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13. ペイントの種類でディジュリドゥを選ぶ 1

アボリジナルの作るディジュリドゥに描かれるアートはさまざまです。アーネム・ランドのアボリジナルが描く「Rarrk(クロスハッチ)」と呼ばれる手法では、細い連続的なラインの上に90度よりも鋭角にクロスさせたラインを重ねて描かれます。

[アーネム・ランドのRarrk]北東アーネム・ランドで最も細く繊細なラインでRarrkを描く画家の一人Djul'djul Gurruwiwiによるペイント。ラインが細ければ細いほど作業に時間がかかり、しかも筆の引き抵抗が軽くなってぶれない線を引くことが難しくなります。ドットで表現されている部分はDjaykung(File Snake/アラフラヤスリヘビ)の「ヤスリ」と呼ばれる体表を見事にあらわしています。

Daly Riverエリアではクロスハッチは用いられず、砂漠のアートに見られるようなドット(点描)とラインを中心に描かれるようです。

[Daly Riverエリアのアート]60年代のPort KeatsのKenbi(ディジュリドゥ)。太いラインで描かれた波模様とドットが基本のオーカ4色で描かれています。ある部分を太い線で区切ってその空間をドットで埋めつくすという手法はアーネム・ランドでは使われません。

ディジュリドゥに描かれるのは、虹や水や泡などの自然現象の他にも、炎やクロコダイルの皮模様などその氏族特有のパターン、そして自らの氏族のトーテムである動植物など様々です。


伝統的なカラーリングは白・黒・黄・赤の4種類

古来、アボリジナルアートは川や河口に流れ着く石「オーカ(岩絵具)」を習字の墨を擦るように水と混ぜ合わせて描かれてきました。使われるのは白・黒・黄・赤の4種類の色だけです(黒はオーカ以外にも炭を使うという地域もあります)。それが現在ではアクリル絵具でペイントされることもあり、伝統的な4色以外の色を使ってペイントされることもあります。

[カエルとダイアモンド・パターン]初期のDhapa Ganambarrのイダキに描かれたDjanggal(カエル)とYirritja半族のGumatj、Dhalwangu、Madarrpaクランなどに特有なダイアモンド・パターンが描かれています。このパターンは炎、スピアヘッド、クロコダイルの背中の模様などを表しているとヨォルングから聞きました。

特殊なアプローチとしては伝統的な4色を使いながらも、例えば黒と黄を混ぜることで緑を作ったり、クロスハッチをしても縁取りをしなかったり、天の川を表現した小さい小さいドットでペイントしたりして、伝統的手法に新たなアプローチを加えたスタイルもアーティストの創意工夫によって生まれてきています。

[黄色と黒をまぜて作った緑色]イダキ・マスターD. GurruwiwiのイダキにMiminyna Dhamarrandjiに依頼して描いていただいたBaru(クロコダイル)のアップクローズ。4色のアクリル絵の具だけを使いながらも、黄色と黒をまぜた緑を使って、より現実のクロコダイルに近いニュアンスを生み出した新しいアプローチです。


オーカ、アクリル、ノーペイント(木肌)のメリット・デメリット

アボリジナルの作るディジュリドゥには大きく分けて、木工用ボンドだけを塗った木肌仕上げのノーペイント、木工用ボンドの上にアクリル絵具を塗ったアクリルペイント、そしてオーカに木工用ボンドを混ぜてペイントしたオーカペイントの3種類があります。それぞれのメリット・デメリットを比べてみました。

ノーペイント

  • 木肌の木目の美しさとシンプルさが際立つ

  • クラックやホールなどの修理がしやすい(レタッチが不要)

  • 修理跡がはっきりとわかる・ラフに扱える(ペイントがはがれることがない)

  • アートがないので制作者、地域、制作時期を特定しずらい

  • オイリング可能


アクリルペイント

  • ペイント剥がれが比較的しにくい

  • 経年変化で色鮮やかさがくすんでいく程度・ペイントを維持するためには摩擦や衝撃によるキズに気をつける

  • ペインターの特徴から作者や氏族や地域を特定しやすい

  • 修理は可能だがペイントのレタッチが必要(クロスハッチ部分は難易度高い)

  • 現地で使っているのと同じアクリル絵具を使えばレタッチがしやすい

  • オイリング可能


オーカペイント

  • ロックアートと呼ばれる壁画を描いていた頃と変わらない素材で描かれる伝統的なカラーリング

  • マットな仕上がりでザラザラとした手触りでペイント部分の隆起を感じる・木工用ボンドを混ぜてペイントされてはいるものの水と油に弱く、特に白は色飛びしやすい修理の際にはレタッチの色合わせが困難

  • ペイントを保持したい場合は木工用ボンドを塗ることで経年変化に耐えうる状態になるが表面がグロス仕上げになってします

  • 作者の特定がしやすい

  • ペイントを保持したままの修理やメンテナンスが難しい

  • ペイントされた部分の取り扱いが一番繊細

  • 雨に濡れるとペイントが取れてしまう可能性がある・オイリングすると白が飛んでしまうことがある

このようにそれぞれにメリット・デメリットがあり、それぞれの特徴と見映えがあることをふまえて、楽器選びの際には自分の取り扱い方にフィットするペイント方法の楽器を選んでみるのも一つの方法です。

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