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都市の人間は生きる力を奪われる〜アフリカから見る豊かさ

アフリカというと、サバンナとか、動物とか、紛争とか、そういうイメージを持たれることが多いです。

「アフリカの生活、YouTubeに投稿してよ!」
「アフリカの音楽ってどんなの?」(多分ドラムとかそういうの想像している)

みたいな反応はよくありまして。

確かにそういうアフリカもあるけれど、実際はそれだけとは限らない。
大都市には高層ビルが立ち並び、鉱山開発によって自然は荒らされ、人と動物の衝突が起きているのです。

生きるとはどういうことか?

都市化する、文明化するということはどういうことなのか。

そんなことを深く考えさせられる動画を紹介したいと思う。ジンバブエでアフグリッド、自然と共にIndigenous knowledge(先住民の知恵)を守って生きる長老へのインタビュー。

ジンバブエとザンビアの国境あたりの村に住むMpisiさん、79歳。
自分で作物を育て、オーガニックの食事をとって、健康に生きているという。化学物質でない、オーガニックの食事は癒し、自然の力で治癒するのだそう。

インタビューは、彼のこんなメッセージから始まる。

サバイバルスキルを得ること。外の世界、文明の世界は、人々にハンディキャップを与えるのだ。思考することを忘れ、計算もガジェット(機械)でするようになり、古くからの知恵を忘れてしまう

そんな彼の話が、ものすごくインサイトフルだったので、ざっくりと意訳しながら紹介します。
英語がわかる人は、ぜひオリジナルの動画を見てみてください!

(文明社会は)機能しない知識だけを与え、人々をダメにしてしまう。
それよりも自分で食料や薬を作るスキルを学ぶんだ。自分自身を健康で若く保つために。
ガジェットを置いて、サバイバルスキルを学ぶんだ。

なるべく化学物質を使わず、自然の恵みをいただいて、生きる。人間としての営みについて、問題提起をしているように感じます。
都市に住み、自然から隔離することが問題だというMpisiさん。

自然と隔離してしまっては、幸せになれない。(人間と自然が)お互いにリスペクトする必要がある。

Hapiness、幸せという言葉が出てきました。Mpisiさんのいう、幸せの秘訣はなんなのでしょうか?

人々と共に暮らし、楽しむこと。食べ物でも、みんなで楽しむこと。知らない人でもね。
もし、ヤギを一頭しか持っていなかったとしても、お客さんが来たらそれを喜んで屠殺してみんなで食べるだろう。幸せのために。それが私たち、アフリカの田舎の人々のプライドだ。都市に住む人は、全部自分たちのためにする。共有しないんだ。Onenessだ。

そしてMpisiさんはこうも言い切ります。

都市には平和も愛もない。

都市の生活では、みんなお金を気にしすぎていると言います。

都市にはストレスが多い。お金のために働きすぎている。忙しくして、身体は休まず、社会的な生活の余地すらない。

後半には、痛み(pain)と恐怖(fear)の話も

お金は大事なのでしょうか?というインタビュアーの問いかけに対しては、こう答えています。

お金はお金だ。人間は、お金を使って、自分たちの生活を破壊してしまう。浪費して、お酒を飲んで、身体を痛めつける。自らを殺しているようなものだ。そのお金をサバイバルに使えばいい。チキンを買うことだってできる。無駄に使わず、投資をしたり、賢く使うんだ。

Mpisiさんの村には、たくさんの動物がいます。家畜だけじゃなく、外には大型の野生動物もいる中で、動物と暮らすことについての質問には、このように回答。

人間のことを語らずに動物の話はできない。動物は人間が好きなんだ。でも人間が彼らに対して悪いことをすれば、彼らはフレンドリーにはならない。人間が彼らを痛めつけている。
人間が食べるものは、動物にとって毒だ。
(インタビュアー:クラッカーとか化学物質とか)
人間が彼らを毒している。それが彼らの行動を変えている。人間は文句を言うが、人間が原因だ。都市があるところは、動物が生きる地域だった。彼らの動きを、(人間や都市が)阻害している。動物からしたら、「私たちの家だ!どいて!」。
すると人間は(動物が)問題だと言う。でも違う。彼らに生活をさせるんだ。これが人間、都市の問題だ。

これを聞いて、皆さんはどう感じたでしょうか?


ジンバブエという国から

南アフリカにいると、ジンバブエ人によく会います。
特にヨハネスブルグには多いのではないでしょうか。

それもそのはず、ジンバブエ人の100万から300万人が南アフリカにいると言われているのです。
中には公式な滞在証明がない状態で暮らしている人もいるので、正確な数字はわかりませんが、100万人は間違いなくくだらないでしょう。その数は、ジンバブエの人口の8割以上と言われています。

ジンバブエは、1980年にイギリスから独立後、1980−90年代は経済成長をしていて、教育水準も高い国でした。ジンバブエの奇跡とも言われ、アフリカで最高レベルの識字率や最低レベルの乳幼児死亡率を誇るまでに。

しかし、その後白人農家から黒人への土地の再分配を始めたこと(そしてそれがきっかけで、国際社会から(特に西洋社会から)の反発を買い、経済制裁がかけられたこと)や関連の強行政策がきっかけで、ジンバブエ経済は崩壊に向かいます
ハイパーインフレを経験し、多くのジンバブエ人が南アフリカをはじめとした諸外国に出稼ぎに行く事態となっているのです。

このMpisiさんのような長老は、ジンバブエという国が独立し、栄えてきた時と、荒廃して人々が去っていく時代を、身をもって体験してきた世代なのです。

彼の流暢な英語、そして発する言葉は、決して”原始的”な生活だけをしてきた人のものじゃないのは明らかなように感じます。
貨幣経済、そして植民地支配などさまざまな”文明社会”のジレンマを身をもって経験したからこそ、教育もしっかり受けて、いわゆる”文明的”な生活も体験した上で語る、Indigenous Knowledge(先住民の知恵)への還帰へのメッセージには、考えさせられます。

アフリカに惹かれる人、そして私たちの未来

もう一つ、このインタビューで興味深いと思ったのは「幸せ」について。

お金を持っているかどうか、貯金ができるかどうかに限らず、今ここで時間を共にしている人と、幸せを分かち合うこと。それがアフリカの価値観なんだ(意訳)を言っています。

アフリカという地に、愛着を持って何度も訪問する人が、出身地に限らずにいます。その人たちが、アフリカに惹かれる1番の理由が、こうした「今、ここで共に過ごす幸せ」を分かち合うことができることにあるような気がするのです。

南アフリカは、アフリカの中でもかなり都会な一面もあります。それでも、タウンシップと呼ばれるアパルトヘイト時代の有色人種の居住地や、ホームタウンと呼ばれた、名目上の”自治区”には、アフリカの文化や思想が色濃く残っているのです。

このアフリカの美しい思想や価値観は、必ずしも資本主義社会で優位に働くわけではないのだけど、それがまたアフリカという地域の魅力でもある。

この資本主義社会の中で、アフリカは未来をどう描くのか。

アフリカは歴史がない、文化がない・・・そんな言説もあるけれど、ここに確かに息づく文化や知恵がある。植民地支配の中で、破壊され盗まれたものも多くある中で、尊厳を取り戻し、未来を描くにはどうすればいいのか。

このインタビューを見ながら、南アフリカ人と共に語ったとある夜でした。


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