回内・回外に応じたピッチデザイン
ネットに書いてあることをまとめただけの記事です。
回外(Supination)・回内(Pronation)
手のひら上が向くように腕がひねられるのがSupination。
手のひらが下を向くように腕がひねられるのがPronation。
フォーシームの速球(ストレート)を投げるときに最初から内側に入る投手はPronator、外側に一度入るような動作をすることで自然とカットするような動作をする投手がSupinator。
回内・回外の確認方法
ハイスピードカメラでリリースを確認
エッジャートロニックやRapsodo Insightなどのハイスピードカメラを使えるならストレートを投げた際、前腕が内側か外側、どちらに入り込んでいるかを見ると確実です。
トラッキングデータを使う
RapsodoやHawk Eyeなどボールのスピンを直接測定できる機器を持っている場合、ストレートの回転効率をチェックするのも手です。
Langinはストレートの回転効率が95%以上をPronator、85%以下をSupinator、中間をMiddleとしています。
大きな動きの変化球を投げる
スイーパー(カットやカット系のスライダーでなく横変化の大きなスライダー)やカーブをスパイク(人差し指を立てる)なしで投げた時に、速球と比較して球速を大きく失って投げたらPronator、球速をあまり失わずに投げることができたらSupinatorのようです。
ストレート
Pronatorの特徴としてはストレートの回転効率が高いことです。回転効率が高いとボールの縦変化(VB:Vertical Break)が大きくなりやすく、縦変化の大きさは空振りのしやすさに大きな影響を与えるため、結果として速球の質(表中のStuff+)を高めます。
Supinatorの特徴としてはボールをカットするような動作が入るためストレートの回転効率は低くなりやすいです。回転効率が低いとボールの縦変化が大きくなりにくく、空振りを取りにくくなり、結果として速球の質(Stuff+)が低くなります。MLBでは動かないストレートの代替としてこれらの投手にシンカー(2シーム)やカッターを投げさせようという動きもあるようです。
チェンジアップの開発
Turneover(ひっくり返す)
回内投手向け
投球例
ひっくり返すチェンジアップは回転軸を真横に近づけることができるため、横変化が大きくなりやすく、またそのリリース特性から球速を大きく落とせる。
SSW Changeup(リリース時に手を操作しない)
回外投手向け
投球例
Spin-Based(実際の回転軸)とObserved(変化の方向)が一致しないことで打者からは遅く変化するように感じさせる効果が期待される。
TurneoverとSSWのそれぞれの利点
Turneover
・Pronator向き
・ボールの内側に入るようにリリース
・リリースの特性から球速差をつけやすい
・大きな横変化を期待できる
SSW Changeup
・Supinator向き
・グリップを変えてそのまま投げる
・リリースの特性から高速チェンジアップになりやすい
・回転軸と実際に変化する方向にギャップが生まれるため、打者に「手元で動いた」と思わせることを期待できる?
Grip
Eli Morgan(Turnover:4シームグリップ)
Turneoverは強い回内を伴うので4シームグリップでも変化する。
また、強い回内動作は逆ジャイロがかかることもあり、SSWが逆になる可能性もあるため4シームが安全か。
Zack Greinke(SSW Changeup:1シームグリップ)
SSW changeupは縫い目の効果を利用して落とすチェンジアップ。
そのため2シームグリップか1シームグリップが好ましい。
Cue(合図)・リリース時に意識すること
Drivelineによる各チェンジアップのCueing
回内型、回外型はそれぞれのリリース特性を利用して投げると投げやすい。
回外型は速球のように投げれば自然とカットされるのでカッターのような意識はそれほど必要ないか。中間型(Middle)は早く回内、カッター意識が役立つか。
(GreinkeのSSW Changeupのリリース例。最後に中指でリリースしている)
フォーク(スプリット)の開発
チェンジアップの開発が難しい場合はフォークが代替候補となるかもしれない。フォークは回内・回外・中間に関係なく多くの投手がそれぞれの方法で投球できる。
スライダーの開発
Sweeper
横変化の大きなスライダー。
打球速度を低下させたり、ポップフライを打たせられるなど、
失点しにくくStuff+などの投球の質モデルで優れている。
特に右対右、左対左の組み合わせで優れる。
リリースの際には、ボールの横を回して投げるため回外傾向(Supinator)には投げやすい。Pronatorは投げるのが難しい、投げられてもSupinatorより球速が遅くなりやすいことが考えられる。
Gyro Slider
球速の速いジャイロ成分の多い変化の小さなスライダー。
メリットとしては
・回内・回外どちらでも投げやすいこと。
・変化が小さいため制球しやすいこと(ゾーン内へ投げやすい)
が挙げられる。
2020年→2021年で横変化の大きなスイーパーを投げた投手のうち20名がカッターも投げた。うち16人はカッターのが制球ミスが小さかった。
Gyro Sliderはスイーパーを投げられない回内傾向にも向いているが、その制球のしやすからSupinatorもスイーパーと両方投げることが選択肢に入る。
ジャイロ系のスライダー(カッター)はリリース直前に最後にボールに触れる場所が重要のようです。
DrivelineによるCueingの例。
カーブの開発
カーブについては基本的に回外の投手が開発に優位となる。
Langinの上記の表を見ても
Bucket/Spin/Stuff+
Pronator/2340/81
Supinator/2515/106
と回転数で170近い差がでており、Stuff+でも引き離されている。
回外傾向のある選手のが回転をかける感覚で優れているようだ。
Spikeを加える(ナックルカーブ)
Tread AthleticsのBen Brewsterはかつて回外させる感覚に欠けていて安定したカーブを投げるのに苦労していた。
これを補うために彼が思いついたのはカーブ(またはスライダー)を投げる際に人差し指を立てることです。
これはSpike(立てた人差し指)が軸を設定できることに影響します。
スパイクのある人差し指はボールに力を入れ、中指はボールの外側に下向きの力を入れることで、そのポイントを中心にモーメントを作ります。
(下記のリンクの映像を参考)
軸が決まっているので、リリース時に手首を大きく操作する必要はほとんどありません。
これにより、手首の操作から速球のようにピッチを切り取ることに焦点を移すことで、ピッチ上の速度を高めることもできます。
これについては前述のBen Brewsterも
と、回外の感覚に欠けているPronatorでもSpikeを使えばカーブの開発がより簡単になる可能性を示唆しています。
MLBでもキンブレルやマカラーズなどはSpikeを使うことであまり回外に頼らず速いカーブを投げている選手の例です。
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