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【GW期間中の自由研究(その8)】ヒトはなぜ夢を見るのか(その3)

うさだだぬきさん撮影

[テキスト]
「ヒトはなぜ、夢を見るのか」(文春新書)北浜邦夫(著)

[参考図書]
「ヒトはなぜ夢を見るのか 脳の不思議がわかる本」千葉康則(著)

「人はなぜ夢を見るのか―夢科学四千年の問いと答え」(DOJIN選書)渡辺恒夫(著)

「夢の正体 夜の旅を科学する」アリス ロブ(著)川添節子(訳)

「眠っているとき、脳では凄いことが起きている 眠りと夢と記憶の秘密」ペネロペ・ルイス(著)西田美緒子(訳)

「夢を見るとき脳は――睡眠と夢の謎に迫る科学」アントニオ・ザドラ/ロバート・スティックゴールド(著)藤井留美(訳)

夢を見るためにやって来たとはいうものの、修学旅行の夜のように、うきうきして眠れない体験だったに違いない。

また、脳内の映画館では毎晩、4本立ての夢が上映されているらしい。

神経科学者の北浜邦夫によれば、人は8時間眠る間に、約90分ごとに4回、合計約90分の夢を見る。

朝起きた時に覚えているのは4回目の夢で、その前の3回分は記憶にない。

目覚めた直後に覚えていた夢も、すぐに記録しておかないと忘れてしまう。

夢を見ている間は、脳内の記憶固定装置が作動していないからだという。

起きている時に外界からの刺激を受信してきた脳は、睡眠時にいわば「鎖国状態」に入る。

そこに花開く独自の文化が夢なのだという。

睡眠中の脳は、昼間に得た経験を長期記憶化する作業に忙しいが、その際に漏れた記憶の断片などが夢になるらしい。

つまり夢は過去の印象の組み合わせに過ぎないことになる。

外界からのデータが入らないまま、脳は記憶を編集し直し、都合の良いストーリーを作り出していく。

死んだ人が生き返ったり別人になっても何ら不思議とは感じない。

この時に記憶固定装置が作動しないのは、編集作業中のフィルムの断片まで脳に記憶させる必要がないからで、夢と現実を混同する人が続出すれば、かえって物騒だろう。

夢は古代人にとって「もう一つの現実」であり、中でも為政者が聖所で見る夢は「神託」でもあった。

その後、夢の世俗化が進み、中世の寺院は夢のお告げを得るために寝泊まりする人々であふれた。

だが、室町時代になると、様子が変わってくる。

この時代の「太平記」には青砥左衛門という武士が登場する。

相模守が「青砥左衛門を取り立てよ」と夢のお告げを受ける。

そこで相模守が青砥に領地を与えようとすると、彼は「自分の功績によるのではなく、夢によって領地をもらうなどもってのほか」とはねつけるのだ。

夢の予言を信じる相模守のような人のほかに、自身の力で運命を切り開こうとする態度も目立ってくる。

江戸時代、夢を巡る話は、神秘性よりも遊びの要素がますます強くなってきた。

「一富士、二鷹、三茄子」が縁起の良い初夢とされ、夢占い書はベストセラーとなった。そしてさらに近い時代。

柳田国男は小論「初夢と昔話」で、正月2日の晩に東京の町では「おたから、おたから」と宝船の版画を売る声が聞こえてくる、と書いている。

七福神と宝船の絵を布団の下に敷いて眠ると縁起の良い初夢が見られるというわけだ。

柳田は同時に、社会生活の複雑化につれて人間は勝手に新しい夢を見るので、従来の方法での夢占いができなくなってきたとも指摘している。

1937(昭和12)年のことだ。

ほとんどの現代人は富士山の夢も鷹の夢も見ることはないだろう。

夢は共通の社会性を失い、われわれは毎夜、もっと個人的な夢の中で「第2の人生」について一喜一憂しているはずだ。

柳田の母親の世代までは、前夜見た夢を好んで語り合う習慣があったという。

口に出せば夢の内容は人づてに伝承され、共同体の記憶として残される。

一方、現代人の無数の夢は本人以外の誰にも知られず、毎日の夜明けとともに消えてしまっている。



初夢は、お正月の元日か2日の夜に見る夢のこと。

昔から「一富士二鷹三なすび」の夢を見ると縁起がいいと言われている。

それにしても、ヒトはなぜ夢を見るのか?

睡眠にはレム睡眠(浅い眠り)、ノンレム睡眠(深い眠り)の二種類がある。

現在では、どちらの睡眠の際にも夢を見ることがわかっているが、その内容を思い出す率はレム睡眠の方が高い。

つまり、我々が初夢として覚えているものは、レム睡眠の際に見ている可能性が高いのである。

一般的に睡眠中は、ノンレム睡眠とレム睡眠を交互に行ない、レム睡眠は寝入ってから80分ぐらい後に現われ、10分程度続く。

この後、再びノンレム睡眠が始まり・・・この周期を2~4回繰り返す。

精神医学や心理学の世界では、一般的に夢を思考の延長ととらえている。

実際、睡眠に入る直前の会話や、考え事などが、夢に影響を与える例が多いそうである。

ということは、元旦の夜に、見たい夢のことを語り合ったりすれば、その夢が見られるかもしれない。

俗に、枕の下に写真などを入れておくと、いい夢が見られると言うが、これも効果があるのかも。

要は、布団に入ってから、そのことを考えつつ眠ればいいのである。

ただ、夢を朝まで覚えていられるかはちょっと問題。

目覚めた瞬間は明確に覚えていて、

「いい夢だったから忘れないようにしよう」

と念じても、はっきり目覚めたときには、忘れていることが多いのだ。

では、ぐっすり眠って疲れをとるための寝具の工夫を紹介しておくので、それでは皆さん、いい夢を!

1.敷き布団

「柔らか~い」布団で眠ると、背中やお尻が重たく、脚やウエストなどが軽いので、人間の自然な立姿勢とは異なった不自然な寝姿勢となる。

「やわらか布団」ならば「せんべい布団」の方がマシなのだ。

もちろん固すぎてもダメ。

背中とお尻だけが布団に当たり、腰が浮いてしまうのだ。

新しく購入するなら、背骨のS字カーブが2~3cmに保てる「適度な固さ」の布団を選びたい。

2.掛け布団

睡眠中の人間は体温が奪われやすいので、掛け布団は熱の発散を防ぐものを選びたい。

布団の中が、30~33度に保てるものが良い。

3.枕

頭を枕にのせた時、敷き布団から2~3cmと、低くてやわらかめの方が安眠しやすい事が多い。

しかし、枕は、好みが大きく分かれることも多い。

自分が安眠できる枕を選べばいいようだ。

高さの他に重要なのが、放熱・放湿性。

ぐっすり眠れる条件は、「頭は涼しく、手足は暖かく」である。

熱のこもりやすい枕は避けよう。



夢見が多いレム睡眠は、大脳の管理が下手な原始的な眠りだそうである。

人間が生物として、なぜ夢を見るのだろうか?

単純に生物レベルで考えると、夢を見ている状態は大脳がかなり活動しやすい状態、つまり意識レベルが高い状態である。

そのなかでまとまった思考や映像のようなものがどのくらい記憶として残るか、取り出せるか、そうした結果が夢になるわけである。

レム睡眠というのはまさにそういう状態のこと。

体温管理がうまくいかないから、ノンレム睡眠のときのように脳を冷やすことができず、エネルギーを多く使うような非常に激しい活動もできる。

そこでは、いろいろな情報処理的なことが行われるのであるが、たまたまストーリー性の高いもの、インパクトの強いものが記憶に残るわけである。

レム睡眠は、原始的な眠りであるがゆえに、大脳の管理が下手で、夢を見ることが多いのだそうだ。

レム睡眠と夢の関係がもっとも緊密だというわけであるが、大事なことは、生理的なレベルでのレム睡眠の役割と、心理的なレベルでのレム睡眠、あるいは夢の役割というのは、やはり整理して考えないといけないということである。

レム睡眠を奪うと、学習能力が悪化するのは確かなのであるが、レム睡眠の最中は、人間の場合、そんなに頭が活動しているわけではない。

何か記憶を定着させるという程度の力はあるが、ものすごい勉強をして、賢くなるというほどの能力はない。

夢の中で支離滅裂なものがうまく結びついていくときに、連想でつなぎ合わせながら、いろいろなものが奇想天外に展開していく。

そういうことが、許されるのが、レム睡眠の状態といってよい。

夢を見るために、レム睡眠があるのではない。

おそらくレム睡眠というものの果たす生理的な役割のひとつに、脳がバラバラな状態で働いてもかまわないような仕組みがあって、その範囲の中に夢というものが、出てくるのだと思われる。

また、夢の中で、忘れてしまった本能行為を、学習していることもあるそうだ。

猫の脳の睡眠中枢のうちで、レム睡眠に関連する特定の部位を破壊すると、夢幻様行動が出てくる。

人によっては、寝ているときに、いきなり起き上がって、扉を蹴っ飛ばしてしまう人とかがいる。

レム睡眠中というのは、健康な人では、筋活動が低下してしまって、まったく行動できないことになっている。

しかし、前述の様に、ある人は、夢の中では行動している。

それは、レム睡眠中では、筋活動を、抑制する働きが、低下していることによる。

これは、脳のレム睡眠に関する中枢の障害と考えられている。

最近では、画像診断などの手段を用いて、どの部分の機能がうまくいっていないのかが、大体わかってきた。

まったく意図しないことをやっているにもかかわらず、犯罪に結びついてしまうような事態もある。

現在、このような症状を示す病気があることがかわり、

「レム睡眠関連異常行動」

という診断名がつけられている。

私が非常に面白いと思ったのは、そのときの夢には、誰かに追いかけられているとか、暴徒に襲われるとか、そういった何か生命の危険にさらされたときに、本能行動として抵抗するようなシーンが多いことである。

本能行動というのは、長らく、人間らしい生活をしてくると忘れてしまう。

それを、何度も、何度も、夢の中で学習しながら、いざというときのために備えている、そういった考え方もできるのではないかと思う。

夢の研究が、どういったかたちでサイエンスになるのかと言えば、 提供される情報に基づき、画像診断法や電気生理学的手法を使ったりして、夢を見ているときに脳のどの部位が活動しているかが、はっきりとわかるようになってきた。

そういったデータをうまく利用することによって、よい夢を見たり、ストレス解消に役立てたりといったことに結びつけられないか、と考えられている。

それこそ、夢みたいな話なのであるが。

また、睡眠不足による免疫機能の低下は、医療費の増大につながっていることも確かである。

眠くなることによって労働の能率は低下する。

それを、国民全体として見れば、それだけで大きな損失になるといえる。

最近、保育園の保母さんたちからの相談によると、午前中はダラーっと寝ていて、午後になると、やおら元気になる子どもが多いそうである。

よくよく話を聞いてみると、夜型の子どもたちなのであるが、彼らは学校へ行っても、同じ授業を聞いていながら、半分しか聞いていないということもあり得る。

そうなれば、教育効果も半減ということになりかねない。

また、睡眠のもつ機能のひとつに、免疫機能の増強がある。

寝ないでいると、健康を保つ、さまざまな機能が落ちてくる。

不規則な勤務をして、絶えず睡眠不足に襲われている人は、ガンの発症率や、ガンによる死亡率が、かなり高い。

睡眠を上手にとれば、慢性疾患といわれている病気や、生活習慣病などといわれているような病気を防ぐことも可能である。

そういう意味で、睡眠不足は、医療費の増大につながり、経済的な損失だといえるのかもしれない。

それからもうひとつ、心の病気も、睡眠不足や不規則な生活が原因で起こることがある。

うつの症状をもつ人が多かったり、「眠らないとだめだ」という観念にとらわれたりして、睡眠恐怖症のようになり、さまざまな心身の病気を引き起こしたりするのである。

また、昼夜の概念が異なる宇宙の生活、生体リズムについて、知ることが重要である。

人間の生物時計は、生まれつき25時間なのだそうだが、そうなると、人間というのは、生まれつき不眠症にかかるようにできているのではないか。

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