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【25話】ハンガリーに短期滞在ーースローライフを楽しむ

サンフランシスコからフランクフルトで乗り換え、未踏の地、ハンガリーの首都、ブタペストに到着した。ここは一見、ヨーロッパの典型的な景色が広がっているが、かつて社会主義国のロシアの支配下にあったため、他の東欧諸国と比較して(良い意味で)垢抜けない古びた街並みが魅力的。観光客も他のヨーロッパ諸国よりも少なく、のんびりとした雰囲気が漂っていた。また、EURO通貨に未加盟のため、物価も安いと感じた。

ドナウ川のほとりには、歴史の重みを感じさせる城や美しい建物が立ち並び、その建築物が川面の漣に揺れ映る光景は息を飲むほどだった。色々あったけど、訪れて本当に良かったと思った。

元カノの両親が住む場所は、田舎の「フォート」と呼ばれる場所だった。教会や古くからの店、小さな家々が周囲に広がり、時間がゆっくりと流れていた。家は素敵とは言い難い古さがあったが、不便はない。元カノの車も付いてきたし、複雑な思いは次第に和らいでいった。ここで私たちは3ヶ月間を過ごすことになる。

夫と私は毎日ブタペストの中心部に出かけ、私に出会う前に彼が何年も過ごした大好きな街をご機嫌で案内してくれた。彼の嬉しそうな顔を見て私も嬉しかった。滞在中は大きな喧嘩もなく、でも夫婦のスケンキアもなく、穏やかに時が流れた。私はあるカフェを見つけて、自分のオフィス代わりに利用した。

その時凝っていた写真撮影為、思い一眼レフを持って街を歩き、そのカフェで写真の整理やブログの執筆をしていた。やっている事は編集者時代とちっとも変わりはなかったが、魅力的な風景に夢中になっていた。この体験をいつかオンラインで共有できるかもしれないと素材を貯めていた。

ハンガリーは5つの国と国境を接している。郊外にも足を運び、山や湖、温泉に出かけた。国境を越えてウィーンへも行った。ブタペストからウィーンはたった2時間でアクセスでき、その垢抜けた観光地でグルメを楽しんだ。

本来私たちの理想だった「世界中を旅しながら働く」という結婚生活がいつのまにか現実になっていた。でも彼はほとんど仕事をしていなかった。以前はそれが気になっていたが、私も現在はフリーランス。まだクライアントもほとんどいない。不安もあったが、とりあえずこのハンガリーでの短期滞在を楽しむことにした。

ハンガリーでは競争社会がなく、アメリカや日本のような「みんな忙しくないとダメ」文化はない。人々は親切で物価も安くワイナリーや温泉もたくさんあり、食べ物も満足できる。私はいつの間にか、元カノの実家に滞在しているということを忘れ、ハンガリーでのスロー生活を楽しんでいた。

でもこの平穏な生活も束の間、この後思いがけない元カノからのどんでん返しが私を待っていた。



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