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バットマン:キリングジョーク ネタバレあり感想・あらすじ解説


とある精神病院に二人の男がいた・・・


バットマン翻訳コミックの感想第10回は『バットマン:キリングジョーク』です。

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概要

本作はバットマン最大のヴィランであるジョーカーの誕生が描かれておりバットマンコミックの中でも有名作品です。

バットマンの単独エピソードは基本的に世界観が独立しているのですが本作のエピソードはジョーカーの誕生秘話とバットマンとジム・ゴードン、そしてバーバラ・ゴードン(バットガール)の心と体に深い傷跡を残したということもありバットマンの歴史の中でも起こった出来事として他の作品でも語られることが多いです。

ジョーカー誕生の元ネタ自体は1951年のコミックスのエピソードになります。それを元に作家のアラン・ムーアが本作で改めてジョーカーのオリジンを描きました。
アラン・ムーアはアメコミの名作で映画化・ドラマ化もした『ウォッチメン』の作者でもあります。

ちなみにアニメ化もしています。日本語吹き替えは無く字幕のみですが本作を上手くアニメーションにしています。
また、前半はバットマンとバットガール(バーバラ・ゴードン)のラブロマンスも描かれ、後半からキリングジョークの話になります。

バットマンのゲーム、アーカムシリーズでも本作の出来事が本編前にあった設定で『バットマン:アーカムナイト』ではバットマンの回想として映像化もされています。

あらすじ

最悪の一日が、幕を開ける――

アーカム精神病院からゴッサム最強の犯罪王ジョーカーが消えた。脱獄に成功したジョーカーは、ゴッサム市警本部長ゴードンを拉致し、さらにその娘バーバラを刃にかける。そして、ジョーカーはフリークスの集まる遊園地で、ある実験を試みる……。絶望的な状況下において、人はどこまで正気でいられるのか?そしてジョーカーを狂気に駆り立てる「過去」とは?

アメコミ界の異端児アラン・ムーアが、ジョーカーの誕生の秘密を暴く!! 全編最カラーリングに加え、特典としてブライアン・ボランドのカバーギャラリー、隠れた名作『罪なき市民』を収録。

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多くのヴィランが収容されている精神病院のアーカム・アサイラムにバットマンがジョーカーに会いに行くとジョーカーは脱獄していました。
脱獄したジョーカーはバーバラ・ゴードンを襲いジム・ゴードンを誘拐して苦しめます。
ジム・ゴードンを救いにバットマンがジョーカーに対峙する話と並行してジョーカーの過去が語られます。

本作は昨今のアメコミの翻訳本に比べると内容は短く45ページ程となっています。
しかし内容が深く重いので短さはあまり感じませんでした。

また、冒頭でバットマンがジョーカーに会いに行った理由がジョーカーとのどちらかが死ぬまで闘い続ける関係を終わりにしようと話をしに行ったのですがこれが終盤のバットマンとジョーカーの対決の決着でも語られて二人のその後の関係をある意味決定付けた内容にもなっています。

本編とは別に『罪なき市民』というゴッサムの市民がバットマンを殺す妄想を語るというまた怖い話も収録されています。

登場人物(ネタバレ有り)

バットマン(ブルース・ウェイン)

主人公。
ゴッサムシティの大富豪ブルース・ウェインがバットマンとして犯罪者を取り締まっている。
最大のライバルであるジョーカーとの終わらない関係に悩んでいる。

ジェームズ・ゴードン

ゴッサム市警の本部長。通称ジム・ゴードン。
バットマンとは信頼関係にある。
娘のバーバラがジョーカーに襲われて自身は誘拐されてジョーカーに深い傷を負わされる。

バーバラ・ゴードン

ジェームズ・ゴードンの娘。
バットガールとしてバットマンと共に活動もしている。
ジョーカーに襲われる。
この事件がきっかけで下半身不随になりバットガールを引退した。

ジョーカー

正体不明のサイコパスで犯罪王の道化師。
バットマンにとって最大のライバル。
アーカム・アサイラムを脱獄してバーバラを襲いジム・ゴードンを誘拐する。

コメディアンの男

妊娠中の妻のジニーと2人暮らしをしている売れないコメディアン。
強盗計画の為に以前勤めていた化学工場を通る際の案内役になる。
その際に巷で有名になっていた赤いマスクを被る犯罪者の『レッドフード』に扮して強盗をすることになる。

解説・感想(ネタバレ注意)











物語はバットマンがジョーカーに会いに精神病院のアーカム・アサイラムを訪れるところから始まります。
ジョーカーの独房に向かう途中ではトゥーフェイスが独房の扉越しに睨んでいました。
ちなみにアニメ版だと扉の外にコインを落としたトゥーフェイスが扉の格子から手を伸ばしてコインを取ろうと扉を引っかき続けていてトゥーフェイスの狂気が描かれています。

バットマンがジョーカーの独房を訪れるとジョーカーはトランプで1人で遊んでいました。
バットマンはジョーカーにどちらかが死ななければ終わらない関係を終わらせる為に話がしたいと語りますがジョーカーは偽物で既に本物は脱獄していたのでした。

ジョーカーは廃園になった遊園地を売主から買う話をしていました。
お金については問題無いと話すジョーカー。
一方で妊娠中の妻ジニーと暮らす売れないコメディアンの男が貧困を嘆きますがジニーは男を励ますのでした。

ゴードン本部長とバーバラ・ゴードンがジョーカーの新聞記事のスクラップを作っていると呼び鈴が鳴り、バーバラが出るとアロハシャツを着てカメラを首から下げたジョーカーが銃を構えていました。
バーバラが驚くとジョーカーがバーバラの腹部を撃ちバーバラは吹っ飛びます。
ゴードンはジョーカーの手下に暴行され、誘拐されました。

一方コメディアンの男は金の為に妻に内緒で強盗計画に参加することになります。
強盗の際には巷を騒がしている赤い筒状のマスクを被っている犯罪者『レッドフード』に扮することになりました。

病院に搬送されたバーバラをバットマンは訪れ、正体であるブルースだと声をかけます。
バーバラは恐怖に怯えてバットマンに抱き着くのでした。

誘拐されたゴードンは裸にされてジョーカーの前に座らされます。

場面は再びコメディアンの男に戻ります。
夜の強盗計画について話していたところに警察が訪れます。
警察はコメディアンの男の妻ジニーが哺乳瓶用の電熱器で感電して亡くなったことを伝えるのでした。
失意のコメディアンの男は仲間に強盗に参加する理由が無くなったと話しますがもう断ることはできない状況に頭を抱えるのでした。

ゴードンは無理やり乗らされたトロッコでバーバラが惨たらしく晒された写真を見せられ叫びます。
バットマンは犯罪者達や収容されているペンギン(オズワルド・コブルポット)などを訪れてジョーカーの居場所を探しました。
ゴッサム警察署の屋上からのバットシグナルに気づいて行くとジョーカーからの招待状が届いており、バットマンは直ぐに向かいました。

コメディアンの男はレッドフードに扮して仲間と共に強盗の為に化学工場を抜けようとしますが警備員に見つかり仲間2人は死んでしまいます。
警備員達は男も殺そうとしますがバットマンが現れて止めます。
この化学工場である「ACE CHEMICAL(エースケミカル)」は後のエピソードや映画やドラマ・ゲーム等他のメディア作品にも出てきます。

バットマンに追い詰められた男は廃液に飛び降りて逃亡しますが男がマスクを脱ぐと髪は緑色、肌は白く眼を見開き狂気的に笑うジョーカーの姿になっていました。

ちなみにゲーム『バットマン:アーカム・ビギンズ』ではこちらのシーンが再現されていてジョーカー側の視点でレッドフードに扮した男として操作ができます。

話は現代に戻り遊園地にバットモービルで乗り込むバットマン。
裸で膝を抱えたゴードンを見てバットマンはジョーカーに殴りかかりながら冒頭のジョーカーへの面会時のことを反芻します。

最近よく考えるんだ

お前と・・・

私の事を

我々が最後にどうなるのかを

このままでは、殺すか殺されるかだ

お前が私を殺すか・・・

私がお前を殺すか

遅かれ・・・

早かれな


ジョーカーが退散をした隙にバットマンはゴードンを助けます。
バットマンは警官隊が来るまで傍についていると言いますがゴードンはバットマンにジョーカーを法規に従って捕まえて欲しいと頼むのでした。

バットマンはジョーカーを追うとジョーカーが語りかけてきます。

ゴードンのような聖人であっても不幸な出来事が狂人に変えること。
バットマンにも不幸な出来事があったであろうことを指摘します。
さらにジョーカー自身も不幸な出来事があったと語りますがハッキリとは思い出せないとのことです。

ジョーカーは世界の全てがジョークだと言い、なぜ笑わないのかとバットマンに問います。

バットマンはジョーカーに対してゴードンはジョーカーの攻撃に耐えて理性を保っていたことを伝え、不幸を受け止めきれずに逃げたのはジョーカーの方だと指摘します。

ジョーカーはバットマンに銃を構え撃ちますがおもちゃの銃でした。
ジョーカーは諦めてバットマンに自分を叩きのめすように言いますがバットマンは法規に従うと言い断ります。

バットマンはジョーカーとの殺し合う関係を終わらせたいと言い、今夜が最後のチャンスでありすべてを変えられるかもしれないと話します。
もし拒めばどちらかが死ぬまでの破滅の道に進むとのことです。

バットマンはジョーカーの不幸を思い、ジョーカーの助けになりたいと語り掛けますがジョーカーは遅すぎると、いつか聞いたジョークのように笑えると返します。

とある精神病院に二人の男がいた・・・
ある晩、二人はもうこんな場所にはいられないと腹をくくった
脱走することにしたんだ

それで屋上に登ってみると狭い隙間のすぐ向こうが隣の建物で・・・
さらに向こうには、月光に照らされた夜の街が広がっていた・・・
自由の世界だ!

で、最初の奴は難なく跳んで、隣の建物に移った
だが、もう一人の奴は、どうしても跳べなかった
そうとも・・・落ちるのが、怖かったんだ

その時、最初の奴が閃いた
奴ぁ言った。


”おい、俺は懐中電灯を持ってる!この光で橋を架けてやるから、歩いてわたってこい!”


だが、二人目の奴ぁ首を横に振って・・・怒鳴り返した


”てめぇ、オレがイカれてるとでも思ってんのか!

どうせ、途中でスイッチ切っちまうつもりだろ!”


ここでジョーカーを笑いをこらえ切れずに笑い出します。
それを見てバットマンも笑いました。
雨が降る中で二人で大笑いをし、バットマンはジョーカーに両手を伸ばします。

二人を照らすような照明の光の線が水たまりに反射していますが最後のコマで光は消えました。

ここで『キリングジョーク』は終わりです。

アニメ版ではこのシーン、BGMが無く雨の降る音だけが続く中スタッフクレジットが流れるという結構怖いシーンになっています。

最後のジョークで笑うバットマンはジョーカーにとって唯一ジョークで笑ってくれたということで後々の話でジョーカーから語られることもあります。

また、ラストはバットマンがジョーカーに両手を伸ばして終わるのですがその後バットマンはジョーカーの首を絞めた、もしくは首を折って殺したのでないかという考察もあります。

もちろん本作が後々の話に続くと考えるのであればそんなことはないのですがこのエピソード単独であれば有りうるような終わり方になっていますね。

最後のジョーカーのジョークですが二人の精神病院の患者の片方が懐中電灯の光を渡れというおかしな事を言うのですがそれに対して光なんて渡れないではなくスイッチを切るつもりだろと返していることで2人とも異常者というジョークになっています。

これがジョーカーもバットマンもお互いに異常者だと言うことを言いたいのか、それともバットマンの救い手が幻想であり受け入れないということを言いたいのかは分かりませんがどちらにしてもこのジョークを聞いたバットマンはジョーカーを救うことを諦めたように見えます。

罪なき市民

『バットマン:ブラック&ホワイト』シリーズで掲載された短編。
ゴッサムの一般市民の男が悪事をしようとしてバットマンを殺す妄想をビデオに語る話です。
単なる妄想なのですが絵のタッチとか実際に実行したら完全犯罪になりそうな怖さがあります。
妄想とはいえバットマンがハッキリ無惨に殺されているので作者は小さな子供を持つお母さんから抗議の手紙が届いたそうです。

まとめ

ジョーカーの狂気の起源と凶行が描かれている本作は印象強く本作以降のジョーカーが描かれる際のイメージの元になっている気がします。

善良な人間を不幸な目にあわせて狂わせようとしたり、失敗してバットマンに指摘される所は映画『ダークナイト』のジョーカーを彷彿させます。

ジョーカーもかつては家族を愛する普通の人だったり、ジョーカーになるきっかけにバットマンが関わっていたのも因縁あったりと意外な過去設定も個人的には好きでした。

というわけで『バットマン:キリングジョーク』でした!

読んで頂きましてありがとうございました!

次回の感想についてですがバットマンとカルト教団の対決を描いた『バットマン:ザ・カルト』を書こうと思います!

また読んで頂けると嬉しいです!

よろしくお願いします!

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