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ドラえもん×イジリー岡田さん似の父へ

春の木漏れ日のような父と春のそよ風のような母の間に生まれた。

と言いたかったが、実際は

ドラえもん×イジリー岡田さん似の父と
その父が「アイドルみたいだった」と豪語する
母から生まれた。

父が好きだ。
正式には、死ぬほど憎んだこともあるが、好きだ。

誰が死ぬことよりも、この人が死ぬことが1番悲しいとさえ思える。

認められたいと思ったことなど一度もないし
カッコいいと思ったことも一度もない。

元警察官なのに走り方はドラえもんだし、何円か分の商品を購入すれば貰えた浜崎あゆみのポスターが欲しくて、俺に化粧品を買わせたことがある。

仕事場のパソコンでエロサイトを見過ぎて、パソコンがフリーズし、走って俺を呼びに来たこともある。

昔から俺には興味なさそうだし、俺も特別に興味はなかった。

キャッチボールしようぜ!と言ってくれたことはないし、野球を教わったこともないが、巨人の星の
星一徹の話はめちゃくちゃしてくる。

けど、ドライだ。
ただ、この父と息子の距離感がちょうどいい。

そして、この人のキャラクターとエピソードが面白い。

小6のある朝に目が覚めたら警察官になりたくなっていたらしく、そして実際になった。

脇見運転の危なさを、道を歩いていた綺麗な女性に目を奪われたことで学んだ。

たい焼き屋さんの店頭にあった看板には、お客さんが分かりやすいように、たい焼きの中にどんな中身が入っているかを現す写真があった。

それを店員さんに
「ここのたい焼きは全部、半開きなの?」
と真顔で聞いたらしい。

姉が弁当を作ってあげた日に、仕事から帰ってくるなり姉が
「お弁当美味しかった?」
と聞くと
「うん。ファミチキが!」
とコンビニで買ったファミチキが姉の弁当を上回ってしまったことを報告した。

俺は一人暮らしで家にTVがないが、それはYouTubeが爆発的に浸透する2年ぐらい前に実家に帰ったときのこと

すでに60を超えたドラえもんは言った。
「好きなYouTuberがいて、その人のイベントに行きたい」
「アイツを見ていると元気になる」
車の中で嬉しそうに話すその熱量は、ネットがTVに追いつき、追い越す日が近いことを予見していた。

実家から帰った数日後には、俺はTVを捨てていた。

YouTubeが爆発期を迎えた頃には、ドラえもんはVRでAVを観ても、そんなにいいもんでもないことを教えてくれた。

最近では、YOASOBIのいくらちゃんの人気が出過ぎたことを寂しがっていた。


この父親にして貰ったことの中で、1番嬉しかったことは、未成年のくせにタバコを吸い始めたときのこと

父は小さな消化器をプレゼントしてくれた。
「自分も吸っていたから、吸っていることには何も言えない。けど、火事を起こすなよ」

そのおかげか、実家を出るまで、その消化器を使うことはなかった。
なんなら、消化器はサビ始めていた。

法律がなんと言おうと、未成年に対しての大人の対応の理想がなんであろうと
これは父から貰った愛情だと思っている。

この人に長生きして欲しい。
そんなこと思う日が来ると思わなかったが。

時々は実家に帰り、近未来をドラえもんに聞きに行こうと思っている。





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