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米投資家が日本に注目すべき理由 Why U.S. Investors Really Need to Pay Attention to Japanese Markets 企業文化の変化、外国投資の増加、デフレ脱却


円キャリーは世界経済に好影響

大阪からニュージャージー州ニューアークまで、日本の桜が咲かなければ春ではない。しかし、この季節に投資家が日本に注目すべきなのは美的感覚だけでなく、経済的な理由もある。

ポジティブな面では、日本の日経平均株価は2月についに1989年の高値を更新し、第1四半期を好調に終えた。多くのストラテジストが、この先さらに上昇する余地があると主張している。この楽観論は、企業文化の変化、外国投資の増加、デフレ脱却などを前提としている。

日興アセットマネジメントのナオミ・フィンク氏は2日、日本の株価上昇を維持する「好循環」が生まれていると分析した。企業は値上げし、消費者は賃上げを要求する。企業は賃上げのコストをさらなる値上げで相殺する。そしてインフレ率が上昇し、人々が貯蓄するのではなく消費する理由となる。

フィンク氏によると、日本の家計はこれまで余剰資金を貯蓄に回していたが、リフレ(デフレを脱却したが、まだインフレにはならない状態)環境ではそうもいかないだろう。金融市場に参加するインセンティブは、日本の株価を押し上げるはずだ。

それでも、米国人が注目すべき明らかな理由にはならない。ソニー<SNE><6758>やトヨタ自動車<TM><7203>など米国でよく知られている日本企業は幾つかあるが、それ以外の企業を知っている人は多くはないだろう。しかし、日本の復活が米国市場と無関係だと考えるのは間違いだ。

先週34週ぶりの安値まで下落した最近の円の動きを見れば、その理由が分かる。セブンス・リポートの創設者であるトム・エッセイ氏は、円安は東京旅行を計画している人にとっては良いニュースだが、そうでなければ懸念材料になると指摘する。

円安は、欧米に比べて日本の金利が異常に低いことが主因だ。日銀は先月10年以上ぶりの利上げを発表したが、積極的な利上げを行う予定はなく、金融緩和政策は維持すると強調した。

エッセイ氏は、円安は機関投資家が日本国債を空売りし、それによって調達した資金を米国債などの高利回り証券に投資する円キャリートレードを促し、世界経済に好影響をもたらすと分析する。同氏は「円高が始まるまでは素晴らしい取引だ」と述べた。

問題は、日本の当局による円買い介入の可能性だ。エッセイ氏は「円安が続けば、日本の当局は円を買い支え始めるだろう」とみている。


KAZUHIRO NOGI/AFP VIA GETTY IMAGES

円の「スイートスポット」は145~150円

円が反発すれば、米国の投資家にネガティブな影響を与える可能性がある。エッセイ氏は、日本国債のショートポジションを持つキャリートレードのプレーヤーが、日本の円買い介入を心配して円キャリーをやめれば、米国債売りがかさむと警鐘を鳴らす。

言うまでもなく、国債、ジャンク債、新興市場投資など、他のポジションも大きく変動することになる。

エッセイ氏は、現在1ドル=151円近辺で推移している円の「スイートスポット」は145~150円だとみている。この水準なら円キャリーの人気が続き、日本の当局も円買い介入を行わないとの見立てだ。

エッセイ氏は「強気相場ではいつもそうだが、通貨と債券の安定はプラスであり、安定すれば安定するほど良い」と述べた。

より平凡な投資先を探している人にも、日本に注目すべき理由がある。日興のフィンク氏は「投資家は金融緩和が続く間、それを最大限に利用する準備ができているようだ。日本に投資するには良い機会だ」と語った。

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