Baseball SavantのBat Tracking解説(自分用メモ)
とりあえずこれを読めばいいと思う
とりあえず知りたければ英語だけどこれ読めばだいたいOKな感じです。
この記事では日本語でも説明しますが、上記をだいたい参考にしてます。
Bat Tracking
日本時間、5月13日にMLB公式が運営するデータサイト、Baseball Savant上で新しく公開されたページです。これまで打者のトラッキングデータといえば、打球の初速、角度、飛距離といった打球に関するものが中心でした。
しかし、このBat Trackingはバットをトラッキングしたという点でこれまでと異なります。
どうやってデータを取得してる?
2019年までMLBで使用されていたトラッキングシステム、トラックマンはレーダーでボールの動きなどを追っていきましたがバットのデータを取ることはできないようでした。そのため、MLB選手のバットスピードといったデータを知るにはブラストモーションのようにバットにセンサーを付けた練習中の数値を測る(一般公開はおそらくされない)、ホームラン競争のような特殊な条件で打球とボールの初速から推測する、しかありませんでした。
しかし、2020年からはトラックマンに代わり、MLB30球団の各本拠地には、5 台の高フレームレートのホークアイカメラが設置されました。カメラでトラッキングするようになったためバットの速度、バットがたどる経路や物理空間内での位置も追跡できるようになりました。
高性能カメラのおかげで取得が可能になったバットのトラッキングデータは野球の指導や選手の分析に大いに役立つ可能性を秘めています。
バットスピード
バットスピードとは
バットスピードとはバットのヘッドから約6インチ(15cm)のバレルのスイートスポットで測定されます。バットのどの部分で測るかによって速度は変わるため、どこの速度を測るかを明記することは重要です。
日本ではかつて『スイングスピード』を測る際にバットのヘッドの部分の速度を測っていました。しかし、打者がボールを打とうとする一般的な場所はスイートスポットです。また業界標準であるため、MLBでもスイートスポット部分の速度を使用します。
Baseball Savantで『平均』打球速度と称されるものは上位90%の平均を取っています。これは止めたバットやバントなどノイズになりそうなものを弾くためと思われます。
バットスピードの重要性
バットスピードがバッティングの全てとは言いませんが、非常に重要なファクターと考えられます。打者がフライボールを打ち上げたとき、バットスピードが時速1マイル(≒1.6km/h)上がるごとに約6フィート(≒183cm)、飛距離が伸びます。飛距離が6フィート伸びればウォーニングトラックに飛んで野手に捕球されるかもしれない外野フライを本塁打に変えることができます。
もちろん、スティーブン・クワンのようにバットスピードに優れなくても他の優れた技術で高い価値を生み出す打者はいます。しかし、速いことは基本的に得点生産を生み出すうえで大きな武器になります。
各バットスピードの打撃指標は以下になります
80マイル(≒128キロ)以上
打率 .321 / 長打率 .665 / wOBA .419
100回あたりの得点価値 +0.2
70-79マイル(113-127キロ)
打率.274 / 長打率 .477 / wOBA .322
100回あたり得点価値 -1.5
0-69(0-112キロ)
打率.202 / 長打率 .254 / wOBA .205
100回あたり得点価値 -4.0
ちなみにホームランの平均バットスピードは75マイル(≒120キロ)のようです。
ファスト・スイング率 (75+ MPH)
ファスト・スイング率とは
ファスト・スイングとはBat Speedが75マイル(≒120キロ)以上のスイングのことです。これはスイングの約23%にしか当てはまらず、スイングの大部分はファスト・スイングではありません。また、ルイス・アラエスやスティーブン・クワンなど一度も記録しないような打者もいます。
なぜ75マイル?
ファスト・スイングが75マイル以上と定義されているのはホームランの平均バットスピードが75マイルなのとは関係ありません(偶然です)。理由は75マイルを超えたところからスイングの得点価値がプラスになり、それ以下はマイナスになるからです。
時速75マイル以上のバットスピード
打率 .306 / 長打率 .603 / wOBA .388
100回あたり得点価値 +0.50
バットスピード 0-74マイル
打率 .247 / 長打率 .371 / wOBA .267
100 回あたり得点価値 -3.0
スクエア・アップ
スクエア・アップとは
スクエア・アップはスイングと投球の速度を考慮して、完璧な打球速度をどれだけ再現できたかを表す数値です。完璧な打球速度の80%を再現できれば優れたものとみなします。
スクエア・アップ= 実際の打球速度/(投球とスイングの速度から導きされた理想の打球速度)
スクエア・アップを高くするには速い打球速度やバットスピードは必要ありません。例えバットスピード自体が遅くとも、その遅いバットスピードから期待される最高値の80%を達成できればよいのです。
例えば150キロの投球に対し、バットスピードが130キロの時の完璧な打球速度は194キロです。この時、80%以上のスクエア・アップを記録するために必要な打球速度は154キロです。
一方、同じ150キロの投球に対し、バットスピードが115キロの時の完璧な打球速度は176キロとなります。この時、80%以上のスクエア・アップを記録するために必要な打球速度は141キロです。
バットスピードの値によって80%スクエア・アップを満たすのに必要な打球速度は変わります。言ってみればスタントン(MLB屈指のバットスピードの持ち主)が150キロの打球速度を記録してもそのスイングスピードを80%も活かせていませんが、スティーブン・クワン(MLBでもバットスピードは遅いが芯に当てる技術が非常に高い打者)が145キロの打球速度を記録すれば、持ってる力の80%以上を活かせている、といえばイメージしやすいでしょうか。
スクエア・アップ率を高める要素
MLB公式アナリストのtangotigerによるとよると、ボールがバットのヘッドから約4~9インチ(10~22.5cm)離れたバットのスイートスポットに当たった場合にのみ、パーフェクトな打球速度を達成することが可能です。
スクエア・アップとは言ってみればスイング時にバットの芯付近にどれだけ当てたかを示す指標と言えます。
理想の打球速度とは?
スクエア・アップの算出に使うバットと投球の速度から導きされる打球速度は以下の方法で求めます。(tangotigerのブログより引用)
スクエア・アップと非スクエアアップの比較
スクエア・アップ
打率 .372 / 長打率 .659 / wOBA .439
100回あたり得点価値 +11.0
非スクエア・アップ
打率 .127 / 長打率 .144 / wOBA .125 wOBA
100回あたり得点価値 -6.0
ブラスト
ブラストとは
スクエア・アップに速いスイングは必要ありません。
では、バットスピードとスクエア・アップを組み合わせてみたら?
ブラストとはバットスピードとスクエア・アップの両方を考慮した指標です。
ブラストとは、専門的には「打者がボールをスクエア・アップし、最小限のバットスピードでそれを行うこと」です。さらに専門的には「スクエア・アップ・パーセント * 100 + バットスピード(mph) >= 164 のとき」です。簡単に言えばスクエア・アップ率とバットスピードを足した平均が82を超えなければブラストにはならない、ということです。
ブラストの条件を満たすスイングは7%しかないですが、ブラストは非常に強力なスイングです。
ブラスト
打率 .546 / 長打率 1.116 / wOBA .706
100回あたり得点価値 +32
非ブラスト
打率 .178 / 長打率 .224 / wOBA .175
100回あたり得点価値 -6
スイング・レングス(スイングの長さ)
スイング・レングスとは
スタントン
アラエズ
スイング・レングスは文字通り、スイングの長さです。上記の画像や動画を見ればわかる通り、パワーヒッターのスタントンはスイングが長く、コンタクトヒッターのアラエズのスイングは短いです。
他の指標とは異なり、この指標は「良い」か「悪い」は明確でありません。これはパワーを得ようとしているのか、それともコンタクトを得ようとしているのかという、スタイルの違いによるものです。平均の 7.3 フィートをとって、そこから長めと短めに分けてみます。
平均より短いスイング
打率 .258 / 長打率 .359 / wOBA .268 / 空振り率 19%
平均よりも長いスイング
打率 .235 / 長打率 .422 / wOBA .282 / 空振り率 30%
短いスイングの方がコンタクトが多くなるため、打率も高くなります。スイングが長ければ、パワーが増し、三振も多くなるというトレードオフがあります。良くも悪くもなく、スタイルの違いです。
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