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#皇帝のビール


ケイゼル・ブルーを飲んだのは6、7年前が最後。
今では名称が変わり、「キュベ・ヴァン・ド・ケイゼル・インペリアルダーク」に。
重厚なモルト感、キャラメル香のほか複雑な香り、カカオのような甘苦が特徴。
写真はカール5世。

皇帝のビール


 1519年、カール5世は由緒あるハプスブルク家の血を継ぎ、19歳という若さで神聖ローマ帝国の国王に即位した。カルロス1世という名でスペイン国王としても即位していた彼は、他にもたくさんの国を統治し、ヨーロッパに一大帝国を築き上げた。そして、その栄光を守りつつ、運命に翻弄され、様々な争いに巻き込まれていくこととなった。

 過度なストレスから過食症を患った彼は、朝から鰻パイをたくさん食べ、大好きなビールを大量に飲んだ。過食症による胃腸障害のほか、痛風も患っており、晩年はその痛みに悩まされたそうだ。体力的にも精神的にも限界のなか、1555年にカトリックとプロテスタントの和解を図り、翌年に神聖ローマ帝国の皇帝を辞任すると、残りの2年間をスペインで静かに過ごしたという。

 1998年、カール5世が生まれ育ったベルギーのメッヘレンにあるヘット・アンケル醸造所は彼の誕生日を祝い、1本のビールを醸造した。ビール好きであったカール5世(ケイゼル・カーレル)に敬意を払い「キュベ・ヴァン・ド・ケイゼル・ブルー」と名付けた。年に一度、彼の誕生月である2月に醸造されたこのビールは人気を呼び、1年を通して醸造されるようになった。しかし、日本では年に一度の限定入荷であり、カール5世と同様に、ビールの中の皇帝に相応しい1本と言える。

◆プロフィール
 黒瀬稜太(くろせ りょうた)
 中津市在住。1991年生まれ。「今日もお酒日和」を執筆して1年が経つ。メディアプラットフォーム「note」にて過去作やその他記事を掲載。


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