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掌編

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1000~4000字程度までの短い小説です。 5分くらいで読めます。
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【掌編小説】花吹雪のアサシン。のスピンオフのスピンオフ#シロクマ文芸部

【掌編小説】花吹雪のアサシン。のスピンオフのスピンオフ#シロクマ文芸部

 はい、こちら原作があります!

deko様が書かれた花吹雪のアサシンがかっちょ良すぎて、思わず妄想があふれ出しちゃった作品がこちら!

そしてそしてそのお話が素敵すぎることをお伝えしたら、七田様にけしかけらr……じゃなくてお誘いを受けて調子に乗りました!
是非お二人の作品をお読みになってきてください。

(読了目安3分/約1,650字+α)

「子どもの日は明日なんですよ。それなのに、笹川センセ

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【掌編小説】卒業の#シロクマ文芸部

【掌編小説】卒業の#シロクマ文芸部

(読了目安3分/約1800字+α)

 卒業の宣言を聴いて、もう三年になる。アスファルトの合間から力強く葉を広げたタンポポを見つけ、私は彼のことを考える。北海道で正社員として就職したのだ。連絡は控えているからどうしているかはわからない。せめて彼のそばに共通の友達がいれば良いのに、と思い、軽く首を振った。

 昴晴とは、ものごころついた時から一緒にいた。隣の家に住んでいて、親同士が友達だったため、ほ

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【Short Story】Stroll

【Short Story】Stroll

I had ChatGPT translate a short story I wrote in Japanese, and made some additions and corrections. The original Japanese story is here.

"Just walking, is that all?"

"Yes."

Being Disappointed, I st

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【掌編小説】チョコレート#シロクマ文芸部

【掌編小説】チョコレート#シロクマ文芸部

(読了目安4分/約2900字+α)

 チョコレート。チョコレート。チョコレート。

 ピンク色に飾られた会場には、右も左もカラフルな包装をされたチョコレートが並んでいる。プレゼントの山でつくられた迷路を、所狭しと女たちが歩き回る。艶々と輝く髪を結い、口紅と頬をピンクに色付け、甲高い声できゃあきゃあと笑う。

 私は思わず眉をしかめ、通路をふさぐようにして話している女たちに背をぶつけてすり抜ける。

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【掌編小説】新しい#シロクマ文芸部

【掌編小説】新しい#シロクマ文芸部

(読了目安2分/約1300字+α)

 新しいグラス。最低でも二、三千円はするのだろう。細かなカッティングが入った色違いの綺麗なグラスがキッチンの洗い場に置かれていた。はやく洗わないと茶渋がついてしまう。ついてしまえ。

 私は食器棚から以前、百均で購入したつるりとしたデザインのグラスを二つ取り出すと、冷蔵庫の麦茶を注ぎ、ダイニングテーブルへと持って行く。

 彼は手を動かす様子もなく、ただ私の持

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【Short Story】Thank you

【Short Story】Thank you

I had ChatGPT translate a short story I wrote in Japanese, and made some additions and corrections. The original Japanese story is here.

'Thank you. And I apologize for any inconvenience.'

Upon r

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【掌編小説】ありがとう#シロクマ文芸部

【掌編小説】ありがとう#シロクマ文芸部

(読了目安3分/約1800字+α)

 ありがとう。迷惑をかけてすみませんでした。

 買い物から帰ると、テーブルの上には書き置きと離婚届があった。反射的に破り捨てる。

 私はすぐに買ってきたものを片付け、家中を簡単に整えながら妻の名を呼ぶ。クローゼットの中やトイレ、バスタブ、隠れられそうなところも探す。玄関に彼女の靴が無かった。普段の履きやすい靴ではなく、余所行きの革靴で出たらしい。

 電話

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【掌編小説】リレー小説①(これってひよこの挑戦状?)#電車にゆられて

【掌編小説】リレー小説①(これってひよこの挑戦状?)#電車にゆられて

(読了目安2分/約1,500字+α)

「切符を拝見」

 目の前から声がして、ふと顔を上げる。帽子を目深に被った駅員が、手袋をした白い手を差し出していた。改札の向こうは、うっすらと雲のかかる青空とその光を跳ね返す海だった。ホームなのだから線路はあるのだろう。一段下がっていて改札の手前からでは見えない。その向こうの海がすぐそこまであるように見える。

 低い咳払い。

「あ、えっと」

 俺は慌て

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【掌編小説】苦い珈琲よりも甘いココアを#シロクマ文芸部

【掌編小説】苦い珈琲よりも甘いココアを#シロクマ文芸部

(読了目安2分/約1,600字+α)

 珈琲と、ほのかなバニラビーンズの香り。

 アパートの玄関扉を開けた瞬間、俺の胸に頭突きをした凛花は無言だった。喫茶店の香りをまとった彼女は、声を殺して泣いていた。

 ああ、いつものだ。

 内心の安堵を悟られないように、俺はため息をついてみせる。風呂あがりで良かった。外気で冷えた彼女の頭を軽く撫でる。外は小雨が降っていたらしい。肩にかけていたタオルを彼

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【掌編小説】どれい商人の娘#ウミネコ文庫応募

【掌編小説】どれい商人の娘#ウミネコ文庫応募

(読了目安5分/約4,000字+α)

 今よりもずっと昔、乾燥した砂漠の町にココという痩せた少女がいました。

 ココは働き者でした。朝早く起きると、井戸へ行き、洗った水がめにいっぱいの水を汲みます。ヤギにあいさつをして、乳を絞ると、ブルーノさんが起きてくるまでに、朝ごはんの支度をするのです。

 ブルーノさんがごはんを食べ終わり仕事に出かけたら、お部屋の掃除をします。帰ってきたときにゴミが残っ

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【掌編小説】走らない#シロクマ文芸部

【掌編小説】走らない#シロクマ文芸部

(読了目安2分/約1,150字+α)

「走らないのか? セリヌンティウス。お前の友は走ったというのに」

 俺は曖昧に濁し、酒で言葉を流し込んだ。何度となく行われる他愛のない雑談が俺の身体を縛りつけ、息もまともに吸えなくなる

 あの日、磔刑に処されようとしていた俺の足下にあいつがしがみついた時、確かにそこには強い絆があった。誰にも負けぬ強い友情があった。俺があいつに抱く愛情と信頼と同等のものを

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【掌編小説】永遠の恋人

【掌編小説】永遠の恋人

(読了目安3分/約1,400字+α)

 焼きつけるような陽の光に、彼は目を細めた。

 腕を持ち上げ光を遮ると、白波の立つ海へと走る彼女の後姿が見える。彼女は楽しそうに、水を蹴散らす。

 太ももあたりまで海につかると、彼女は足を止め振り返った。

『マサヤ』

 彼女の幸せに満ちた声を聞き、彼も海へと走り出す。

 しかし、彼がたどり着く前に、彼女は後ろへ倒れるように海に飲み込まれていく。

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【掌編小説】読む時間#シロクマ文芸部

【掌編小説】読む時間#シロクマ文芸部

(読了目安2分/約1,400字+α)

 読む時間が無い。悪いがそこに置いておいてくれ。

 PCから目を離さず妻に言う。妻は何も言わず、机のわきに封筒を置き部屋を出て行った。キリの良いところまで文書を作成すると、封筒を袖机の二段目に入れる。ここのところ毎晩のように妻が届けてくる六歳の娘からの手紙だった。

 わたしが職場から帰ってくるのは早くても二十二時。その後書斎で続きをして一時に眠る。娘とは

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【掌編小説】ヒマワリへ#シロクマ文芸部

【掌編小説】ヒマワリへ#シロクマ文芸部

(読了目安3分/約2,100字+α)

ヒマワリヘハチカヅクナ

 私は思わず息を止めて、彼の顔を見つめた。確かに私の顔を見つめているのだが、どこか虚ろな目。別人のような声音。

 突然目が覚めたように彼はまばたきをすると、笑顔を浮かべる。

「はは、すみません。ひまわり畑は確かに林の奥にあるのですが、あそこは関係者以外立ち入り禁止なんです。第一私有地なんですけどね。SNSで穴場スポットだなんて、

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