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資金管理の基礎

上手いトレーダーの条件は2つあります.

・一定期間で大きい利益が出せる事.
・その成績が安定している事.

初心者でも運が良ければ一回のトレードで爆益を出す事ができます.
しかし,その成績を安定して繰り返し再現できないならば,やはり上手いとは言えないです.ビギナーズラックというやつです.
また,成績は安定していても思ったように資金が増えなくては上手いとは言えません.安定して減っていく場合もありますからね.

安定させるという事と,大きな利益を出すという事を確率論的に考えてみましょう.


1. バルサラの破産確率表

トータルの利益を最大化するためのポイントは3つあります.
・証拠金リスク率
・勝率
・リスクリワード比です.
それらのバランスをとる目安がバルサラの破産確率表です.

■証拠金リスク率

リスクを取ってロットをはればその分,勝ちトレードとなった時は大きな利益となりますが,負けトレードとなったときは大きな損失となります.したがって,自分の証拠金に対してどの程度のリスクを取るかという事を考える必要があります.
極端な話,一回のトレードで証拠金が底をつくようなトレードをしてはならないという事です.
また,上級者でも何連敗かする事もあるので,通常1%~3%が推奨されています.
つまり,100万円の証拠金ならば通常1回のトレードで1万円~3万円程度のリスクにしておく事が推奨されています.

■勝率

これは

勝率=勝ちトレード回数 / 全トレード回数

です.勝率は高ければ高い程よく,わかりやすいので初心者の多くはこれを追求しがちです.
ただ,勝率を追求し過ぎると次の項のリスクリワード比が悪くなる事が多く,トータルではかえって儲からないケースが多いです.
この理由はエントリートリガーを勉強すればわかりますが,今はそういうものだと思っておいてください.

※ただし,高度な技術があればある程度の勝率とリスクリワードを両立させる事ができます.

■リスクリワード比

リスクリワードレシオ,また単にリスクリワード,日本語では損益比などと言いますが全部同じ事です.リスクとリワードの頭文字をとってRRと表記する事にします.

RR=(獲得pips数) / (損切pips数)         

で計算できます.
あるいは次のような比で表す場合もあります.

                      (損切pips数) : (獲得pips数)

いずれにせよ,損失(リスク)に対する利益(リワード)の割合,もしくは比(レシオ)の事です.リスクよりリワードが大きければRRは1を超えますし,リスクとリワードが等しければRR1,リスクの方が大きければRRは1未満かつ0より大きい値になります.
RR=3で証拠金リスク率2%のトレードであれば,負けた時は2%減ですが,勝った時は6%増しである事を意味します.

RRが大きければ大きい程,同じ証拠金リスク率で大きな利益を得る事になり,有利なトレードとなります.

ただし,RRを大きく狙うと結局早すぎる仕掛けになったり伸ばそうとし過ぎたりして勝率が下がるのが普通です.

何回かのトレードで利益を最大化するには勝率とRRと証拠金リスク率のバランスが重要です.そのバランスの目安としてよく紹介されるのが次のバルサラの破産確率表です.

■バルサラの破産確率表

証拠金リスク率とRRと勝率を固定して,そのトレードを何度も何度も繰り返すと儲かっていく場合と証拠金が底をつく場合があります.その判定方法をありがたい事にバルサラという数学者が発見しました.その数式は計算が大変でいちいち計算するのは面倒なので,様々な証拠金リスク率とRRと勝率の組合せであらかじめ表にまとめたものが次のバルサラの破産確率表です.100%はそのトレードを繰り返せばいずれ破産する,0%は何度繰り返しても破産しないという事を表します.

我々はこの表を目安にバランスをとればいいことになります.
感覚的には勝率50%でRR=1なら破産しないように思えないでしょうか.
バルサラの破産確率表を確認してみてください.
証拠金リスク率に関係なく破算確率は98%以上あります.
これはほぼ破産する事を意味します.

少し具体例で考えてみましょう.
例えば証拠金リスク率3%,RR=1のトレードを考えてみます.
負けた時, 3%の損失=100%-3%= 97%=0.97倍
勝った時, 3%の利益=100%+3%= 103%=1.03倍
となるので, 100万円の証拠金で一勝一敗だったとすると,

100万円×1.03×0.97=99. 91万円

もとの100万円に対して減っています.1敗を帳消しにするには1勝では足りないという事です.
これを解決して資金を増やしていくには勝率を上げるかRRを上げる,あるいは両方するしかありません.
このまま続けるといずれ破算する事になるでしょう.
それをバルサラの破産確率表は教えてくれています.

■ドローダウン

ここまでの内容はネットで検索して勉強できますが,注意点があるので補足しておきます.

バルサラの破産確率表は破産するかしないかという事を基準にした勝率・証拠金リスク率・RRのバランスを教えてくれる1つの目安です.しかし,我々は破産するかどうかを目安にしていないという事を見落としてはいけません.100万円の証拠金が最終的に200万円になるとしても途中で40万円などになったら不安ですし嫌ではないでしょうか?

100万円が40万円になるという事は60万円減ったという事で,つまり60%減です.この60%をドローダウンと言います.
(本当は少し違う意味ですが,このページを読んでるような人が今,そこまで知る必要は今はありません.)
バルサラの破産確率表は破産しないような証拠金リスク率と勝率とRRのバランスの基準を表しているにすぎず,ドローダウンは考慮していません.

そこで私の場合,”最終的に証拠金は増える”という前提のもと途中で1割~2割程度減る事は許容できますがそれ以上はメンタル的に耐えがたい気がします.エントリー方法によりますが,私の場合は5連敗する事は無いだろうという自信があるので,

証拠金リスク率1%で5連敗
→ 0.99×0.99×0.99×0.99×0.99=0.941 証拠金が約5.9%減

証拠金リスク率2%で5連敗
→ 0.98×0.98×0.98×0.98×0.98=0.886 証拠金が約11.4%減

証拠金リスク率3%で5連敗
→ 0.97×0.97×0.97×0.97×0.97=0.833 証拠金が約16.7%減

証拠金リスク率4%で5連敗
→ 0.96×0.96×0.96×0.96×0.96=0.782 証拠金が約21.7%減

というリスク想定のもと,証拠金リスク率は多くても3%程度としています.
4%にしてしまうとストレスがかかるように思います.
5連敗しないような戦略をとっているはずなのに5連敗するならば資金管理よりもトレード戦略の方に問題があります.
とは言え,3連敗→1勝→4連敗などもありますから,これは簡略化した単純な推定です.本気で推定したいならば,高校数学の反復試行の確率を使えばより精度の良い推定ができます.
(難易度としては青チャートの星4つか5つぐらいの問題かと思います.)

また,そもそもの証拠金が自分の労働などによる別収入と比較して大した金額で無い場合,もっと証拠金リスク率を増やしても問題無いと思います.
例えば月収100万円の人が10万円の証拠金でトレードし,証拠金リスク率3%は少なすぎます.5連敗しても1万4千円減るだけなので.

ただし,まだトレードスキルに十分な自信が無い場合は負ければ福利で減っていくので常に最低ロットかデモトレードでいいと思います.
スキルがあるからトレードになります.スキルに自信が無いのにリスクをとる事はお金を捨てている,もしくは良く言ってもギャンブルでしょう.
トレードではありません.
ドローダウンを考慮して自分の技量にあったリスクにしましょう.

2. 資金管理のガイドライン

■ガイドライン

・トレードを何回も繰り返してトータルで勝てるかどうかは証拠金リスク率,勝率,リスクリワード比のバランスが重要.

・そのバランスの目安はバルサラの破産確率表を用いるのが一般的

・連敗した場合は福利で減っていくので,あらかじめ許容ドローダウンを設定して証拠金リスク率を設定する.それがバルサラの破産確率表のどの表を見ればいいかを決定する.

・リスクリワードも勝率も高ければ高い程いいのでできるだけバルサラの破産確率表の右下を目標にするが,機械損失を嫌うならば,少々妥協も可

■トレードが上手くなるために

上手いトレーダーは安定して大きな利益を上げるといいました.

安定とはドローダウンの小ささを指し,大きな利益はRRと勝率と証拠金リスク率のバランスがもたらします.そのバランスを適宜調整していくのが資金管理のテクニックです.

よく理解すると,逆張りは危険と言われていますが,それは順張りと同じ証拠金リスク率でトレードする事を想定しているからに過ぎません.
逆張りはRRが大きいという優位性があります.
トータル勝ちできないのは技量不足です.
そういった事に気づけるようになり,勝率は落ちるがRRの良いポイントなどもリスクを十分に落とす事により,大きなドローダウンを出さずに攻める事ができたりします.


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