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小話25 韓国野球ダフ屋

韓国ストーリーが続きますが、12年くらい前、アメリカの留学生活から一時帰国した時に、今の妻である彼女のもとにストップオーバーで韓国に寄り、彼女の当時5歳くらいの甥っ子と韓国のプロ野球を見に行きました。WBCなどもあって韓国野球の選手も知るようになり、韓国の野球場の雰囲気はどんなものかと楽しみにしていました。

しかし、本拠地ソウルのLGツインズと釜山のLGツインズの試合だったのですが、球場に行ってみると、チケットが売り切れで、とてもガッカリしました。

しかし、彼女は全くあきらめる様子もなく、怪しい一人のダフ屋のようなおじさんと話をして少しばかりのお金を払いついて行き、おじさんはたくさんのチケットを見せびらかすようにして、そのおじさんの周りに人が集まり球場の周りを歩いて回り始めました。非常に怪しい雰囲気の中、少し自分もびびり、入口に着くと、そのおじさんが団体客を率いるようにチケットを店員に見せている時に、そのおじさんが「走れ!」と言って、みんな球場内に走り出し、自分は彼女に促されて走りましたが、何が起こったのかよくわからず、とろとろ走っていたら追いかけてきた店員の人に捕まってしまい地面に押さえつけられ、戻ってきた彼女が「この人日本から旅行で来ててどうしても韓国野球が見たいんです」と言ったら、見過ごしてくれました。

5歳の甥っ子と彼女は捕まらなかったのに自分は捕まり、後で「どんくさい」と彼女に怒られました。自分からしたら、(そんなまずいことやると思ってなかったし)と思いました。

そのことで、いろいろ感じることがあって、まず、その出来事はどこか昭和後期の自分の小さい頃の雰囲気と似ていると思いました。当時の日本は、法の取り締まりもそれほど厳しくなく、どこか見逃してもらえるという雰囲気があり、そんな20年ほど前の日本と似ていると思い、韓国は当時まだ現代化、法の厳格化が遅れていたと言っていいのか、いい言い方をすればそういう温かみというのがあったような気がしました。自分は1988年のナゴヤ球場の中日優勝の試合を見に行ったことがあり、当時優勝決定時に観客がグラウンドになだれ込んだのをこの目で見たので、そんな雰囲気に近いものがありました。

そして、全く悪いことをしているのだけれども、彼女の勇気というか勇敢さにも驚かされました。よく言えば、したいことをなんとしても成し遂げるというようなことでしょうか。これをリスクと言っていいのかは気が引けるけれども、現代人はリスクを避けがちであり、ある程度リスクを冒さないと得るものを得られないといった精神があったように思いました。

ダフ屋のおじさんは今思えば、常習犯だったのでしょう。もちろん、そんなユルユルの時代の方が犯罪率も高く、悲しいことも多かったはずですが、そんな人を見過ごすという売り手の温かみというかいい加減さというものは今の日本にはなく何か懐かしい思いがしたのを覚えています。

その後、彼女は何もなかったように野球を観戦して自分も韓国野球が見れてとてもいい思い出になりました。

#小話 #韓国プロ野球

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