見出し画像

エントリートリガー

エントリートリガーは,セットアップが整った後に機会損失,勝率,RRを天秤にかけて合格の時にエントリーするといいました.
ここではそれがどういう事か説明します.
また,5つのエントリートリガーを説明します.
この記事の読者が初心者の場合,難しすぎると感じるかもしれません(しかも長い!)が,ロウソク足パターンでより簡易的にエントリーする方法も紹介します.
また,ここで言いたい事は、なぜ待つ事が大事なのかという事ですので,もしよければその理由を理解するためにも最後まで読んでみてください.

1.環境認識とセットアップの復習


図1.H1チャート HL④からHH⑤への値動きを狙う押し目買いをする場合.

先ず最初に釘を指しておきますが,基本的にエントリートリガーだけでは勝てません.大局を見て,環境認識をし,セットアップが整うのを待ちます.
そして,エントリートリガーに従って仕掛けます.
次の設定に従って,トレードを仕掛ける事を考えてみましょう.

設定
図1で,④のレンジを使って押し目買いをする事にしましょう.
現在時刻は図1のHL④あたりでそれより右側は見えていないとします.

このとき,環境認識とセットアップの役割は次のようになります.

〇環境認識の役割
HH⑤あたりのグレーの網掛けあたりまで価格が伸びるという事を見積もっておく事が環境認識です.
つまり,④のレンジは上にブレイクする事がこの段階で想定できている事になり,その場合④のレンジでショートはあり得ません.
ロングに固定され,目線が決定します.

〇セットアップの役割
ロング目線でのセットアップは価格がこれ以上下がらない位置の推定及び,その位置まで価格が到達するのを待つ事です.
今回は赤字のHL④あたりのグレーの網掛け部分にHL④ができる事を推定したとします.
それ以上下がらないと見立てているわけですから,そこに到達すればロングして良いという事になります.
※セットアップのポイントは水平線だけではなく,斜めのもの(MAやトレンドライン)も併用し,同時に貫くのを待つ事です.
水平線だけでは横軸が意識できておらず,失敗する事があります.
また,斜めのものはある程度裁量が入るため,水平線程正確ではありません.水平線と斜めの何かでお互いの短所をカバーさせあいましょう.

〇注意
当たり前のことですが,環境認識やセットアップはあくまで推定であり,当然100%勝つ事はできません.
したがって,RRや勝率,機会損失の回避を天秤にかけてエントリーする必要があります.
どこで仕掛ければどのようなメリット・デメリットがあるか考えてみましょう.

2.エントリートリガー

セットアップで推定したHL④に損切をおき,環境認識で見積もったTPラインで利食いする.この戦略をとるとき,セットアップも環境認識も正確であれば負けようがありません.つまり,その両方が素晴らしい精度でできるのであればどこで仕掛けても良いのです.
ところが,実際はなかなかHL④の位置を推定するのは難しいです.
全てのエントリートリガーについて言える事ですが,損切の逆指値を置く位置は”TPに到達するまで戻ってこない自信がある範囲で”できるだけ近くに置くのが合理的です.
5つのケースについて考えていきましょう.

■5つのエントリートリガー

次の図2は図1における④の水平レンジを5分足で拡大したものです.
水平レンジを使う場合,勝率や,RR,機会損失の回避を考えると5つのエントリーポイントがあります.
一旦名前を付けて,この後でそれぞれ詳しく解説していきます.
※利食いは全て環境認識で到達すると見積もったTPラインになります.
※名前は私が勝手に命名したものです.一般的な呼称ではありません.
〇青→ブレイク法
 損切:SL②に逆指値
〇紫→外部リトレース法
 損切:SL②に逆指値
〇赤→内部リトレース法
 損切:SL①に逆指値
〇緑→ボーダー法(レンジの境界)
 損切:SL①に逆指値
〇黄→ オーバーシュート法
 損切:SL①に逆指値


図2.図1の拡大 ④の水平レンジを使った5つの仕掛けポイント

■ブレイク法(青丸)

  • エントリー方法:水平レンジの2倍進んだところで逆指値

  • 損切り:SL②(水平レンジ下限)に逆指値.

  • 推奨証拠金リスク率:多くて3%まで.

  • 勝率は良い.

  • RRは悪い.

  • 機会損失はあり得ない.

推進波(HLからHHへ向かう値動き)が始まった事を確認してからエントリーした事になります.HL④はほとんど確定的にHL④であると推定されます.
負けるとすると,エントリー方法やセットアップではなく,環境認識に問題があると思ってください.
損切り位置は水平レンジの上限や中央線から十分余裕を持った位置という意味です.ほとんどのケースにおいて,損切りまでの間に水平レンジの上の境界と水平レンジの中央線があり,HL④に損切設定しなくても損切にかかりません.
hh3のような位置で約定してしまい,hl3を形成するためにエントリーした瞬間引き戻される事がありますが,水平レンジの上限や中央線を根拠に耐えてください.
hl3に逆指値を置くと,HL⑤を形成するために価格が戻ってくる事があり,刈られてから順行する事があります.したがって,その場合,HH⑤の位置を推定し,HH⑤で利食いする必要があります.
図1の水平レンジ①のようにトレンドの初動で仕掛ける事ができればこの方法でも十分に良いRRが出せます.

■ボーダー法(緑丸)

  • エントリー方法:セットアップが整った後,水平レンジの上限に逆指値

  • 損切り:SL①(暫定HL④)に逆指値.

  • 推奨証拠金リスク率:多くて2%まで.

  • 勝率はそこそこ.

  • RRはそこそこ.

  • 機会損失はあり得ない.

セットアップが整った位置をHL④であると推定するとき,その確度を上げる方法として,反転上昇を確認するという事が考えられます.先ほどのブレイク法ではレンジをブレイクするまで待つわけですが,一つの目安としてロングの場合、水平レンジ上限までの上昇を確認すれば十分であるともいえるでしょう.
この場合,水平レンジをブレイクしていないので,水平レンジ下限(hl2)まで引き戻される事がありますが,環境認識とセットアップが正しくできていればHL④まで下がる事はありえません.しかし,言い換えると環境認識だけでなく,セットアップの精度(十分引き付けたか)にも依存して勝率が決まります.
また,今回の例のようにエントリーした瞬間に含み損となる事があります.

■外部リトレース法(紫丸)

  • エントリー方法:明確にブレイクした事を確認してレンジ上限に指値

  • 損切り:SL②(水平レンジ下限)に逆指値.

  • 推奨証拠金リスク率:多くて3%まで.

  • 勝率は良い.

  • RRはそこそこ.

  • 機会損失はあり得る.

この方法はレンジをブレイクしてからいわゆるリターンムーブを待って仕掛けるという方法です.なぜボーダー法と同じ価格なのにリターンムーブを待ってエントリーするのでしょうか?それは勝率の違いにあります.
ボーダー法は水平レンジをブレイクする前にレンジの高値圏で買うという方法になりますが,外部リトレース法はブレイクを確認しているため,上限がサポートとして機能して損切にかかる可能性が低くなります.(④レンジの1つ前の③レンジを見てもらうとわかりますが,中央線まで引き戻されてから順行する事もあります.)

ただし,リターンムーブは起きない事もあります.したがって,機会損失はあり得ますが,ブレイク法よりもRRが良いため,そこに待つ意味があり,優位性があります.
それが嫌ならばボーダー法やブレイク法という事になります.
つまり,この方法は機会損失の回避を犠牲に勝率とRRを両立させていると言えます.

■内部リトレース法(赤丸)

  • エントリー方法:セットアップが整った後,水平レンジ内に価格が引き戻され,レンジ下限を再度試したときに指値でエントリー

  • 損切り:SL①に逆指値.

  • 推奨証拠金リスク率:多くて2%まで.

  • 勝率はそこそこ.

  • RRは通常のトレードでは考えられない程良い.

  • 機会損失はありえる.

この方法も戻りを待つ事になりますが,当然常に戻ってくるとは限らず,一気に水平レンジをブレイクする事もあります.
したがって,機会損失は起こりえます.
そのかわり,下へのオーバーシュート(ダマシ)の後,強力な買いが入ったから水平レンジ④内に価格が戻って来たので,水平レンジの下限でさらにショートしてやろうというショーターはほとんどいません.したがって,水平レンジの下限がサポートとして機能しやすく,損切にギリギリかからず,環境認識の通りに上限を突破していく事が多いです.
非常に良いRRを出す事が多く,環境認識とセットアップの精度が良ければ勝率も悪くないため,かなり良いエントリーポイントとなります.
今回のケースでは同じ証拠金リスク率でもブレイク法の3倍程度のロットがかけられます.しかもボーダー法などより長方形1個分安く買っているため,純粋な獲得pips数も増加し,同じ利食い目標で3倍以上の利益が出ます.
ただし,勝率はボーダー法よりもはっきりと悪いです.その理由はボーダー法で勝った時,内部リトレース法が約定するとは限らないため,

 ボーダー法の勝ち数 > 内部リトレース法の勝ち数
が成り立ちます.
また,ボーダー法で負ける時は必ず内部リトレース法も負けるため,
 ボーダー法の負け数 < 内部リトレース法の負け数
となり,勝率はボーダー法の方が確実に良い事が統計をとるまでもなくわかります.
ただし,勝率が悪くなると言ってもボーダー法の半分になるわけではないので(※私の体感です.統計はとっていません.) RRの増加を考えると待つ価値があります.
私が好んで使うエントリートリガーです.

※この考え方で統計を取るまでもなく厳密に勝率の序列を考える事ができます.結論だけ述べておくと勝率の良いものから
1.ブレイク法
2.外部リトレース法
3.ボーダー法
4.内部リトレース法
5.オーバーシュート法
となります.

■オーバーシュート法

  • エントリー方法:セットアップが整った時の小さなレンジでここまで紹介した方法でエントリーする.

  • 損切り:SL①に逆指値.

  • 推奨証拠金リスク率:多くて1%まで.この証拠金リスク率でも国内口座ではレバレッジ規制の関係でほとんどフルレバレッジになる事がある.

  • 勝率は最も悪い.(というより難しい.)

  • RRは考えられないぐらい良いRR10~20が出る.

  • 機会損失はたまにある.(オーバーシュートがハッキリしない事がある.)

図3.3分足チャート.セットアップが整った瞬間の黄色のレンジでエントリーする.エントリータイミングはここまで紹介した4つの方法のいずれかを黄色のレンジに当てはめて長所・短所を天秤にかけてエントリーする.

この図3は黄色丸あたりをさらに下位足で拡大したものです.
黄色の極小の水平レンジを用いてここまで紹介したいずれかの方法でエントリーしてください.内部リトレース法でエントリーした場合,RR10~20以上が出せます.
黄色のレンジの高さは図3にあるように,手前の水平レンジと大体同じ大きさになる事がほとんどです.目安にしてください.
いうまでもなく非常に難しいですが,証拠金リスク率を1%とすると失敗しても普段あなたが順張りでエントリーしている証拠金リスク率より低いのではないでしょうか.
損切り幅が狭いためかなりレバレッジがかけられるので,一発で証拠金増加率が10%~20%以上増える事が多いです.それを考えると資金管理を十分に理解して証拠金リスク率を落とし,ドローダウンをコントロールしていればある程度失敗しても大丈夫なので仕掛ける事ができます.初心者はそもそも環境認識やセットアップが怪しいため,他の方法が十分できるようになってから挑戦してください.

この方法はボーダー法と同じく,④レンジに対するオーバーシュートがハッキリすれば入るため,機会損失の回避はできる事が多いです.
したがって,勝率を犠牲に機会損失の回避とRRを取る方法と言えそうです.
ただ、絶対オーバーシュートするわけではないので完全に機会損失を回避できるわけではありません。

3.ロウソク足パターンでより簡易的に

難しすぎると思った方もいると思いますので,ロウソク足パターンを使ったエントリー方法も紹介しておきます.これは1時間足チャートです.
ここで,セットアップが整うのを待ち,スラストアップというロウソク足パターンが出たら,その左隣りのロウソク足の高値に指値をセットしてエントリーしてください.
スラストアップとは,終値が左隣りのロウソク足の高値を上に超えているロウソク足です.
スラストアップを覚えておけば,エンゴルフィン・アウトサイド・モーニングスターなどのような様々なロウソク足パターンを覚える必要がほとんどないです.結局黄色のレンジを上にブレイクするのを待つと勝率が上がり,スラストが発生すればその状況になっている事が多いです.
※経験則ですが,ロウソク足は50期間EMAがうまくサポートするような時間軸を選ぶとうまくいく事が多いです.
RRが十分良ければ成り行きで入ってもかまいませんが,結局のところ,それはここまでの考察でわかるように,機会損失の回避を優先してRRを犠牲にしているという事を理解してください.

図4.簡易的なエントリー方法スラストアップで仕掛ける.


4.まとめ

バルサラの破産確率表が理解できていればわかると思いますが,破産するかどうかは証拠金リスク率・RR・勝率のバランスで決まります.機会損失を犠牲にしても破産しません.上級者は機会損失を犠牲にする事で,RRと勝率を両立させられる状況を好みます.何度かエントリーを逃してもRRも勝率も良い方がトータルで結局大きく儲かるからです.
逆に,RRと勝率を両立させるには機会損失という犠牲を払う必要があります.その対価を支払う覚悟のある人だけが勝率とRRの良いポイントでエントリーできます.
それを理解していない人は引き付ける事が出来ず,RRが悪くなるため,上手く資産が増えないという事になります.
上手い人が待てるわけではなく,待てる人が上手いわけです.
とくにセットアップが待てない場合,勝率も悪くなります.
これは勝率を犠牲にして機会損失の回避を優先する選択をしている事になります.

これが理解できればそれだけでこの記事を読んだ価値があると思います.
もしあなたが機会損失を極端に嫌うなら,自分が勝率やRRを犠牲にしている事を理解してください.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?