家にいながら人を殺さないために。
火曜と金曜は燃えるゴミの日だ。
土曜日は燃えないゴミ、月曜日はペットボトル。
ゴミ出しも、こんな時でも毎日回収してくれる人がいるから成り立っている。
何気なく過ごしていると見過ごしてしまう、当たり前の有り難みが今なら分かる。
東京を始め都市圏に緊急事態宣言が出されてもうすぐ1週間になる。コロナウイルスと戦い続けるにせよ、共存するにせよ長期戦になるだろう。
WHOの見解では、有効なワクチンが開発されるには18ヶ月かかるとも言われている。
相変わらず先が見えず、ストレスがかかる環境にいる。
家にいる時間が増え、必然的にインターネットを通して人と繋がる時間も増えた。多くの人が厳しい状況の中で前向きにがんばっている。
一方で、何かに挑戦しようとしている人たちの揚げ足を取ったり「意味がない」「できる訳が無い」「どうせ無理だよ」という声も聞こえてくる。
もしかしたらそんな言葉の何割かはコロナに関係なく吐き出されているのかもしれないが、この状況の中で常に前向きにがんばろうっていうのも中々難しい話だし、ネガティブな気持ちを無理やり抑えるのも良くない。
単純に後ろ向きなことを言うな、という話ではない。
世界でコロナウイルスによる死者数が10万人を超えた今、皆が外出を避けできる限り家にいるようにしている。
では、僕たちは何のために家にいるのか?
それは、感染を拡げて人を殺さないようにしているからだろう。
ただ、当たり前だと思ってしまう「なぜ人を殺してはいけないのか?」をもう少しだけ考えたい。
正解はないし、ここで倫理云々を語るつもりはない。
お風呂に入りながら読んでいて、ハッとした一節がある。
人の死が悲しいのは、過去が無駄になるからではありません。新しい可能性が失われるからです。すべての人は世界を変える可能性があるんです。人の役に立つ可能性があるんです。だから、人を殺してはいけないんです。
殺人が罪になるのは、人類にとって大切な一人の人間の可能性を奪ってしまうからです。可能性を奪うことが罪なんです。
ロケット技術者の植松努さんは「人が死ぬ」ことの意味の大きな一つを「可能性が失われる」ことだと捉えている。
人にとって一番つらくて悲しいことは、可能性が失われることです。だから、言葉で人の可能性を奪うということも、殺人と同じくらい罪深いことなんです。
「そんなもん、できるわけないよ」とか「やってもムダだ」とか「どうせ無理だ」というのは、人の心を確実に殺す言葉です。こんな言葉が世に満ちあふれています。
仕事が全てキャンセルになったり、収入が激減したり、先が見えない中で必死に変化を起こそうとしている人たちがいる。
やったことないことをやると、まず失敗する。普通にやってもただでさえ失敗するのに、周りから「どうせ無理だ」「やって意味あるの」「お前はダメだ」なんて言われ続けたら、また挑戦しようと二度と思わなくなるだろう。
その人を否定することは、その人から生きる可能性を奪ってしまうことになるかもしれない。 そして、その言葉は自分に対して発せば、自分に向かってくる。
リアルであろうがネット上であろうが、何であれ発信する限りは自分も含めて、それに触れた人に何らかの良い影響、悪い影響を与える。
インターネットでは実名を隠して簡単に発信できる。自分が無自覚に発信した配慮ない言葉が、正面切って向かってくる凶器になるかもしれないのだ。
家にいながら、人を、自分を殺してはいけない。
では、どうしたら良いのか。
植松さんは続く文章で処方箋をくれている。
こんなくだらない言葉に負けないために、ひとことだけ、効果的なセリフがあります。「だったら、こうしてみたら」です。「だったら、こうしてみたら」と考えている限り、魂は絶対死にません。不死身の魂で、不幸の連鎖を断ち切るんです。「だったら、こうしてみたら」を考え続けてほしいのです。
「だったら、こうしてみたら」。
お互いの目線が一気に未来へ向く言葉だ。
こう考えると、考えたことをやってみたくなる。
マラソンの女性選手で、「走った距離は裏切らない」と言った人がいました。彼女はきっと、走っている最中にたくさん失敗しているはずです。痛い思いもしているはずです。完走できなかったこともあるかもしれません。それを見て、「おまえはダメなやつだ」と言ってチャンスを奪ったら、そこでおしまいです。失敗をデータにして前進できることこそ、大事なことだと思います。
とはいえ、自分一人でできることなんてたかが知れている。
だったら、どうしよう。
挑戦するエネルギーを保つために、良い状態でいること。
何か小さなことでもいいからプラスのエネルギーを生むような新しいことをやってみること。
挑戦している人を応援すること。
だったら、こんなことをやってみたい。上手くいかなくたっていい。
中途半端でもやってみることは、何もしないで、何もできないでいるより全然いいのだから。
引用:NASAより宇宙に近い町工場 僕らのロケットが飛んだ / 植松努
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