューターは、様々な供給源から生ずる金属スクラップから完全に調達されている。そうしなければゴミになってしまう素材を用いていることを知るのは素晴らしいことだ。このゲームのミニチュアはイギリスで製造されて、残りの製品が製造されているドイツと距離的に近い。

私のここでの関心はむしろカーボンフットプリントに関係があることだ。私は、再利用可能な袋をアホみたいに大量の回数使わない限り、どの程度プラスチック袋が実際に再利用可能な袋よりもカーボンフットプリントが小さくなるだろうかということについて考えている。ピューター製のミニチュアのカーボンフットプリントは一体どれほどだろうか。私には全く見当がつかないが、当てずっぽうを言うと、プラスチック製のミニチュアよりも大きいだろう。3Dプリントに用いられるピューターとプラスチックは似たような融点のように見える。だから、多分、成型に用いられるエネルギーが大きく変わることはないかもしれないよね? しかし、ピューターのほうが目に見えて重く、重いものを輸送するにはより多くのエネルギーがかかってしまう。

判定:私はこの素材の調達方法が好きだし、"環境に存続する"という観点からは、ピューターのほうが良いと思う。けれども、そのカーボンフットプリントについては十分な情報を持ち合わせていない。カーボンフットプリントと環境有害物質を比較することはりんごとオレンジを比較することにもなり得ることが多い。

木製ビット

この点については、紙に関する先ほどの議論でカバーされているのであまり言うことはない。木材は、FSC認証又はPEFC認証を受けたものだ。興味を抱いた消費者のみんながもっと深く読んでもらえるように、これらの認証の違いを残しておこう。木材と紙がどこから産出されるかについては、数段落に分けて深掘りすることとするよ。

判定:どちらの認証も似ていて素晴らしいものだ。木製のアドオンがどちらかの認証も受けていることに満足している。間違いなく、手触りを犠牲にすることのないプラスチックの代替品についての改善だ。

プレイマット

Gamefoundから引用しよう。

天然ゴムにポリエステル含有のラミネート加工を施した。

うーーーーーーーーーーーーーーーん。

ポリエステルはプラスチックだ。それを避けることはできない。

天然ゴムの区別は重要だ。このことは合成ゴムと比較においてである。ゴムはプラスチックであるが、この場合には、天然由来のものだ。こう言うのは誤っているように感じる。典型的には、プラスチックというのは人間のみが作るものと考えている。けれども、私たちの最高のアイディアの多くは自然に由来すると思うよ。

このことについてはわからない。確かに、誰かが完全に植物由来のプラスチックのない代替品を作る可能性はある。私個人としては、「Earthborne Rangers」のプレイマットは美しいけれども、それにはお金を注ぎ込んではいなかった(注12)。だが、コットンや麻といったものだったらどうだろう。ぐにゃぐにゃっとした感触(squishiness)がプレイマットの特徴だとされていることはわかっているし、印刷されたイメージが鮮明であってほしいとも思う。植物由来の素材がこれを実現できるかどうかわからないし、誰かが試したことがあるかすらわからない(注13)。

判定:この点では、天然ゴムを使用して彼らはおそらくベストを尽くしているのだろう。けど、私はこれについては反対の意を表明しなければならないと思う。プレイマットを購入した人全員が悪人だとは思わない。見た目はめっちゃかっこいい。私自身、2つの素晴らしいネオプレーンのプレイマットを所有している。しかし、結局のところ、プレイマットはこのゲームを楽しむのに必要不可欠なものではないと思う。プラスチック含有率が多すぎるし、(※ゲームとは)無関係なものすぎるので、私からは良い評価を与えることなんてできないね。まあ、少なくとも、プレイマットによって追加の利益が生み出されている。それに、このことは、この記事を上げる前に個人的にNavaroに話す時間がなかった話題の1つだったということは指摘しておくべきで、彼が釈明をすることができるだろう。

……オーケー。「Earthborne Rangers」がどんな素材からできているかについて話してきた。どのように製造されているかについて話していこう。もっと正確に言えば、このゲームの初刷はどのようにして製造されたかだ。

(注12)私の今年の誕生日で、友達の1人が私のテーブルの形にぴったりのイカした四角いフェルトで、深緑色のものをプレゼントしてくれた。彼は、私が「Earthborne Rangers」にどっぷりハマっていたことを知っていたからね。私は、そのフェルトにはプラスチックが含有されていると思う。

(注13)"植物由来 プレイマット ボードゲーム"で検索すると、「アース」のプレイマットがたくさん出てくるだけだ(注14)。

(注14)私がまだ「アース」をプレイしてないのは一体どうしてだ?!

工場:Ludo Fact

この話から面白くなるよ!

全ての「Earthborne Rangers」の初刷は、ローカライズパートナーが印刷した分を除けば、Ludo Factというドイツ所在の工場で完全に印刷されたものだ。いきなりだけど、これが中国の外で起きているということは大きな驚きだ。私の知る限り、ボードゲームの大多数は中国で印刷されているのが現状だ。

私が考える最も理想的な状況は、ゲームができる限り支援者から近い距離で印刷されるというものだ。当然、素材も重要だが、気候科学者としての私の1番の関心事は、温室効果ガスの排出にある。ゲームが輸送されなければならない距離が遠ければ遠いほど、温室効果ガスがより多くなる。明白で単純な話だ。

北アメリカでの印刷は、「Earthborne Rangers」の最初のKickstarterキャンペーンでのストレッチゴールだった。そして、正直にいうと、これが最初にこのキャンペーンを支援した大きな理由だった。結局、北アメリカでの印刷は頓挫してしまい、私はそのことに大きくがっくりしてしまったが、それは構わないよ。この状況に関するポッドキャストやNavaroの話を聞いた後では、そうなってしまった理由を理解したさ。アメリカ国内で「Earthborne Rangers」のようなものの印刷を提供する工場の数が非常に少ないようだし、Navaroが交渉していた工場とは折り合いがつかなかったようだ。

ドイツで全てを印刷することは次善の策で、私の考えでは、それでも、中国で印刷するよりもはるかに優れたものだ。大西洋は太平洋よりも横断する距離が短いし、ドイツは支援者の大部分にとっては実質的に隣国だ。カーボンフットプリントにおけるここでの違いがどの程度のものか何がなんでも解明しようとしている。けど、それについては後日にしよう!

さて、工場がある場所が好ましいが、原材料についてはどうだろうか。樹木から製紙工場まで、それに製紙工場から印刷工場まではどれくらいの距離だろうか。別の素晴らしい答えがある。このゲームは全てドイツ製だ。「Earthborne Rangers」で用いられる紙の100%はドイツの森林から調達されたものであり、紙の供給元もドイツの会社だ。これとは反対に、世界中を周回してアメリカで遊ばれるゲームを印刷するために中国に輸送され、その後、アメリカに輸送されるFSC認証紙について考えてみよう。これを考えると身がすくんでしまうが、残念なことに、これってよくある話だと思うよ。

工場に電力を供給するために使用されるエネルギーはどうだろうか。まあ、そんなの知る由もないよな! 少なくとも、印刷に関わっている施設の1つは太陽光発電なんだ! でも、これはLudo Factの工場の1つにすぎないし、彼らのウェブサイトによれば、その太陽光パネルは工場の電力需要の70%しか対応してない。けどさ、私はこれに賛成だ! 工場の残りの電力がどんなもので賄われているかはわからない。ドイツの電力生産ポートフォリオは過去最悪ではないが、その大部分はいまだに石炭が占めているように見える。

さあ、カーボンオフセットについて私が言ったことを覚えているかな。私たちの物語の中でカーボンオフセットが登場する時なのだ。Ludo Factのウェブサイトでは、カーボンニュートラルを謳っている。そこでは、自身の炭素を相殺するために注力するプログラムがどんなものかについてある程度の情報がある。これらのプログラムは、Planetlyというカーボンオフセット会社を通しているように思われる。Planetlyを検索すると、2021年に買収されて2022年に閉鎖されたことについての情報が出てくるようだ。だから、この点に関する話の全容があまりわかっていない。時間があったならば、それに、カーボンオフセット全般についてもっと高く評価していたならば、もっと掘り下げただろう。興味のある消費者に更なる調査を残しておこうと思う。

判定:まあ、このゲームは北米で印刷されたものではないし、複数地点で印刷されたものでもない。けど、そうじゃないとしたら? こいつは、私にとってホームランだ。完璧な工場なんてものはないが、Ludo Factはチェック項目を作りつつたくさんのチェック項目を確認している。大きな、大きな勝利であり、私の意見としては、大いに"画期的"なものだ。とはいえ、「Earthborne Rangers」はLudo Factが最初に印刷したゲームではないようだ。

流通

この話にあまり多くの時間を費やすつもりはない。これは、私が把握するのが更に難しくなる話題だ。「Earthborne Rangers」は、自分たち自身で流通をあまり管理しておらず、ゲームを顧客の手に届けるロジスティックを管理する流通業者と協力している。「Earthborne Rangers」は、どの流通業者にするかを選択する。推測だが、一部の流通業者は、他の流通業者よりもより環境的に配慮した選択となるのだろう。「Earthborne Rangers」が持っていたあらゆる採り得た選択肢や、彼らが選択した流通業者ですら調査する余裕(the bandwidth)を今は持ち合わせてない。

率直に言うと、流通に関して、Earthborne Gamesの頭の中心に持続可能性があったとは思えない。生産の混乱があってせいで、このゲームの初刷は大幅な遅延に苛まれた。Earthborne Gamesは、できる限り速やかに流通を開始する必要があった。どの地域かは忘れてしまったけれども、一部の地域の配送を早くするためだけに、少なくとも1つの流通業者に変更があったことを記憶してる。

この話題については別機会に。

判定:Earthborne Gamesがした選択がなんであれ、彼らは破綻しないようにするためにそうしたんだ。起こったこととは関係なく、彼ら責めることはできない。だから、この話についてはあまり詳細を聞き出そうとしないようにするよ、今回はね……。

透明性に関して

Earthborne Gamesがした最も素晴らしい歩みの1つは、今まで議論してきたことと何ら関係がないものだ。このレビューを書くために、私は、曖昧な"ミッション・ステイトメント"を具体的な事実に解析する必要がなかった。この全ての情報は、数回のボタンを押せば、直ちに入手できるか、Andrew Navaro自身がすぐに提供してくれたものだった。

Earthborneは、製造のいかなる面についても話すことをためらわない。実際には、どんなことでも話してくれる。誰もがEarthborne GamesのDiscordサーバに加入し、製作者に質問し、ほぼ常に、ちょっと間を置いた後か次のEarthborne Gamesのポッドキャスト内で答えを得ることができる。彼ら自身の製造上の選択に関しては、何でも喜んで話してくれるようだ(注15)。持続可能なゲームを製造することについて素晴らしいことは、隠すことがほとんどないというとだ。

あらゆるゲームデザイナーが隔週で2時間のポッドキャストを主催し、公式Discordサーバで常に活動する必要があるだろうか。おそらくないだろう。だが、自分の棚にある好きなゲームの製作について立ち入って調べたいと思ったならば、かなり本格的な調査をしなければならないだろう。出版社の言いなりになる可能性が高いし、彼らが私に説明したいことばかりになってしまう可能性がある。この記事がそうなってないことを望むよ。

Navaroが分け与えてくれた情報のファクトチェックをする素晴らしい方法が私にはない。私は、Navaroに対して、消費者がEarthborne Gamesに問い合わせることなく、誰が「Earthborne Rangers」を製造したかを把握する方法がないかどうかを質問した。例えば、簡単に入手できる記録をLudo Factが制作しているか、さもなければ、概念上の取引管理組織はないのかといったことだ。Navaroは、"ないと思う"と言ったさ。そして、ざっと見たところ、こういった結論については何もわからなかった。彼は、私に基本ゲームについての"適合宣言"証明書を提供してくれた。これは、どうやら、基本ゲームがEUの基準に従った子供にとって安全なものであるという宣言のようだ。けど、ドイツ語で書かれていて、簡単にはファクトチェックすることができなさそうだ!

もっと深く掘り下げようかと考えたけど、私がNavaroのことを最終的には信頼を寄せているというのに、そういう記録があるかを質問するためにLudo Factにメールを送信するのはわずらわしいと思った。それに、透明性のためにNavaroがした努力の後で、この辺を掘り下げることは少しNavaroへの侮辱になるとも思った。彼にとってみれば、こうした物事をまとめ上げるのは骨の折れる大変な労力だろう。彼は、正直な雰囲気を醸し出しているし。けど、ポッドキャストでの彼の話を100時間以上も聴いてる私の脳がパラソーシャル(※個人的には面識のない著名人との一方的な想像上の関係)状態になっている(parasocialized)かもしれない。

……みんなはこんなところまで記事を読んでくれたのかい? 素晴らしい。

(注15)私は、Earthborne Gamesの人たちが他の議論を呼ぶ話題に尻込みしているのを見たよ。例えば、ウクライナ情勢の最中にロシアの会社に「Earthborne Rangers」の出版権を売却するという決断をみんなが議論していた数か月前に、彼らはコメントを拒否したと思う。けど、彼らが議論を選別しなくちゃいけないのは理解する。持続可能な生産というのは、ボードゲームコミュニティの中で既に十分物議を醸しているということだ。

じゃ……環境への配慮なのかか見せかけなのか?

この記事でみんなが自分の意見を形成するために必要な情報を得られたらいいと思う。けど、求められてもない私の意見を言わせてほしい。あらゆることを考慮に入れると、このゲームには多くの良いところがあると本当に思う。製造の多くは、本当にボードゲーム業界の標準に逆らっている。Earthborne Gamesは、"画期的な"製造を行っており、「Earthborne Rangers」が"プラスチック排除"であると主張する。こういった言葉は、プレイマットと(あってはならない)シールの粘着性を除けば、基本的には真実であると正直思う。彼らは裏付けのない主張はしてないし、私が伝えられる限り、Andrew Navaroは嘘野郎ではない。

ということで、これ以上の面倒な話はなしだ……。

判定:環境への配慮なのかか見せかけなのか?

"気候科学の大学院生"という肩書によって私に与えられた権限に基づいて、私は、初刷*における「Earthborne Rangers」が実際に環境に配慮したグリーンなものであり、一般的な見せかけの手口があるとはうかがわれないと判定する。皆の衆、聞きたまえ!

*将来的に発売される2刷についてのコメントは以下のとおり。

2刷:中国という亡霊

Earthborne Gamesの70万ドルを超える期間の短いキャンペーンに気づいていたかもしれない。特に、Earthborne Gamesが今回の印刷先を決定してない。たくさんの工場からたくさんの見積価格を手に入れているように思われる。そこには中国も含まれている! おそらく、この新事実によって、みんなは衝撃と嫌悪感を伴ってはっと息を呑んだはずだ。もう少しこのことを考えるまでは、私もそうだった。環境に対する潜在的な影響について多くのことを話してきたが、Earthborne Gamesに関して持続可能な製造がもたらす影響とはどんなものだろうか。

持続可能な製造は高くつくので、それが実現しない主な理由である。出版された作品のないゲームデザイナー志望は、手元に多くのリソースがない可能性が高い。インディーのゲームデザイナーには中国でゲームを印刷することを勧めるよ! 私はゲームが大好きだし、そのゲームを大好きになるかもしれない。そして、そんな人にとって持続可能なように印刷するのが高すぎてできないというのであれば、私がそのゲームを見ることはないかもしれない。大量のリソースのある大規模な存在についての話となると、私の口調は変わる。Asmodeeなんかを見てるとね。

Earthborne Gamesはどの部類に属するというのだろうか。うーん、厄介なケーススタディだ。この記事で話しているのは、日の当たらないところで知ったかぶりをする初心者のゲームデベロッパーについてではない。Earthborne Gamesの立役者は、Fantasy Flight Gamesの元社員で非常に多作で成功している。当初の「Earthborne Rangers」のKickstarterは、45万ドル超えという素晴らしい数字を収めた。他の大部分のインディーゲームスタジオでは、最初のキャンペーンでこの数字を達成するのは望めない。けれども、Earthborne Gamesは、その最初のキャンペーンで達成してしまったインディーゲームスタジオであることに留意しなければならない。このことを念頭におくと、Navaroが最近出演したTeam Covenantのポッドキャストを引用してみよう(わかりやすくするためにごくわずか編集している。)。これは素晴らしいインタビューなので、興味のある読者には全ての回を聴くことを勧めるよ。

中国で製造するという誘惑は現実にある。みんながそういう決断をする理由というのは理解できるよね。それは正しい経済だ。気にかけることが収益を最大化することなのであれば、この方法は理に適っていて真っ当だ。中国の工場も含めていろんなところから2刷の見積価格を取ったんだが、うーん、中国の見積価格は遥かに安いんだ。要は、他の場所で製造する場合の半分以下になる。あり得ないよ。そしたら、その数字を見始めて、オーケー、そうね、中国だったら、何十万ドルも節約できるだとなるけど、そうすべきなのか? ……でも、いざとなったら、よっしゃ、もっと稼げるぞって思うんだろう。だが、私は利益を最大化するためにこの会社を設立したのだろうか? いいや、違う。私は、異なった方法で物事をやろうとしたかった。だから、引き続き、異なった方法でやり遂げようとするよ。

のしかかってくるストレス、プレッシャー、負担の量は、それだけ途方もないものだ。まるで、何もやり遂げられてないように感じるのに、私の考えと意思で会社を成功させようとするんだ。疲れ果ててしまったよ。普通じゃない。

私が計算したところによる当初の計画は、昨年の春に更なる資金を集めるためにクラウドファンディングをする必要があった。そして、まあ、ゲームが完成する時期の見込みに基づいて、私たちはそうなるだろうと考えていた。しかし、製造上の支障が生じ、大量のパンチボードの再印刷と再梱包をする必要が生じるとすぐに、あーあ……。大変な時間がかかり、その間は、銀行口座がゼロに減少していくのを眺めるだけだった。

このプロセスがどれほどストレスのあるものだったかは想像することができない(注16)。

傲慢な態度をとって、持続可能性について人差し指を左右に振って違うよねって言う(waggle my finger)のは簡単なことだ。私は、できる限り地元で、かつ、できる限り持続可能な形で印刷するというところが好きなんだ。しかし、深刻な経済的・精神衛生的なトレードオフがあった。この初刷を実現するために彼らがした努力を鑑みると、私は、常にEarthborne Gamesのチームにもう一度やり遂げるか、更なる改善を目指すことを期待すべきなのか。再販することのほうが簡単なのだろうか? けど、そのチームが中国で印刷したとすれば、このゲームやこのゲームに込められたメッセージはどれほど多くの人たちに届き得るのだろうか? ゲームがもっと広い範囲の消費者に届くことのほうが重要なのだろうか、それとも、Navaroが正気を保っていられるほうが重要なのだろうか?

いまだに、私はこの疑問に取り組んでいる。みんなに示す良い答えを持ち合わせていないし、おそらく、このキャンペーンと2刷が終わるまでは出てこないだろう。意思決定がされるまではこのことについて議論を続けよう。状況が落ち着いたら、新たな報告があるはずだよな。

唯一の不満を言うと、製造の決定は初刷の生産と同等又はそれを超えるものであると確約したらよかったというところだ。どれほどGamefoundが成功しているかということに加えて、特にNavaroの最近のインタビューであるTeam Covenantのポッドキャストを聴いていると、2刷の製造が初刷で設定した水準に未満であった場合には、私はショックを受けるだろう。だが、おぼろげな中国印刷という亡霊には身震いしてしまう。Earthborne Gamesは、最初にLudo Factと印刷することで評判を築いた。現在の支援者の中には、その評判を理由に支援した者もいるかもしれない。そして、中国印刷によって、彼らへの支援を止めると思われるかもしれない。

それはケチをつけるようなコメントだ。私は、実現するようになるのが非常に疑わしい仮説について不満を述べている。しかし、彼らが持続可能性を約束したというだけの理由で、綿密な調査をして「Earthborne Rangers」を分析する価値はある。そうでなければ、偽善やグリーンウォッシュの批判を免れないだろう。けれども、いつか、出版社が持続可能性を約束していようがいまいが、ゲームのアート内に木々が目立つようにされていようがいまいが、こうした基準に照らしてあらゆるゲームを批評するようになるべきだ。

(注16)税金の楽しさについて聴くには、Navaroが最近出演したOne-Stop Co-Op Shopのポッドキャストを確認するといい。

わずかな規模

私が楽しいことを憎んでいるんだろうかと思うかもしれない。この理想主義的なガキンチョが"持続可能性"について説いているのを見てくれよ! 化石燃料産業というより大きな力のほうが、時間と労力を使うのにふさわしいのは間違いない。ボードゲーム業界は、物事の壮大な仕組みの中ではわずかな規模にすぎない。

ボードゲーム業界は急速に成長していて、こうした全ての問題が時間とともに大きなダメージとなっていくだろうと指摘し得る。これは正論である。しかし、化石燃料産業と比較し続ければ、なお、化石燃料産業が与えるダメージに匹敵することはないだろう。では、なぜ、私たちはより良い行動を心がけるべきなのだろうか。

このことについては、答えを決めかねてる。多分、いまだに私自身の決心がついてない。私がペスクタリアン(pescatarian, ※魚菜食主義者)になることを決めたのは、当初、気候科学者として"口先だけではなく物事を実行する"ためだけにそうしたのだった。それが差異を生むと思ったからではない。

私の最新の結論というのは次のとおりとなる。すなわち、何かを行うにあたって持続可能性のある方法か環境に害を及ぼす方法のどちらかを選択する場合には、毎回、持続可能性のある方法を選ばない理由なんてないはずだ。ここでいう"選択"は、含みのある言葉だ。私たちはゲームの製造方法を"選択"しているのかもしれないが、予算が少ない小規模で独立系のゲーム出版社にとっては、持ち合わせている選択肢はあまりない。だが、自分の可能な範囲の手段に持続可能性のある方法があるのであれば、なぜそうしないのか?

素晴らしい努力、忍耐、そして勇気を通じてEarthborne Gamesは何とかして持続可能性のための予算を用意し、それを成し遂げた。そして、たった4人のフルタイムの社員のチームとして、そしてそのうちの1人が製造に関する意思決定を多くをこなしながら、これを成し遂げたのであれば、まあ、大手の業界の出版社はもはや色良い弁解ができないと思うけどね。

より明るくて、より環境を保護するようになるゲーム業界の将来に乾杯しよう。Andrew、ありがとう。

クレジット

知ってか知らずか、このレビューを書くのを手伝ってくれた以下の人たちに大きな感謝を述べるよ。

  • Earthborne Gamesのチーム。彼らの透明性、説明責任、異なることを行う勇気に。

  • Green Games Guideの作成者。この文書は、ボードゲーム業界のベストプラクティスを学ぶ唯一のものだろう。この記事のインスピレーションになったのは明らかだ。

  • SPACE-BIFF!Dan Thurot。君の親切さと文章能力は比類ない。名言をありがとう。

  • Earthborne GamesのDiscordコミュニティ。毎日、みんなと付き合うのは楽しい。また会おう。

  • 私の婚約者と犬。私は自分の家庭が大好きだ。

訂正があるかもしれないので、コメント欄を注視してくれい。

以上

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