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#人間らしく


トリスウイスキーのキャッチコピーを制作した3年前、
開高健は『裸の王様』で芥川賞を受賞している。

人間らしく


 キャッチコピーとは何か。それは商品の印象を決める広告文と言えよう。例えば、オロナミンCのキャッチコピーである「元気ハツラツ」は短い文章にも関わらず、その商品の印象を強く打ち出している。

 壽屋(現・サントリー)の宣伝部に在籍していた開高健は、宣伝広報誌『洋酒天国』を編集し、日本に洋酒文化を根付かせただけでなく、いくつものキャッチコピーを生み出した。それは短文で商品の印象を決めるといった惹句ではなく、まさに詩の一文であった。

 「人間」らしく やりたいナ
 トリスを飲んで 「人間」らしく やりたいナ
 「人間」なんだからナ
                  (開高健)

 開高はこのキャッチコピーを制作する際、経済成長へと向かっていく日本が、その時代の波に人間らしさが失われていることへの危惧があったそうだ。時代背景を読み取った詩的な表現は、多くの消費者の共感を得ることができたのだろう。トリスウイスキーは大ヒットを遂げていった。

◆プロフィール
 黒瀬稜太(くろせ りょうた)
 中津市在住。1991年生まれ。「今日もお酒日和」を執筆して1年が経
つ。メディアプラットフォーム「note」にて過去作やその他記事を掲載。


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