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【散文】ヒトリの夜

彼の視界に入りたくて、微笑みかけてほしくて

私は、幸せそうに笑って、話しかける

彼は窓に手をかけて、遠くを眺めたまま頬を持ち上げる

少しだけ開けた窓から隙間風が入ってきて

私の身体はすっかり冷たくなる


聞いているの? ってきくのも もう嫌になって

彼の背中に触れるのも もうできなくなって

話しかける言葉も尽きたら、ただ見つめるしかないじゃない


何も言わずにライターを手に取って

何も言わずに煙草に火を付けて

いつものように彼は部屋の外に向かって煙を吐き出し続ける



その細長い煙は、どこか爬虫類の舌に似ている




例年12月は、無性に寒く、寂しくなります。3月でもここまでなりません。
何も成せぬまま一年が終わってしまうことが辛いのでしょうか。
よくわかりませんが、12月の更新は暗く寂しいお話が多くなるかと思います。
どうぞ程々にお付き合いください。

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