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金は絶好調だが、退職した貯蓄者は浮かれてはならないGold Has Gone Gangbusters. Retirement Savers Shouldn’t Get Carried Away.投資するなら少額を

金は輝く


Dreamstime

金は年初来、S&P500指数を上回る約13%のリターンを上げ、輝きを放っている。しかし、金は退職金ポートフォリオにふさわしいのだろうか。最近少し値を下げたものの、金を保有する論拠は確かなものに見える。インフレが政策当局が望む以上に高止まりしており、金はインフレヘッジと見なされる。中東やウクライナでの戦争など、地政学的緊張は高い。こうして金価格は、金利が上昇すれば下落するという通常のパターンに反して、1オンス当たり約2347ドルまで上昇した。

利下げの追い風に加え、究極の保護手段との見方も

専門家は、金価格を記録的な高値に押し上げている最近の需要の多くは、中央銀行によるものだと指摘している。さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)が最終的に利下げに踏み切れば、金にとってさらなる追い風になるかもしれない。ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートの最近の解説によると、金の最も堅調なパフォーマンスは、FRBの利下げサイクル中に何回か生まれている。

金は投資だけでなく、金塊はしばしば災難から身を守る究極の備えとして宣伝されている。「金の個人退職勘定(IRA)」は金の現物を保管できる口座だが、広告では、退職者が貯蓄を守るための方法として紹介されている。しかし、これらの口座はコストがかかり流動性が低い可能性があるため、確定拠出年金(401k)からの乗り換えの受け皿としては不適切だ。

終末シナリオにおける金の役割は不確かだ。金支持者は、大規模な戦争のような社会的、経済的大混乱に続いて起きる可能性のある物々交換経済では、現物の金は価値を発揮すると主張する。一方で、食料品や燃料など、生命を維持するための物資ほどには金は役に立たないという見方もある。

金投資には維持費がかかり、税率が高いことも

さて結論は?退職した貯蓄者は浮かれないことだ。

まず、機会費用がある。モーニングスターによれば、金は年初来で米国大型株をアウトパフォームしているが、過去100年間のすべての10年において、米国と海外の株式市場をアンダーパフォームしている。さらに、債券や配当株と違って、金からインカムを得ることはできない。だが維持費はかかる。例えば上場投資信託(ETF)の場合、手数料がかかり、SPDRゴールド・シェアーズ<GLD>のケースでは年間0.40%が課される。

アドバイザーの助言は、もしどうしても金に投資したければポートフォリオの5%まで、だ。SPDR ETFを使ってエクスポージャーを得ることは簡単だ。ピッツバーグの公認ファイナンシャルプランナー、ダイアン・ピアソン氏は、税金面だけは注意せよと語る。例えば、SPDR ETFは信託として組成されており、1年を超えて保有した株式の売却益には28%の「収集品」税率が適用され、長期キャピタルゲインに対する税率を上回る。そのため、金ETFは個人退職口座のような税制優遇口座で保有するのが一番で、この口座は所得税をめぐり頭痛の種になる可能性のある他のコモディティーETFにも適している。

分散投資がお勧め

金への少額の配分によって、投資家が乱高下する市場から退却せずに投資スタンスを維持できるのであれば、ポートフォリオに金を配分する価値はある。他のすべてが下落する中、ポートフォリオのわずか一部でも上昇していれば、株式から全財産を引き揚げるような軽率な行動を思いとどまらせる可能性がある。株価が急落している最中は心地よいかもしれないが、株式から退出した投資家の大多数は株式に安心感が生まれるまで動かず、戻ったときは反発の大半を逸しているものだ。

心理的な利点以外、金はおそらくリターンにあまりプラスとならないだろう。フロリダ州オーランドにあるフリーダム・ファイナンシャル・マネジメントのアドバイザー、ケビン・ダンリービー氏は、「自分のテーマや、何か懸念があるため金ETFでポートフォリオを分散したいのならOK。要は、恐怖やFOMO(取り残されることへの不安)に投資判断を左右されないことだ」と述べている。

原文 :By Elizabeth O’Brien
(Source: Dow Jones)
翻訳: エグゼトラスト株式会社

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