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B Corp創設のきっかけとなった「AND 1」

自分が手にしたり身につけたりするブランドが、「いい会社」のものかどうか、気になる今日この頃。「B Corpになるといい会社になれます」と言いふらしている自分が、環境や社会への負荷を全く考えていない会社のものやサービスを買って結果的に存続を応援してしまっているのだとしたら、批判を受けてしかるべきだ。
これまで批判を受けたことは一度もないが、というか幸いなことに気づかれていないか、気づいてもそこまで言わなくてもいいかとなったかはわからないが、「Walk the Talk」=有言実行であり続けたい。
そして私もB Corpも完璧ではない。パタゴニア創業者の株譲渡は日本でも話題を呼んだが、B Corpだからこそ大胆な決断ができたともとれる一方、B Corp認証を取ったからミッションを追及し続けることができるという完璧な形ではないことが証明されたとも言えると思う。つまり、株主だけでなくすべてのステークホルダーのことを考えて経営していくというB Corp及びベネフィットコーポレーションという法人格を持ちながら、人間という株主に譲渡しなかったのだから。

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話は変わり、B Corp創設者がもともと経営していた会社、「AND1」についてNetflixやYoutubeで垣間見ることができる。

Netflixで「Untold」という、一世風靡したスポーツアスリートたちのこれまで語られてこなかった真実を伝えるシリーズ番組の1つとして、「AND1 旋風と夢の跡」がある。

※ここから先はいわゆる「ネタバレ」になるが、内容そのままではなく少し補足して紹介しよう。

AND1は名門大卒の学生が車でTシャツを販売していたところに始まる。創業者全員が学生時代からずっとバスケをしてきたことから、バスケ関連のビジネスをしようと考えていた。なお、B Corp創設者3人のうち2人はAND1創業者のジェイとバートとして紹介されることが多いが、Netflixのこの番組ではジェイの他、トムとセスが創業者として紹介されている。バートは創業直後にジェイに声をかけられCFOとして仲間となりAND1を支えた創業メンバーである。
さてAND1最初のビジネスだが、「Trash talk」と言われる、スポーツ選手が試合前に相手を揺さぶるために吐く挑発するような言葉をTシャツにプリントまくって販売した結果、わりと売れて、アメリカ大手の靴チェーン店・Foot Lockerでも取り扱われるほどになった。

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(↑ eBay出品の画像より。「やめろ、お前まぢ臭い(嫌)」。)

当時のバスケビジネスで主権を握っていたのはNIKE。彼らに対抗するために、自らもチームを持ち、それをアイコンにシューズなどを売っていく戦略を立てていたとき、創業者たちがストリートバスケの映像を見て、そこにアート性を見出した。番組の中でも「詩的な動きと魔法のようなトリック」「観客を刺激できれば負けても満足」と紹介されているが、ただゴールにボールを入れることだけが目的なのではなく、ボールを自由に操り華麗なゴールさばきで相手を惑わす。無料で見られる街のバスケコートに集まる多くの人の目を魅了するのがストリートバスケだった。その様子と、未発表楽曲を入れて編集した「ミックステープ」というビデオテープを作り、発売したところバカ売れ。例えをそのまま使えば、まるでドラッグのように街中に広まっていった。YoutubeやTiktokがまだ世の中を席巻する前に、映像で流行していった。なお、今もAND1の公式Youtubeでその映像が見られる。

そしてストリートバスケ出身の選手と契約し、アメリカ全土をまわる「ミックステープ・ツアー」を慣行。同時に斬新デザインのバスケシューズも開発し、好調な売れ行きとなった。

ツアーはアメリカ国外に発展し、ワールドツアーが行われた。日本にも2007年に来日したようだ。

浅草などをENJOYしているミックステープがある。

これはNetflixに無いが、日本人もAND1のチームで活躍した。「SAMURAI」というニックネームこと、森下雄一郎さん。日本人初のNBAプレーヤーとなった田臥選手より前にNBAの下のリーグでドラフト獲得をするなど、活躍されていた。

そして今は社会活動家として活動していらっしゃり、またその生い立ちにも苦難の多い、なんともB Corpの文脈とつながりがあり感慨深い。ロッキー佐々木さんのYoutubeで紹介されている。

そうして旋風を巻き起こしたAND1のバスケチーム内で、そのうち諍いが起こるようになる。相手の契約金額が気になったり、自分たちはピザなのにスタッフは高級車で豪遊している、AND1が売れているのは自分たちのおかげなのに契約金額UPの交渉を拒否した、などなどの不満の声も紹介されている。片親のスラム街出身が多いストリートバスケプレーヤーから、NBAでなくとも活躍できる場を与えられ世界中を旅することができたし、報酬が場合によってはNBA選手より高いこともあったという証言もある。そのあたりはメディアとしてドラマチックな編集もあるかもしれない。

いずれにせよ、これまでスポットライトの当てられることの無かった、いわゆる黒人コミュニティのなかの芸術性を見出し、ブームを起こしたAND1はある種の社会的インパクトを与える功績を残したとも捉えられるかもしれない。もちろん会社として、地域社会への還元などの活動や、従業員への働きやすい環境の整備など、今のB Corp基準にもあるような「いい会社」として活動していた(そのあたりの紹介はこの番組内ではない)。

その後会社が買収され、ジェイとバートが新しい経済システムを目指すというストーリーへと繋がっていく。

そのあたりの話は、B Corpについて研究しているケンブリッジ大学のマーキス教授によるB Corpムーブメントの本が最近翻訳出版されたのでご参照されたい。

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