見出し画像

【EDH】《儀式の大魔導師、イナーラ/Inalla, Archmage Ritualist》

《コラガンの命令/Kolaghan's Command》というカードは自分にとって最も好きな点数で見たマナコストが3のカードなのですが、そんな自分が「無限にコラガンの命令をループして勝ちです」というフィニッシュ手段に惹かれて組んだのが《儀式の大魔導師、イナーラ/Inalla, Archmage Ritualist》です。

天才によって生み出され、天才によって磨かれたデッキですが、故に「複雑すぎる」という欠点もあるようですので、凡人である自分が思考のアウトプットのついでにデッキを軽く解説しようと思います。


デッキリスト

2019/8/20時点でのデッキリストは以下です。

イナーラの威光能力を利用した無限コンボについて

イナーラの威光能力が有効な状態で以下のABCのパーツが揃うと速攻持ちの無限トークンが発生します。

A:CIPで墓地のスペルを回収するウィザード(《古術師/Archaeomancer》など)
B:クリーチャーを生贄に捧げマナを出すスペル(《弱者選別/Culling the Weak》など)
C:墓地からクリーチャーを出すスペル(《浅すぎる墓穴/Shallow Grave》など)

①戦場にA 黒マナ1 手札にBとC
②Aを生贄にBをプレイ 黒マナ4
③Cをプレイ Aが戦場に出てCIPでBを回収 黒マナ2
④威光を解決 AのコピーのCIPでCを回収 黒マナ1
⑤戦場にAと速攻持ちのAのコピー 黒マナ1 手札にBとC(①の状態に加えてトークンが増えている)

この基本的なルートで「速攻持ちの無限トークンによる戦闘を行う」あるいはルートを派生させて「無限に任意のスペルを使いまわす」ことがデッキのゴールとなります。

無限コンボのパーツについて

パーツA 古術師系統

《古術師/Archaeomancer》《秘密の回収者/Salvager of Secrets》《イゼットの時術師/Izzet Chronarch》《魔除け探しの吸血鬼/Vampire Charmseeker》《星霜の学者/Scholar of the Ages》の5枚です。

このうち点数で見たマナコストが5以上である4枚を重古術師、CIPで2枚回収できる《星霜の学者/Scholar of the Ages》を超古術師と自分は呼んでいます。

パーツB 弱者選別系統

《弱者選別/Culling the Weak》《Sacrifice》《Burnt Offering》の3枚です。

パーツC リアニメイトスペル

《浅すぎる墓穴/Shallow Grave》《縫合/Stitch Together》に加えて重古術師との組み合わせで使える《死体のダンス/Corpse Dance》を合わせた3枚です。自分は採用していませんが《死体発掘/Exhume》《御霊の足跡/Footsteps of the Goryo》もこれにカウントされます。逆に《再活性/Reanimate》はプレイできる回数が有限なのでここには分類しません。

無限コンボの派生形について

重古術師+《Burnt Offering》+パーツCの組み合わせで無限トークンに加え無限マナが発生します。

また超古術師+《Burnt Offering》+パーツCの組み合わせで無限トークン・無限マナに加え墓地のスペル無限回収が成立します。

マナの使い道や墓地にスペルを用意しながらこのルートに入ることで、戦闘を封じられた場合やインスタントタイミングでの勝利が可能になります。

《呪文探求者/Spellseeker》1枚コンボについて

《呪文探求者/Spellseeker》が着地したときに黒マナが1つ浮いていると上記のABCのパーツがすべて揃います。

1枚コンボと言っても他のカードをサーチしてプレイするため厳密には異なるのですが「《歯と爪/Tooth and Nail》は7マナ+双呪2マナの1枚コンボだ」と同じような用法です。「《呪文探求者/Spellseeker》は3マナ+始動1マナの1枚コンボ」なのです。

コンボルートについては他の人によって最近発見されたものであるためここには記載しませんが「イナーラ 呪文探究者」とでも検索すればみつかるかと思います。


デッキのカード選択と役割について


《呪文探求者/Spellseeker》
上記の通り、合計4マナの《歯と爪/Tooth and Nail》です。打ち消されて墓地に落ちてもクリーチャーであるため、リアニメイトスペルがすべて《歯と爪/Tooth and Nail》と化します。これが追放されても基本のコンボパーツABCは無傷なので地道に揃えましょう。

《古術師/Archaeomancer》《秘密の回収者/Salvager of Secrets》《イゼットの時術師/Izzet Chronarch》《魔除け探しの吸血鬼/Vampire Charmseeker》《星霜の学者/Scholar of the Ages》
コンボパーツAです。種類が多いため素出しが望めない《魔除け探しの吸血鬼/Vampire Charmseeker》は不採用でもいいのですが、戦場に出てしまえさえすれば無限まで行かずともスペルを2枚回収できて強いためすべて採用しています。

《弱者選別/Culling the Weak》《Sacrifice》《Burnt Offering》
コンボパーツBです。《Sacrifice》は《Burnt Offering》の下位互換なので不採用でもいいのですが、戦場にクリーチャーが残っていればマナ加速として使い捨てられるので採用しています。

《浅すぎる墓穴/Shallow Grave》《縫合/Stitch Together》《死体のダンス/Corpse Dance》
コンボパーツCです。《御霊の足跡/Footsteps of the Goryo》はソーサリーかつ3マナと重さが目立つのですが、効果自体はシンプルで使いやすいため採用に値すると思います。《死体発掘/Exhume》は「《漁る軟泥/Scavenging Ooze》などが一緒に帰ってくるためコンボ始動できない」という場面があったので不採用です。

《発掘/Unearth》《再活性/Reanimate》《納墓/Entomb》《約束の終焉/Finale of Promise》
《呪文探求者/Spellseeker》1枚コンボに使用するパーツたちです。適当に使うと「呪文探究者は通ったがゴールできない」ということが発生するので注意してください。しかし、《発掘/Unearth》と《約束の終焉/Finale of Promise》の役割はコンボルート中にマナを伸ばすことなので、十分なマナがあれば失っても問題ありません。逆に《納墓/Entomb》と《再活性/Reanimate》は、超古術師を落として釣ることで、納墓回収→コピー生成前に納墓で任意のスペルを落とす→コピーで回収、と墓地にスペルを落としながら派生形の無限コンボに突入するという別の役割も持っています。

《ヴィダルケンの霊気魔道士/Vedalken AEthermage》《吸血の教示者/Vampiric Tutor》《伝国の玉璽/Imperial Seal》《悪魔の教示者/Demonic Tutor》《リム=ドゥールの櫃/Lim-Dul's Vault》《神秘の教示者/Mystical Tutor》《直観/Intuition》
サーチカードです。《呪文探求者/Spellseeker》を直接サーチできるものは基本的にそれを、《神秘の教示者/Mystical Tutor》はBかCの足りないパーツあるいは上記の《納墓/Entomb》+《再活性/Reanimate》の片割れを探します。《直観/Intuition》はコンボパーツABCをそれぞれ表にしてリーチをかけたり、《納墓/Entomb》として使ったりします。

《暗黒の儀式/Dark Ritual》《陰謀団の儀式/Cabal Ritual》《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide》《魔力の墓所/Mana Crypt》《水蓮の花びら/Lotus Petal》《金属モックス/Chrome Mox》《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》《魔力の櫃/Mana Vault》《太陽の指輪/Sol Ring》《友なる石/Fellwar Stone》《威圧のタリスマン/Talisman of Dominance》《独創のタリスマン/Talisman of Creativity》
マナ加速です。4マナあれば手札は《呪文探求者/Spellseeker》1枚でよいためリソースを失うマナ加速も投入しています。さらにスピードを求めるなら《炎の儀式/Rite of Flame》《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion's Eye Diamond》も採用してもよいかと思います。

《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy》《渦まく知識/Brainstorm》《定業/Preordain》《思案/Ponder》《暗黒への突入/Plunge into Darkness》
手札を整えるカードたちです。《呪文探求者/Spellseeker》にアクセスできる初期手札をキープしてこれらで土地を探す使い方が多いです。《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy》は手札の古術師を墓地に落とす役割があるので適当に変身させないほうがよいこともあります。そのため《思考の急使/Thought Courier》を追加のルーターとして採用してもよいかもしれません。《暗黒への突入/Plunge into Darkness》は非常に使いにくいカードなのですが、後が無いときにデッキを30枚近く掘る爆発力がある点、うっかり相手ターン中に古術師の無限トークン無限マナが成立したときにデッキをすべて掘ってインスタントウィンを可能にする点と、限定的な役割があるためギリギリ採用しています。

《明日の見張り/Watcher for Tomorrow》《ボーラスの占い師/Augur of Bolas》《捧げ物の魔道士/Tribute Mage》《粗石の魔道士/Trinket Mage》《苦い真理/Painful Truths》
リソースを稼ぐカードです。見る範囲が広いカード、ピンポイントでサーチできるカード、雑に枚数を稼ぐカードとして採用しています。言い換えればそれぞれに欠点もあるため、《闇の腹心/Dark Confidant》《アズラの賭け屋/Azra Oddsmaker》《時を越えた探索/Dig Through Time》など対抗馬も多く、最も入れ替わりが頻繁な枠となっています。

《否定の契約/Pact of Negation》《精神的つまづき/Mental Misstep》《払拭/Dispel》《白鳥の歌/Swan Song》《狼狽の嵐/Flusterstorm》《紅蓮破/Pyroblast》《赤霊破/Red Elemental Blast》《意志の力/Force of Will》《マナ吸収/Mana Drain》《否定の力/Force of Negation》《もみ消し/Stifle》
カウンターの枠です。《呪文探求者/Spellseeker》を通すためのバックアップとして使える1マナ以下のカウンターを8枚、重いもののリターンが大きい《マナ吸収/Mana Drain》、リソースを失ってでもターンが帰ってこれば勝てるため防御札として《否定の力/Force of Negation》、《屍肉あさりの地/Scavenger Grounds》や《フェアリーの忌み者/Faerie Macabre》などに対抗するための《もみ消し/Stifle》、というそれぞれの役割です。特にもみ消し系統はあるかないかで不可能が可能になるため1枚は採用すべきと考えています。とはいえ次点が《計略縛り/Trickbind》や《物語の終わり/Tale's End》のため複数採用は難しいのですが。

《蒸気の連鎖/Chain of Vapor》《サイクロンの裂け目/Cyclonic Rift》《金粉のドレイク/Gilded Drake》《毒の濁流/Toxic Deluge》《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》《コラガンの命令/Kolaghan's Command》
除去枠です。《安らかなる眠り/Rest in Peace》《地の封印/Ground Seal》などのエンチャント含むほぼすべてのパーマネントに触れられるバウンスが一番汎用性が高いため、《乱動への突入/Into the Roil》や《叱責の風/Winds of Rebuke》を追加してもよいと思いますが、破壊であり複数枚を対処できる可能性があるため《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》を採用しています。《コラガンの命令/Kolaghan's Command》はクリーチャーの対処、プレインズウォーカーの対処、アーティファクトの対処、自分の手札の古術師の処理、墓地の呪文探究者の回収、と八面六臂の働きをしながら最終的に無限キャストして勝ち筋にまでなるスーパーカードです。

《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》《征服者のフレイル/Conqueror's Flail》
妨害への回答枠です。対戦相手が何枚打ち消しを構えようと《魂の洞窟/Cavern of Souls》経由でテフェリーを着地させてしまえばあとはコンボを決めるだけなので青が濃い卓で非常に強力なカードとなります。《征服者のフレイル/Conqueror's Flail》も同様の役割なのですが、キャスト→装備までテンポが悪いのと、このカードに対して除去が刺さってしまうのであまり使い勝手はよくなかったです。また、これらのカードでも塞げない穴を埋めるためにも、《もみ消し/Stifle》を採用しています。

《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》
重いカードなのですが、相手を対象としてカウンターや《フェアリーの忌み者/Faerie Macabre》を抜く、自分を対象としてルーターとする、3/1飛行のボディでプレインズウォーカーをどついたり、《刃を咲かせる者、ナジーラ/Najeela, the Blade-Blossom》や《織り手のティムナ/Tymna the Weaver》をいきなり打ち取る、とその分広く役割を持てるカードです。便利なので採用中。重いですが。

《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》
さらに重いカードなのですが、土地すらも含む妨害パーマネントを複数処理できる、バイバック付きのカウンターやバウンスのように使える、相手が立たせた青マナ源を縛る、と同様に広く役割を持てるカードです。こちらも便利なので採用中。やはり重いですが。

《概念泥棒/Notion Thief》
《概念泥棒/Notion Thief》です。

《本質の変転/Essence Flux》
ユーティリティカードです。浮きマナに応じて《呪文探求者/Spellseeker》ルートに組み込むことで、妨害への対応力が非常に上がります。それ以外でも戦場に残った古術師で使いまわすことでアドバンテージエンジンを作り出すことができます。しかし、単体では仕事をしないカードであるため、CIP持ちのクリーチャーを多めに採用することが求められてしまうカードです。

《閃光/Flash》
問題児。役割は下記。
①5枚採用したため手札でダブついてしまう古術師を墓地に叩き込みつつ、スペルを2枚回収する超《正気の欠片/Shreds of Sanity》。
②3マナ以上のCIP持ちを出すことで実質マナ加速。
③墓地の一番上が重古術師の場合、《呪文探求者/Spellseeker》を投げつけてインスタントウィン。
④上家の終了ステップ以降に《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》を叩きつけてコピーを残すことで、瞬速《落葉の道三/Dosan the Falling Leaf》。
特に④のルートを相手が知っている場合、通してテフェリーのコピーが残った時点でカウンターが腐るため、《閃光/Flash》自体がマストカウンターとなります。
2マナ+1マナで安全確認ができるカードではありますが、《本質の変転/Essence Flux》以上に噛み合いが要求されるため、古術師をフルで採用して無理やり運用しています。

土地
《Underground Sea》《Badlands》《Volcanic Island》《湿った墓/Watery Grave》《汚染された三角州/Polluted Delta》《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》《沸騰する小湖/Scalding Tarn》《変遷の泉/Morphic Pool》《統率の塔/Command Tower》《真鍮の都/City of Brass》《マナの合流点/Mana Confluence》《魂の洞窟/Cavern of Souls》《(冠雪の)島/(Snow-Covered )Island》《(冠雪の)沼/(Snow-Covered )Swamp》

は不動で採用します。《呪文探求者/Spellseeker》コンボが2UBであるため青黒土地をメインに、《納墓/Entomb》+《再活性/Reanimate》のコンボで1BBBBが要求されるため《沈んだ廃墟/Sunken Ruins》《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》を採用しています。土地のスロットで除去札となる《爆発域/Blast Zone》は非常に使いやすいです。自分は採用していませんが《ヴォルラスの要塞/Volrath's Stronghold》や《激浪の研究室/Riptide Laboratory》のようなシステム土地も候補ですね。

イナーラというデッキ


《儀式の大魔導師、イナーラ/Inalla, Archmage Ritualist》はその威光能力により、《炎影の妖術/Flameshadow Conjuring》という4マナ相当のエンチャントが戦場に置かれた状態(しかも離れない)でゲームをスタートできます。そのため、他のデッキがマナ加速→勝ち手段と動く中で、サーチ→勝ち手段と動くことが可能な点が速度と安定性を高いレベルで安定させています。しかし、裏を返せばゲームが長引き相手がジェネラルをキャストした時点でマナとカードアドバンテージは追いつかれ、以降は相手のジェネラルがマナをアドバンテージに変換して不利になるという弱点があります。いかに短距離走を確実に拾うか、いかに長距離走で相手に引き離されないか、がデッキ構築の際のテーマですね。
コンボのゴール自体は単純なのですが、それに至るルートは多く、パーツの種類も複数存在するため、大規模墓地対策以外で詰みが発生しにくいのも良い点です。《虚空の選別者/Void Winnower》がいる状態で奇数のカードだけで走り切れるか?といったパズルに直面したこともあるので、そのような回答探しが好きな人にも向いているジェネラルではないでしょうか。

統率者2019とイナーラ


まもなく新セット統率者2019が発売されるのですが、その中から新たに採用する1枚を紹介します。

《波止場の恐喝者/Dockside Extortionist》


宝物トークンを2枚生成できれば《五元のプリズム/Pentad Prism》、3枚で色マナが出る《厳かなモノリス/Grim Monolith》、それ以上生成できればターンを持ち越し可能なマナ加速としては類を見ないスペックとなる強力なカードです。
このカードが弱いタイミングとは、周りが加速できていないイナーラの得意な状況であり、逆に誰かにマナアドバンデージで追いつかれた状況ではこのカードで再び引き離すことができます。
生物であることも重要で、軽い《流浪のドレイク/Peregrine Drake》のような扱いができるため、リアニスペルをマナ加速に変換できる可能性があるほか、《古術師/Archaeomancer》+《本質の変転/Essence Flux》でフリッカーコンボに突入することもできます。
他のジェネラルでも広く採用されるカードであると思うため、今後は手札の0マナのアーティファクトを《Mystic Remora》をケアして先に出すのか、このカードをケアして後に出すのか、駆け引きが面白くなりそうですね。

おわりに

以上が自分の《儀式の大魔導師、イナーラ/Inalla, Archmage Ritualist》デッキです。
使用者は多いとも言えず、ネット上にも参考リストが少ないため、誰か一人でも興味を持っていただき、研究が進むと嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?