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【おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。】魔女のうた

Akiomi Kurodaさん撮影

その魔女は、一生、魔法を、使わないことに、決めました。

自在に、空を、飛びまわることが、できても。

不老不死の薬を、作ることが、できても。

自由にならないものが、あることに、気づいてしまったのです。


歴史上の偉大な魔女たちが、そうであったように。

魔法で、手に入る幸せなど。

とるにたらないことだと。

悟ってしまったのです。


彼女は、知っていました。

どうしようもないこと。

うまくいかないこと。

幸せは、そんなことの中にだけ、あると。


魔法なんかなくたって。

誰かを、幸せにできれば。

自分も、幸せになれるのですから。

素直に、笑えるときは、嬉しいから。

素直に、泣けるときも、嬉しいから。


素直に、咲いてる?

嘘が、下手だね。

そんな自分が、けっこう好きな魔女。


自分のこと、褒めてあげたの、いつだっただろうか。

上手く、笑えない日は、笑わないで、いいと思う。

そんな日は、心の表情のままに、シンプルに、生きてみる。


魔法を捨てた、彼女が、望んだもの。

それは、ごく普通の毎日でした。

ごく、普通の街で。

ごく、普通のひとたちと。

ごく、普通に、暮らすこと。

ただ、気持ちに、素直に、心のままに、あること。

大事なことは、本当に、それくらいだったのです。


だって、魔法なんて、使わなくたって。

自分を、周りの誰かを、笑顔にすることくらいは、できるのですから。

素直に、笑えるときは、嬉しいから。

素直に、泣けるときも、嬉しいから。


素直に、咲いてる?

嘘が、下手だね。

そんな自分が、けっこう好きな魔女。


思いっきり、笑ったのは、いつだっただろうか。

泣きたいときに、泣かない魔女。

怒ったり。

喧嘩したり。

最近、していなかったことに、気づく。


魔女は、そんな暮らしの中で、改めて、こう思うのでした。

魔法が用意した、未来じゃなくて。

今、自分が、感じること。

この瞬間。

心と身体が、自由に、踊ること。

それが、一番、強く、信じられることを。


箒で、飛び回るのではなくて。

自分の足で、飛びまわって。

見つけて。

掴んで。

大きく吸いこんで。

心に、沢山、栄養をあげる。

季節の彩は、いつも、私が始める。

そう、強く、思うのでした。


振り返れば、おちこんだりもしたけれど。

近くでも。

遠くでも。

何処かへ行くことは、ある種の魔法で。

戻ってきたときには、どこだか、少しでも、何かが、変わっていて。


「手を放すたびに思うよこの街で花束になる花のすべてを」
(櫻井朋子『ねむりたりない』より)


魔女は、気づく。

西日は、夕日になった途端に、人気者になったり。

昼間の太陽や、その光は、名前すらなくて。

窓の景色に、再放送はなく。

人生が。

いつのまにか。

忘れているもので、できていたりすることを。


魔女は、思い出す。

太陽も。

月も。

風も。

雨も。

アリも。

キリギリスも。

お化けも。

オオカミも。

みんな、やさしい声だったことを。


そして、私も♬


魔女は、それからというもの。

なんとか、元気で、毎日を、過ごしている。


幸せだって。

乗り越えてゆく。


そんな日々を・・・



【参考文献】
「完訳グリム童話―子どもと家庭のメルヒェン集―」ヤーコプ・ルードヴィヒ・グリム/ヴィルヘルム・カール・グリム(編)小澤俊夫(訳)

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